カリン・スローターのレビュー一覧

  • グッド・ドーター 下

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     カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。

     とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。

     弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後

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    2020年11月01日
  • グッド・ドーター 上

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     カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。

     とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。

     弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後

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    2020年11月01日
  • 破滅のループ

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    カリン・スローター『破滅のループ』ハーパーBOOKS。

    ウィル・トレント&サラ・リントン・シリーズの最新作。700ページの大ボリューム。このシリーズは読み方を覚えると極めて面白い。

    カリン・スローターの描く犯罪は冷酷無比にして大胆であり、全く情け容赦ない。そして、こうした犯罪に翻弄され、心身共に痛め付けられる主人公というのが1つのパターンになっている。本作もまた、冒頭からウィルとサラの束の間の幸せを奪うような大事件が起こり、二人に最大の危機が訪れる。

    恋人の検死官サラと束の間の平和な時を過ごしていたウィルは、たまたま近くのアトランタの中心部で発生した爆発事故現場に急行する。途中、

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    2020年06月20日
  • 贖いのリミット

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    最初に言いたいのがこれシリーズ物だったのかーーと言う事。
    知らずにこの本から読んでしまった…が、
    それを抜きにしても凄い面白かった!!
    むしろちゃんと最初から絶対読みたいと思わせられる。
    シリーズ物と知らずこの本から読んでも全然大丈夫。
    中盤からの引き込み度具合が凄い。
    物事には常に裏と表がある。あいつは悪い奴だから悪だ!と思っても、悪だと思ってる側の視点からしてみればそこには深い理由があったりする。
    善サイドと思わせられた視点から読み進め、中盤になって視点が代わり悪サイドから物事を見れば悪だと思っていた人の事もなんだか憎めなくなる…
    ミステリーの展開も勿論だけど、人間関係の面でもとても面白か

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    2020年06月14日
  • 開かれた瞳孔

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    グラント郡シリーズ。ウィル・トレントシリーズにも登場しているサラが主人公。残酷な手口の殺人とそれに対する怒り。その大きさ、強さが一貫してある。女性の怒り、悲しみ、憎しみ、そういうものがたくさんあって重い。サラの過去や被害者の姉レナの感情、どこをとっても圧倒されてしまう。ウィルシリーズで現在のサラを知っているというのはあるけれどそれでも面白いし元夫ジェフリーとの関係も興味深い。熱量がすごくて一気読み。ここからウィルシリーズに繋がっていくわけだし続刊もぜひ刊行していただきたい。

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    2020年03月21日
  • 贖いのリミット

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    バスケットのスター選手マーカス・リッピーが起こしたレイプ事件を担当する捜査官ウィル・トレント。金と弁護士の力で立件できなかった。その選手が経営するクラブで遺体が発見された。元警官のデール・ハーディングだった。現場に大量の血液が流れており、ウィルの別居中の妻アンジーのものだと考えられた・・・

    うーむ。重たいのにスピーディーな展開。ある巧妙な策略が終盤に明らかになるのだけれど、これ込みでシリーズナンバー1。

    後半はアンジーがいったい何をしていたのかが時間を巻き戻して明らかになる。前半も面白いけれど、後半はさらに面白くなる。そういう意味では迷惑な女アンジーの物語だと言える。

    しかし、アンジーで

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    2020年03月17日
  • 開かれた瞳孔

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    登場人物の心理描写、先が気になる展開など評判以上に面白かったです、すっかりカリン・スローターにハマりました。このはじまりの作品から読み始めてよかったです。
    本作の登場人物が別シリーズに登場とするということなのでそちらも読むのが楽しみです。

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    2020年03月16日
  • 開かれた瞳孔

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    2017年から2018年の間
    面白そうなのに
    「シリーズモノだから…」と
    敬遠していた作品があり、そのシリーズを
    遡ると途中で合流するのが本作の主人公サラで、それなら発行順からしてこちらから読むのが良さそう。と、思ったらハヤカワ版は絶版…
    そこまで調べ、諦めていた。

    前情報なしで、書店で見かけた時
    「うえっ!」と声に出して、咄嗟に手に取っていた(何故かその書店では最後の一冊だった)
    まさかの復活

    小さな町のレストランのトイレで、大学教授の女性が腹部を十字に切り裂かれて殺害された。
    偶然にも第一発見者となった検死官サラは、迷いのない切創と異様な暴行の痕に戦慄を覚える。
    しかも犯人は被害

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    2020年03月04日
  • 開かれた瞳孔

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    カリン・スローター『開かれた瞳孔』ハーパーBOOKS。

    カリン・スローター幻のデビュー作と帯に書いてあるが、2002年にハヤカワ文庫から刊行された同名作の復刊である。ハヤカワ文庫で既読であったが、再読してみた。

    カリン・スローターの全邦訳作品を読み、彼女がロマンス系ミステリーではなく本格派ミステリーの書き手なのだという頭で、改めてこのデビュー作を読んでみるとなかなか面白いではないか。北上次郎の絶賛も今なら頷ける。

    小さな町の簡易レストランのトイレで検死官サラ・リントンは偶然、瀕死状態の女性大学教授を発見する。薬を投与され、切り刻まれ、レイプされた女性はサラの腕の中で事切れる。さらに、第二

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    2020年03月02日
  • 贖いのリミット

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     さて自分としては珍しく順不同で最新作だけ齧っている捜査官ウィル・トレント・シリーズ。『ブラック&ホワイト』に継ぐシリーズ第8作は、ウィルの行方不明の妻であり過酷な過去をウィルが共有してきたらしいアンジーの事件。

     男性捜査官ウィルのシリーズとは言え、実際は彼を取り巻く個性派女性たちが持ち回り主役となるこのシリーズ。女性らしい感性と容赦のなさで惨憺たる殺人現場を軸に捜査と葛藤と闘いが始まる。心理戦と、暗躍する女たちと、ウィルを獲り合うサラとアンジーというデリケートな恋愛模様にも深みというだけではない捻じれのようなものを感じさせるこの作者独特の世界観を感じる。

     事件現場はプロバスケットの花

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    2020年02月12日
  • ハンティング 下

    購入済み

    女性は強し!

    女性検死官サラと特別捜査官ウィルはそれぞれシリーズ化されているらしく、今回は初クロスオーバー作品だとか。とにかく女性の強さ、逞しさを見せつけられる作品だった。出てくる男はヘッポコだらけ。逆に女性たちはみな何らかのハンデやトラブルを抱えながら懸命に生きている。そういった女性ならではの悩みや問題を丁寧に描くことで、鈍感な男どもへの作者の警告とも受け取れる。派手などんでん返しがあるわけではないけれど、最後までハラハラさせるスリリングな展開にページを捲る手が止まらなかった。

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    2020年02月10日
  • ハンティング 上

    購入済み

    残虐性がとまらない

    女性の誘拐、拉致監禁、拷問、レイプ。死体解剖とともにおぞましい拷問の方法が明らかになってくる。被害者があまりにも可哀想すぎる。今回は奇跡的に生存者がいるにもかかわらず、捜査は難航。上巻が終わっても容疑者すら浮かび上がってこない。そんな難事件に挑むのは、プライベートでいくつか問題を抱える捜査官コンビ。お互いをナイスフォローしながら難事件に挑む姿が素敵。果たして犯人にたどり着けるか? 下巻へ。

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    2020年02月10日
  • 彼女のかけら 下

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    ネタバレ

    一気に読み終えた。面白い!
    往年のチャーリーズエンジェル的な話かと思いきや、違った。
    彼女のかけら、アンディと言う娘の名・ダーリンと言う呼び方・窒息に対する恐怖・強く見えて、娘と同じように自分を持てずに流されてきた過去。完璧に見えた母親の、超人的な殺人マシンでもスパイでもなく、人間臭く弱い過去。
    ドラマティックなのに非現実的過ぎないし、母と娘、過去と現在、主人公が交差しながら交互に描かれるのが、物語と適度に距離をとりながら感情移入させるのに役立っていた。
    この作家の小説は他にも読んでみたい。

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    2020年01月26日
  • ハンティング 上

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    面白い! 久しぶりに描写で怖気を振るった。被害者達に加えられた暴力は吐き気がするほど酷たらしいが、それに比例して犯人への憎悪もまた深くなっていく。こうでなくっちゃね。どんどん読み進んでしまう面白さ。シリーズ全作を追いかけようかと考えている。さあ、下巻に突入だ。

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    2020年01月18日
  • 贖いのリミット

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    「ウィル・トレント」シリーズの八作目。このシリーズは毎回主要人物の誰かにスポットが当てられてきたけれど今作はアンジー。一番読みたかった人物。ウィルとの夫婦関係の形の歪さ、憎しみと愛情。元警官の惨殺死体と残された別の人物の大量の血液。残酷な描写。事件の展開、ウィルたちの捜査を読むだけで面白いのに、中盤からアンジーの章が挟まりそこからラストまでが圧巻で一気読み。ウィルとアンジーのこれまでとこれからとウィルとサラのこれから。今回の事件の影響が次作以降どうなるのかも含めてとても楽しみ。

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    2020年01月12日
  • ブラック&ホワイト

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    ジョージア州捜査官のウィル・トレントは潜入捜査中に、警官夫婦が襲われる事件を目撃する。犯人は殺害されたが、なぜ警官夫婦を襲ったのか。被害者の妻レナ刑事は、麻薬密売人で妹を殺害しているシド・ウォラーを逮捕しようと躍起になっていた。苦労して、アジトを襲撃するとそこには・・・警官たち続けざまに襲われる。レナの上司のデニース・ブランソンは何かを隠してる・・・

    相変わらずカリン・スローターは素晴らしい。

    警察によるドラッグ密売のアジト急襲は失敗に終わったことはすぐに分かるのだが、詳細は描写されず、ウィルの潜入捜査や恋人サラとの関係の方面が描かれる。ブランソンがやっと明かす場面では鳥肌が立つくらいよく

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    2019年09月09日
  • ブラック&ホワイト

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    カリン・スローター『ブラック&ホワイト』ハーパーBOOKS。

    ウィル・トレント・シリーズ。解説は北上次郎とかなり気合いの入った作品。それだけにシリーズの中では群を抜いて面白い。

    冒頭から若い警官夫婦の自宅に押し入った2人による強盗銃撃事件という緊迫の展開。犯罪者集団を牛耳るビック・ホワイティという謎の男を炙り出すため、ビル・ブラックという偽名で潜入捜査にあたっていたウィル・トレントは、何故か強盗銃撃事件の現場に現れる……

    170ページほど読んだ辺りで、タイトルの『ブラック&ホワイト』に納得。

    ウィルが潜入捜査で追うビック・ホワイティの正体とジャレド・ロングとレナ・アダム

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    2019年06月19日
  • 彼女のかけら 下

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    カリン・スローター『彼女のかけら 下』ハーパーBOOKS。

    ノンシリーズの下巻。えーっ!そういう過去があったのか……余りにも荒唐無稽で壮大過ぎる背景に腰を抜かした。確かにリーダビリティは高かったが、上巻のハラハラドキドキが一挙に吹き飛んだ。それでも、カリン・スローター作品の中ではベストかな。

    ショッピングモールの少年による銃乱射事件のあと、母親のローラと娘のアンディの家に謎の男が侵入する。その男をフライパンで殴り殺したアンディにローラは逃走を命ずる。ローラが指定した貸倉庫にたどり着いたアンディは逃走用の古い車と24万ドルの札束、母親の写真付き偽造運転免許証を発見する。この新たな謎は一体……

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    2019年01月09日
  • 彼女のかけら 上

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    カリン・スローター『彼女のかけら 上』ハーパーBOOKS。

    ノンシリーズ。上巻から何がどうなって、この先どうなるのか全く予想が出来ないハラハラドキドキの目まぐるしい疾風怒濤の展開が続く。これまでのカリン・スローターの作品の中では群を抜いて面白い。

    母親のローラと共にショッピングモールを訪れた警察署通信係のアンディは、突然発生した少年による銃乱射事件に遭遇し、警官と間違えられたアンディは少年に銃口を向けられる。恐怖に震えるアンディの前に立ちはだかったローラは少年のナイフを素手で受け止めると顔色ひとつ変えずに犯人の喉を掻き切る……平凡な主婦であったはずのローラの過去とは……

    2018年の現在

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    2019年01月08日
  • 罪人のカルマ

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    ネタバレ

    シリーズ第6弾。今作も迫力満点。誘拐事件とウィルの父親の出所という現在のパートと、40年前のアマンダとイヴリンの若かりし頃の捜査。その二つのパートからなる今作。その二つが徐々に交わっていくのだけれど現在のウィルの感情の動き、父親の影、なにかを隠されているという不信。それだけで面白いのに40年前のパートはもっと面白い。アマンダとイヴリンが今以上に女性差別が強くある時代に警察で働いているということ。恐怖に遭遇しながらもそこに向かっていく姿、少しでも男たちに認めさせようとする姿。その強さ。前作同様に女性の強さが存分に描かれている。この二つのパートのなかにはウィルの、アマンダたちの強く大きな感情がある

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    2018年07月20日