円居挽のレビュー一覧
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ミステリの骨格に少年まんがの肉付けをしたような作品。それもバトルまんがと呼ばれるもののノリがあります。
推理や論理は相手と対決するための武器となるのです。相手の裏の裏をかき、それすらかわされながらも最後に全てをひっくり返す。これも最近のバトルまんがの定石です。理屈に理屈を重ね最後に理屈を通したものが勝つ。そんなバトルミステリなのです。
探偵を養成する高校の新入生である成は、生徒会長との学園裁判でその実力を示す。その成が持つ秘密が明らかにされ、大切なものを奪った強敵との対決へと物語は流れます。
探偵養成学校、名探偵の頂点に立つ九哭将(ナインテイラーズ)、学園裁判、連続密室爆破事件。これもまた少年まんがの王道のような展開です。
これは面白いです。実に燃える、そして映える展開です。ハッタリとケレンミだけで押し通すやり方も嫌いじゃないです。
しかし1冊にまとめるためにそれぞれのバランスがどこか歪なものとなり、主人公成の魅力が初めの対決で全て出されてしまっているように見えたのです。
第1章でかっこよく登場したのに、2章3章ではその未熟さがクローズアップされ、今後の成長の芽を見せられるだけ。どうにも不完全燃焼のまま終わるのです。
しかし長いシリーズ物の第1巻だと思えば、この展開も有りなのでしょう。事実続巻も刊行されています。
ヒロインとの関係性や魅力もまだほとんど成り立っておらず、今後の展開に期待というところでしょうか。 -
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ネタバレ〇 総合評価 ★★★★☆
探偵養成学校,鷹司高校を舞台にした短編ミステリ。主人公は前作で,早夜川家事件を経て,特究生として鷹司学園に入学している剣峰成という少年
2作目となるこの作品では,プロローグからちょっとした叙述トリックが仕掛けられている。プロローグでは,学園にいる謎の犯罪者の告白がある。この告白をしている人物が剣峰達の担任である台場我聞(九哭将の1人,金田一剛助の好敵手であるゼノグラシアという犯罪者)だと思わなかった。円居挽らしい外連味であり、かなり驚かされた。
3つの短編はいずれもクオリティが高い。金田一剛助が,主人公剣峰成やヒロイン太刀杜からんよりインパクトがある活躍をしているのはご愛敬。全体を通した仕掛けに驚くことができる上,各短編のクオリティも高い。完成度が高い短編集だと思う。
〇 試験と名探偵
シャーロック・ホームズの活躍を描いた正典に関する試験で,学年1位を取った時巻暦がカンニングをしていたかどうか,剣峰成が捜査をするという話
後になって分かるが,この正典試験の不正こそが,黒幕ゼノグラシアである台場我聞が仕掛けた「探偵殺し」の一環だった。意図して時巻に1位を取らせ,剣峰に最下位を取らせる。これらは全て,未来の探偵達に見えない瑕を与えるという計画だった。
とはいえ,そういった裏の事情は伏せられ,時牧がカンニングをしたのかどうか,九十九蘭子から,剣峰が捜査を依頼される。
剣峰は,時巻を再試験があるという嘘でハメてその反応を見る。再試験のためにカンニングペーパーを作ろうとした時巻の反応を見て,カンニングはなかったと判断する。
剣峰が正典部の部室の鍵を手に入れるためのトリック,正典試験の結果など数々の伏線を仕込んだ上で,短編としてもスッキリと仕上げている。真相にミステリ的な要素はないが,及第点のデキ
〇 古典と名探偵
北広之がライバルである馬頭凱を殺害しようとしている…と思わせる叙述トリッ。実際は北は自殺をし,馬頭に北殺害の容疑を負わせようとする話
この話は,金田一耕助がモデルである九哭将の1人,金田一剛助が登場し,完全に主人公を喰った活躍をする。
金田一は,北の反応で,北の計画に気付き,北に計画を諦めさせるような工作をする。
犯罪が起こる前に気付いて犯罪を抑止する。金田一の活躍が描かれている話。叙述トリックも上手く使われている。読みやすく,面白い。
〇 学園裁判と探偵殺し
時巻のカンニング疑惑について学園裁判が開かれる。九哭将が招待される将覧試合となる学園裁判。検事役には,九哭将の1人,千草泰宗の養子である千草浅葱。芥山忌一郎(かつて探偵として活躍していたが追放された)の孫,芥山残が証人となる。弁護人役は太刀杜からん。全体の半分を占める短編というよりは中編。千草浅葱と芥山残の子ども時代を描いてキャラクター付けをした上で,時牧のカンニング容疑を裁く。根っこはルヴォワールシリーズの双龍会みたいなもの。裁判というよりは論理合戦
時巻は剣峰が好きだったので,剣峰に容疑が掛からないように沈黙しているなど,いろいろな事情が絡む。
いったんは芥山残が真犯人であるとして将覧試合が終わろうとするが,これこそが台場の罠。台場は冤罪,冤罪を晴らせなかった弁護人,冤罪に加担した検事,そしてひいてはそれらを見抜けなかった九哭将まで潰そうとしていた。
まさにどんでん返し。台場が黒幕とは想像できず。伏線もきっちりと回収されている。面白い。 -
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ネタバレルヴォワールシリーズを読んでから,すっかり気に入ってしまった円居挽の作品。この作品は,鷹司高校という日本に二つしかない探偵養成学校が舞台。エリートが集まる鷹司学園に「特究生」として入学した剣峰成が主人公
世界観は,キングレオシリーズと同じ。キングレオこと天親獅子丸が所属する探偵公社や十格官が存在する世界。双龍会が存在するルヴォワールシリーズとは異なる世界設定である。
剣峰成は,早夜川家殺人事件で父親を殺した妹を庇って犯人になろうとして失敗。九哭将の1人である探偵,鬼貫重明に見抜かれてしまう。そもそも,剣峰成は,自分が「早夜川家の子どもではない。」という記憶を持っている謎めいた存在。厨二病っぽい剣峰成という少年の鷹司高校での活躍が描かれる。
全体の構成はプロローグとエピローグの間に,誰が特究生かを暴く星覧試合というイベントについて描かれる「学園裁判と名探偵」,早夜川家殺人事件の顛末を描き,剣峰成と鬼貫の出会い,剣峰が鷹司高校に入る経緯について描かれた「暗号と名探偵」,ザマボマーこと降矢木残月という爆弾魔との対決を描いた「密室と名探偵」の3編からなる。いずれも個々の短編としてのミステリとしての完成度はキングレオシリーズより上。剣峰成や太刀杜からんといった登場人物の魅力は天親獅子丸には及ばないので一長一短というところか。
「暗号と名探偵」は叙述トリックも仕込まれており,全体的に見て,円居挽らしい短編集だといえる。十分に楽しめるデキであり,円居挽が好きな作家という加点もあるので★4としたい。
〇 学園裁判と名探偵
「誰が特究生として鷹司学園に入学したのか。」を推理する「星覧試合」というイベントが開催される。星覧試合は、真実かどうかは関係なく,論理で「特究生が誰か。」を信じさせれば勝ちという、学園版双龍会のようなイベント。このイベントで生徒会長である大神五条が登場する。大神五条の得意技はビッグデータとガム・シャッフル。剣峰と太刀杜は,コンビで五条に挑み,五条こそが特究生で「証人保護プログラム」を受けてると指摘。見事,星覧試合で勝利する。
星覧試合のゲームとしてのルールのあいまいさは双龍会に近く、面白ければ何でもアリというイメージ。五条と剣峰が両方とも特究生であることが分かり,剣峰は早夜川家事件の容疑者であることが分かる。
意外性に欠けるが,星覧試合だけでなく図書室における生徒年鑑をめぐるいざこざや,剣峰と太刀杜対五条のポーカーの勝負まであって読み応えは十分。★4で。
〇 暗号と名探偵
暗号は「hdkb1815」というもの。この短編は、まるで「剣峰成が父である早夜川元を殺害し,その隠蔽工作をしている。」かのように描かれるが,これらが全て妹である鳴を庇うための工作であったことが分かる。
その工作を暴いたのは探偵である鬼貫重明。鬼貫はシャワーを浴びた人物と現場で隠蔽工作をした人物が別人であるという推理から、剣峰成が妹である鳴を庇っていると推理し、追い詰める。しかし,鳴がのった飛行機がザマボマーの手で爆破されてしまう。
円居挽らしい叙述トリックもある。剣峰成の生い立ちの謎が伏線として残る。この作品だけで見ても,十分に読ませるデキ。★4で。
〇 密室と名探偵
鬼貫,剣峰,太刀杜は町に買い物に行く。鬼貫だけ別行動をしているときに,ザマボマーこと降矢木残月に出会う。降矢木残月は太刀杜を眠らせ,剣峰を誘う。剣峰は古矢木と対峙している中で,降矢木が前向性健忘であることを知る。鬼貫は降矢木との対決の中で,4年前の連続密室爆破事件での真相にも気付く。爆破は2度あった。1度目の爆破で捜査員を行動不能にし,逃亡。2度目の爆破を行っていた。鬼貫は降矢木を逮捕。降矢木は剣峰に「ただ,百時間後,お前から貰った安らぎを失うことだけがひたすら怖いんだ。」という言葉を残す。
これもサスペンス的な雰囲気が面白い。密室爆破事件の降矢木の逃亡のトリックもなかなか。★4で。 -
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ネタバレキングレオという通称を持つ日本探偵公社所属の名探偵,天親獅子丸の活躍を描く短編集の第2段
ルヴォワールシリーズのパラレルワールドのような世界観であり,ルヴォワールシリーズとシンクロする登場人物が出てくる。城坂論語はモリアーティの位置で,犯罪コンサルタント。天親獅子丸のライバルという別格の存在位置
公社の理事には龍樹山風の名前がある。ルヴォワールシリーズでは既に死んでいたので名前しか出ていないが,キングレオシリーズではいい味を出している。そのほか,鳥辺野有,天親雹平,税所密香,天親寅彦といった名前が登場。いずれもルヴォワールシリーズとシンクロさせる人物として描かれている。
個々の短編のデキとしては,シャーロック・ホームズものパロディとしての完成度は低め。ミステリとしての完成度もそれほどでもなく,キングレオや天津大河と各回のゲスト的な存在との絡みを楽しむキャラクター小説と化している。それでもそれなりに面白く感じたのは文体が肌に合うというところと,この世界観が嫌いではないからだろう。おまけの★4で。
〇 大宮の醜聞
ボヘミアの醜聞のパロディ。税所密香がアイリーナ・アドラー的な存在として描かれている。とはいえ,税所は大河の元恋人で世界中のセレブを誘惑した存在として描かれていて,シャーロック・ホームズにおけるアイリーナ・アドラーのパロディ的な存在とはかなり異なっている。また,税所密香が,城坂論語にとってのルージュの存在位置であるプリミエールとなっている。こういう部分でルヴォワールシリーズとシンクロさせてくる。
税所密香は,ある高名な人物から寵愛を受けたが、その寵愛を袖にする。密香が、その高名な人物から、何か「外部に流出させてはいけないもの」を貰っていたのだとすれば、取り返す必要がある。天親雹平(このシリーズでは獅子丸の弟という設定)から依頼を受け,獅子丸と大河は雹平の捜査に効力する。
雹平は,ルヴォワールシリーズとは趣が大分異なり,宮内庁に勤める公務員という設定
密香は獅子丸と大河の前に現れ、勝手な振舞いをし,獅子丸や大河の子どもを作りたいとまで言い出す始末。その姿を見て大河は,密香がどこかが悪く,獅子丸と大河の心を占拠し続けることを目的として行動しているのではないかと見抜く。獅子丸は主治医の我鷹尊の連絡先を密香に教える。大河は密香をプリミエールという悪役でキングレオ譚に登場させるという。
ミステリ的な要素はほぼなし。ただし,ルヴォワールシリーズにおける城坂論語にとってのルージュに当たる存在としてプリミエール=税所密香が登場する。税所密香は,かなりインパクトのある存在として描かれる。読後感はそれほど悪くない。キャラクター小説として楽しむべき作品。★3で。
〇 双鴉橋
鳥野辺有が挫折した小説家という設定で登場し、公社のスクリプトライターの採用試験に臨む。採用試験のテーマは双鴉橋で起こった自殺事件の動機。ドローンを利用した偽装自殺の真相のプロットを説明すること
試験に臨むのは鳥野辺有のほか3人。1人目は子門暁。デビュー10年目の人気ミステリ作家。2人目は山田月之丞。プロのゴーストライターでブラックジャックのような存在らしい。3人目は神野美心。HIMIKO★神成という名前でキングレオの二次創作をしている。
試験では,まず,子門が双鴉橋を倒叙物として書くというアイデアを出し8点を得る。神野は大河が容疑者となる事件として仕上げるというアイデアで8点。山田はホワイダニットとして仕上げる。夫の心に残ろうと思って死んだというプロットで9点。
これに対し有はプロットを出さずに、獅子丸がどういう人物かを説明して9.5点を取る。
しかし,大河は偽装殺人の立会人としてキングレオを利用しようとしたなら,犯人に死なれた時点で瑕になるとして,その部分を改変するという。これが10点。結果として、全員を落としてしまう。
残念会で有は獅子丸に真相と思う推理を伝える。その推理は,残る夫のために,「嫉妬にかられた醜い女だった。」と思わせることで,自分のことを忘れるだろうと考えて自殺をしたという推理。この経緯を経て,有は獅子丸の助手になった。
双鴉橋の真相についてスクリプトライターを選ぶ試験という形で推理合戦をするというプロットは面白い。真相はそこそこ。とはいえ,ミステリとしてそれなりの完成度。オチも予想を上回る。大河の性格がだんだんと暴走していくのが少し気になる。おまけの★4で。
〇 六つの土下座蔵
鳥野辺有がキングレオの助手として挑む事件。京都の町に残される謎の土下座像(高山彦九郎像)。有はシャーロックホームズ本編の「6つのナポレオン像」を超えるために、キングレオが捜査をすべきだと焚き付け,仕事をさせることに成功する。
土下座像の作成は動画としてアップされていた。そのことに気付いたキングレオは自身が捜査している動画を作り,キングレオチャンネルとして動画を投稿する。
キングレオは次の土下座像設置場所を祇園と見抜き,犯行を阻止する。
黒幕はまたしても城坂論語。論語はキングレオの推理の秘密を知るためにこのような騒動を計画した。
キングレオは有に自分の推理の秘密を騙る。実際は直観で真相を見抜き,そのことを後付けで言語化しているだけであると。
それなりに面白いミステリとして仕上がっているが,キングㇾオの推理の秘密が明かされたという点に意味がある。シリーズを起承転結にするならここが転だろう。キングレオが近い将来失敗することを予想させる。★3で。
〇 タチバナの種5つ
検察庁から謎の種5つが届く。鳥野辺有と北上イオが調査を始めるが,種を送ったのは検察官の天親寅彦だと分かる。5つのタチバナの種は、獅子丸や寅彦たちが少年の頃に遭遇した事件の象徴であるという。寅彦はキングレオに引導を渡し,引退させるという。
キングレオと寅彦の対決は国吉家の事件で行われた。金持ちの相続争いの事件で、キングレオは、兄を殺害したという理由で妹を逮捕する。しかし,報告書と実際の死には1時間の誤差があり、実際は遺言書の書き換えがされていた。キングレオは遺言書は妹に有利な形に書き換えられていると考え,あえて遺言書には触れなかった。死者の犯罪を見逃すために。しかし,遺言書には一切の財産を相続させないという言葉が加えられていた。
犯人は違っていなかったので,キングレオと寅彦の対決はキングレオの負けではなかった。しかし,遺言書の内容が推理=直観と違っていたことでキングレオは引退を決意する。
短編としてはそれなりに面白い。書き換えられた遺言書の内容がキングレオの推理と正反対だったことはインパクトがある。とはいえ,傑作と感じるほどでもない。★3で。
〇 最後の事件
キングレオが引退を決意。獅子丸が表に出ないことで新作映画のプロモーションなどに影響が生じている。1か月間,ネットの麻雀ゲームをしていた獅子丸は謙虚な気持ちになり大河を悲しませたくないという理由でプロモーション活動を行う。
陽虎という人物からキングレオの引退を聞いた城坂論語は、療養施設から脱走する。大規模なハッキング事件で仮装通貨を集め,飛行船オークトレール号での試写会の場でキングㇾオの前に現れる。論語はキングレオの孤独を救うために脱走をしてキングレオの前に現れたという。そして,キングレオに追ってくるように言った上で,パラシュートを使ってオークトレール号から飛び降りる。キングレオは,自分に「救わせてほしい。」と言った論語を死ぬ前後悔させると言って,論語を追ってオークトレール号から飛び降りる。その後,3か月経っても二人は姿を現さない。
まさに最後の事件。シャーロック・ホームズとモリアーティがライヘンバッハの滝に飛びおりたように,論語とキングレオはオークトレール号から飛び降りる。とはいえ,高いところから一緒に飛び降りるという部分以外はパロディになっておらず,相変わらずパロディとしての完成度はそれほど高くない。ミステリとしての完成度も,それほどでもなく,キャラクター小説として楽しむべき作品だろう。いずれ,空き家の冒険のパロディで戻ってくると思われるが…。東京の十常寺という名前など,次の作品・シリーズへの伏線も少し用意されている。
評価としては★3。サスペンス感のあるキャラクター小説としてはギリギリ及第点だろう。 -
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ネタバレ○ 総合評価 ★★★★☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★★★★
〇 読後感 ★★★★☆
京都市四条烏丸の一等地に本社オフィスを構える日本探偵公社。公社に所属する探偵は公的に警察と連携し,犯罪捜査に関わる。その公社に所属する探偵の中でも傑出した才能を誇る天親獅子丸の活躍を描く短編集
キングレオという異名の天親獅子丸の助手である天親大河が,公社の広報活動の一環として,キングレオが扱った事件を脚色して物語の原作を作る「スクリプトライター」として活動しているという設定となっている。
「探偵の会社」という設定は,作者である円居挽自身が大学時代から「好きな作品」として挙げていたという清涼院流水のJDCシリーズの影響を感じさせる。JDCシリーズが風変りなキャラクターの魅力があったのと同じように,キングレオこと天親獅子丸は,かなり強烈なキャラクターである。
解説には、この作品は,円居挽が自分が好きなもの=京都,探偵の会社,シャーロック・ホームズを全部盛り込んで作ったと書かれていて、確かに、作者が楽しんで書いていることが分かるエンターテイメントに仕上がっている。
天親家や龍樹山風,城坂論語といった名前が出てくるが,「ルヴォワールシリーズ」の設定とは異なる。パラレルワールドのような存在なのだろう。しかし,城坂論語のキャラクターはルヴォワールシリーズと遜色はない。城坂論語は天性の犯罪コンサルタント=シャーロック・ホームズでいうモリアーティ教授のような立ち位置で描かれている。この作品では決着が付かないが,シリーズが進めば,いずれはキングレオ対城坂論語の対決にも決着がつくのだろうか。今後,ほかにもルヴォワールシリーズの登場人物が出てくる可能性もある。ここはルヴォワールシリーズのファンとしては嬉しいところだ。
全体的に楽しめる短編が多い。シャーロック・ホームズ物のパロディとしてはそれほどの完成度ではないが,円居挽らしい大げさな話作りと生き生きしたキャラクターの描写が楽しめる。「なんたらの紐」と「悩虚堂の偏屈家」の2作品が特に楽しめた。★4で。
〇 赤影連盟
天親大河は,スクリプトライターを辞めて小説家を目指している。そんな大河にみやこミステリー大賞という賞の最終選考に残ったという知らせが届く。
天親獅子丸が挑んでいる事件は,未来を予知するメモを持って死んでいた日下部という男の事件。日下部はセールスマンだったが,盗聴器を仕掛けていた。その盗聴の結果を生かして,ノミ屋に賭けを挑み,勝ち過ぎたために殺害された。犯人はみやこミステリー大賞の主催者の平家という人物。平家がノミ屋の元締めだった。
タイトルは赤影連盟だが,シャーロックホームズの赤毛連盟を思わせる部分は少ない。獅子丸が仮面の忍者赤影のような恰好をした人物を好条件で秘書に雇おうとしたという描写がある程度。しかし,トリックや真相に関係ない。赤毛連盟のパロディとしてはイマイチだが,一つの短編としては及第点。ミステリとしての謎解き要素は弱めだが,獅子丸や大河というキャラクターを初回しつつ,エンターテイメントとして面白い話に仕上げている。★3で。
〇 踊る人魚
獅子丸が暗号モノの事件を解決する。スクリプトライターである大河は作品を仕上げるが,映画の原作にしたいので暗号部分をもっと明快なものにしてほしいという依頼がある。
事件は,京都の若者の中で流行っている違法ドラッグ「踊る人魚」の販路が特定されていないというもの。京都の町に暗号がばらまかれていて,欲しい人間なら誰でも取引の場にアクセスできるという。
この作品では,獅子丸の助手候補として北上イオという人物が登場する。アナウンサー試験に落ち,コネで公社に入社した北上イオは獅子丸の態度に腹を立て,教育係である大河に噛み付く。
踊る人魚の暗号は京都にあるファッションビル「マドイ」のアナウンス。「踊る人魚」から連想される言葉をアナウンスさせ,特定の場所に引き込む。大河とイオはマドイの更衣室に向かうがパラキートと名乗る犯罪者に捉えられる。
獅子丸は大河が発信しているモスキート音を聞きつけ大河とイオをパラキートから救出する。パラキートは大河とイオが食事をしていたレストランの給仕だったというオチ
分かりやすい暗号の部分がミステリとして面白い。獅子丸と大河に加え,北上イオというキャラクターも登場し,いい味を出している。なかなか楽しめる作品に仕上がっている。★4で。
〇 なんたらの紐
「まだらの紐」のパロディ。まだらの紐のように,資産家の妻に先立たれた夫が,独立しようとする娘を殺害しようとする。既に姉が殺害され,妹も身の危険を感じ,獅子丸に相談をする。
獅子丸は謎を解くが,真相は二酸化炭素を使って窒息死させるというもの。窒息死しやすいように,ベッドではなく布団の部屋に娘を移動させていた。
交換殺人をしており,実行犯が姉の大学の同級生のヒモのような男だった。だから,姉は死に際に「・・・のヒモ」というメッセージを残していたというオチ
この作品は,まだらの紐のパロディとしても完成度が高い。まだらの紐の設定だと、犯人に疑いが掛かりやすいのがネックだが,そこを交換殺人で解消するという趣向になっている。なかなか面白い一篇に仕上がっている。★4で。
〇 白面の貴公子
ここで城坂論語が登場する。シャーロック・ホームズの「白面の兵士」のパロディ。「白面の兵士」は、依頼者が同じ部隊で親しくなったゴドフリーを探しに行くが,シラを切られる。その夜に真っ白顔をしたゴドフリーを見つけるという話。ゴドフリーはハンセン病に罹かっていたと思っていたが,それは誤解だった…という真相だった。
この作品は,白面の兵士のパロディとしてはイマイチ。「殿下」と呼ばれている城坂論語を犯罪顧問として組織に迎え入れようとしたエイシストという犯罪者が登場する。エイシストは大河が出会った人物の1人,鶴桜高校の生活指導の教師角谷だった。獅子丸が大河と論語を救出する。獅子丸は論語に対して敵意をむき出しにする。
エイシストが角谷だという真相は一応の伏線もあり,意外性もある。しかし,白面の兵士のパロディとしてはイマイチ。論語対獅子丸の対決の出会いという位置付けではあるが、一つの物語としての完成度はそれほど高くない。★3で。
〇 悩虚堂の偏屈家
ノーウッドの建築家のパロディのタイトルを悩虚堂(のううつどう)の偏屈家とする発想が面白い。作品の構成としても,冤罪が疑われる人物の冤罪を晴らすといいう展開は一応「ノーウッドの建築家」のパロディの体裁にはなっている。
城坂論語が祖父である城坂慈恩殺しの容疑で逮捕・勾留される。この展開は,ルヴォワールシリーズファンならニヤリとしてしまう。論語の逮捕に協力したのは,獅子丸のかつての師匠である公社ナンバー2の探偵である河原町義出男。この作品は河原町対獅子丸探偵という探偵同士の対決になっている。
大河が新人賞に応募している作品のアリバイトリック(携帯電話を利用したトリック)も描かれている。
論語はたまたま殺人事件に巻き込まれそうになり,大河が新人賞に出している作品のアリバイトリックを利用してアリバイを作った。論語は獅子丸を試しているという。キングレオほどの強者なら一人で完結可能なのに、なぜ誰かとつながっていたいのかと。
獅子丸は「我が儘を通せなくて何が名探偵だ。これぐらいどうとでもなる。」と言い,真犯人を指摘する。獅子丸が指摘した真犯人は河原町義出男。河原町の正体は城坂慈恩だった。河原町は50年ほど前に父である城坂語詰を殺害していた。そこで弟である天央と入れ替わり,河原町義出男の戸籍を手に入れて公社に入った。河原町は論語から感じる邪悪さを感じ取り,論語を殺害しようとしたが,強運が味方しているかのように論語を殺害することができなかった。そこで,論語を殺人犯にするために今回の犯罪を起こしていた。
獅子丸は,論語をプルガ熱の保菌者の疑いがあるとして半年ほど療養施設に閉じ込めることに成功する。
ノーウッドの建築家のパロディとはなっていないが,獅子丸対河原町の推理対決という設定は面白い。論語の関わり方も論語らしい邪悪さで,楽しめる作品に仕上がっている。★4で。 -
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○ 総合評価 ★★★★☆
〇 サプライズ ★★★★☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★☆☆☆
〇 キャラクター★★★★★
〇 読後感 ★★★★☆
京都を舞台とした円居挽のルヴォワールシリーズの第4弾にして最終作。物語の舞台は,双龍会に戻る。物語の冒頭で、龍樹落花が鴨川デルタで濁流に飲み込まれる。この事件で、落花の兄,龍樹大和を御贖(被告人)とした双龍会が開かれる。
先にネタバレをしてしまうと,この双龍会そのものが黄昏郷に引導を渡すために龍樹落花が仕込んだ罠だった。落花は双鴉の計を用いる。すなわち,「臥虎の間」と「蔵竜の間」に、それぞれ双龍会を用意し,黄昏郷である城坂慈恩(城坂論語の祖父)を打ち倒す。そのために落花は死んだふりをし,大和と論語は仲間割れをしているふりをしていた。
1000年生きるという黄昏郷は,同一人物ではなく代々優れた人物が入れ替わっていて,現在の黄昏郷は城坂慈恩だった。城坂慈恩は自らの後継者を作るために,デザイナーチャイルドとして(あるいはクローンとして),城坂論語を作り出した。
大和も論語も,現在の黄昏郷である城坂慈恩を倒すために龍樹を離れ,青蓮院の龍師となる。
双鴉の計を成り立たせるには火帝となるもう一人の黄昏郷が必要。もう一人の黄昏郷には,もともと黄昏郷になる予定だったというサントアリオ病院の院長,ノックスマンが務めた。
サントアリオ病院は,クローンやデザイナーチャイルドの研究のほか,不老や若返りの研究,落龍疫という病気の研究までしていて、本作の核となる存在の一つ。
双鴉の計を成立させるには,天親家の協力が不可欠だった。天親寅彦はウィッグの存在から落花が生きていることを見抜き,双鴉の計をするのだと考えて2つの会場を押さえる。
…というような話。いかにもルヴォワールシリーズらしい筋書き。どうして黄昏郷=城坂慈恩を倒すために,わざわざこんなことをしたのかとか,そういうところは描かれない。ただ,面白いストーリーがあればよい,そういう割り切りがある。
黒幕だった城坂慈恩があまりに小物だったのが残念。それでも,龍樹落花,龍樹撫子,瓶賀流,御堂龍也などの主要キャラクターは存分に活躍する。ルヴォワールシリーズの設定や世界観が好きなら十二分に楽しめる。
ラストは論語と撫子のロマンスで終わる。この読後感も悪くない。
落花が生きていたことや,黄昏郷が城坂慈恩だったことにはそこまでの意外性はない。ただ,パラレルワールドを描いているかのような展開が,実は双鴉の計だったというところは素直に驚ける。サプライズ感は高い。このシリーズの雰囲気が好きということもあるが★4としたい。 -
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ネタバレ京都を舞台にした本を読み漁っているから、京大生がメインキャラとして登場することがやたら多い。
生まれ変わったら猛勉強して、京大生になりたいな~なんて考えてしまう。
吉田キャンパスの場所も良い。
実在するお店や施設が出てくるので、グーグル地図を見ながら一緒に移動するのも楽しい。
今回は、謎を携えて三号館へ、という一巻のパターンを踏まず、蒼馬が神出鬼没。
謎解きはひたすら遠近倫人の恋愛問題、青河幸への想いに絡む。
甘酸っぱい。
そして、倫人の成長が嬉しい。
『たまにはセドリー・オンザ・ロックスを』
背取りと掛けてるのかな?
古本市でバイトすることになる倫人たち。
さる小説のおかげで、文化系カップルが大勢押し寄せるようになったようだ。森M…
万引き騒ぎと、サークルの名簿流出問題の謎を解く。
『見えないブルー』
飲み会での発言には気をつけたほうがいいという教訓。
マンションの部屋のミステリ。
『撫子はもう好きじゃない』
怪しさが割とすぐに分かるかな?
そして、ゲス野郎が出てくるたびに、倫人の良さがじんわりと浮かび上げって来る。
『五分だけでも待って』
嘘と策略と共犯…
『銀叡電の夜』
銀河英雄伝説ではない(笑)
全体を通して、瓶賀(みかが)さんと灰原(はいばら)さんが、とても良い女子だった。
この作品、魅力的な女子が多いが、付き合うにはちょっと…
自分が男子だったら、千宮寺さんが好みかなあ…
そして、男は裏で変な策を弄さず、直球勝負が一番だ。 -
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ネタバレ〇 総合評価 ★★★★☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★★★★
〇 読後感 ★★★★☆
〇 希少価値 ★☆☆☆☆
「双龍会」という私的な裁判を舞台とした法廷モノ。更に城坂論語のルージュへの思いを描いたボーイミーツガールものという側面がある。大きな特徴は叙述トリック。以下のような叙述トリックがある。
○ 第1章で、「城坂論語」が女性ではないかとルージュが疑う。城坂論語は男性だが、後の方で女性を男性と誤信させる叙述トリックを使っているが、それを見抜きにくくするためのダミーの叙述トリックといえる。
○ 瓶賀流は男性のように描かれているが、実際は女性である。
○ 龍樹大和が龍樹落花の弟のように描かれているが、実際は龍樹落花の妹である龍樹撫子が紛争に関わっている姿。
特に瓶賀流が女性だったところは、「ルージュ」になり得る人物として双龍会で証言をするという場面で明らかになっており、結構驚いた。といっても驚愕というほどではなく、「ん、ああ、こいつ女性か。叙述トリックか」という感じだった。龍樹大和が実は龍樹撫子の扮装であることが分かるのは最終章。これはかなり驚ける。双龍会の途中の「撫子」と「大和」の書き分けに十分な差異が感じられない部分がある。とはいえ、城坂論語が「ルージュ」の手に触れたときにそうだと分かったという部分につながっており、いい仕掛けだと思う。
城坂論語による「ルージュ」の正体探しという視点から見ると、姫野葵(あおさん)がルージュという真相が最も面白い。これをダミーの真相にして、真相は龍樹撫子=ルージュというものに落ち着く。登場人物が少なく、龍樹撫子=ルージュという真相にそこまで驚きがなかったのは残念。メインの叙述トリックではないが、龍樹大和が実は龍樹撫子であるという叙述トリックが最も驚きだった。
この作品の問題は、双龍会の位置付けがいまいちはっきりしない点。いったいどうなれば勝ちなのかが分かりにくい。青龍側は最初、裁判官(火帝)の孫である香為がルージュだった可能性を示し、城坂論語が犯人ではない可能性を示すことで双龍会の勝ちを狙ったようだが、そのような勝ち方もあるのか。そもそも、黄龍側にとって、城坂論語が殺人をした可能性を示すだけでなく立証ができたのか?最終的には偽証を明らかにして龍師を退廷させ、龍師がいないということで勝ちとなるような展開になるが、おそらくこれは例外的な勝ち。どういう形になればどちらの勝ちなのかがはっきり示されていないため、双龍会を舞台とした知的ゲームという視点ではあまり面白く読めない。
龍樹落花が、なぜ城坂論語を助けようとしていたのかが腑に落ちない。結果的に、青龍師サイドの勝ちとなるが、これは龍樹落花が望んでいた結末であるかのような描写がある。しかし、なぜ龍樹側がこれを望んでいたのか。落花=ルージュで、落花が論語を愛していたというのなら分かるが、それでも龍樹家を大切にしている落花がそんなことを望むか。撫子が論語を愛しているから論語を守るためにこのような展開を望んでいたということか。龍樹家のことを心から大切にしている落花の性格から見て、そこまで腑に落ちない。
登場人物はいずれも魅力的。ひと昔前の漫画のようなキャラクターで、非常に愛着がわく。キャラクターの魅力と作品全体の雰囲気は良いが、知的ゲームとしてはそこまで面白みがない。作者のサービス精神が旺盛であると感じるが、やや盛り込み過ぎだとも思う。叙述トリックの連続。最終章で撫子が落花のふりをしていた点は、キャラクター小説としては面白い終わり方なのだが、ミステリとしては「また?」と感じてしまった。
キャラクターが非常に好みで、作品全体の雰囲気が好きなのでやや甘めの評価で★4。
● 第1章 朱雀の人よ
ルージュという女性が、城坂論語が寝ている部屋に忍び込む。城坂が起きてルージュの手を握り、城坂とルージュの間で丁々発止のやり取りがされる。そのやり取りが描かれる。城坂が女性ではないかという疑惑が出るがすぐに解消。これはこの後の筋書きのミスディレクションになっている。城坂がこの時点では目が見えない状態であったことが隠されている。最後の最後で、侵入者は最初から城坂の目が見えなかったことを知っていた人物であることが分かる。最後はルージュが睡眠薬で城坂を眠らせる。その後、城坂論語の祖父である城坂慈恩が殺害される。城坂は、携帯電話で慈恩のペースメーカーを狂わせる方法で殺人をした疑いが掛かるが、結局、事件は病死として処理される。
なお、物語の位置付けとしては、この第1章そのものが、双龍会に向けて黄龍師(龍樹)側が盗聴して作成した逐語録という位置付け。
● 第2章 その絆に用がある
「双龍会」の前日譚。御堂達也による捜査の様子が描かれる。城坂論語は医学部に進学しないという条件で、城坂慈恩は自然死として処理されていたが、城坂論語が医学部に進学したことから、城坂論語を御贖(被告人)とする私的な裁判、双龍会が開かれる。主要な登場人物が紹介される。
● 第3章 さらば甘き眠り
双龍会。大和による全体の流れの説明の後、近藤雅己の尋問。証拠は甲として携帯電話、乙として固定電話、丙として通信記録が提出される。青龍側と黄龍側の応酬。苦戦の青龍側は、X嬢という人物が屋敷にいたと主張。湯島茂の尋問。芳野由乃の尋問。それから城坂論語が隠し持っていた湯呑を証拠として提出される。火帝である荻島時代は荻島香為がX嬢である可能性を恐れる。龍樹大和の「X嬢がどのようにしてマグカップに睡眠薬を入れたのか」という質問に、瓶賀流は明確な答えを言えない。さらに、龍樹大和は湯呑のすり替えまで行い、青龍師サイドは湯呑を証拠から撤回する。休廷後、青龍師側は証拠を偽造。口紅がついたハンカチを証拠として提出する。これに対し、黄龍師サイドは龍樹落花を証人とし、X嬢が龍樹落花であると主張する。落花はルージュと龍樹(りゅうじゅ)の語呂、「ブラン」というあだ名の存在などからルージュ=落花を認めさせる。そして、恵心を証人とし、龍樹落花のアリバイを認めさせる。証拠の偽造がバレそうになる直前に、御堂達也は瓶賀流がルージュであるとして証人に立たせる。ここで、読者に瓶賀流が女性であることが明かされる。瓶賀流と龍樹落花のどちらがルージュか。城坂論語の質問などにより龍樹落花がルージュだと信じられそうになる。そのとき、御堂達也は黄龍師側が盗聴をしていたと主張。瞬間記憶能力を使い、由乃の姓が旧姓の有村ではなく芳野となっていたことなどから、盗聴されていた事実を証明する。共犯者は黛。盗聴されていた文言の中に嘘があった。部屋の前の床板は歪んでいなかった。このことでルージュが龍樹落花ではなかったことを暴く。これにより龍樹側は退廷。黄龍師がいなくなる。青龍師側が勝ち…となるところで、城坂論語が、黄龍師になろうと言い出す。論語はポットに睡眠薬が入っていたと推理し、ルージュはあおさんだったと主張する。落花は姫名葵から受け取っていたという手紙を出す。双龍会はルージュ=姫名葵。姫名葵が城坂慈恩殺しの犯人だという結論で物語が終わる。
● 終章 昏くなるまで待って
真相。城坂慈恩が死んだのは病死。自然死だった。姫名葵がルージュという真相は、双龍会をつつがなく終わらせるための嘘。龍樹落花が思い描いていたシナリオを城坂論語がうまく利用した。
龍樹大和が龍樹撫子の姿であったことが読者に明かされる。ルージュの正体は龍樹撫子だったことが分かる。
最後は、龍樹落花のふりをした龍樹撫子と城坂論語の二人がタクシーに乗る。城坂論語は龍樹撫子に改めて告白。「貴女のことを愛しているんです。」
● 双龍会
問題の中心となった人物を御贖(被告人)として立て、青龍師(検事)と黄龍師(弁護人)が御贖を挟んで戦い火帝(裁判官)の裁配を仰ぐという私的な裁判。
● 登場人物
● 城坂論語
祖父である城坂慈恩殺しの容疑で、双龍会の御贖(被告人)となる。全ては初恋の人物である「ルージュ」に出会うため。
● 御堂達也
越天学園の懲罰室に入り、探偵集団、群生累集の中心人物だった。師匠である瓶賀流が、城坂論語を御贖(被告人)とする双龍会の青龍師(弁護人)になることから、そのための捜査を行う。瞬間記憶能力の持ち主。
● 瓶賀流
城坂論語を御贖(被告人)とする双龍会の青龍師(弁護人)となる。女性だが男性だと誤認させるような叙述トリックが仕込まれている。
● 龍樹落花
号を紅龍弁天という特級龍師。瓶賀流とは京都大学の同じゼミだった。落ちた花を元踊りに戻すような見事なイカサマ=落下戻しを使う。
● 龍樹大和
暗殺剣という技を持つ龍師。暗殺剣は双龍会の中で論拠を潰す技。実は、龍樹落花がプロデュースした撫子の龍師としての姿。
● 龍樹撫子
龍樹落花の妹。龍樹大和の姿で双龍会に挑む。ルージュの正体。
● 龍樹八俣
龍樹落花の弟。シスコン。大和が弟だと読者に誤信させるために「ヤマちゃん」と呼ばれる。
● 城坂慈恩
城坂論語の祖父。城坂論語の死が病死か殺人か。殺人の場合は犯人が城坂論語なのか。その疑惑を裁くために双龍会が開かれる。
● 城坂影彰
城坂慈恩の子ども(兄)で、城坂論語の父。
● 城坂純紀
城坂慈恩の子ども(弟)。
● 楠木
城坂慈恩殺害に使ったと思われる携帯電話を発見した城坂家の使用人。双龍会の当日には福祉の研究のために北欧に出張
● 湯島茂
城坂家の秘書
● 芳野由乃(旧姓有村)
城坂家のお手伝い。目の見えない城坂論語の世話をしていた。
● 姫名葵(あおさん)
城坂家のお手伝い、70を過ぎた老人
● 黛
速記から英会話までこなせるという理由で引き抜かれ城坂家で雇われている人物。龍樹サイドの盗聴に協力する。
● 恵心祐次
双龍神社の宮司。瞬間記憶能力の持ち主。龍樹落花のアリバイを立証する。
● 荻島時代
京都の保守派の議員だった人物。龍樹家のパトロン。御贖の双龍会で火帝(裁判官)を務める。
● 荻島香為
荻島時代の孫娘。城坂論語の元許嫁。声優。双龍会で青龍側は荻島香為をルージュにしたてあげようとする。
● 近藤雅己
京都大学の医学部教授。心肺停止の状態で病院に運び込まれた城坂慈恩を病死と診察した。
● 細かい仕掛け
● 「双龍会追ってたり?」のアナグラム(アナグラムを穴熊というヒントを使って伝える。)
souryuuue ottetari → toutyou sareteiru(盗聴されている)
● 龍樹落花が弟を「ヤマちゃん」と呼び掛ける。