あらすじ
かなわぬ恋こそ美しい――。
中山可穂版・現代能楽集、待望の復刊!
百本書いたら、僕のものに――墓地に住み着いたホームレスの老婆が語る懺悔めいた告白「卒塔婆小町」。
二人に愛された挙句どちらも選べず破滅に向かう女性の悲劇を娘の視点から描いた「浮舟」。
難病に侵された少年と、彼の主治医でもある義父との関係を描いた「弱法師」。
能をモチーフに、現代の不可能な愛のかたちを、研ぎ澄まされた静謐さと激情で美しく繊細に紡ぎあげた中篇小説集。
恋とは死に至る病いである――かなうことのない純愛の狂おしさを夢幻能の調べを借りて濃密に描き切った珠玉の三篇。
河出文庫版あとがきも特別収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
剥き出しの無垢な精神が不器用に傷ついているさまに触れると、不意にざっくりと斬りつけられることがある。(P.121)
「人間嫌いだと言うひとに限って、人間が人一倍好きなんですよ。期待しすぎて裏切られるから嫌いだなんて言うんだ。僕も同じだからよくわかる」(P.149)
愛はおいしく、そして栄養満点です。(P.156)
だがどんなに順調なときにも、破調は目に見えないところから食い込んで、次第にほつれの範囲を広げていく。(P.160)
あまりにも長く待ちすぎたものがようやく目の前に近づいてきたとき、人間は喜びよりも先に恐怖に陥ってしまうのかもしれない。(P.187)
音楽はただ甘いだけの毒ではない。世界はただやさしいだけのゆりかごではない。(P.225)
直球は受け止めるのに力がいる。(P.274)