湊かなえのレビュー一覧
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湊かなえさんが描く青春小説で、さすがと思える制作側に詳しい叙述が新鮮。
中学時代、駅伝の全国大会を目指すもあと一歩力及ばず。エースの友人とともに一般受験で陸上の強豪高校に進学するも交通事故で夢を絶たれる。
屈折した気持ちを持ちながら高校の放送部に入るが、当初見下していた気持ちから次第に熱量に感化され再び全国を目指す。
放送部での脚本作り、ドラマ撮影をめぐる役割やスタッフの動き、ノンフィクションとドラマの違い、そこに学年間の軋轢やクラス内のイジ、陸上部時代の駅伝メンバー選考にかかわる謎も折り重なって展開。
報道作品への批評場面や作品制作にか変わって主人公が成長していく様が爽やかに描 -
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公立高校の入学試験を舞台にしたミステリー、というよりはサスペンス、ドラマの脚本を小説に再構成したというのも納得する多くの登場人物に多くの視点、情景を人物像をイメージしながらなんとなく感情移入というよりも観測者として物語に関わる読みを読み手はした方が良いと思う。
出てくる人物は色々と癖があり、課題を抱える子どもたち、事なかれ主義に見える管理職、意見や思想の違う教職員、我が子のために入試に介入してくる保護者。グチャグチャのこの世の嫌なところが煮詰まったような人物たちが「高校入試」という閉鎖空間で様々な関わりと、行動、思いのぶつけ合いをするのはある意味クローズドサークルものという側面もある。
今作は -
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山登りに興味はないけど十分に楽しめた。
30代、40代あたりの女性の胸の内が語られ、内容がスッと入ってきてとても読みやすい。
各章に少しずつつながりもあり、前の章のその後が知れるのもよい。
山登りというと、抱えている悩みと向き合って答えが出たり、乗り越えたりするイメージがある。
本書の女性たちも、結婚をどうするかとか、答えを出す心意気で登山に臨んでいて、果たしてそんな確実なものなのかと不思議に思った。
だけど登山中は考える時間がたくさんあって、動いていることでより頭が冴えるから良さそうということは想像できた。
時々、人生にも通じる格言っぽい一文が出てくるのでハッとしたけど、私が登山して体感した -
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女優の藤吉弓香は、故郷で開催される同窓会の誘いを断った。母親に会いたくないのだ。
中学生の頃から、自分を思うようにコントロールしようとする母親が原因の頭痛に悩まされてきた。
同じ苦しみを抱えた親友からの説得もあって悩んだのだが…。そんな折、「毒親」をテーマにしたトーク番組への出演依頼が届く(「ポイズンドーター」)。
呆然、驚愕、爽快、感動―さまざまに感情を揺さぶられる圧巻の傑作集!
母親にえこひいきされた妹に対する憎しみと嫉妬がこうじて心を病んだ姉の破滅を描いた「マイ・ディアレスト」、脚本家志望の3人の表面的には励まし合いながら裏では中傷メールや書き込みや足の引っ張り合いをする嫉妬と泥沼を描い -
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女の情念とまで強い言葉ではないが、湊かなえのとらえる女性像はとても現実的で、目を背けたくなるときがある。
ドロドロしているわけではないが、そこには登場人物が女性だからこそ説得力のある独特の感情が確かに存在しており、柔らかいナイフでゆっくりと斬られているような痛みを感じる。
本作は3人の似ているようで少しずつ違う女性が織りなす物語で、典型的なミステリではなかったが、何が起きたのかを予測しながら読む作業はしっかりミステリ然としていた。
よくぞまあ主人公の名前を最後までうまく伏せていたものだ、なるほどこういう見せ方もあるのか、と驚いた。
とにかく登場人物が多くて頭を切り替えるのが大変だったが、エッセ -
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湊かなえの短編集。さすがイヤミスの女王、読後はちゃんと嫌な気分になりました(笑)
さて、このタイトルだが湊かなえ本人がインタビューでこう語っている。
「毒親というのは、ここ最近急速に使われるようになった言葉ですよね。新しい言葉ができた時、やたらと使われるので『それも当てはまるの?』と思うことってありませんか。いろいろ話を聞いていると、『それも毒親ってことになるの?』という内容で騒いでいる人が多い気がしたんです。」
本当に毒を持っているのは娘の方なんじゃないの?ということですね。
もちろん「毒親」と言われても当然の親はいる。ただこの作品に限らず、例えば犯罪者のコメントなどは自分がそうなったのを他