丸山俊一のレビュー一覧
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資本主義を考える月間4冊目。見えざる手による競走で最適化するはずの市場だが、GAFAの支配に警鐘を鳴らすギャロウェイは、GAFAによりイノベーションが起こらない時代になっていると主張する。将来有望なスタートアップを買収することで将来の競合を潰す。インスタ、YouTube、WhatsAppなど。適切に納税もしない。会社を分割して、競争させることが社会に利益につながると説く。ノーベル経済学賞受賞のティロールは、資本主義は統治の形態、市場経済は企業の競争であり、いずれもルールと規制が必要と主張する。確かに大企業や大富豪に有利なルールでは、正しい統治も競争も起こらない。そしてガブリエルは、ポストトゥル
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14歳からと題名にあるように、分かりやすい文章だけど、本当に14歳が理解出来るのだろうか?
大人にはとてもわかりやすく、現在の資本主義の状況を表してくれていて、とてもエキサイティング。
基本的にはTV番組の欲望の資本主義の内容なんだけど、TVよりもこの本の方が分かりやすくまとめられてる所が凄い。
以下、本文から
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経済学は長いこと、一般的に「希少な資源の最適な配分を科学的に分析する学問」という定義を掲げてきました。しかし、その定義そのものも時代とともに更新し、考え続けなくてはならないのだと思います。
そして、いま、僕たちの住む、複雑な世界のことを考えれば考えるほど、その複雑さ -
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資本主義を考える月間3冊目。どうにも止まらない資本主義の「闇の力」を考察する一冊。本書によると、資本主義はもともと悪だったのではなく、共産主義や社会主義という「抵抗勢力」が失われたために暴走するようになり、自己を成長させるために「内なる敵」を作るようになった。これが顕著となったのが、自国主義であり、格差であり、差別ということ。前半のダニエル・コーエンとの対談では、テクノロジーの進化による社会変化について、農業革命や産業革命の時代は、一つの職が失われても、同じくらいかそれ以上に魅力的な別の選択肢があったが、IT革命やAIによる失業では、単純労働(クソどうでもいい仕事)しか残されておらず、格差を助
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『私たちは、自由が増えれば安定性が減り、安定性を増やすと自由が減ってしまうという、「自由と安定との二律背反」の中で生きて行かざるをえません』―『第1章 「ビットコイン」は究極の貨幣か』
「欲望の資本主義」シリーズは観るのを楽しみにしている番組の一つだ。主に経済学の立場から現在進行形で起きている汎世界的な金融経済問題の本質に迫ろうとする取り組みだが、追いかける主題は、資本主義を成立させる売買が結局は人間の欲望に根差したものであって、その欲望には際限がないものだ、という事に毎回行きついているように思う。であればどうすれば良いのか、ということもまた番組では経済学以外の分野の知性の言葉を紹介しつつ探 -
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今年になってNHK BSで放送された「欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント」と「BS1スペシャル シリーズ コラナ危機 グローバル経済 複雑性への挑戦」の内容を文字に起こした物だ。超番組と元手興味深く録画もアーカイブしてあるが、こうして文字に起こして頂けて大変ありがたい。文字として読むことで、番組を使用していたときには落としていた視点や皆がしていたことが拾えて、議論の内容への理解が深まり感謝している。
今の日本でも実存や倫理について考えることが多く、マルクス・ガブリエル の新実在論はこの社会がどん底まで落ちて立ち上がるときに必要な哲学だと強く感じている。 -
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二章の哲学の歴史がいいですね。わかりやすい。ポスト構造主義になり、現在を捉えられなくなり、自由になる代わりに新自由主義により社会システムや欲望を支配される現代。トランプはポストモダンの天才であり、ポストモダンの次の段階にある。それはコンピューターのシミュレーションとしてあるもの。何を言ってもいい、非現実感のデジタルの波に乗るもの。おかしな世界になったと思っていたが、こう言われると現在がわかる。
本書にはマルクスガブリエル自身の哲学の要項はあまりない。だが、現代に至る歴史と、現代の致命的問題まで独自視点で伝えてくれる。
この闘争をニヒリズムで潰してしまったポストモダンの限界に、代替案として新実在 -
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現代の経済学を二分して解説 画期的であり判りやすい 革命的過激さ
①不均衡経済動学・・・資本主義経済の本質 ケインズ・宇沢弘文など
②均衡経済学 ・・・主流派経済学シカゴ学派など
資本主義経済の本質は不均衡動学だが、周期的に経済危機を起こし、財政・金融の支援を必要とするので、そのままでは受け入れにくい
体制の経済学としては「平時の均衡」を前面に出して理論体系を組むのが方便だが、これは反正義の在り方。本家の米国以外では衰退しつつある。
宇沢弘文氏、岩井克人氏とも「正当経済学の不正義」に耐えられず趣旨替えを表明し、経済学会を追われてしまった。「破門」である。
cf「資本主義と戦った男 宇沢弘文と -
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・人の欲望は無くならないのか
・人の欲望が今の社会システム(資本主義)をどう変えて行くのか
が主題の、知識人との対談。
人の生活がどうある「べき」なのか、については考え方それぞれあるが、技術特異点に達して人間の労働の価値が大きく揺らぐ事
その時、上手くやらないと致命的な不平等が生まれる事については意見が一致している模様。(それすら、「別に構わない」って人もいるけど)
個人的には、こんなに社会が発展しているのに、さらに良くするために同じ時間の労働を強制されるのはおかしくて
労働が個人の自由意思に任される社会が来てほしいと強く思っている。
声でスピーカーが動いてくれたら楽だし、
海外のスニー -
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Posted by ブクログ
「人間の業=欲望をキーワードに、複雑な経済システムの本質を解剖し、経済の在り方を考える」との触れ込みだったが、丁度自らが欲望に就いて勉強していたいと思っていたつながりでぴったりの本であった。本書は以下のような問い・コメントへの一つの答え・説明を提供してくれる。
・経済は成長し続けるべきか?(P25)
・イノベーションは幸せをもたらすか?(P53)
・トリクルダウンは、非効率(P106)
・人間の”原罪”は過剰消費(P123)
3人の登場人物の内、スコット・スタンフォード氏の異色さが際立ったが、実業を代表するという観点から選ばれたと思うが、少々人選が思想的に極端化と思った(それはそれで面白く -
Posted by ブクログ
自らの人生を受けとめ、真摯に思考する時、誰もが実存主義者となる。生まれ落ちた時から抱える実存、所与の条件、意識を持った頃にはすでに課さられていた宿命を、引き受けざるを得ない存在が覚悟を決める時、実存主義の門を潜るのだ。だが、そうしたありようは、時に固着した視点を生み、それゆえの不自由を生むこともまた事実。他者からの視点という想像力を欠き、熱い情念に囚われることでますます視野狭窄に陥る不幸も、背中合わせとなる。その呪縛を解こうとしたのが構造主義だったのであり、そうした柔軟な視点を獲得した時、皆、構造主義者となる。すべては関係性だという認識がもたらす、自己という存在の相対性に思考を開く可能性をそこ
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Posted by ブクログ
ネタバレこんなエキサイティングな本はそうそうない!
コーエンの話はものすごく面白く、今後テクノロジーによってルーチンワークの仕事は減っていく。創造的でなければ生き残れないというのは本当にその通りだと思った。
後半のガブリエルとセドラチェクの話はもう最高にエキサイティングだった。お互いに例えや主張の根拠を分かっていてどんどん話が展開していく様子がたまらなかった。
特に納得したのがシェリングのくだり。
生命体というシステムは
その維持のためには代謝によって外部のエネルギーを取り入れて変換することがその本質である。
つまりシステムには外部が必要なのだ。
そのため外部との境界がないシステムはそれを維持する -