原田宗典のレビュー一覧
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表紙のデザインの色とタイトルを見て、
希望を感じる話だとは、あまり思わないだろう。
65歳の自分はもうおじさんではなく、おじいさんだと人生を半分諦めてしまっている主人公、長坂誠が、母親に置き去りにされてしまったアパートの隣人の姉弟を、親切(お節介)に世話する物語。
自分の辛い境遇はさておき、姉弟のために奔走する。優しい、優し過ぎる。こんないい人いないだろう、と思うほど彼は優しい。
やがて彼の優しさに姉弟は心を開き、特に自閉症の弟は、好きな書道で才能を開花させる。
最後の方は話が、多少、支離滅裂になっているようにも思うが、お伽話のような展開で、道が開かれていく希望のラストが心地良い。
以前、著者 -
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何年ぶりだろう、著者の本を読んだのは。
著者の書く、優しくってちょっと不器用な感じの登場人物が好きで、どこかふんわりとした雰囲気の物語が好きで、気に入って頻繁に作品を手にしていたのはどれほど前だったか。
著者の率いる劇団の舞台を見に行って、握手会?サイン会?そんなのにも参加した覚えがある。
事件があってからずっと、作品に触れる機会がなく、いつしか私も小説を読むことがめっきり少なくなってしまっていた。
昨年、新刊が出たと知って懐かしくなり、予約して読んでみたのだが。
ああ、そうだった、こんなふうに物語を書く人だった。読みやすくて入りやすくて、ふわっと心を温めてくれるようなお話。
ほぼ一気読みで読 -
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(装丁原研哉 装画長岡毅)
主人公長坂誠は自らのこれまで65年を不甲斐ないものと感じて日々をやり過ごしている。
東京郊外小平市の外れにある住まい「さくら荘」は築40年。旧態然とした設備ゆえに破格の家賃にもかかわらず住人がいるのは六部屋のうち二部屋、長坂と23号室に住む母子のみ。
23号室の母親が失踪。13歳の姉と自閉症の弟10歳に食べ物、飲み物を差し入れ、部屋に招きカレーライスを共に食べることとなって長坂誠の日々が一変する。長坂の59歳になってからの再上京を助けたまにメールで連絡をくれる二人の友人が著名なグラフィックデザイナーと弁護士。
かつて志半ばで自らの才能のなさを自覚して見切りをつ -
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原田宗典さんの最新作『おきざりにした悲しみは』を読みました。昭和30年代生まれの主人公が同時代の歌を背景に織りなす、昭和の雰囲気豊かな令和の物語。同世代として引き込まれる。著者が吉田拓郎の同名の曲に着想を得て書き下ろした小説だと知りました。
吉田拓郎と言えば『旅の宿』を思い出す。高校時代、空想を巡らしながら調子っぱずれに口ずさんでいたことを。正直なところ『おきざりにした悲しみは』という曲は記憶になかった。本書を読みながらネットで曲を聴いてみました。歌詞が実にいい。心にしみる。『旅の宿』とはだいぶちがう。あれから半世紀の年月を経て、小さいながら「おきざりにしたもの」が積み上がっているからか -
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ネタバレ海の短編集を読んでみた。
12個の短編。短いので、サクサク読める。
ほとんどが日本ではないどこかの話なので、すごく不思議な感覚になる。
日本ではないけど、主人公は日本人なので周囲の言葉は「片言の日本語」だったり、「全く分からない言葉」だったりする。
広がっている世界は日本にいたらおそらく体験することはないだろう世界だけれども、「地球のどこかにはある」という世界。
それでいて、お話しは完全に非現実で、幻想的なネタが詰め込まれている。
一番気になったのは、「黒魔術」と言う話。
お店の人が「高い」と言って示した値段に「買えない」と答えたはずなのに、呼び止められもせず、放置されて苛立った主人公が、 -
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ネタバレ昔通っていた予備校の先生のオススメの本の一つにあったので読んでみました。
<あらすじ>
主人公のショウジショウイチは劇団21世紀少年の役者(といっても実態は裏方や通行人役などをする奴隷)。
本書は3章構成になっていて、それぞれショウジショウイチを中心に劇団員との関わりが描かれる短編連作集なのである。
1章:
元劇団員でショウジショウイチと同期だったクスコちゃんの引越しのお手伝いをする話。
2章:
劇団の看板役者、三島さんが失踪したのでショウジショウイチが探す話。
3章:
新人奴隷のカンパチ青年と劇団内の公演に向けて二人芝居を練習する話。ショウジショウイチと一時期関係のあった真知ちゃんが