中山可穂のレビュー一覧
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何度も読んでいる中山可穂さんの一冊です。中山可穂さんの本は体力、精神力両方ある時じゃないと読めません。両方ある時にはぐわーっと引き込まれて読んでしまうのですが。
この弱法師、「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」の三作が載っているのですが、私の中で「卒塔婆小町」の印象が薄くて、確か、老婆が出てきたような?くらいの記憶でした。ですが、今回読み返してみて、一番ガツンときたのはこの「卒塔婆小町」でした。元々この方の書かれる愛と狂気の背中合わせっぷりが大好きなのですが、この卒塔婆小町、その愛と狂気が薄皮一枚でつながっているような感じがしたのです。
他の本だと、その薄皮一枚っていうのが今まであまり感じられなく -
Posted by ブクログ
ネタバレ友人が突然貸してくれた本。前情報無しに読んだらとても面白かった!
中山可穂先生の小説は「レズビアン小説」と称されることが多いらしい。今作で初めて先生の作品を読んだ私個人としては、この表現は間違いではないが、決してそれだけではないだろうと感じた。
主人公の王寺ミチルは芯の通った人物で、ひたすら演劇に身を捧げている。ただぼんやりと人生を浪費し女を貪るようなキャラクターではない。もしかすると演劇界には同じような人物がいるのかもしれない……と思わせてくれる、血の通った主人公だった。
また作者は文化的資本が溢れたところで暮らしていたのだろう、そして知的好奇心に溢れた人物なのだろうと伺える描 -
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ネタバレ剥き出しの無垢な精神が不器用に傷ついているさまに触れると、不意にざっくりと斬りつけられることがある。(P.121)
「人間嫌いだと言うひとに限って、人間が人一倍好きなんですよ。期待しすぎて裏切られるから嫌いだなんて言うんだ。僕も同じだからよくわかる」(P.149)
愛はおいしく、そして栄養満点です。(P.156)
だがどんなに順調なときにも、破調は目に見えないところから食い込んで、次第にほつれの範囲を広げていく。(P.160)
あまりにも長く待ちすぎたものがようやく目の前に近づいてきたとき、人間は喜びよりも先に恐怖に陥ってしまうのかもしれない。(P.187)
音楽はただ甘いだけの毒 -
Posted by ブクログ
恋とは死に至る病である――
難病を患う少年と、彼を助けようとする医師であり継父である男との、その関係を越えた純愛の物語《弱法師》
かつて優秀な編集者だったホームレスの女が振り返る、若き作家との身を滅ぼすほどの恋の物語《卒塔婆小町》
父と母、そして大好きな叔母との許されない愛の形を描いた物語《浮舟》
古典"能"を材にとり、繊細なまでに張りつめた愛の悲しみをとらえる中篇3篇。
うわ〜、これすごかった、、←語彙力なし笑
叶わぬ恋ほど美しいと言うけれど、まさにそういう恋を描いた3篇でした。
中山さんの描く文章がとても美しくて、それが故に鋭さや脆さをも感じさせる作品でした。
「 -
Posted by ブクログ
文章が美しすぎます。
こんなに研ぎ澄まされて、一滴一滴絞り出すように紡がれた文章と出逢えたことが幸せです。
この文量でこの濃度、必要な描写がすべてなされていて、しかも美しいのです。
『卒塔婆小町』と『浮舟』がとくに好きです。
恋をすること。想い続けること。心が引き裂かれること。
愛について考えることは作家にとって一生の宿題だ。
『卒塔婆小町』
にある通り、著者の中山可穂さんも、その一生の宿題に取り組んでいるところなのだと思います。
以前から強く、ほとんど憤りのように、中山可穂さんは日本文学史上であまりにも過小評価されている小説家だ、と感じています。
2022年河出文庫からの復刊はほんと