笠井潔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ①事件に関しては、ただ自分の関心に沿って考察し判断する。場合によっては捜査関係者を欺くことも厭わない。
②犯罪を現象学的に考察するために、ひとつの犯罪が現象としてどのようにして生成していくのかを、始めから終わりまではっきりと見届ける必要がある。そのため、事件を未然に防ぐことになる干渉行為は極力行わない。
③事件が終わるまでは、①②を理由に、社会的な責任や人間的な反応といったものは極力表に出さない。
これは、ラルース家事件の時に、矢吹がナディアに語った、自身が事件に関わるときに決めたルールの要約である。今回も矢吹は、そのルールに従い、最初の事件が起きた時、成り行きを喝破していたにも関わらず沈黙していた。
自身の目的のために。
だが彼は、事件の裏で起きていた思想的対決において、相手に対し優勢になるに従って、彼の苦悩は増していくようだった、とナディアは見た。もしそれが真実ならば、矢吹の「真の」真意とはなんだったのか。
私は、彼は対決によって、相手が自分を負かすことによって、第三の離脱、つまりは「真の解脱」を試み、そしてそれは失敗に終わったとみるのだが、矢吹は沈黙するのみである。 -
Posted by ブクログ
伝記ものといえばそうなのだけど、個人的には平井和正のウルフガイ・シリーズ、それもアダルトの方を思い出した。一種の無力感のようなものが似ているのである。ただし、色合いがずいぶん違うけれど。
タイトルのわりには、超能力のようなものはあまり前面に出てこない。どちらかといえば、無力な主人公の彷徨を追いかけているような雰囲気だ。逆襲に転じるのがあまりにも遅すぎて、おどろおどろしくも神がかった主人公だが、やはり無力感は否めない。
もちろん、作者はそんなことは承知の上でわざと書いているに違いなく、よく終わって感じるのは、超能力があろうとなかろうと、小さな個人を押しのけてうごめき回る、人類の悪意の総和の大きさである。
そのあたりのむなしさが、アダルト・ウルフガイの気分に似ているのかもしれない。
しかし、女子共に堂関を働く小説は、あまり後味がよいものではない。