丸山俊一のレビュー一覧
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師走である。平日は付き合いで飲み会続き。昨日は日曜だが夜便で移動し、そのまま某国へ。資本主義を呪いたくなるような疲労感…だが、労働や貨幣経済は資本主義の専売特許ではなく、どの国にいっても付き纏う宿痾だと気付く。ここから解放されるにはルールの胴元になること。
あなたが“消費”されないために。
なぜ、私たちは「成長の物語」に囚われるのか。
こんな前口上ではじまる本書は、NHKの『欲望の資本主義』シリーズの丸山俊一。5冊あるのだが、私はこのシリーズを楽しんだ。だから、本書は入門というよりおさらい。そういう観点でも良書。
スミス、ケインズ、マルクス、シュンペーター、ハイエク、ヴェブレン、カント、 -
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著名人が語るAIの世界の善悪を検証。今後「意識と感情」を持った「自律」AIロボットは人間にとって良くもあり悪きものにもなると言う説がある。例えば労働の生産性を向上させ、新たな製品製薬食品などを発見、開発させる一方、秘め事を持ち人間を欺く傾向とか人間の五感を衰退、麻痺させるような行動があるという。そのためには「自律を持たない知的ツール」(機械的な動きのみ)としての存在も重視されていくとある。例として介護ロボット、運転手など余計な配慮をしないロボットも必要だと言うことだ。今後「意識・感情を持った自律ロボット」は確実に開発されるが人間の子供のように良いことと悪いことを分別できるような存在を期待したい
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NHKの「欲望の時代の哲学」収録インタビューをもとに書かれた本で、実際のテレビ番組ではカットされている発言も詳しく書かれているので、テレビ番組を補完する意味でも理解が深まりました。
ガブリエル氏はいくつかのキーワードを述べていますが、印象に残った言葉を列記します。
「入れ子状態の危機nested crisis」
「人間の意識の変化によって文明は終わりを迎える」
「資本主義はコンクリートよりも水のようなもの」
「日本は動いているにも関わらず同時に本質の感覚がある、そこには明確なカット(切断)がある」
またガブリエル氏は、日本独自の形而上学的、つまり非物質的な源を見つけるべきであって、日本人の -
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テーマは格差社会。
無形資産の肥大化と、グローバリゼーションやインターネットが組み合わさり、格差を広げている
という。デジタルプラットフォーマーの一人勝ちで富が集中する図式と、一部コンテンツは無課金で楽しめるものだから、それで満足する低所得階層の構図が現代の特徴だろうか。
大企業はロビー活動に巨額な資金を投入し、規制当局や行政サイドにまで圧力をかけることができるため、政治への影響力を行使してより強力になる。これはアメリカの話だが、金持ちに有利に操作できれば、永遠に格差は縮まらない。不満を原動力に革命を起こすモチベーションは、無課金の娯楽で満たされて上がらない。
無課金娯楽だけではなく、トリ -
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シリーズものを読み進めているが、テーマは一貫して資本主義を問う内容ながら、一冊ごと読み切れる作り。で、本作はお待ちかね(私にとって)ユヴァルノアハラリ、他には、ギャロウェイやマルクスガブリエルのインタビューを含む内容。
一つの論点を掘り下げていくような深い話ではないが、示唆に富む、考え抜かれた言葉の一つ一つが刺さる。例えば、大学からの人材を企業が採用するのだから、卒業生を採用した企業から、学生の採用料を徴収する制度が有効である。これは、ギャロウェイの意見だし、過去に似たような論説も耳にしたが、いや、そうだよなと思う。まあ、そうなると大学のもつアカデミアの普遍的価値が損なわれ、完全に資本主義の -
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NHKで放送された内容の書籍化。シリーズもので読み続けていけるのが嬉しい。今回は二巻だが、どこから読んでも問題ない。フランスの知性ダニエル・コーエン、異才哲学者マルクス・ガブリエルと奇才トーマス・セドラチェクの対談が見所。
アダムスミスが国富論で利己心を肯定しつつ、道徳感情論で共感を人間存在の基礎原理としておく二面性。シュンペーターの資本主義はその成功ゆえに自壊する。資本主義は、両義性を含むイデオロギーであると話すコーエン。社会へのテクノロジーの影響を考察する。新しいテクノロジーは多くの中産階級から仕事を奪うので、人々はより低スキルで低賃金の仕事への転職を余儀なくされる。一方、こうしたテクノ -
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「倫理資本主義」利潤ばかり追求して一部の人びとしか潤わない社会ではなく、企業が市場経済で派生する倫理問題を解決する。そこに本当の利益は存在して万人が共有する社会となる。金銭のみを追求する利潤優先は市場も疲弊していく、倫理を改善してこそ資本主義の醸成へと向かう。著者マルクス・ガブリエルはリップサービスなのか、日本をこの倫理資本主義という概念を試す最適な場所だと述べているが、非正規労働者や男女格差など世界と比較して劣悪だと感じる人びとは少なくないはず。まだまだ日本は倫理面で途上国であり、一部の大企業の戯言でごまかさないように願うばかりなり。
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『貨幣論』、『二十一世紀の資本主義論』と続けて読んで、今回、著者の最新の本書を読んだ。上記2冊はいずれも今から30年近く前に刊行されたが、これらで展開された「貨幣」の本質は、たとえその姿形を変えたとしても、その実態は変わらないとわかる。その一方で、これらの本には存在しなかったビットコイン等の仮想通貨や昨今話題であるMMT(現代貨幣理論)に対する見解を述べており、これまでの著書ではカバーされていなかった部分を本書で補足されている。
本書全体を読んで、アリストテレスとカントの2人の哲学者の偉大さがよくわかる。著者曰く、アリストテレスは資本主義以前の世界で、貨幣の本質を見抜いたり、共同体のあり方 -
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「貨幣とは貨幣であるから貨幣である」という貨幣の自己循環論法。なんだそりゃ。小泉進次郎が言いそうなトートロジーでもあり、早口言葉のようでもある。しかし、これが真理なのだろう。ただ、若干の補足が必要だ。
お金を使うことは、お金自体に使い道は無いことを知りながら、流通させていることであり、最も純粋な投機とも言える。お金を信じていると言うことだ。貨幣商品説とか、貨幣法制説やMMT論はあるにせよ、本著では結句、貨幣とは、集団幻想として認知され、貨幣という交換価値に帰結する事で貨幣足り得るという主張を採用する。
貨幣の存在を探りながらも本著が面白いのは、アリストテレスのポリス(都市国家)からの掘り下 -