古宮九時のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ物語が“愛の物語”から“運命への挑戦”へと質を変える瞬間を描いた一冊。
甘やかな邂逅や軽やかな応酬の背後に潜んでいたもの――呪い、時間、選択の代償――が、ついに表舞台へと姿を現す。
二人の関係は決して偶然の奇跡ではなく、幾重にも折り重なった因果の上に立つ、あまりにも脆く、しかし尊い均衡であったのだと気づく。
オスカーとティナーシャの絆は、この巻において試練という名の坩堝に投げ込まれる。
だが本作が秀逸なのは、試練を“障害”として消費しない点にある。
困難は二人を引き裂くためではなく、互いの覚悟を映し出す鏡として機能する。
愛とは何か。
守るとは何か。
永遠を誓うとは、何を失う覚悟をすることなのか。
物語はその問いを、静かな筆致で、しかし容赦なく読者へ突きつける。
魔法と王権、過去と現在が交錯する世界観は、神話的な厚みを帯びながらも、人の心の揺らぎに寄り添う。
壮大であると同時に、きわめて私的だ。
運命という巨大な歯車の中で、それでもなお“あなたを選ぶ”という意思。
その選択の重みが、この巻を単なるロマンスから叙事詩へと押し上げている。
読み終えた後、胸に残るのは華やかな達成感ではない。
むしろ、静かに沈む余韻と、誓いの意味を反芻する時間だ。
幸福は刹那であり、だからこそ尊い。
永遠は約束ではなく、選び続ける行為なのだと、本作は教えてくれる。
物語はここで終わらない。しかし、この巻で交わされた誓いは、確かに記憶に刻まれる。 -
Posted by ブクログ
Unnamed Memory -after the end- 5
アンネームドメモリーのateも随分と来ました。このシリーズ、結構長いですね。
今回は、主にティナーシャのお話。生まれ変わっても、徐々に会いにくくなっている2人。会えないうちに、呪具に対峙しようとしてアイティリスの魔女たちに助けてもらうお話は、懐かしいやら寂しいやら。ラヴィニア…。
しかし、後半のお話は、一気に1700年も飛んでますね。なんとまあ。
1700年というと、仁徳天皇の時代から一気に現代に来るくらい時間が経過してますね。なんでそんなに飛ばすの?
最後の大陸では、記憶をなくした夫を気遣うティナーシャがいじらしいというか、面倒くさいというか笑
次は、なんだかハードな巻になるとか。読みたいような、読みたくないような。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ古宮九時著『Unnamed Memory Ⅱ 玉座に無き女王』は、静謐な幻想のなかに、深い人間の業と救済が織り込まれた一冊である。
本巻では、ティナーシャという存在の過去と宿命がゆっくりと解き明かされていく。その姿はもはや“魔女”ではなく、一人の人間としての痛みと愛を抱えた「女王」であり、彼女が歩んできた長い孤独の軌跡が、物語全体に荘厳な陰影を与えている。
一方で、オスカーの内面も確かな重みを帯びていく。彼の決意、優しさ、そして時に揺らぐ心は、王という立場の象徴を超えて、「人として何を守るべきか」という普遍的な問いを投げかけてくる。ふたりの関係は単なる恋ではなく、時代と呪いを超えて魂が呼び合うような宿命の絆として描かれ、読む者の胸に静かに火を灯す。
物語全体に流れるのは、滅びと再生、孤独と希望という相反する感情の共存である。重厚な文体と緻密な世界設定は、王国という舞台を超え、人間の存在そのものを問う深みを湛えている。
特に、過去と現在が交錯する描写の緊張感、登場人物それぞれが抱える信念の重さが、一章ごとに静かな迫力を生み出している。
『玉座に無き女王』という題が示すように、この巻の主題は「権威を離れた魂の尊厳」だ。玉座を持たぬ者こそ、真に王たる覚悟を持つ――その思想が、物語の底流を成している。
読後には、静かな余韻とともに、「強さとは何か」「愛とはどこまで人を導けるのか」という問いが残る。
壮麗でありながら繊細。
悲劇を孕みながらも希望に満ちている。
『Unnamed Memory Ⅱ』は、ファンタジーという枠を超えた、人間の記憶と想いの叙事詩である。 -
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ネタバレ著者初読。KU。
古宮九時著『Unnamed Memory 1』は、単なるライトノベルの枠を超えた、壮大かつ繊細な叙事詩のような読後感を与えてくれる作品である。王子オスカーと大魔女ティナーシャという、対照的でありながらも互いを映し合う存在が織り成す物語は、古典的ファンタジーの重厚さを湛えつつ、現代的な感覚で描かれている。そのため読者は懐かしさと新鮮さの双方を同時に味わうことができる。
特筆すべきは、ティナーシャというキャラクターの存在感だ。永い時を生きる魔女である彼女の背後には、語られぬ過去と深い孤独が漂うが、それを軽やかに覆い隠すような強さと知性がある。その姿に触れるたび、読者は彼女が纏う静謐さの奥に潜む情熱と悲哀を感じ取らずにはいられない。一方のオスカーは、若き王子としての矜持と宿命を背負いながらも、彼女に真摯に向き合おうとする。その姿勢は、彼の内に秘められた気高さと不器用な誠実さを鮮やかに映し出している。
また、物語の構成は300ページを超える大作でありながら、流麗で無駄がない。章ごとに展開されるエピソードは短編的な快適さを持ちながらも、全体として大きな物語を形作っていく。結果として読者は、積み重ねられる一幕一幕に没入しつつ、やがて訪れる壮大な物語の胎動を確かに感じ取ることができる。
『Unnamed Memory 1』は、愛と宿命、過去と未来、孤独と絆といった普遍的なテーマを、圧倒的な想像力と格調高い筆致で描き出す作品である。読み終えた後に残るのは、ただの面白さではなく、胸の奥に深く沈む重みと温もりであり、それこそが本作の最大の魅力といえるだろう。 -
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今をときめく作家による、15ページずつの短編集。斜線堂有紀の作品で本文最後に「仕掛けが分かった?」と聞かれ、うむむわからん、一番気になりました。わかったことといえば前半の世界狭いうちは使う文字に制限かけてあること、だから、「私」はなくて、「I」。「難しいかもよ」じゃなくて、「むずいかもだよ」。彼の名前は「 」。これは10文字、または空白入れて9文字なのかなぁとかなり考えたけど、思いつかなかった。「しゅうとう」「ねんどう」「ごとう」「うとう」/「しゅうじ」「しゅうと」「しゅんご」「しゅうご」とか?でも適当な名前じゃ意味はないしなぁ…。
されど世界の終わり 三秋 縋
わたしたちの教室 佐野徹夜
息継ぎもできない夜に 松村涼哉
じゅうごしゅうねん、おめでとう 斜線堂有紀
穴があったら入りたい 一条岬
十五年後もお互い独身だったら結婚しようねと約束した二人の物語 綾崎隼
いざ、さらば 村瀬健
超能力者じゃなくたって こがらし輪音
星空に叫ぶラブソング 青海野灰
余白の隠れ家 古宮九時
初恋灯籠 遠野海人
世界が十五になる前に。天沢夏月
見花 入間人間
前略 十五の僕へ 時雨沢恵一
朝の読書だ nyan 高畑京一郎 -
Posted by ブクログ
今回はティナーシャだけが生きていて、オスカーのいない世界。前半と後半で世界が変わります。
前半はオスカーがいない、つまりアカーシアのない場面で人を絶望させながら殺すことを喜んでしまうような意思を持つ呪具を壊さないといけないこと。その際に用意したこちらの手駒がなんともゴージャス。
後半はどうやらオスカーの転生者らしき人物が出てくるものの、その国自体がなかなかに謎めいていて、ティナーシャは表紙の通りなぜか囚われの籠の鳥状態ですごしている。
残りの呪具もわずか。さあ、このお話の結末まで2人は一緒にいられるのか、どういう最後になるのか、とても楽しみです。 -
Posted by ブクログ
今回も壊すべき呪具を探して大陸を彷徨う2人。そこで、ロツィとファラースという2人の孤児の面倒を見始めます。そのふたりと家族同然に暮らしていた遺跡探索を生業にしていて行方不明になった父と、父を探しに行って行方不明になった姉の行方がキーとなっていきます。
精神操作の呪具(国)に対するオスカー・ティナーシャ組の反応が、こちらの望む答えをストレートに言い表してくれます。2人のぶれない正義感が読んでいて気持ちいいです。あと、めちゃめちゃ強くて戦いになると安心して読める。
今回は呪具を作った世界の人とティナーシャの会話があり、今後の生まれ変わりに一つの方向性が示された後の転生人生(後半)。えー、どうなるの?と疑いを持ちながら読み、それもまた面白さに強度与えてくれました。