佐藤正午のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
眠る前の読書は電子ブックでするのだが、「いわゆる虚構」と現実と称する「虚構」とがいきつ戻りつしながら進行していき、眠くなって途絶え、翌日になってまた読み出すと言うのを繰り返すうちに、どちらが「いわゆる虚構」で、どちらが「虚構」なのかわからなくなる。文体には好き嫌いがあるが、最初、面白いと思いつつ、上巻の三分の二近くまで来るとかなり退屈してきて、ようやく物語りが動き出すのが、上巻の終盤のセックスシーン。寝る前の電子ブックのせいか、私の読解力のせいか、面白くなりきらないところがこの作品の妙味なのかすらわからぬまま、物語が終盤を迎えてしまい、判断に難しい小説でした。
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Posted by ブクログ
括りとしてはミステリー。しかし型通りでなく、読者の考察抜きでは全体が理解できないように作り込まれている。
語り口調がまどろっこしく、会話の噛み合わない掛け合いに混乱させられるが、慣れれば即興的な面白さだとわかってくる。
主人公が小説を書くという形で、同じ日の別の場面を小分けに語ることで、少しずつ事実が明らかになってくる。それにしても、当該の日は、いろんな出来事が起こりすぎである。もはや三谷幸喜ばりのドタバタで、頭の中を時系列に整理できなくて、よくわからない。映画では、その辺りの理解を、映像が助けてくれるのを期待する。きっと裏切られそうだけど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ――
十五年前の殺人。
被害者の妻。
当時四歳だったその娘。
かつての婚約者。
そして、もうひとりの女。
交換殺人。
偶然ながら、ひとつ前のレヴューと好対照なものを読んだ。つまり題材としてはよくあるものを、これほど楽しく読ませてくれる作家は今や貴重かもしれない。
真新しさや斬新なトリックがあるわけではないんだけれど、ストーリーテリングの妙があって。
際立ったキャラクタや衒学的な文章に頼るでもなく、普通の会話が面白くなる。
どこかそう、熟練のしゃべり、の達人がフリートークを面白くするのと似たような。
同じ話も、語り口でこんなに変わるのか! ということがあるように。