笠井潔のレビュー一覧

  • 煉獄の時
    重厚長大という言葉がぴったりの本。
    全部理解するのは困難(というか、話の筋をおさえるのも大変)だけど、細かい伏線をしっかり回収していてある種の爽快さはある。
    本題からは少しずれるが、主人公は今で言うところのアセクシュアル、アロマンティックな人。このシリーズが最初に出たのは1979年とのことなので、先...続きを読む
  • 煉獄の時
    矢吹駆シリーズの前2作を読んだ者として、読み終わってひとつやり遂げた感があります。

    日本の奇妙な敗戦とフランスの奇妙な戦勝についての考察が強く印象に残りました。
  • バイバイ、エンジェル
    矢吹駆シリーズ第一弾。すんごい小説だ。現象学的推理を駆使して事件を解決する探偵役の矢吹駆、と書くといかにもなミステリに聞こえるがとんでもない。この作品をただのミステリに括るのは難しいだろう。しかし、この矢吹駆という探偵役には現代の想像上の名探偵たちに通ずる原初のなにかがあるのは確か。それでいて事件に...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    このシリーズは知人の紹介から読み始めたのだが、名探偵の推理法が現象学的本質直観に基づくという哲学に疎い人間にはあまりにも意味不明なものだったので、てっきり字面から事件のあらましを聞いただけで理屈もなく犯人を当てるトンデモな話かと思い込んでいた。

    実際に読んでみると駆のキャラクター造形のみならず所々...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    昔読んだ再読

    矢吹駆かっけー
    と昔思ってたけど、今読むとそこまでではw
    昔は真似したりした
    また、真似してみようかと読んだけど
    そこまで今は感じられなかった

    作品的には、殺人事件がおきて、それを調査するっという普通の感じなんだけど、
    主人公は事件の真相というよりも、
    観念?信念?的な部分で敵と戦...続きを読む
  • 薔薇の女
    バラバラ屍体のパーツを組み合わせて造られる究極の人体…

    島田荘司「占星術殺人事件」の2年後に発表された今作は、驚天動地のトリック一発から逆算して書かれたような「占星術」とはまた違った、丁寧に組み上げられた論理仕掛けの摩天楼の屋上に着陸する。
  • リレーミステリ 吹雪の山荘
    「肥大した観念の化け物だった。」

    このトーン懐かしいなぁ〜。早く笠井潔の矢吹駆シリーズが読みたい!
  • 哲学者の密室
    ようやく、読み終えたという感じだ。文庫本で総ページ数が1,100ページを超え、また、読みやすい内容とは言えないので、読み始めるのにはちょっとした決意が必要な作品。
    これだけの長編になると、このシリーズのファンしか、手を出さないだろう。作者はこのシリーズでは、孤高の姿勢を貫き、読者側に一切歩み寄ろうと...続きを読む
  • サマー・アポカリプス
    前作から続く予備知識があれば、また、原発に対する思想論争に造詣が深ければ、もっと楽しめたかもしれないです。理由あって以前から読みたかった作家なんですが、ヴァンパイアのイメージが強くて、ちょっと手が出せず… 本作を読んで、少なくとも“そういう”系の作家では決してない、ってことは分かりました。でも掘り下...続きを読む
  • 青銅の悲劇(上) 瀕死の王
    大学時代に活動家だった作家・宗像。活動家時代の仲間だった北澤風視の妹・雨香に招待されて鷹見澤家にやって来た宗像。鷹見澤家の家庭教師として滞在するナディア・モガール。地域の実力者である鷹見澤信輔と息子・浩輔。浩輔と対立し引きこもる洋輔。浩輔の娘・緑に頼まれ鷹見澤家に起きる不可解な事件を調査する宗像と雨...続きを読む
  • 薔薇の女
    かなりひどい評判だったがなかなか面白かった。わりと分かりやすい内容だったということもあるが、誰が、なぜやったのかをきっちりと説明されていて、個人的にはかなりすっきりした。まぁ登場人物紹介に出ていた人物が、はじめからほとんど死んでいて、最後にはさらに減ったことには笑ったが。

    ルノワールが、経済と性犯...続きを読む
  • サマー・アポカリプス
    悪く言ってしまえば、賢いのかお馬鹿なのか判別がつかない小説だった。どこからどこまでが現実で、どこからがフィクションなのだろうか。

    たまに登場する中二病的な台詞や言動や組織には苦笑いしてしまう。あくまでも日本が舞台ではないのが救い。

    結末も、一番まともに動機のある人物が犯人で、一番きな臭いい人物が...続きを読む
  • リレーミステリ 吹雪の山荘
    登場人物表に「有栖川有栖」の名前があるのに、執筆者の中に有栖川先生の名前だけが無い…だと…(ざわ…)。
    いやいや、各先生方が一章ずつ手がけてらっしゃるのに、何故か法月先生が二章手がけてるじゃないか!この辺にトリックの肝があったりするんでしょーよー!(興奮)と思ってたら。
    中盤で「案の定ルイス・キャロ...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    『森博嗣のミステリィ工作室』での紹介から。
    探偵さんの言ってることが、哲学的すぎて全くわからない。
    ラストの犯人さんとの会話なんて一つも理解できない。
    それでも面白いと思った。
  • バイバイ、エンジェル
    哲学者で探偵、というのは珍しいんじゃないかしら、なんて思いながら読みました。
    これを読んだ当時、私はまだ高校生で、イギリスの寄宿学校で過ごしていて、隣の国なのにまだ足を踏み入れたことのないフランスという国が舞台になっているのにも興味を覚えたし、それでいてまったく想像できなくて不思議な感じでした。
    ...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    硬い文体と、キーワードである哲学部分が邪魔して読み難いですが、過去の確執や首のない死体、失踪した人物からの手紙など、本格の魅力がたっぷりです。
    死体の首を切った理由は斬新ですし、犯人特定のロジックや、電話の記録帳が盗まれた理由もよく考えられていて秀逸な推理小説だと思います。
  • 新版 サイキック戦争2 虐殺の森
     前作ではベトナム戦争を題材にしていたが、近作ではカンボジア大虐殺を題材にしている。解説によると過激な帰農主義政策による弾圧が正体だという。ホロコーストといいシベリアの強制収容所といい、軍主導の弾圧はえぐ過ぎる。無尽蔵の暴力によるか弱き市民への攻撃は非人道の極みだ。上層部にはサイコパスが巣食っており...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    矢吹駆シリーズ一作目。
    1975年頃のパリが舞台(戦争が終わって30年という記述より)。カタカナ名だらけで一見読みにくそうではあるけれど、理路整然とした文章はむしろ頭に入りやすく、語り手ナディアの内心の感情的な描写との対比も面白かった。
    終盤の革命論も興味深い。テロと革命の違い、またレジスタンスとの...続きを読む
  • バイバイ、エンジェル
    色々なところで名前を聞いていてようやっと読んだ。舞台が70年代のフランスってことで時代背景を詳しく知らない自分にはまずそこが読みづらかった。読んでいて風景が想像できないのは結構辛い。話は本格ミステリと哲学的な話の二つが柱になっている。ミステリ要素はまさにこれがミステリというようなトリック。首切り屍体...続きを読む
  • 薔薇の女
    異常性欲と社会的理性が交錯するとき
    両性具有者を模した人肉人形が企画制作される
    ビューティフルドリーマーがその子宮より産み落とした悪夢である