笠井潔のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
メディアが撒き散らす殺意を書いた作品であるが
この2年前に出版された鈴木光司「リング」ほどの
キャッチーさを持ち得てはいない
しかし「父性への失望」が引き金となって
人類を破滅へと導くラストは
後年、実際に持ち上がる衰退の兆し…すなわち
セックスレス/少子化問題について
予見的だったと言えないこともあるまい
そしてその「父性への失望」こそが
現代において私小説というジャンルを成立困難にしたものといえる
「ダメ」と「ダメじゃない」の区別がつきにくくなってきたというかね
しかし
「死の可能性」を踏破することで、これを乗り越えた者は
ひょっとしたらいたのかもしれない
それを考えると
この物語の結末 -
Posted by ブクログ
ネタバレ笠井潔の作品には学生運動の影響が色濃く出ている。
特に顕著なのは矢吹駆シリーズで、第一作『バイバイ、エンジェル』では連合赤軍事件の主犯永田洋子をモデルにした登場人物が現れる。
また本作の主人公竜王翔の設定は『熾天使の夏』で明かされる駆の過去と似通っている。
翔は山岳ベース事件の当事者であることが物語が進むにつれ明かされる。連合赤軍事件に関して言えば深い関わりのある主人公となっている。山篭りをしている点も矢吹駆と同じである。夢枕獏の『キマイラ』シリーズでも主人公は山篭りをしていた。山篭りで修業は一昔前の主人公のテンプレなのかも知れない。
物語は主に日本とベトナムで展開される。主題となっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ時代は全学共闘会議(全共闘)の終結から五年後。世界同時革命を目指し、リンチ事件の首謀者として逮捕され、刑期を終えて出所し、ひっそりと暮らしていた男に、かつての恋人から声がかかる。求めに応じ、かつての同志と再会した男は、同志から新たな革命運動への参加を求められ、男は、同志の革命思想を粉砕するために、あえて計画に乗ることにする。
これは、矢吹駆がナディア・モガールと出会う前、「革命」という高みを目指し、「革命」に目が眩み身を焼かれ、地に堕ちた熾天使(イーカロス)の、再生の物語――。
はっきり言って、これは推理小説ではなくハードボイルド小説、厳密には「革命」という名の観念に憑かれたテロリス -
Posted by ブクログ
ネタバレロシュフォール家殺人事件から数ヶ月を経た晩秋。奇怪な連続猟奇殺人事件が起きる。犯人は、①火曜日の深更に、②独り暮らしの娘を襲い、③絹紐で絞殺した後、④屍体の一部を切断のうえ持ち去る。現場に⑤赤い薔薇を撒き、⑥<アンドロギュヌス>と血の署名を残す……。被害者間の共通点を見出せず苦悩する捜査陣を尻目に、現象学を以って易々とミッシングリンクを拾い上げる日本人、矢吹駆。捜査が進むうち、事件は十数年前に起きた連続猟奇殺人事件とも関係していることも判明し……。
現象学を以って、「性犯罪には、二種類の特徴が挙げられる。性的な過剰エネルギーの爆発的な解放としてのものと、希少性の観念的充填を根拠とするもの -
Posted by ブクログ
ネタバレ①事件に関しては、ただ自分の関心に沿って考察し判断する。場合によっては捜査関係者を欺くことも厭わない。
②犯罪を現象学的に考察するために、ひとつの犯罪が現象としてどのようにして生成していくのかを、始めから終わりまではっきりと見届ける必要がある。そのため、事件を未然に防ぐことになる干渉行為は極力行わない。
③事件が終わるまでは、①②を理由に、社会的な責任や人間的な反応といったものは極力表に出さない。
これは、ラルース家事件の時に、矢吹がナディアに語った、自身が事件に関わるときに決めたルールの要約である。今回も矢吹は、そのルールに従い、最初の事件が起きた時、成り行きを喝破していたにも -
Posted by ブクログ
伝記ものといえばそうなのだけど、個人的には平井和正のウルフガイ・シリーズ、それもアダルトの方を思い出した。一種の無力感のようなものが似ているのである。ただし、色合いがずいぶん違うけれど。
タイトルのわりには、超能力のようなものはあまり前面に出てこない。どちらかといえば、無力な主人公の彷徨を追いかけているような雰囲気だ。逆襲に転じるのがあまりにも遅すぎて、おどろおどろしくも神がかった主人公だが、やはり無力感は否めない。
もちろん、作者はそんなことは承知の上でわざと書いているに違いなく、よく終わって感じるのは、超能力があろうとなかろうと、小さな個人を押しのけてうごめき回る、人類の悪意の総和の大