川上未映子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ3周回ってまた村上春樹に興味が湧いてきた。
良書。
@
ようこそ、村上さんの井戸へ――川上未映子はそう語り始める。少年期の記憶、意識と無意識、「地下二階」に降りること、フェミニズム、世界的名声、比喩や文体、日々の創作の秘密、そして死後のこと……。初期エッセイから最新長編まで、すべての作品と資料を精読し、「村上春樹」の最深部に鋭く迫る。十代から村上文学の愛読者だった作家の計13時間に及ぶ、比類なき超ロングインタビュー!
はじめに 川上未映子
第一章 優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない
朗読会の思い出/「語りかけ」の変化/キャビネットの存在/「人称」をめぐって/登場人物、囚われない魂たち/本当のリアリティは、リアリティを超えたもの/物語を「くぐらせる」/文章のリズム、書き直すということ/村上春樹の驚くべき「率直さ」/中上健次の思い出/「頭が沸騰」している時間/自分にしかできないことを追求する/本との出会いから始まった奇跡/ゆくゆくはジャズ・クラブを……
第二章 地下二階で起きていること
タイトルと人称はどのように決まる?/「悪」の形が変わったような気がする/地下へ降りていくことの危うさ/それが僕の洞窟スタイルだから/僕は芸術家タイプではありません/ノープランで小説を書き上げるためには/みみずくと作家のキャビネット/水先案内人は三十代半ばがいい/信用取引、時間を味方につけること/地下一階の「クヨクヨ室」問題/「渥美清と寅さん」では困りますからね/免色さんに残された謎/僕のイデアはそれとは無関係です/スピリチュアリストと小説家との違い/ポジティブな終結でありたい/書くことで村上さん自身は変化しますか?
第三章 眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい
文章さえ変わり続けていけば、恐れることはない/『ノルウェイの森』幻のシナリオ/本当に求めているのは、男性なんじゃないのかな/文章を書くことで、自分を知るということ/読者を眠らせないための、たった二つのコツ/生き方を教えるのは難しい、書き方も同じ/文体は心の窓である/手を引いて、どこかへ導いてくれる存在/女性が性的な役割を担わされ過ぎていないか/こんな女の人、いままで読んだことがない/地下に潜んでいる、僕の影に触れる瞬間
第四章 たとえ紙がなくなっても、人は語り継ぐ
日記は残さず、数字は記録する/まずは適当に書き飛ばせばいい/新しい一人称の世界が始まったのかな/昔書いた本は、古くて読み返せない/スプリングスティーンの自問のように/僕はインダストリーズの生産担当に過ぎない/死んだらどうなると思いますか/言葉が一人歩きしているものだから/本物の牡蠣フライよりそそりたい/善き物語は、遥か昔の洞窟の中に繋がっている
インタビューを終えて 村上春樹
付録 文庫版のためのちょっと長い対談
濃厚すぎる二年間ですね/ガラパゴスとか、パリとか、村上RADIOとか/翻訳のこと、「父親」についてのメモワール/父親のことはいつか書かなきゃいけないと思っていた/文章というツールについて/「待つのが仕事だから」と言ってみたいけれど/帰って来られた猫と帰って来られなかった猫、内臓の中の石/インタビューの最後に -
Posted by ブクログ
ネタバレ重かった………………読むのにとても時間が掛かった。。
ずっと辛いし、希死念慮が膨らんで鬱状態が加速していく描写は本当に生々しくて、新卒期の摩耗しきった己と重なる部分もあって、わかるなあ、と思いながら読んでた。
元々ショッキングな描写には耐性があるつもりでいたけど、それも年々ダメになってて、主人公が二ノ宮たちに人間サッカーとかいう惨たらしい暴力に晒されるところで貧血になって一時中断した。。
生々しい活字に体調崩すのは、中山七里『連続殺人鬼カエル男』と平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』以来かもしれない。
ノストラダムスの予言、とかいう、自分が生まれるずっと前に流行ったらしいワードから、この物語が90年代初期?とわかるけど、この位の年代の小説が好きかもしれない。
推しとかスマホとかインスタとかいいねとか、そういう露骨に近代的なモチーフを面白おかしく風刺したような物語より、もっと奥底の人間心理とか、人と人とが作用しあって生きることの難しさとかを、スマホが生まれるの前の時代感で読みたいと思う。最近。
-
Posted by ブクログ
読んでいて感じたのは、「こうなるしかない」という諦念に近い確信だった。
未成年での飲酒やスナック勤務、血縁ではない人々との同居、明らかな違法行為の人間関係。表面的には自由にも見える環境の中で、実際には選択肢がほとんど存在しない。守ってくれる大人も、安定した生活も、引き返すための基盤もない。あるのは、その場に適応するしかない状況だけだ。
さらに残酷なのは、ようやく積み上げたものが徹底的に破壊されることだ。自分で稼いだお金は盗まれ、次には母親に奪われる。外からの搾取だけでなく、内側からも奪われることで、信じられるものそのものが失われていく。
本来なら拠り所になるはずの家族が、最も人を削る存在になっている。逃げ場として機能するはずの場所が崩壊している以上、一人で立って生きるという選択すら成立しない。
物語は単なる不幸の連続ではなく、どうやって人が逃げ場を失っていくかを丁寧に積み上げていく。その過程があまりにも現実的であるがゆえに、読者にとっては強烈な精神的負荷になる。
冒頭で提示される殺人という結果も、突発的な異常ではなく、この環境の延長線上にあるものとして理解できてしまう。ゾクゾクくる怖さがある。
救いを期待して読む作品ではない。むしろ、救いが成立しない構造そのものを突きつけてくる物語だと思う。
下巻へ進むぞ! -
Posted by ブクログ
コロナが蔓延し、生活が一変したあの春にまつわる物語を連ねた短編集。
全話に通じて対話が少なく主人公の心情を丁寧に描写していることと終始不穏な空気が漂っていることが印象的であった。
心理描写に関しては"不安"や"恐れ"などといった一言でも通じる感情を様々な比喩表現を用いてこれでもかというほど深掘りっているのが印象的だった。
心理描写ももちろんだか、傍から見た言動に関しても「この人はこういう感情なんだろうな」と読者が一目で分かるような表現が秀逸であった。
作品の空気感に関しては暗い話が多く、何かが起きる結末でないことが不穏な空気感を作り出していた。起きている作中での物事自体が特別陰鬱といった訳ではないのだが巧みな心理描写によりここまで不穏な空気を漂わせられる川上未映子の技量に感服した。
比喩表現が豊富であったことや起承転結の起伏が少ないことから全体的に純文味を感じる作品であった。
「春のこわいもの」というタイトルからは"春"というテーマに惹かれて購入したが、"こわいもの"の方が印象的であった。
-
購入済み
女性なら一度は考えたことがあるであろう「子供を産むこと」について書かれた小説。乳と卵のその後的な位置付けとのことで購入しましたが、書かれていることはどこか他人事で、ネットでよく見る誰かのひとりごとをかき集めただけのもののような感じがしてしまいました。あまり新しい発見はなかった。乳と卵がとても感情的で作者のオリジナリティを感じた作品だっただけに、そのギャップが大きかったです。