三津田信三のレビュー一覧
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現実と虚構が入り混じる三津田さん短編ホラー。
テープの自殺者たちが最後に見たものは?麻衣子が袴谷夫人に感じた歪さの正体は?目的や意味がわからないまま進んでいくのだけど、そこを考え出すとキリがなくて引き摺っている自分にハッと気づいてまた怖さが増す。サラッと読んでサラッと忘れるに限るな。忘れた頃にまた読むんだろうけどw
わけのわからん石を押しつけられる「集まった四人」と正体不明の何かが近づいてくる「すれちがうもの」がイヤ~な怖さ。
水遊びや水を注ぎたがったり、子どもが水に魅入られるのも何かしらの魔力だろうか。
それはまぁ考えすぎだろうけど。
「屍と寝るな」で久々に洋画『スケルトン・キー』を思い出した。途中で眠くなったりもしたが、同じネタでもそちらの方が最後にゾゾ~ッとトリハダ。 -
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『蛇棺葬』→『百蛇堂』と順番に読んで、まとめて2冊分の感想。
蛇棺葬は百蛇堂へ至るための物語(作中作)の扱いですので、純粋に怪異に翻弄される主人公を愛でながらホラー作品として楽しむ感じ。
百蛇堂は、ミステリ的な解釈が入る解決篇に当たるわけですが、(目次をみれば気づくと思いますが)探偵役の「飛鳥信一郎の推理」が入るのが作品の真ん中辺り…というわけで、その後も三津田作品お得意の二転三転、解釈のつかない事も多々盛り込みつつ、物語は開いたまま終わる…という感じ。ホラー寄りの締め方で、こういうのも良いですね。
「蛇足」としてエピソードを纏めるところも、この「蛇」にまつわる物語の締めとしてはとても良い言葉選びで、ニヤリとしちゃいますね。 -
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ネタバレ事故で両親を亡くした少年・貢太郎は、祖母に連れられて都心から離れた町へと引っ越す。12年間、生まれた土地から出たことはなかったのに、引っ越した町に抱く既視感。しかも不気味な老人から「ぼうず、おかえり」と声をかけられる。引っ越した晩から貢太郎を襲う怪異現象。貢太郎は町内会長の孫・礼奈に協力を求め、この町の過去を調べはじめる。
怖がりなんだからやめときゃいいのに、ついつい手を出してしまう三津田さんのホラー。姿は見えないけれど気配はあるって怖すぎる。よくもこんな家から逃げ出さずに住みつづけるもんだ。で、気配だけのはずが、途中から生首やら四肢ちょん切れかけの幽霊が出てきて失笑。真相は面白く、オカルトに終わらず、ちゃんと生身の人間が犯人なのはよかった。だけどその終わり方は嫌すぎでしょう。もっとスッキリ感じよく終わってくれないと眠れない(笑)。 -
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やっぱホラーは長編の方が面白いのかなー。著者の緻密な描写や丁寧に丁寧に恐怖を煽る筆運びは短編集の本作でも際立つのだけど、いかんせん短編だと怖いシーンが各話に一つしかなくて、そこにたどり着くまでが退屈しがち。長編だと物語の縦の線を追いかけることにもなるから楽しく読めるんだけど。
とはいえ、なんともいえない不気味な持ち味は健在。平山夢明みたいな都市伝説系ではなく、伝統的な階段に近い。作中における人間関係のあり方なんかは現代的なのに、携帯電話のような現代風のガジェットに頼ることなく古き良き怪談を紡ぎ出すのは、本当に素晴らしい仕事だと思う。
雛人形の話と森の話が怖くて、結婚式の絵の話が着想が不気味で好き。 -
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ネタバレ〇 概要
郷木靖美という人物が忌み山で遭遇した数々の怪奇現象。最後には一家が家から消失してしまう。その謎を解くために,刀城言耶が奥戸という土地を訪れる。奥戸で起こる連続殺人事件。六地蔵の童謡の見立てにより起こる連続殺人。その謎を刀城言耶が解明する。多段的に解明される謎解き。最後の最後で明かされるその驚愕の真相は…?
〇 総合評価
時代設定は,1954年。戦後すぐの時代設定で書かれた本格ミステリには,独特の味がある。怪奇的というか,猟奇的というか…。この作品も,その例にもれず,怪奇風味を味付けにした古き良き時代風のミステリとなっている。長所としては,どこかで見たような雰囲気の作品なので,安心して読めるという点があげられる。短所としては,既視感=マンネリ感があり,オリジナリティに欠けるように思えてしまうところがあげられる。京極夏彦の百鬼夜行シリーズにも雰囲気が似ていると言えなくもない。
とはいえ,冒頭に郷木靖美の手記を置き,そこで郷木靖美が体験した怪奇現象を描き,本編のラストで合理的な解釈を付けるという展開はなかなか面白い。本編の殺人も,六地蔵の童謡の見立てにより,派手な殺人が6つも起こる。
解決編で,いくつもの推理を上げていくが,一つの推理を披露している途中で,その推理を否定するという形で推理が進むので,ややインパクトが薄れる。一つの解決を示す→矛盾を指摘→次の解決を示す→…真相という感じではなく,一つの解決を示す→その途中で別の解決の可能性を示唆→別の解決の方が正しそうな雰囲気→いつのまにか別の解決にすり替わる…という感じ。
最後には,ちょくちょく目撃者として証言していた胆武という僧侶が犯人と推理し,その胆武が鍛炭立造の息子というこれまで登場しなかった人物と推理。そして,それをなし崩し的に否定して最後は胆武が郷木靖美だったという推理で終わる。
この解決が好きか嫌いかで評価が別れそう。考えながら推理するというか,真相が畳みかけられる解決が好みなら傑作と感じるだろう。これに対し,いまいち驚きに欠ける。もう少し綺麗に解決,矛盾,解決と示してほしかったと思う人には物足りないだろう。私は後者
そういう意味でラストが惜しい。トータルの評価としては…★3で。
〇 サプライズ ★★★★☆
真犯人が,郷木靖美だったという点は素直に驚くことができた。「はじめに」で,「郷木靖美の原稿の登場人物には被害者も犯人も含まれていない」と書かれていた点も見事なミスディレクションになっていた。郷木靖美が忌み山で遭遇した怪奇現象は,ほとんど獣の仕業だったのはご愛敬。一家消失も,郷木靖美に対する立一一家の嫌がらせだったというのはちょっとしょぼい。とはいえ,その嫌がらせの仕返しに一家虐殺を行い,とばっちりで揖取力牧まで殺されてしまったという展開も,まぁ驚けた。
〇 熱中度 ★★★★☆
最初の郷木靖美の原稿がやや長かった。殺人が起こってからは割とテンポよく進み,この話をどう収束させるつもりだ…?と熱中して読むことができた。熱中度は高い。
〇 インパクト ★★★★☆
六地蔵の童謡に見立てて6人の人間が殺されるので,ストーリーのインパクトはある。冒頭の郷木靖美の手記にあるいくつもの怪奇現象もなかなか。全体的に漂う,古き良き時代の本格ミステリっぽい怪奇的な雰囲気もいい。総じてそれなりにインパクトはある。ラストの畳みかけるような真相も,ちょっとやり過ぎ感はあるが,インパクトがあるといえる。★4で。
〇 読後感 ★★★☆☆
郷木靖美が犯人で,行方知れずになるだけでなく,郷木高志まで行方不明になるというラストは,やや不気味。読後感はよくないのだが,物語全体が明るめな雰囲気なのと,登場人物やストーリーにリアリティがなく,それほど心に残らない。総合的に見ると,読後感はよくも悪くもない感じ。
〇 キャラクター ★★★☆☆
探偵役の刀城言耶,編集者の祖父江偲,警察の鬼無瀬など,少し昔の,古き良き時代のミステリに登場してきたような登場人物が目白押し。容疑者の鍛炭家も,いかにもという人物ばかり。これは狙ってやっているのだろう。この作品ならではの個性というものは薄いが,これはこれで,キャラクターは立っているともいえそう。★3で。
〇 希少価値 ★☆☆☆☆
人気シリーズの刀城言耶シリーズの第4作。各種ミステリ・ランキングで上位にランクインしている。人気作であり,希少価値はほとんどない。
〇 メモ
〇 「はじめに」で,「郷木靖美」の原稿の登場人物の中には被害者も犯人も含まれていないことをあらかじめ申し添えておきたいとあるが,これはミスディレクション。確かに,原稿の登場人物には被害者も犯人もいなかったが,原稿を書いた郷木靖美が犯人だった。
〇 冒頭から131ページまでは,郷木靖美が書いた原稿という設定。全体の5分の1。ここで郷木靖美が体験した怪奇について,刀城言耶が一応,論理的な説明を付ける。
〇 郷木靖美の原稿の中の謎
〇 不気味な赤ん坊の声
→野狐の鳴き声か,青鳩の囀り
〇 賽の河原
→三山と乎山の境目の河原だった。
〇 正体不明の空中の絶叫
→発情期の野狐が互いに呼び交わしていた。
〇 おぞましい視線
→狐や貂などの野生動物
〇 山女郎
→世間から虐げられていた老婆が人知れず獣道を通っていた。
〇 火の玉のようなもの
→ムササビ
〇 山魔の呼び声
→靖美を探しに来た兄たちの呼び声
〇 姿なき山女郎
→ユリという子どもの変装(靖美を脅すため)
〇 山荘から家族が失踪(密室)
→ユリという子どもだけが残り,密室にした。ユリは靖美がいた部屋に隠れた。
〇 嘲笑った山魔
→ユリという子ども(靖美を脅すため)
〇 ダミーの解決
→立一一家は,太平一座の役者達だった。
〇 真相
→立一一家が立治一家と同一人物だった。
〇 ダミーの犯人=揖取将夫
→犯人足り得る条件はあるが,犯人ではない。
〇 ダミーの犯人=鍛炭立造の息子
→鍛炭立造の息子=胆武という僧侶
〇 真犯人
→郷木靖美
→郷木靖美が,胆武として犯罪をしていた。