島田荘司のレビュー一覧
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「龍臥亭幻想」が2004年の冬(1月〜2月)で、
この「犬坊里美の冒険」は2004年の夏なので、
ほとんど直後といっていい。
それにしては、冒頭、里美が岡山の坂出を訪ねた際の、
坂出の老いはどうしたことだろう。
年の割にピシッとした坂出の姿はなく、
無性に切なくなってしまった。
起こる事件としては死体消失事件だが
御手洗シリーズっぽさはなく、
全体を通しての雰囲気は、
自分の力不足に泣く若者の成長物語としての印象が強く、
異邦の騎士時代の石岡さんを彷彿とさせる。
里美が落ち込んでその石岡さんに電話した際に
石岡さんが語る言葉は重みがあって、心に刺さる。
石岡さんがかっこいいと思える場面 -
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ネタバレ『リベルタスの寓話』
御手洗潔シリーズ
NATO監視下のサラエボで起きた殺人事件。民家で殺害された内戦中に虐殺を働いたセルビア人民族主義者クラバッシと2人の遺体、モスリム系のクルポの遺体。腹を裂かれ内臓を取り出された遺体。セルビア、モスリムと対立するクロアチア人の犯行か?NATOに協力を求められたハインリッヒ。容疑者は末期がんで入院中のクロアチア人ディンコ。しかし犯行現場に残された犯人の血痕の血液型とディンコの血液型は別。攻めよせるオスマン軍を撃退したある少年の内臓を詰めた人形・リベルタスの寓話に隠された秘密。ネット世界で取引された仮想の金貨の秘密。
『クロアチア人の手』
御手洗潔シリーズ -
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私には久々にきた当たりだったけど、好き嫌いも評価もかなりわかれる本だと思う。もちろん主人公は御手洗潔で、彼が北欧に移ってからの話。
記憶も籍ももたない男が自分自身の謎を知りたいと御手洗のもとにやってくる。同席した同僚は、ただの精神的疾患として扱うが、御手洗は(いつも通り)一瞬にして彼の過去も病の原因も見抜き、それらの鍵は全て、彼がかつて著した"意味不明なお話"の中に隠されているとして、物語の解読を始める。
単純にこんな話よく考えつくな、と感心した。オレンジの木がそびえ立ち動物たちが闊歩するファンタジーの世界に、ビートルズが潜み、凄惨な殺人の秘密が隠蔽されているとは夢に -
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今回も新書版。4編収められている。島田荘司作品のストックはこれでおしまいだ。
作品は「IgE」「SIVAD SELIM」「ボストン幽霊絵画事件」「さらば遠い輝き」。個人的には、これまで読んだどの島田作品より「すばらしい」できだと思う。最高傑作といってもいいだろう。
マイルス・デイビスが出てきたり、シュワちゃんが出てきたりと、非現実的な描写が多い。トリックだって、すぐにわかってしまう(特に絵画事件)んだが、とにかくストーリー・テリングの妙に尽きる。
「IgE」は、御手洗のスーパースター振りがまさにホームズを連想させる。茶目っ気たっぷりな名探偵がとてもかわいい。「SIVAD」は、心温まる -
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御手洗シリーズ。
5歳の頃と小学校二年生の頃の御手洗少年の解決した事件の話。
今まで謎だった御手洗の生い立ちや両親の話、孤独だった幼少時代、どうして御手洗が女性不信に陥ったかなどのエピソードも盛り込まれています。
御手洗は子供の頃からやっぱり御手洗でした。5歳児賢すぎ。毒気がない分すごく純真で可愛くみえた。自分の信念を貫くためには大人にも警察官にも果敢に立ち向かっていくところはさすが。(台詞がコナン君ボイスで脳内再生されてしまうのは仕方ない…)
しかし石岡君は一体どうしてしまったんだろう。すっかり里美にデレデレになってしまっててなんか情けない…悲しい。 -
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昭和51年6月13日未明、福岡県飯塚市で一家4人を殺害した凄惨な殺人事件が起こる。派出所に駆け込んだ唯一の生存者川本富江の供述により殺人は内縁の夫秋好英明によるものと推測された。
だが、真実はどうだったのか? そこには富江が共犯である可能性があった。
その謎を読み解くために、満州、九州、東京、大阪、九州へと職を転々としながら殺人事件へと近づいてゆく秋好を生い立ちから追った非常に読み応えのある作品。
この作品は秋好を中心に取材が進められ、彼に有利なストーリーによって構成されている。しかし、それを差し引いても、富江の証言には破綻があり、警察と検察の捜査にはいくつか欠陥があったといえよう。
それに