原田宗典のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
はじめてこれを読んだのは、なんと高校のとき、大学入試の模試でだった。現国の小説分野の題材として「しょうがない人」が取り上げられていて、いつものように試験問題を解くつもりでこれを読んで行くうち…なにかが胸に込み上げてきて問題が解けなくなった。主人公の父親に対する気持ちが、まさに当時の自分の気持ちとリンクしてしまった。
世の中に、自分以外に父親についてこういう風に考えている人がいることがわかって心底驚いた。
小説の中で主人公はまさに自分の気持ちを代弁していた。
試験後、速攻でこの文庫本を本屋に買いに行った。
今読んでも泣けてしまう。
ちなみにその試験の点数は散々なものだった…。 -
Posted by ブクログ
記念すべきブックブログの一冊目はこの短編小説です。ウーロンに借りた、ウーロン推薦の本。
一冊目にふさわしい面白い本やった。短い物語(というか詩)がぎっしり詰まっていて、飽きなかったしもっかい読んでみたくなった。印象としては、バンプオブチキンの詞の世界から前向きさや一生懸命さを弱くして、ややヒネリをきかせてシュール色を強くした感じかな。
特に面白かったのが、「九つの物語」「何の印象もない女」「なんでも屋の恋」。
「九つの物語」は九つの物語が、テラーが変化しながらどんどん連鎖して色んな物語が広がるもの。あらゆる生物の一生にドラマがあるのだ。 「何の印象もない女」はねぇ、簡単に言えば何の印象もない女 -
Posted by ブクログ
「やや黄色い熱を帯びた旅人」から個人的原田宗典ブームのときに購入した1冊。
甘たるいような男女の短編集かと思っていたけど、表題作以外はミステリー?サスペンス?の要素が強くて、自分が思っていた著者のイメージと異なるが面白かった。
著者の書く繊細な心理描写、人の、特に男女のやり取りの生々しさはすごい。世の中の多く男性がおそらく思っているが、口にしないことがたくさんあったと思う。言っちゃダメ・思っちゃダメでしょ!とひやひやした。表題作は、文章の読点・句読点・改行が少し変で、その部分から考えが溢れ出てくる雰囲気を感じた。パン屋もこの二人も優しくって少しばかで、愛くるしいと思えた。今風にいうとエモいん -
Posted by ブクログ
放蕩生活に身をやつした主人公の長坂誠は、今や65歳。
なんとか放蕩生活から逃れようと、心機一転東京へ出てきた。
そこで派遣社員として物流倉庫のフォークリフトの運転手として職を得て、今に至っている。
経済的には楽ではなく、住まいは築40年を過ぎたボロアパートで、家賃が3万8千円の6畳一間の時代に取り残されたような住まいだった。
ある日、共用スペースに置いてある洗濯機の水道栓から、隣の部屋に住んでいる少女が水を汲んでいるところに誠は遭遇する。
事情を少女に尋ねると、ガス、水道、電気が止められていると言う。
20日前、直ぐに帰るからと言って1万円を残して出掛けたきり、母親が未だ帰ってきていないと言