笠井潔のレビュー一覧

  • 熾天使の夏

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     時代は全学共闘会議(全共闘)の終結から五年後。世界同時革命を目指し、リンチ事件の首謀者として逮捕され、刑期を終えて出所し、ひっそりと暮らしていた男に、かつての恋人から声がかかる。求めに応じ、かつての同志と再会した男は、同志から新たな革命運動への参加を求められ、男は、同志の革命思想を粉砕するために、あえて計画に乗ることにする。

     これは、矢吹駆がナディア・モガールと出会う前、「革命」という高みを目指し、「革命」に目が眩み身を焼かれ、地に堕ちた熾天使(イーカロス)の、再生の物語――。

     はっきり言って、これは推理小説ではなくハードボイルド小説、厳密には「革命」という名の観念に憑かれたテロリス

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    2012年11月13日
  • 薔薇の女

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     ロシュフォール家殺人事件から数ヶ月を経た晩秋。奇怪な連続猟奇殺人事件が起きる。犯人は、①火曜日の深更に、②独り暮らしの娘を襲い、③絹紐で絞殺した後、④屍体の一部を切断のうえ持ち去る。現場に⑤赤い薔薇を撒き、⑥<アンドロギュヌス>と血の署名を残す……。被害者間の共通点を見出せず苦悩する捜査陣を尻目に、現象学を以って易々とミッシングリンクを拾い上げる日本人、矢吹駆。捜査が進むうち、事件は十数年前に起きた連続猟奇殺人事件とも関係していることも判明し……。

     現象学を以って、「性犯罪には、二種類の特徴が挙げられる。性的な過剰エネルギーの爆発的な解放としてのものと、希少性の観念的充填を根拠とするもの

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    2012年11月13日
  • サマー・アポカリプス

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     ①事件に関しては、ただ自分の関心に沿って考察し判断する。場合によっては捜査関係者を欺くことも厭わない。

     ②犯罪を現象学的に考察するために、ひとつの犯罪が現象としてどのようにして生成していくのかを、始めから終わりまではっきりと見届ける必要がある。そのため、事件を未然に防ぐことになる干渉行為は極力行わない。

     ③事件が終わるまでは、①②を理由に、社会的な責任や人間的な反応といったものは極力表に出さない。

     これは、ラルース家事件の時に、矢吹がナディアに語った、自身が事件に関わるときに決めたルールの要約である。今回も矢吹は、そのルールに従い、最初の事件が起きた時、成り行きを喝破していたにも

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    2012年11月13日
  • バイバイ、エンジェル

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    ネタバレ

     矢吹が作中で語られるとおり、様々な事件は大きく2つに分けられる。「自らの欲を満たすための事件」と「憑かれた観念を正当化するための事件」だ。そして事件の真相は後者である。

     思想、政治、宗教。あらゆる「観念による犯罪」は、古今東西、いつでも、どこでも、更に虚実も差別することなく起きている。しかし、「観念」には罪もあれば功もある。観念による「犯罪」をこの世から一掃することは、その観念による「芸術」も一掃することになり、ゆえに、「人間」である限りは観念による犯罪は無くならないと矢吹は言っている。

     犯罪者に憑いた観念を、矢吹は「悪魔」と称した。ミステリ好きを公言する者なら、「悪魔」を「憑き物」

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    2012年11月13日
  • 梟の巨なる黄昏

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    異端の作家、神代豊比古が遺した空前の大作『梟の巨なる黄昏』は、手にした者を破滅させる呪われた書物でもあった。不遇の作家・布施朋之とその妻、流行作家の宇野明彦、大手出版社の次期社長、美貌の阿久津理恵。一冊の魔書をめぐって四人の男女の欲望が交錯する。戦慄の異色長編サイコ・サスペンス。

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    2012年07月26日
  • 三匹の猿 私立探偵飛鳥井の事件簿

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    父親探しを以来して失踪した少女。
    探偵飛鳥井、第1弾。

    ようやく1作目を読めました!
    硬派だなあ。いろいろと。

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    2012年07月27日
  • 新版 サイキック戦争1 紅蓮の海

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    伝記ものといえばそうなのだけど、個人的には平井和正のウルフガイ・シリーズ、それもアダルトの方を思い出した。一種の無力感のようなものが似ているのである。ただし、色合いがずいぶん違うけれど。

    タイトルのわりには、超能力のようなものはあまり前面に出てこない。どちらかといえば、無力な主人公の彷徨を追いかけているような雰囲気だ。逆襲に転じるのがあまりにも遅すぎて、おどろおどろしくも神がかった主人公だが、やはり無力感は否めない。

    もちろん、作者はそんなことは承知の上でわざと書いているに違いなく、よく終わって感じるのは、超能力があろうとなかろうと、小さな個人を押しのけてうごめき回る、人類の悪意の総和の大

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    2012年04月27日
  • 哲学者の密室

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    まさに「哲学者の密室」としか呼びようのない物語。三重の密室(特にコフカのほう)という謎は非常に魅力的。哲学談義のおかげで読み進めるのはかなり大変だったけれど、振りかえってみればあらゆる意味で重厚な物語だったことは否定の余地がない。

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    2012年03月06日
  • サマー・アポカリプス

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    殺人事件(本筋)よりも宗教とか思想とかが面白い。
    もちろん、全てが絡み合っているので、全体を通して面白いと言うことなのですが・・・
    カケルとシモーヌが会話するシーンは良いですね。
    本当は星は4つでも良いかなぁ・・・と思ったのですが
    前作から引き続き、どうしてもナディアが好きになれないのです。
    あまりにも自信家過ぎるところとか。
    まぁ、個人的な好みですw

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    2011年11月27日
  • 薔薇の女

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    過去二作は難しいながらも、そこが面白いと感じていました。
    本作でも、思想に関することが盛り込まれていますが
    どうも事件と思想のやり取りが噛み合わなくて…
    事件自体はかなり平易で、推理の苦手な私にもほぼわかりました。
    この人の作品は、謎解きと言うより、思想を伝えたい?ようなので
    大きな問題では無いのかもしれませんが…
    ちょっと拍子抜けしました。

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    2011年11月27日
  • 哲学者の密室

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    開口部を完璧に閉ざされたダッソー家で、厳重に施錠され、監視下にあった部屋で滞在客の死体が発見される。現場に遺されていたナチス親衛隊の短剣と死体の謎を追ううちに三十年前の三重密室殺人事件が浮かび上がる。現象学的本質直感によって密室ばかりか、その背後の「死の哲学」の謎をも解き明かしていく矢吹駆。二十世紀最高のミステリ。

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    2011年06月08日
  • サマー・アポカリプス

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    神秘的な名探偵 矢吹カケルの第二弾。中世カタリ派の聖地でおこる、南仏の名門 ロシュフォール家周辺での連続殺人。アルビジョア十字軍等史実を交え、ナチスドイツも登場し、歴史と現在を結ぶものは? 黙示録の四騎士になぞらえた連続殺人。疲れるけど面白い。引き込まれる。

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    2017年02月18日
  • 熾天使の夏

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    逆説を逆説で補完したらイチ、という考え方もありますよ
    衝動を理念で補完したならそれは全能感というやつではないだろうか
    学生運動家のなかには、全能感に酔いしれて無茶をした人もあったかもしれない

    そういったものに対する批判者として、虚無の観念が浮かび上がってくるのだが
    実際的な暴力・権力に対して、観念は太刀打ちできない
    無力な批判者の「傲慢さ」に、主人公は怒る
    そして・・・


    まったく救いのない小説です
    しかもこれは、長い戦いの始まりにすぎない

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    2010年11月21日
  • 三匹の猿 私立探偵飛鳥井の事件簿

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    私立探偵飛鳥井シリーズの第一作。

    ハードボイルド小説金字塔「私立探偵沢崎シリーズ」の想像を絶する遅筆さに大分しんなりしたわたくしに嫁が「これもハードボイルド小説としては有名で結構おもしろいよ」と薦めてくれた本。

    ん~・・・悪くはないんです。思考とかがハードボイルド思考ではあるんです。どういうものかって言われると答えに窮しますが。

    ただ、ハードボイルド探偵に必要な「シニカルな台詞」がないのが残念。そこさえあれば・・・いや僕が個人的に「必要だ!」って一人で言ってるだけですけれどもw

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    2010年12月03日
  • 三匹の猿 私立探偵飛鳥井の事件簿

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    女子高生コンクリ事件が必要以上に引き合いに出されている。よっぽど衝撃を受けたんだろうな作者。ハードボイルドなんだけど事件の結末は若干2時間ドラマ風味。といったら言い過ぎか。無理があるといえばよいのか。

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    2010年06月22日
  • 薔薇の女

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    ■天使的なるものの耐えられない重さ

    火曜日の深更、独り暮らしの娘を絞殺し屍体の一部を持ち去る。現場には赤い薔薇と血の署名―映画女優を夢見るシルヴィーを皮切りに、連続切断魔の蛮行がパリ市街を席捲する。酷似した犯行状況にひきかえ、被害者間に接点を見出しかねて行き詰まる捜査当局……。事件のキーワードを提示する矢吹駆の現象学的推理が冴える、シリーズ第3弾!

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    2012年11月07日
  • サマー・アポカリプス

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    ■2度度殺された屍体、見立て、古城の密室、秘宝伝説…

    灼熱の太陽に喘ぐパリがようやく黄昏れた頃、不意にカケルを見舞った兇弾―その銃声に封印を解かれたかの如くヨハネ黙示録の四騎士が彷徨い始める。聖書の言葉どおりに見立てられた屍がひとつ、またひとつと、中世カタリ派の聖地に築かれていく。謎めく名探偵矢吹駆の言動に隠された意図は――。

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    2012年11月07日
  • サマー・アポカリプス

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    フランスの実存主義系女性哲学者シモーヌ・ヴェイユにトンデモ役が振られていて、ミステリーとはいえ、驚きました!
    ヴェイユは美形だから、人気があるようですが…。
    ムード、事件の追跡の仕方はダ・ヴィンチ・コードなどの系統ですが、歴史の謎解きを絡める主要な線では不成功で、ただの人殺しに終わっていました。
    ここから、ヴェイユ、異端カタリ派、グノーシス、原始キリスト教などに入れば、一興かも。

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    2009年11月23日
  • サマー・アポカリプス

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    4位

    1975年〜1994年までの作品の中から選んだ国内本格ミステリのランキングです。「探偵小説研究会」のメンバーによる選で、笠井潔、法月綸太郎も参加しています。1〜100という順位がはっきりついているのが特徴で、表紙の写真、あらすじ、解説など詳しく紹介されています。東京創元社から出版されておりますので、くわしくはそちらをご覧ください。

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    2009年10月04日
  • ヴァンパイヤー戦争1 吸血神ヴァーオゥの復活

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    表紙買い(笑)

    戦争と銘あって銃撃アクションシーンが多いし、またセクシュアルでもある。
    また、吸血鬼関連の話もいろいろと出てきて勉強になる(かも?)

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    2009年10月04日