笠井潔のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ようやく、読み終えたという感じだ。文庫本で総ページ数が1,100ページを超え、また、読みやすい内容とは言えないので、読み始めるのにはちょっとした決意が必要な作品。
これだけの長編になると、このシリーズのファンしか、手を出さないだろう。作者はこのシリーズでは、孤高の姿勢を貫き、読者側に一切歩み寄ろうとはしていない。文章は非常に達者なのだが、ユーモアは全くなく、硬くて重苦しい。そもそも、ミステリーと哲学の融合に関心を持つ読者がそれほどいるとは思えない。
全体的に読みにくい作品なのだが、中編ではナチスのコフカ収容所での出来事、ヴェルナー少佐とフーデンベルグ所長の心理的葛藤等が描かれ、文学性、物語性が高い箇所で、幾分読みやすくなる。
本作品で扱っている哲学は、ハイデッガーの死の哲学だが、哲学書に較べると非常にわかりやすい内容だと思う。ハイデッガーに関しては、名前を聞いたことがある程度の哲学初心者の私でも、何となくわかったような気にはなれる。なお、本作品では、ハルバッハという名前でハイデッガーを模した人物を登場させており、作品中で作者がハイデッガー批判をしているところが注目される。
私はこのシリーズを読むのが、「バイバイ・エンジェル」、「サマー・アポカリプス」、「オイディプス症候群」に次いで4作品目だが、ミステリーと哲学の融合という面では、一番成功していると感じる。事件の背景や顛末は死の哲学と密接な関わりをもっているし、作中でニ十世紀の探偵小説や密室との関わりにも言及されている。
ミステリーとしての評価は、ちょっと微妙。この作品の真相には、意外な犯人、奇抜なトリック、どんでん返しなどはないし、そのようなものは期待してはいけない。あるのは、非常に複雑な様相を見せる事件の状況をうまく説明できる解釈。事件の細部に至るまで、あらゆる可能性を検討し、論理的な考察が進められていく。この論理的な考察の過程こそがこの作品の真骨頂なのだ。
30年の年月を隔てた、コフカ収容所とダッソー邸との2つの「三重密室」が本作品の売り。密室の設定は非常に凝ったものであり、魅力的な謎だ。一方、その真相だが、ダッソー邸の密室への出入り口は意外な盲点ではあるが、探偵役の矢吹駆が現場を見て気づいたものであり、現場を見ていない読者には予測しがたい。コフカ収容所の密室は、異常で倒錯した犯人の心理と思考からでき上がったものであり、同様に予測しがたい。きれいな解答ではないので、おそらく、ほとんどの読者がこの真相に完全には納得できないだろうと思う。
2つの密室のそれぞれにダミーの推理も示され、それもなかなか面白いのだが、物理的な仕掛けによる解決であり、文章だけでは多少わかりにくいので、やはり、微妙な印象を持つ読者が多いと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ登場人物表に「有栖川有栖」の名前があるのに、執筆者の中に有栖川先生の名前だけが無い…だと…(ざわ…)。
いやいや、各先生方が一章ずつ手がけてらっしゃるのに、何故か法月先生が二章手がけてるじゃないか!この辺にトリックの肝があったりするんでしょーよー!(興奮)と思ってたら。
中盤で「案の定ルイス・キャロルきたこれ!見立てや!有栖川先生がキーなんやー!」と鼻息荒くしてたら。
全 然 見 当 違 い だ っ た←本当に悲しかった…
後書きを読むと、有栖川先生、リレー連載途中で執筆を断られたとのことΣ('_')がーん
そりゃ途中まで登場するよね…執筆者として名前載らないよね…涙。
余計な勘繰り(メタ要素の検討とかね…泣)をしたことで、肝心の推理の方はお手上げ状態でした(・・)お粗末…
さて、アリスショックは置いといて、本編感想\(^o^)/いきまっす
お馴染みの作家から初めましての作家まで、彼らが生み出した名探偵ORワトソン役の競演が楽しめるリレー作品…という意欲溢れる本作。
ただ、冒頭で編集部が述べた「これまでのリレー小説の欠陥を少なくすることに努めたルール作りを設定する」ことで、「推理小説としての出来」は及第点をクリアしているかもしれませんが、それはおいても全体的にとっ散らかってる印象はどーしても拭えない。
複数の作家の競作なんだからそれは仕方ないよな~とは思うのですが、それにしては散らかり方が妙に小さくまとまってた気がする。各章で「謎の焦点をどこに見出すか」が二転三転したりする割には(そもそもそういうルール設定なんですが)、なーんか物足りない。味気ない。うん…この辺の考察は評論家の皆さんが既にやってるかもしれないし、多分お門違いな指摘かも分かりませんが、この豪華なメンツでこんな風に小さくまとまっちゃったのは、ちょっぴり残念な気がするのでした。
ルールで縛らなきゃ、もう少し弾けてたかもなあ。でも、そしたら推理小説としてイマイチな結果になってたのか…うむ…わからん…←
と、散々言っておきながらも、何だかんだ楽しめたのは、やっぱり大好きな作家達が大好きなキャラをお互いに動かしあうというリレー小説ならではの醍醐味を味わえたからですね\(^o^)/
「話し方違和感~!」とか、「そのキャラがそんな考え方するか~?」とか、キャっキャしながらニヤケが止まらない(笑)。これは楽しい!
特に、笠井先生の硬質な文体の後に来た岩崎先生のダルッダルな刈谷正雄の章ね(笑)。岩崎先生の作品は未読ですが、ちょっと気になっちゃったもん、刈谷正雄(笑)。
彼の話し方がとても「当世の」(笑)30になる男の話し方じゃなかったのがすごくツボでした(笑)よしんば本作が書かれた80年代後半~90年代の設定としても、ちょーっと無理がある気がする~(^^)法月青年とアリスを「変態」呼ばわりしてたのもグッときました(笑)。
アリスの扱いが序盤から軽い気がしたのは少し寂しかったのですが、今作で諸先生方に一貫してキャラ濃く描かれてたのは「女たらしセクハラ男」扱いされてた法月綸太郎ですね~(笑)。ちょっと、本物の法月先生こんな方なんじゃないの…と邪推してしまいました(笑)。
気になったのは、何名かの方が描写してらっしゃいましたが、「とても人を殺すようには見えない…こいつじゃないな」って、探偵に言わせてたこと。それ、探偵に一番言わせちゃいけないセリフじゃないすかね(笑)。
そして、何といっても執筆陣の最後の解説!
先生方のお人柄がしのばれて大変に面白く読ませて頂きました(^o^)b
後に丸投げの笠井先生。
アリスと法月青年が恋愛関係(笑)にあり、多情な(笑)有栖が不貞を働いたことに憤った末の犯罪ってオチでええんやないの~な、岩崎先生(笑)←酷い(笑)。
大分昔に書いたものだから自分の解答編どんなんか忘れちったてへぺろ☆な若竹先生。
笠井先生への惜しみないリスペクトが感じられる北村先生(普通)(誉めてる)。
有栖川先生が抜けて大変だったよ僕は…いや、もともと執筆遅れてたけどねゴニョゴニョ…な法月先生。
そして本作が日の目を見ることに寄与した最大の功労者であろう、巽先生(感動)。
うーん。堪能した。
星3つにしちゃろうと思ってたけど、このレビュー書いてて「何やかんや言ってすごく楽しめたんじゃねーか」とセルフ突っ込みしてしまったので、星4つです←
感想で疲れたので引用~(^o^)φ
雪の舞う大晦日。山荘村にナディア・モガール、刈谷正雄、“私”、若竹七海、法月綸太郎、有栖川有栖らが各人の思惑を胸にやってきた。やがて新年へと日付が変わるころ、幽霊山荘を探索していたメンバーは首なし死体を発見する!吹雪で周囲から隔絶された中、次々と起こる不気味な事件。彼らは真相を暴けるのか? -
Posted by ブクログ
黙示録見立て殺人、というだけで一気に読む気が倍増した私。ええええ、期待にたがわず、でした。前回に負けず劣らず重いけれど。密室、アリバイ、見立て、ともう要素要素がツボを突きっぱなし。しかしこういうとき、日本にキリスト教があまり馴染んでないのがちょっと不便かな。宗教観があまり理解できないので。「カタリ派」というのも、ああそういえば世界史に出てきたかな……くらいの認識しかないので、今ひとつ分かりにくかったかも。
ところでこれ、当初は「アポカリプス殺人事件」だったらしいけれど、それってすごく語呂悪くない? 絶対「サマー・アポカリプス」のほうがいいでしょ。編集部の意向だったらしいけど。