試し読みで、ヒロインの品川真珠に惹かれて購入しました。
主人公のアラタと婚約を交わし、またメインキャラとして描かれているのでヒロインと呼びましたが、
実際は残虐な連続殺人事件の犯人として死刑判決が下っている危険人物です。
可憐な見た目をしていますが、その可憐さを含め、様々な手段を使って
...続きを読む駆け引きを仕掛け、人々を翻弄します。
アラタと真珠は獄中結婚の約束を餌に、相手から欲しいものを引き出そうとします。
この欲しいものというのがミソで、真珠の本当に望んでいるものが我々には明かされていません。
本心では結婚する気がない、したとしても真珠が出所しなければいいとするアラタに対し、真珠はアラタとの結婚に積極的なようです。
それが愛からくるものなのか、何か目論みがあるのか、
そもそも愛があったとして、その「愛情表現」は安全なものなのか、それが分からないのです。
愛に飢えているようにも、全く逆のようにも、猟奇的なようにも、弱いようにも見える。
真珠自体にどこにも着地しないような危うさがあり、怖いけれど、同時にとても可愛らしい、庇護欲をそそる一面がよく描かれています。
その危うさにアラタも揺さぶられ、気がつけば彼女のシナリオ通りに動いているのではないか? と読んでいるこちらがハラハラします。
サスペンスにも危険を逃れつつ謎を追うなど緩急がありますが、
当作では真珠が謎を持つキーマンであり、常に危険と渡り合わなければなりません。
おまけに真珠自体の人間性が分からないため、ゴールが結婚なのか、和解なのか、決裂なのか、殺人なのか、それも分からないままなのです。
いわば真珠のこれからの目的と事件の真相とで謎の入れ子構造になっており、
その中で選択を間違えないよう手探りで進まなければなりません。
事件や解決やちょっとしたスリルを見物する観客ではなく、絶え間ない緊張のプロセスに晒される当事者の気分を味わうことが出来ます。
今後の展開に目が離せません。