笠井潔のレビュー一覧
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矢吹駆シリーズ
謎の組織に銃撃された駆。ナディアと共に南仏を訪れた駆。アルヴィジョア十字軍の財宝、カタリア派の謎。原子力発電所の建設問題に揺れるロシフォール家。ナディアの友人ジゼールの母・ジュヌヴィエーヌ・ロシュフォールの死の真相。犯人として逮捕されたジャン・ノディエ。遺跡の研究の為に訪れたドイツ人ワルター・フェスト殺害事件。2回殺された死体。黙示録に見立てらた連続殺人。ジャン・ノディエの絞殺事件。ニコル・ロシュフォールの墜落死。ジゼールの婚約者・ジュリアン・リュミエールの推理。ジュリアンの姉・シモーヌに突き付けられた真実。ニコライ・イリイチの影。 -
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カケル&ナディアシリーズの第4作目。
この分厚さ(文庫本で1160ページ)は、30年前の事件を間に挟んでいたためだったのですね。
カケルやナディアたちが存在している「現在」で起きた密室殺人と、30年前、第二次世界大戦中にコフカ収容所で起きた密室殺人。
いままでのシリーズ作品同様、事件を解決してゆく推理小説というよりも、それを取り巻く人たちの人生、密室の謎を解いていく際に吐露される、それぞれの生死の捕らえ方、哲学論がこの作品の中心にあるように思います。
間に挟まれている30年前の収容所での出来事。
戦時中の、しかもユダヤ人虐殺に関する描写であるため、読んでいてツライ部分も多く、一体どこで「現 -
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ラストの20ページこそ読む価値がある、といっても謎解きの面白さではなく、ユダヤ人が、正確には修正シオニストが『アウシュヴィッツ』を金看板にしてパレスチナ人の土地を強奪、掠奪、虐殺して来た事実。そこには『唯一の被爆国』を掲げて、本来請求すべき相手を避けて自らが犯して来た過ちを免罪するための行動を取り続けているこの国もある意味の「共犯者」では無いのか、という疑問が浮かんで消えない。このシリーズの妙味は探偵役の矢吹駆(作家である笠井潔に限りなくニアリーイコールであるが)とさまざまな思想家、哲学者、活動家との対話、議論だが、今回はハンナ・アーレント。ミステリというより今回は、ちょっとした冒険小説の雰囲
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ネタバレパリで起きたルーマニアの亡命将校射殺事件。現場には「DRAC」という血文字が。しかし、事件はモガール警視の手を離れ憲兵対へ。その後女性が血を抜かれて殺される猟奇殺人が続く。矢吹駆はこの〈吸血鬼〉事件の犯人が、遺体に動物の徴を残している事に着目。
ナディアはギリシアでの事件後、神経を病み友人が務める心療内科へ。そこで出会った元体操選手の亡命ルーマニア人少女タチアナ。
とりあえず分厚くて読むのが疲れる。内容は面白いし、読みやすいけど腕が痛くなる…。前に読んだことがあるのに、完全に内容は忘れている…。ナディアが神経を病んだとか色々あったのに…。 -
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笠井潔といえば、巻末の解説で小難しいことを語るおじさんというイメージがあったが、自身の小説でも小難しいことを語るおじさんというのが正解だった。矢吹駆は現象学や直観云々やたら本質めいたことを言ってたけど、解決編を読むと手がかりから論理を積み上げるフツーの名探偵と何が違ったの?とやや疑問。
それでも首切りの動機と論理は見事。物語の中核にあるのはフーダニットならぬワットダニット。真犯人が明かされたとしても真の真犯人は別の何かなのだ。それは「生物的な殺人」の具体性とは対照的な何か。人民と国家への憎悪が引き金となって人間の心に憑依する倒錯した何か。矢吹駆はそれに理解を示しつつ、それの卑小さを断罪した斬新 -
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笠井潔の代表作の一つであり、現象学的思索に満ちた長大な哲学ミステリー『オイディプス症候群』は、2002年に刊行された。
全865ページという厚さは、その重厚さと深遠さの象徴であり、簡単に読書は難しい。
本書を読む者には、相応の覚悟と根気が求められる。本書は哲学・思想の論議と、それを基にしたミステリー的展開とを両立させる、難解でありながらも読む挑戦を強いられる。本書は、単なる推理小説にとどまらず、フッサール現象学やイギリス経験論、さらには東洋哲学や宗教思想との融合を追究した、思想的な作品である。
本書の中心的テーマの一つは、「現象学的本質直観」の概念である。この用語は、フッサールの哲学に