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次作を書けずにいる新人作家のぼくは、ある日、十代の頃の相棒・寺井と10年ぶりに再会する。しかし、彼は無茶な依頼を口にしたのち、ぼくの前から消えてしまった。寺井を追うほどに胸を過る10年前の忘れ得ぬ出来事と映子の姿。思いがけず始まった人捜しが、止まっていた時間を揺り動かす。若き日の恋と苦い過去が織りなす人間模様。直木賞作家の才気あふれる初期傑作!
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Posted by ブクログ
「何してるのだれからだれ出かけるのどこへ。いいかげんにしてくれよ朝っぱらから。クエスチョンマークで頭のなかを引っ掻かれてるみたいだ」 『そのころ自分の脚を使って歩くのは子供とまだ生き足りない老人だけのように思えた。ぼくたちの眼は車の中から、若い女の顔しか捜さなかったし、ぼくたちの頭には、彼女たちの...続きを読むからだのふくらみやくぼみのことしかなかった。たぶん当時のぼくたちの世界には、子供とまだ生き足りない老人と、そして若い女と男だけしか存在しなかったのである。世界は狭く、ルールは単純だった。寝るか寝ないか、当りかはずれか、生きているか死んでいるか。』 『どんな恋愛も男次第だよ、と叔母は言った。覚えときなさい。だからこのつぎの恋をしたときはあんた次第なんだよ。』 『しかし人生で四度めの涙は女の眼から流れなかった。彼女はもう三年以上、夜の仕事をつづけている。仕事の途中でアイラインを引きなおした経験は一度もなくても、口紅を塗りなおした夜は数えきれぬにちがいない。』 「あんたなんのために十歳も年をとったの。ただ大人になるためかい。したいことをせずに我慢できる大人になるためかい」 「彼女は女だよ。思い出と付き合うことは女の仕事なんだから」 『行為のあとぼくはいつもひとりぼっちになった。言葉にする気力は使い捨てたコントームのようにしなび、意味はコンドームの中身のように白く濁った。終ったあとでも女に背中を向けないのが愛情なら、ぼくは女に対していちども愛の感情を持ったことがない。』 『「いいかい」とぼくはいま受話器を耳にあてている二人の人間に向かって言った。』 『「最後よ。これが本当に最後よ」 しかしぼくは女が口にする最初や最後は信じないという態度をつらぬいた。』 「ひとりだけいればいいのね。信頼できる人間が、どこかで見守ってくれていると信じられる人間がひとりいれば幸せなんだわ。あのときのことを思い出すとなんとなくそう思うの」 「何も隠しちゃいない」 「僕の知らないことを知ってるでしょう」 「いつも言ってるだろ。あんたがいま知らないことは無理に知らなくてもいいことだよ」 「だって…」 「またビコーズかい」 「……?」 「だって…とほのめかすのは英語でビコーズって言うんだよ。女の台詞だよ」 「…この店の名前?」 「察してちょうだいってあたしがつけたんだけど」 「そうだったんですか」 「そうよ、何だと思ってたの」 「なぜならば」 「中学生じゃあるまいし」
2作品目が書けない新人小説家が、過去の記憶と向き合い、克服していく。 主人公は、たまに片目が見えなくなる。片目が見えない時には取り返しのつかない不幸が怒る。 そういうジンクス 果たして今回はどんな不幸に見舞われるのか。 そして、その原因となっているかもしれない 過去のこと、祖母との関係 向き合って...続きを読む克服していく
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