あらすじ
小説名人による名作中の名作ついに文庫化!
夢枕獏さん、京極夏彦さん、奥泉光さん、筒井康隆さんら選考委員から圧倒的な評価を受けた、第6回山田風太郎賞受賞作!
山田風太郎賞の受賞からおよそ2年後、著者は『月の満ち欠け』で第157回直木賞を受賞したが、関係者のあいだでは本作が直木賞でも――といった声も出ていたという。
連載に3年を要した本作は、著者本人も「墓碑銘にしたい」「思い残すことはないくらい、本当に集中して書いた」と語る、まさに渾身の作品です。
【ストーリー】
かつて直木賞も受賞した作家・津田伸一は、とある地方都市で送迎ドライバーをして糊口をしのいでいた。
以前から親しくしていた古書店の老人の訃報が届き、形見の鞄を受け取ったところ、中には数冊の絵本と古本のピーターパン、それに三千枚を超える一万円札が詰め込まれていた。
ところが、行きつけの理髪店で使った最初の一枚が偽札であったことが判明。
勤務先の社長によれば、偽札の出所を追っているのは警察ばかりでなく、一年前の雪の夜に家族三人が失踪した事件をはじめ、街で起きる騒ぎに必ず関わる裏社会の“あのひと”も目を光らせているという。
こんな小説アリなのか!
小説表現の臨界点を超えた、まさに先が読めない展開――かつてない読書体験を約束します。存分にお愉しみください。
※この作品は過去に単行本版として配信されていた『鳩の撃退法』 の文庫版となります。
感情タグBEST3
作家が紡ぐ物語
主人公が住んでいた日本のとある街にて、一家神隠し事件と大量の偽札事件が発生する。
「この男が書いた小説(フィクション)は事実(ノンフィクション)になる」と謳われ、かつて一世を風靡した元作家の主人公は、その両方の事件に断片的に関わっていた。
事実と事実をつなぎ合わせてフィクションと成す。はたして此度、彼はどのような小説(ノンフィクション)を紡ぎ出すのか。
Posted by ブクログ
冒頭から最後までセンスのある文章で、津田伸一ワールドに没頭してしまいました!
どこまでが“小説”で、どこまでが“事実”なのか、本人たちにしか本当のことはわからないけど、そういうところも含めて津田伸一の小説は面白いです。
Posted by ブクログ
この作品は映画を先に見た。というか、先に知った。エンドロールで原作があることを知り、佐藤正午……見覚えのある名前だ! たしか『月の満ち欠け』という小説を読んだことがある──それがきっかけだった。
本書の主人公は、津田という小説家である。津田は行きつけのドーナツショップで、ある男と相席になる。その男が読んでいる本の帯に、こう書いてあった。「別の場所でふたりが出会っていれば、幸せになれたはずだった」。津田はそれについてこう言う。「だったら、小説家は別の場所でふたりを出会わせるべきだろうな」。じつは、これが小説全体の大きな説明になっている。
津田が相席した男は幸地秀吉といった。この幸地秀吉が、その夜を境に一家そろって失踪してしまう。それで津田は、この失踪を題材にして小説を書き始める。ここから、現実の出来事と、津田が書く小説との奇妙な並走が始まる。
おそらく読者が一番苦労するのは、どこまでが現実に起きたことで、どこからが津田の書いた小説の話なのか、ということだ。しかし、じつはそんなに難しくない。津田は自分が知ることのできない部分を「俺だったらこう書くね」と創作することで小説を書いているのだ。つまり、彼には知り得ない部分が作り話だと思えばいい。
だがそれだけではない。ときどき津田の書いている小説の中の出来事が、実際に起きているのではないかという予感が走る。「事実は小説よりも奇なり」というが、事実が小説を追いかけてきて、抜き去ろうとする。この現実とフィクションのカーチェイスこそ、この作品の醍醐味だろう。
ところで、紙幣を本の栞代わりに挟んでおくのはあまりおすすめしない。KKK(経験者は語る)。まあ、津田がフイにしたものに比べれば、僕が失った金額なんて全然たいしたことはないのだが。
Posted by ブクログ
小説家の飄々としたキャラがいい。
コンパニオンの源氏名が昭和女優の名前っていうのも覚えやすくてよい。
だんだん点と点が繋がってきて、今すごく面白いとこ。
面白いけどちょっと気になるのが、不倫相手に会うのに毎週他所のお宅のシッターに子どもを預けたりするかな?っていうのとヒモ男が他人の車に乗りまくってること。大雪の日や飲酒運転までも。
Posted by ブクログ
時系列が前後したり、一人称が作中と外とへ色々な軸へ交錯するので、頭の中で順序や人物を追っていく必要がある。
また一人称が語る描写一つ一つが、情景を抉り出すかのよう緻密で、時折り本筋から飛ぶようなレトリックもあるので非常に文学的的という感じがする。
展開も先を読ませない、主題の意味するところも上巻の時点ではよくわからない。
読む者を惹きつけるが一方では読むのにエネルギーを要する作品といえるかもしれない。
それは著者が吐き出すエネルギーからくるものかもしれないし、単純にページ数が多いから、ということなのかもしれない。
Posted by ブクログ
もしあの場所で出会っていたら…小説家を小説の主人公にして、入れ子状態で展開される話が面白かったです。ピーターパンの話に出てくる心の箱についての描写を読んで、ピーターパンも読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
佐藤正午の小説、大好き。
会話が多くて読みやすいけれど、そこはかとなく違和感が漂うこの感じ、独特でたまらない。
なんとなく物語の全体像が見えたところで上巻は終わったけれど、佐藤正午だけに、下巻ではそれぞれのピースが繋がっておしまい!
とは、ならないだろうから期待が高まる。
津田はなぜここまで詳細に小説が書けるんだろう。
この理由も明らかになるんだろうか。むずむずする。
Posted by ブクログ
うん面白い。物語的にどうかはまだ半分読んだだけで評価はできぬが、小説としての技法・手法が面白くて素晴らしく、いやこれルール違反じゃない?って感じでとても楽しめる。と言うか、では何が真実で何が創作なのか?などとそもそもこれは小説なんだがな、と言った気持ちで読んでいる。とてもメタな小説で面白い。映画を観てから読んでるので、いかに映画が舌足らずであるかがよくわかる。ここ省略しちゃダメじゃん?って箇所が多すぎるのでやはり映画化は愚策。下巻にも期待。
Posted by ブクログ
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
かつては直木賞も受賞した作家・津田伸一は、「女優倶楽部」の送迎ドライバーとして小さな街でその日暮らしを続けていた。そんな元作家のもとに三千万円を超える現金が転がりこんだが、喜びも束の間、思わぬ事実が判明する。―昨日あんたが使ったのは偽の一万円札だったんだよ。偽札の出所を追っているのは警察だけではない。一年前に家族三人が失踪した事件をはじめ、街で起きた物騒な事件に必ず関わっている裏社会の“あのひと”も、その動向に目を光らせているという。小説名人・佐藤正午の名作中の名作。圧倒的評価を得た第六回山田風太郎賞受賞作。
⚫︎感想は下巻へ
Posted by ブクログ
佐藤正午さんが読みたい&藤原竜也が主演の映画をやったと言うのも惹かれて購入⭐︎
文章がちょっとしつこいというか。。くどい笑。
でも、嫌いじゃない。惹き込まれる。
主役の津田伸一がダメ人間なとことか、セリフとか行動とか。。藤原竜也がピッタリだと思った!まだ前半戦。後半も楽しみ‼︎
Posted by ブクログ
「永遠の1/2」に似た違和感、空気感を纏った不安を文章にした「鳩の撃退法」。現実と仮想のあいだで読者は迷子になる。この違和感、不安が下巻でどう進むのか?
先に進みたい。
Posted by ブクログ
小説家が現実の世界を元に書いた物語に現実が吸い寄せられる話し。上下巻の長編だけど、最初の方の伏線を見事に回収されて綺麗な終わり。ただ、最初の方は、ややまどろっこしい進み方でなかなか入り込めなかった。すぐに引き込まれて先を読みたい気持ちが高まった。
Posted by ブクログ
初佐藤正午さん。これまで読んだことのない文体・構成が新鮮でとても面白い。糸井重里さんが「ピントが合うまでの時間がどうしても必要なんですよね。話はちゃんと読めるんですが、ピントが合わない。バチーンと合ってからどんどんおもしろくなるんです」と言及されていたが、大いに納得。上巻最後まで読んで初めの方のページをめくってみたら、内容がスルスルわかって、もう一度読みたいくらいに。登場人物も結構多いし、なかなかキャラをつかみきれない、と思ったところで、私は邪道かもしれないが映画化の相関図を横に置いて読んでみた。するとたちまち内容が入るようになった。文中に突然筆者が顔を出したり、読者に呼びかけたり、自由自在。下巻は一体どうなるのか。とても楽しみ。
Posted by ブクログ
なかなかに読みにくい文章……だけど癖になるっちゃなる。笑
時系列も行ったり戻ったりでしっかり読まないと理解するのが難しい。でも、いつも速読しちゃって話の展開だけを追ってしまう自分にとって、小説の良さを再認識させてくれた作品。下も気になるから今から読んできます!
Posted by ブクログ
冒頭からずっとおもしろい!でも、ただでさえ時系列がぐるぐるして忙しいのに会話も展開も回りくどすぎてサクサク読めないので時間がかかる。上でも470Pあるのに「盛り上がってきた!」からのめっちゃ話逸れる流れ多くてモヤモヤする!面白いし気になっちゃうから読めるけど笑
Posted by ブクログ
いや面白いんだけど,まどろっこしいというか何というか.会話は横道にそれるし,話は素直に進まないし,実は関連しているし.
だけどまとめると結局,面白いかな.
Posted by ブクログ
主人公の津田伸一は典型的なダメ男。女を利用して、女に助けてもらって生きている。太宰治の小説にありがちな男主人公。
映画では藤原竜也が演じているけど、個人的には松田龍平のイメージ。
Posted by ブクログ
くどい。とにかく回りくどい。
この物語は落ちぶられた直木賞作家・津田伸一の創作なのか、
はたまた事実を書き記した物語なのか。
まず、その疑いから読者としては始まる。
この難解な問題に拍車をかけているのは間違いなく回りくどい台詞のせいだろう。
まるで医者の問診の様な、質問の繰り返し。
逆に映像として見たらこの回りくどいやりとりもハッとさせられるのか。
下巻はどうここから転がっていくのか。
期待も込めての評価。内容は佐藤正午らしく面白い。
Posted by ブクログ
語り手が本著を書いてる設定なのでメタ的な言及が多く面白い
最終的にこの事実を意図的に隠してましたとかルール違反的なオチが来ないことを祈る
読むのキツいところが時々来る
社長が一人語りするところ厳しかった
リアルといえばリアルだけど話が散らかって疲れた
まだ主題が何かもわからないのでとにかく下を読む
Posted by ブクログ
まるで小説家の頭の中を覗き見ているような小説。
どうやって真実味を持たせるのか、どこまでが真実なのか、ちょっとした出来事からどこまでも飛び立っていく小説家の創造力の翼よあっぱれ。
Posted by ブクログ
時系列がバラバラで語り部が誰なのかも不明で進むので、そこが売りなのかもしれないけどあまり頭に入ってこない。最後のパートくらいでようやく全体像が見えてくるけど別に続きを見たいとも思わないかな。
Posted by ブクログ
ちょっと変わった綴り方と、序盤は一見なんてことない出来事を、よくもまぁ、というくらい緻密に冗長に描いてくるので危うく挫折しかけそうになるが、それも後半へと繋がる重要な準備なので根気よく読みましょう。
段々と密度を増していく出来事たちと、登場人物のちょっとズレたような軽妙なやりとりに引き込まれて行きます。
Posted by ブクログ
偽札事件と浮気した人妻の妊娠に纏わる一家失踪事件が作中作のような形を取って交互に進行する。
2つの事件にどんな関わりがあるのかはまだ不明で、また面白くはないものの進行が遅くてもどかしい。
評判作だけに下巻の展開に期待したいです。
Posted by ブクログ
言い回しが、とにかくまどろっこしい。主人公のしゃべる言葉が面倒くさい。私がこういう小説に慣れていないせいかもしれないと、頑張って上巻読み終えた。
せっかくなので、下巻に続こう…
Posted by ブクログ
眠る前の読書は電子ブックでするのだが、「いわゆる虚構」と現実と称する「虚構」とがいきつ戻りつしながら進行していき、眠くなって途絶え、翌日になってまた読み出すと言うのを繰り返すうちに、どちらが「いわゆる虚構」で、どちらが「虚構」なのかわからなくなる。文体には好き嫌いがあるが、最初、面白いと思いつつ、上巻の三分の二近くまで来るとかなり退屈してきて、ようやく物語りが動き出すのが、上巻の終盤のセックスシーン。寝る前の電子ブックのせいか、私の読解力のせいか、面白くなりきらないところがこの作品の妙味なのかすらわからぬまま、物語が終盤を迎えてしまい、判断に難しい小説でした。
Posted by ブクログ
映画見たいけどなかなか見に行けそうもないので。映画もちゃんと見ないと理解するの大変て意見もあったから、本の方がいいのかな?と
とりあえずやたらドーナツショップに主人公が行くからドーナツ食べたくなった。
始めの一家3人の奥さんの不倫や失踪、古本屋さんの残した偽札
謎がやたら多いけどまだ解決しない。下巻ですっきりするかな
この作家さんは初めて読んだけど、話を先延ばしするのがうまい
Posted by ブクログ
括りとしてはミステリー。しかし型通りでなく、読者の考察抜きでは全体が理解できないように作り込まれている。
語り口調がまどろっこしく、会話の噛み合わない掛け合いに混乱させられるが、慣れれば即興的な面白さだとわかってくる。
主人公が小説を書くという形で、同じ日の別の場面を小分けに語ることで、少しずつ事実が明らかになってくる。それにしても、当該の日は、いろんな出来事が起こりすぎである。もはや三谷幸喜ばりのドタバタで、頭の中を時系列に整理できなくて、よくわからない。映画では、その辺りの理解を、映像が助けてくれるのを期待する。きっと裏切られそうだけど。
Posted by ブクログ
映画化をきっかけに手に取った。
語り手(津田)がつらつらと主観も交えながら書かれる文章が慣れていないと理解し辛く、最初苦戦したが、読み進める手が止まらなかった。
なんだか断片的な主観で無理矢理つなぎ合わされたような気がしなくもないが、下巻でどう結末に向かっていくのか楽しみ。
どこが事実でどこが彼の創作なのか想像しながら読むのも面白い。