作者 湊かなえさんのインタビュー番組をみて、湊さんご自身が登山をしていて、それを作品にしていると知った。
作品は山にむかう女性たちの短編集。
大学生もいれば還暦に手が届きそうな人、それぞれの人生があり山にむかう。
友人、恋人、親子、夫婦、いっしょに登る相手もさまざま。
(でも誰も死なない 笑)
...続きを読むでも、登るのは一人だ。
登山で上に行くには自分で進まなくてはならない。
一歩、一歩、地道に足を出す。
しんどいから始終しゃべっていられない。
必然的に、思考が自分にむかう。
山にむかうのは自分に向かうことなんだろう。
登っているときは短文。登りながらだからタラタラ考えていられない。
一歩足を出すたびに頭に浮かぶ。
もう次は別のことは出てくる。
いっしょに山登りをしているかのような文体で、登山をしている人ならここに景色が見えてくるのだろうと羨ましくなる。
とちゅうで出会う登山者たちは優しく程良い会話をしていて、こんなに心地よい空気、このご時世にあったっけな?と思う。
主人公が変わるたび文章が変わり、山の視点と自分への向き合いとが交互にやってくるので、だれが、何を、を推理しながら読み進めていた。
またミスリードに引っ掛かった! そうきたか!と。
(でも誰も死なない 笑)
個人的には「残照の頂」にあっと言わされて、すき。
母娘の話も母親の立場で読んでよかった。
誰も死なないけれど(しつこい!笑)、
作者ならではのトリックを楽しませてくれる作品でした。
湊かなえさん、イヤミスの女王なんて呼ばれているけれど、ご本人はチャーミングで好奇心旺盛でステキな方。
イヤミスじゃない作品ももっと読みたいです。