NHK「欲望の資本主義」制作班の作品一覧
「NHK「欲望の資本主義」制作班」の「岩井克人「欲望の貨幣論」を語る」「脱成長と欲望の資本主義」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
貨幣を持っていれば、どのようなモノでも手に入る「可能性」が誰にも与えられる。それが近代人の「自由」と「尊厳」のもととなる。しかし、具体的なモノに対する人間の欲望は「有限」(どれだけおししいものがあっても無限に食べることはできない)であるのに対し、「可能性」それ自体に対する欲望には「限り」がないため、「貨幣の増殖」を求める経済活動(すなわち資本主義)は止まることを知らない。そしてそれは「自由」や「尊厳」の前提となる共同体を破壊していく。貨幣が近代社会にもたらすこの矛盾について、実はアリストテレスがすでに論じていた、という。第4章で展開されるこのあたりの話が実に面白い。貨幣とは何か、という問題を考える上で、視野が大きく広がった気がする。
Posted by ブクログ
岩井氏の本は毎回感銘を受けているので本書も早速手に取りました。岩井氏と言えば、貨幣論、資本主義論を、アリストテレスやゲーテ、シェークスピア、カントなど、古今東西とは言わないまでも(西&古に偏っていますが)、経済学以外の巨人の視点を通じて分析するというのがユニークな特徴だと思っています。つまり経済学という領域にこだわらないところに面白さがあるわけです。
本書では、どちらかといえば貨幣論を中心に同様のアプローチがとられていました。その意味では、岩井氏の本をこれまで何冊も読んだ人からすると、そこまで新しいことは書かれていないものの、とにかく主張がわかりやすく解説されているというのが本書の価値でしょう。前著(貨幣論、ヴェニスの商人の資本論、経済学の宇宙、など)を読まれた人にとっては復習に、はじめて触れる人は著者の主張が明瞭に伝わってくる本だと思います。
私が今回改めて納得した主張は、資本主義における効率性と安定性の二律背反の話です。「経済学の宇宙」にもその主張は記述されていましたが、本書を読んで理解が深まりましたし、深まったと同時に、実は極めて挑発的な主張でもあるということに気づきました。効率性と安定性の二律背反とは、言い換えるならば自由放任主義(効率追求)が経済の不安定化や行き詰まりを生み出すということなのですが、ふとミヒャエル・エンデの「自由の牢獄」という物語を思い出しました。ネタバレになるのでストーリーは述べませんが、「制約条件のない自由は不自由である(身動きが取れなくなる)」というような話です。またミクロ経済学でも、何かしらの制約条件(例:予算制約)のもとで、ある経済変数(例:効用)を最大化する、という問題については最適解が計算できるわけですが、制約条件がなければ問題は解けません。大澤真幸も、ある本でエンデの同物語に触れ、自由には制約条件がつくべきであると主張し、たしか「将来世代に対する義務」を制約条件として現世代は自由を謳歌すべし、というようなことを提唱していたかと思います。本書改めていろいろと深く考えさせてもらえる本でした。