笠井潔のレビュー一覧
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ミステリ作家や批評家としても活躍している著者による、長編伝奇小説です。
KGBのスパイとしての活動歴をもつ九鬼鴻三郎は、パリの街でフランスの秘密情報機関に所属するジョルジュ・ラザールの依頼を引き受けることになります。それは、CIAのチャーリー・ミランの目的をさぐるというものでした。九鬼は、「キキ」ことラミア・ヴィンダウというファッション・モデルの少女をCIAが追っていることを知り、彼女の身柄を確保します。しかし、そんな彼の前に蝙蝠のような恰好をした不気味な怪人が現われ、その人間離れした力で九鬼を翻弄します。九鬼は、キキの身体を流れる血にかくされた秘密を知るために日本にわたり、世界の秘められた -
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現代ミステリの知的巨人が著した一人称探偵小説。「本格ミステリ+ハードボイルド+社会問題」という離れ業もベテラン笠井氏の手にかかれば一つの小説として成立しますね。
退屈な日々をやり過ごしていた探偵・飛鳥井史郎のもとに、17歳の可憐な少女・田之倉有美が父親探しの依頼に訪れる。飛鳥井は依頼をを請け負ったが、その有美が失踪。期を同じくして、清里で猟奇的な連続少女殺人事件が発生。少女たちの両親には共通の過去があり因縁と確執が隠されていたが…。
強固に練られた論理性、二転三転するストーリー、見事に回収される伏線。本格ミステリの雛型のような作品でした。主人公の飛鳥井は妻ジュリアと死別して米国から帰国した -
Posted by ブクログ
火曜日ごとに繰り返される猟奇殺人。<火曜日の謎><切断の謎><薔薇の謎><被害者の謎><アンドロギュヌスという署名の謎>から非業の死を遂げた女優ドミニクとの関連が浮上。事件の情報提供者とドミニクの妹ベアトリスがホテルで殺される事件が発生。15年前に起こった<ブレストの切り裂き魔>との関連。肉の両性具有人形の発見。
スピーディーな事件の展開と提示される謎は、読み応え十分。特に、ベアトリスが自宅とホテルの間を何度も移動した謎、「不在証明が不必要な人間がなぜ不在証明工作をやらなければならなかったのか」という謎が面白い。
しかし、矢吹駆が説明した真相は肩透かし気味。解答に切れや鮮やかさは感じられない -
Posted by ブクログ
メディアが撒き散らす殺意を書いた作品であるが
この2年前に出版された鈴木光司「リング」ほどの
キャッチーさを持ち得てはいない
しかし「父性への失望」が引き金となって
人類を破滅へと導くラストは
後年、実際に持ち上がる衰退の兆し…すなわち
セックスレス/少子化問題について
予見的だったと言えないこともあるまい
そしてその「父性への失望」こそが
現代において私小説というジャンルを成立困難にしたものといえる
「ダメ」と「ダメじゃない」の区別がつきにくくなってきたというかね
しかし
「死の可能性」を踏破することで、これを乗り越えた者は
ひょっとしたらいたのかもしれない
それを考えると
この物語の結末 -
Posted by ブクログ
ネタバレ笠井潔の作品には学生運動の影響が色濃く出ている。
特に顕著なのは矢吹駆シリーズで、第一作『バイバイ、エンジェル』では連合赤軍事件の主犯永田洋子をモデルにした登場人物が現れる。
また本作の主人公竜王翔の設定は『熾天使の夏』で明かされる駆の過去と似通っている。
翔は山岳ベース事件の当事者であることが物語が進むにつれ明かされる。連合赤軍事件に関して言えば深い関わりのある主人公となっている。山篭りをしている点も矢吹駆と同じである。夢枕獏の『キマイラ』シリーズでも主人公は山篭りをしていた。山篭りで修業は一昔前の主人公のテンプレなのかも知れない。
物語は主に日本とベトナムで展開される。主題となっ