佐藤正午のレビュー一覧
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ネタバレとにかくモテる主人公と、ロリコン叔父さんと、クセ強女性陣。相変わらずだが、会話がめちゃくちゃ面白い。ナボコフのロリータを読んでたらもっと面白かったのだろうか。
皮肉な鮎川さん↓
「ピアノを弾くために不利な手を持って生まれてきた人間がピアニストをめざす。自分の才能の程度に気づかない人間が、その才能を生かすしかない世界に人生の前半を賭けてしまう。そんな悲劇が世の中にあるだろうか、と僕は彼女の手をちらちら眺めながら考えてみたのだが、それを悲劇と呼ぶならそんなものは世の中にはいくらでも転がっているに違いなかった。」
クズ〜笑↓
「むろん彼女に少しでもその気があれば、彼女と寝るのは容易いはずだった。その行為で彼女を幸福にしてやるのも容易いはずだった。たぶん相手が平野美雪なら『いちころ』だろう。でもそれがドミノ倒しの最初の一枚を倒すきっかけになり、ばたばたと倒れつくした先の先で、最後の一枚が取り返しのつかない何かに連結するボタンを押してしまうのではないか、そういった不吉な予感が確かにあった。」
叔父さんの犯行直前のセリフ↓
「英雄、何かに追いかけられる夢を見たことがあるだろ、自分が何か、とんでもない罪を犯して逃げ回ってる、そんな夢を見たことがあるだろ、冷や汗かいて、目が覚めて、ああよかった、こっちが現実だったってほっとした覚えがあるだろ、そのほっとした現実が、夜が明けてみると退屈でうんざりだと思ったことはないか、また例の一日が始まる、ゆうべ見た夢のほうがよっぽどはりがあって生きてるって気がした、そう思ったことは一ぺんもないか、おれは今年で 41だ、 41の誕生日まで生きたら全部で何日生きた勘定になるかわかるか、計算してみた、一万と四九七六日だ。 80まで生きたらあと何日生きることになる? どうだ、あと一万日もいまと同じ人生を続けたいか? おれはもういい、もう十分だ、おまえもあと十年生きてみればおれの言ってることがわかる、よくもまあって呆れるくらい芸のない強盗やって捕まるやつがいるだろ、もののはずみで郵便局を襲ったみたいなやつが、新聞の記事を調べてみろ、そいつらはみんな 40過ぎの男だ、みんなおれと同じ考えにたどり着いたんだ、ただおれと違ってツキに恵まれないだけでな、いいか、よく聞け、もし万が一、追われる身になったとしても、それは現実と夢が入れ替わるだけの話だ、あのはりのある夢の中で生きてみてもいい、できることなら夢と現実の人生を総取っ替えしてみてもいい、おれは実は前々からそう思ってたんだ」
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Posted by ブクログ
佐藤正午さんの「月の満ち欠け」が好きで、あのような素敵な小説を生み出せる作家さんの頭の中に興味を持ち、読んだ。
つくづく作家というのは、クリエイティビティと締切プレッシャーとのせめぎ合いの中で仕事をされているのだと感じた。
クリエイティビティは時間をかければ良いものではない。閃く時は閃くし、閃かない時は閃かない。でも、時間は均一に過ぎて行き、然るべき時に締切は来る。
だからこそ、日常生活の中でのちょっとしたら気付きや出来事に敏感に反応し、小説のネタの肥やしにする。ただ、そのように収集されたネタも、物語の中核になるものばかりでは決してなく、登場人物像を肉付けするための、ほんの数行程度の描写に消えていく。小説というのは、なんて、膨大な情報と思考に支えられた緻密な構造物なのだろうと感じた。
エッセイそのものは、何気ない日常がありのままに綴られており、佐藤正午さんの人となりが手に取るようにわかっておもしろい。
内容は星4つとしたかったが、2冊ぶっ続けで読んでいたら少し最後の方は飽きてしまったので、星3つ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ男性の描く女性だな、と思いました。視点や感覚がハッキリ違うので、男性作家さんの恋愛小説は新鮮です。
女性の背景が似通ってる人物が別の話に出たりするので連作短編集かと思いましたがたぶん別個のお話です。主人公と遊び人な友人のお話はいくつかあるけど。この友人は(懲りないなぁ…)と思ってしまってちょっと呆れつつ、しょうがないなぁと思います。自分や知人と関係持ってる人がこんな人物じゃなければ、こういう人でも仕方ないなぁと許せるんだけれど。。
佐藤正午さんも初めて読んだのだと思います。読みやすいし、ダメだなぁと思ってても登場人物に苛ついたりしないで読めます。男性がちゃんとしてないから苛つかないのかなぁ…ファンタジーが鼻に付かない不思議なバランス。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ――
十五年前の殺人。
被害者の妻。
当時四歳だったその娘。
かつての婚約者。
そして、もうひとりの女。
交換殺人。
偶然ながら、ひとつ前のレヴューと好対照なものを読んだ。つまり題材としてはよくあるものを、これほど楽しく読ませてくれる作家は今や貴重かもしれない。
真新しさや斬新なトリックがあるわけではないんだけれど、ストーリーテリングの妙があって。
際立ったキャラクタや衒学的な文章に頼るでもなく、普通の会話が面白くなる。
どこかそう、熟練のしゃべり、の達人がフリートークを面白くするのと似たような。
同じ話も、語り口でこんなに変わるのか! ということがあるように。
ただまぁそれも好みなんだろうなぁ。それこそ思考のつながり、その飛躍。ペース、テンポ。そういうのが、自分に合っているんでしょう。
以下、伊坂さんのあとがきから引用。
“難解な言葉を駆使したり、退屈なストーリーを用意して、「よく分からない」小説にすることは比較的、容易だろう。その反対に、シンプルな筋書きを、決して難しくない文章で描き、迷宮のように仕上げるのは至難の業だ。この作家はそれをやる。エンターテインメントや純文学の区別などどうでもいい。「本物の小説家」とはこういう人のことを言うのだ(と僕は思う)。”
僕もそう思います!←バカっぽい
☆3.4。