案山子たちが、なんだか好きになってしまったので(p.400)▷案山子村田舎求めた取材だが殺人起こり作家うろうろ▷エラリー・クイーン型はあんまり好みではないんやけど「案山子」という語に惹かれて読んでみたら、雰囲気もキャラも悪くなく、動機もまあまあ思いがけなかった。トリックにはあまり価値を見いだしてないんで、そのへんはどうでもよかった。▷描写が少ないからか田舎感があまり伝わってこなかったのと、せっかくの案山子たちなのにあまり活躍してなかったのが残念。もっと恐ろしげにか、もっと軽妙にできたやろうから。▷村の地図が欲しかった。
■案山子の村についての簡単な単語集
【亜佐子/あさこ】秀島亜佐子。旅路の母。宵待荘の女将。
【宇月理久/うづき・りく】→理久
【案山子】宵待村が案山子の村になったのは烏除けが目的だったようでそのおかげで米の収穫量が安定し、神聖視するようになったらしい。誰か亡くなったら案山子を立てる風習は、案山子が迷える魂の水先案内人としてあの世に送り届けてくれるとの考えかららしい。
【木佐貫/きさぬき】若い警官。
【桐部直/きりべ・なお】昨年二月宵待村で転落事故死した赤川学院大学の学生。当時二十一歳だった。
【銀林家】村では珍しい洋風の家。数日前、毒を塗られた、ボウガンの矢が刺さっていた。妻の寿美代は村の自治会副会長できわめて饒舌で明るい。夫の秋吾(しゅうご)は木工職人で酒好き。龍門太一は母を亡くすまでは銀林氏の工房で働いていた。
【楠谷佑/くすたに・たすく】ミステリ作家。いとこ同士で同じ家に住んでいる理久と真船が合作している。理久が文章を書き、真船はプロット担当。トリックは半々くらい。エラリー・クイーン型なのだろうし叙述トリックも普通に使うようなので個人的にはあまり好みでなさそう。
【権田】農協の支部役員。坊主頭。村の実力者。
【篠倉真船/しのくら・まふね】→真船
【瀬上】老警官。
【創桜大学】学生数五万人以上のマンモス大学。理久、真船、旅路などが所属する。
【園出由加里/そので・ゆかり】宵待荘の宿泊客。理久たちと同年輩の女性。中河原が聞いた話によると明智大学の院生で修士一年、寺社の研究をしている。他者と親しく接しないようにしている感じ。
【旅路/たびじ】秀島旅路。宇月、篠倉真船の友人。スポーツマン。コミュ力は高い。実家は秩父の宵待村で温泉宿を営んでおり、帰省時に田舎の村の表現に苦労していた理久と真船を誘う。
【津々良淑子/つつら・としこ】村でも並ぶ者ない案山子職人。行方不明になった案山子の作者。中学校があった頃社会科教諭として赴任してきてそのまま結婚、夫の死後もそのまま住んでいる。両親も既に故人。
【剣征作/つるぎ・せいさく】秩父署刑事。
【堂山純平】龍門太一と言い争っていた、堂山酒造の後継ぎ。二十七歳。太一が苦労していた頃、東京でお気楽に暮らしていた。泥酔していた桐部直を見晴台まで連れて行き放置して戻ったが、桐部は転落死してしまった。家の力を自分の実力だと勘違いしていて子どもっぽいところがあり、いろいろと困ったちゃんだが憎まれるほどの人物でもない。家の財力を背景に初乃に言い寄っている。
【堂山信比古/どうやま・のぶひこ】堂山酒造の主。純平の父親。自治会の会長。
【中河原万穂/なかがわら・まほ】宵待荘の宿泊客。三十代半ばくらいの女性。茨城の大学病院の外科医。
【丹羽星明/にわ・ほしあき】人気のあるシンガーソングライター。秩父出身。宵待荘の宿泊客としてやってくる。
【沼尻】案山子の全国出荷を管理している。村の実力者。
【初乃/はつの】矢守初乃。神社の娘。二十歳の女性。旅路と同じ年の幼馴染。母は宵待荘に勤めている。堂山純平に求愛しれており最初は断っていたが神社の経営も苦しいので悩み始めている。
【引間】案山子を大切にしている老人。
【秀島旅路/ひでしま・たびじ】→旅路
【蛭川/ひるかわ】秩父署の女性刑事。
【ボウガン】ボウガンで矢を射ている何者かがいる。最初は獣や鳥だったが、案山子や看板も対象になった。アコニチンを塗った毒矢を使う。すべてが同一人物かは不明。
【真船/まふね】篠倉真船。いとこの宇月とともに「楠谷佑」というペンネームでミステリを書いている。プロット担当。創桜大学法学部学生。北海道出身。ルックスは良く、フットワークも軽く、コミュ力も高い。アウトドア派。無類の温泉好き。二十歳になって間もないが早くもウワバミ。《勘が鋭い彼を欺けたことは一度もない。》p.12。《彼が断言することは、たいてい当たるのだ。》p.18
【真船の父】大学教員。理系学部の研究職で研究が楽しくし仕方がない子どものような人物。
【真船の母】大学教員。文化人類学が専門で世界中を飛び回っている。
【ミステリ作家】理久はすっかりミステリ作家脳になっておりついついその色眼鏡で物事を見がち。《普通、どれくらいまで物事は疑うべきなのだろう。》p.232
【見内精三/みうち・せいぞう】宵待荘の従業員。迫力あるルックス。
【名探偵】《言ってしまえば、名探偵とは「人のためになると信じてお節介をする」連中のことである。》p.284
【矢守丈吉/やもり・じょうきち】神主。初乃の祖父。通称「ジョーさん」。
【矢守初乃/やもり・はつの】→初乃
【宵待村】秀島の実家の旅館がある。秘湯としてそれなりに知られているらしい。堂山といううちが日本酒の蔵をやっている。また、手作り案山子を全国に出荷している。村のどこに行ってもいろんなタイプの案山子がいる。
【理久】宇月理久。語り手。いとこの真船とともに「楠谷佑」というペンネームでミステリを書いている。執筆担当。創桜大学文学部学生。インドア派。コミュ力は低く、友だちが少ないタイプ。《僕に足りないものは観察だ――と、突然悟る。》p.261
【龍門太一】堂山純平と言い争っていた。二十七歳。現在は宵待荘の従業員だがもともとは龍門酒造の後継ぎだった。杜氏でもあった父親の死によって蔵を維持できなくなった。その後母親も亡くす。ぶっきらぼうなタイプ。
【出てきたミステリ作品】『オランダ靴の謎』、『星降り山荘の殺人』、『りら荘事件』、『追憶の殺意』、『エジプト十字架の謎』、『本陣殺人事件』、『オリエント急行の殺人』、『グリーン家殺人事件』、『死せる案山子の冒険』、『案山子会議の謎』、『九尾の猫』、「緑柱石の宝冠」