笠井潔のレビュー一覧

  • 哲学者の密室
    本の厚さに流石に怯みましたが、読み始めると止まらない。哲学談義も密室トリックの謎も展開される推理も面白く、あれこれ考えているうちにいきなり場面は第二次大戦末期の…。そして第2の密室殺人。ドイツ第3帝国や強制収容所についてどれほど無知だったか思い知らされるうちに少しずつ本のタイトルの理由がわかり始めま...続きを読む
  • 煉獄の時
    幼少時の全能感を段階的に去勢していくことで
    人間は社会性を身につけていく
    というのが、精神分析の考え方であるが
    人間の考えなんてのはだいたい逆説から逃れられないもんで
    徹底した去勢こそ、未だ見ぬ新人類への道だという
    そういう発想も出てきてしまうわけなんだ
    その背景には、新しい神と古代の神の対立の図式...続きを読む
  • 煉獄の時
    シリーズ作品なので、ここから読む方は少ないかもしれないが、読めないことはないかもと思われる作品。しかしすごい長さと登場人物達の思考、語りがなかなか専門分野で繰り出されるので、読み終わったとき謎の達成感を得られる。人は生まれる国を選べないけれど、その土地に染みついた血や歴史の影響を少なからず受けるとこ...続きを読む
  • 煉獄の時
    ー 下からの集産化革命のために闘って斃れるなら本望だが、その可能性は当面のところ失われた。 全体主義でない革命は必然的に敗北するという、二十世紀革命の現実性を背負ったルヴェールの断定をどのように覆すことができるのか。

    闘うための旗を奪われた青年であろうと、切迫した戦争からは逃れられないし逃れるつも...続きを読む
  • 煉獄の時
    思想面について語る知識も言葉を持たないので過去編の構造についてだけ。









    作中ではリヴィエール教授がイヴォンのことを話すという体で過去編が始まるが、この過去編はイヴォンを視点人物として構成されている。
    わざわざ教授がイヴォンになりきって話すというようなことをするとは考えられない。
    つま...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    思った程難しくなかったよ。
    作者がワザと難しい言い回しをしている所はあったけど、直後に説明してるし。
    哲学を学んでからミステリーを読む人はいない。けど哲学を学んでいたらより深くこの作品を楽しめる事は確かだと思う。

    あと、久しぶりに事件を解決する気の無い探偵役の作品を読みました。
  • バイバイ、エンジェル
    舞台はパリのヴィクトル・ユゴー街。発生した連続殺人事件の謎を、現象学を駆使する日本人探偵・矢吹駆(以下カケル)が解き明かすというもの。この探偵、他の推理小説に登場する名探偵たちとはその推理手法が大きく異なっている。
    カケルは「観察と推論と実験」を通じて真実へたどりつくという、一般的に用いられる推理手...続きを読む
  • サマー・アポカリプス
    矢吹駆シリーズ、2作目。

    カタリ派の秘宝云々の辺りは二階堂黎人のようなケレン味オカルト話かと思わせられたが、それらはもっと壮大なスケールの哲学論争に包絡される。
    トリックの必然性、重厚な謎解き、それらもまた大流の一要素に過ぎない。

    (未発表作も含め)あと8作もこのシリーズの作品が残されてるなんて...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    憂鬱なパリの冬空の下に流される緋い鮮血。
    本格ミステリの様式を以って幕を開け、全ての現象はある人物の極めて悪魔的な企みに美しく帰結する。
  • バイバイ、エンジェル
    殺人に手を染めるほどの思想的根拠を持たない一般市民に
    それを行わせるのは何だろうか
    軽薄な実存主義ではけして言い表せないほどの正義の重みだろうか
    いや違う
    正義によって糾弾される罪の意識が肝要なのだ
    みんな戦ってる
    おまえは戦わないのか?
    そういう類のやつだ
    しかしそんなものを真に受けたのだとしても...続きを読む
  • サマー・アポカリプス
    前作「バイバイ、エンジェル」は薀蓄が哲学的で非常に難解でしたが、本作は前作ほどではなく、且つ情景描写が多くなっているので、若干取っ付き易くなっていると思います。確かにカケルと女教師シモーヌの思想対決は骨が折れますが、物語の本筋と密接に絡んでいるので不思議と引き込まれます。
    ストーリーは、ヨハネ黙示録...続きを読む
  • 三匹の猿 私立探偵飛鳥井の事件簿
    『家庭内離婚という奇妙な言葉が、日本を離れているあいだに流行しはじめたようだ。夫婦関係も親子関係も空洞化の極点に達しているのに、なぜか物理的には崩壊することがない。夫と妻、親と子を、なにが、それほどまで執拗に結びつけているのか。

    日本人の誰もが、こうした不可解さに胸を逆撫でされ、事件関係の報道に目...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    パリで起こる首切り死体から始まった連続殺人事件の謎を解明する話。
    謎解きの肝は最後に記すとして、ラストの犯人と探偵役矢吹駆のやりとりが圧巻!
    するとこなんだが何を言ってるのかついていけない。人間の死に関する自論展開になっている。

    犯人たちが最後死ぬことになったのはやるせない。矢吹駆は犯人たちをそこ...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    矢吹駆の凄まじいイケメン描写に圧倒され、しばらく読まないだろうと思っていたが、思いきって読むことにした。

    やけに小難しく、かなり衒学的な小説だが、読んでみると意外と納得できる部分もある。

    追記:犯人やあの人物の正体は、はじめからかなりヒントが出ていたので予想通りだった(特に黒幕はタイトルだけでわ...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    矢吹駆シリーズ。名探偵はいいやつとは限らない(ポアロ然り、ホームズ然り)。戯言シリーズのいーちゃんが引き継いでいるような精神性。続刊も読みたい
  • サマー・アポカリプス
    再読。
    ミステリとして矢吹駆シリーズは別格レベル。本作を再読してもその思いは変わらず。

    しかし今回は、以前気づけなかった重大なシーンを発見した。


    『くしゃくしゃの髪を片手の指で整えながら狭い階段を家の戸口まで駆け降りたわたしに、自転車を横に立てたカケルがおもむろにこういう。
    「僕も行こう。シモ...続きを読む
  • 薔薇の女
    笠井潔さんの矢吹駆シリーズ、第3作。
    火曜日の夜に起こる、若い女性の連続殺人事件におなじみの矢吹駆とナディアが挑みます。

    笠井さんの作品の特徴には、哲学やら現代思想について、登場人物同士て対話したり議論したりするのが多いんだけど、難しくってついていけてない部分がある。
    ちょっと残念。頑張って勉強し...続きを読む
  • 哲学者の密室
    よくできたフィギュアをおまけにした本やら菓子やらが大人を対象にして売れているという記事を最近新聞で目にした。「付加価値」というやつだろう。ただの本や菓子には食傷気味の消費者であっても目先を変えることで、もう一度購買意欲を喚起することができる。笠井潔の「矢吹駆」シリーズには、おまけ付き菓子を思い出させ...続きを読む
  • サマー・アポカリプス
    矢吹駆シリーズ2作目。

    歴史とかいろいろからんでて、いやー、読み応えバッチリ。
    でも、ナディアのバルベス警部に対する態度かなんかちょっとなぁ。かなりひどい事、言っているのが何だかなぁって思った。
  • バイバイ、エンジェル
    『探偵小説は「セカイ」と遭遇した』の著者が書いたミステリ。
    初の矢吹駆シリーズに挑戦してみた。
    女子大生が語り手なので、とっつきやすい。ぐいぐい物語に、引き込まれていく。
    シリーズ、全部読んでいきたいなぁ。