カリン・スローターのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。
とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。
弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後遺症を抱えたまま家族を離れた長女。父とともに暮らしその弁護士としての仕事を継ぐ次女。暴力で断たれた母の命と、その豊饒なる知性の記憶。
それぞれに性格の異なる姉妹。そして彼女らへの沈黙の不可視的な愛を貫く弁護士の父。それぞれに深みも痛みも介在する人間たちの傷だらけの人生。それでいて並々ならぬ知性豊かな三人の、喪われし人生の記憶とその再生の行方とが、何と、次女が出くわす新たな凄惨なる事件いう形で試されてゆく物語である。学校での発砲事件。もはや珍しいとは言えないアメリカの風物詩みたいな。
事件の加害者である少女の沈黙がまずは謎である。事件の被害者は、さらに年少の少女、そして校長。一見、単純な構図に見える事件だが、動機も、その後の展開も、見た目通りではなさそうであった。事件に関わるヒロインたちの内なる闘いに、外なる疑惑が絡み合い、継いで、彼女たちに関わる男、壊れかけた夫婦関係、出産の失敗などなど、複雑な課題と過去とが絡み合う暗黒の深さ。
主要登場人物がそう多くない割に、彼ら彼女らの個性が否応なく絡み合い、ぶつかり合う。いつものスローター節。どんでん返しや、いくつものトラップやミスリードが、全体のエンターテインメントとしての謎多き物語を象っているのも、いつも通りのスタイルである。
しかし、警察小説の形を取らず、シリーズとは分離させ、事件関係者(被害者、弁護士、検事)やその家族たちの道を、心の内側から、それもいくつもの過去からの出来事の真相に迫ろうとする、この作者ならではの複雑に編まれたプロットにずっと寄りそうような心身の痛みの記憶がたまらない。
娘たちを守れなかった父親と、その後の人生。一見雄弁に見える彼を取り巻く秘密と、娘たちの錯綜する心が出くわすとき、この家族の物語は、この家族を変える時間にようやく出会うことができる。そこにあるのは癒し? あるいは決意?
不幸な事件により無残に傷つけられた家族とその後の人生航路を、押し寄せるいくつもの波濤のなかに描き切るビルディングス・ロマンである。少なくとも時間軸空間軸ともに壮大なスケールのミステリーとして、否、むしろヒューマンなドラマとしてしっかりと味わって頂きたい力作である。 -
Posted by ブクログ
カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。
とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。
弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後遺症を抱えたまま家族を離れた長女。父とともに暮らしその弁護士としての仕事を継ぐ次女。暴力で断たれた母の命と、その豊饒なる知性の記憶。
それぞれに性格の異なる姉妹。そして彼女らへの沈黙の不可視的な愛を貫く弁護士の父。それぞれに深みも痛みも介在する人間たちの傷だらけの人生。それでいて並々ならぬ知性豊かな三人の、喪われし人生の記憶とその再生の行方とが、何と、次女が出くわす新たな凄惨なる事件いう形で試されてゆく物語である。学校での発砲事件。もはや珍しいとは言えないアメリカの風物詩みたいな。
事件の加害者である少女の沈黙がまずは謎である。事件の被害者は、さらに年少の少女、そして校長。一見、単純な構図に見える事件だが、動機も、その後の展開も、見た目通りではなさそうであった。事件に関わるヒロインたちの内なる闘いに、外なる疑惑が絡み合い、継いで、彼女たちに関わる男、壊れかけた夫婦関係、出産の失敗などなど、複雑な課題と過去とが絡み合う暗黒の深さ。
主要登場人物がそう多くない割に、彼ら彼女らの個性が否応なく絡み合い、ぶつかり合う。いつものスローター節。どんでん返しや、いくつものトラップやミスリードが、全体のエンターテインメントとしての謎多き物語を象っているのも、いつも通りのスタイルである。
しかし、警察小説の形を取らず、シリーズとは分離させ、事件関係者(被害者、弁護士、検事)やその家族たちの道を、心の内側から、それもいくつもの過去からの出来事の真相に迫ろうとする、この作者ならではの複雑に編まれたプロットにずっと寄りそうような心身の痛みの記憶がたまらない。
娘たちを守れなかった父親と、その後の人生。一見雄弁に見える彼を取り巻く秘密と、娘たちの錯綜する心が出くわすとき、この家族の物語は、この家族を変える時間にようやく出会うことができる。そこにあるのは癒し? あるいは決意?
不幸な事件により無残に傷つけられた家族とその後の人生航路を、押し寄せるいくつもの波濤のなかに描き切るビルディングス・ロマンである。少なくとも時間軸空間軸ともに壮大なスケールのミステリーとして、否、むしろヒューマンなドラマとしてしっかりと味わって頂きたい力作である。 -
Posted by ブクログ
最初に言いたいのがこれシリーズ物だったのかーーと言う事。
知らずにこの本から読んでしまった…が、
それを抜きにしても凄い面白かった!!
むしろちゃんと最初から絶対読みたいと思わせられる。
シリーズ物と知らずこの本から読んでも全然大丈夫。
中盤からの引き込み度具合が凄い。
物事には常に裏と表がある。あいつは悪い奴だから悪だ!と思っても、悪だと思ってる側の視点からしてみればそこには深い理由があったりする。
善サイドと思わせられた視点から読み進め、中盤になって視点が代わり悪サイドから物事を見れば悪だと思っていた人の事もなんだか憎めなくなる…
ミステリーの展開も勿論だけど、人間関係の面でもとても面白かった。 -
Posted by ブクログ
バスケットのスター選手マーカス・リッピーが起こしたレイプ事件を担当する捜査官ウィル・トレント。金と弁護士の力で立件できなかった。その選手が経営するクラブで遺体が発見された。元警官のデール・ハーディングだった。現場に大量の血液が流れており、ウィルの別居中の妻アンジーのものだと考えられた・・・
うーむ。重たいのにスピーディーな展開。ある巧妙な策略が終盤に明らかになるのだけれど、これ込みでシリーズナンバー1。
後半はアンジーがいったい何をしていたのかが時間を巻き戻して明らかになる。前半も面白いけれど、後半はさらに面白くなる。そういう意味では迷惑な女アンジーの物語だと言える。
しかし、アンジーではなくサラと付き合っているウィルの苦悩。サラの苦悩。こちらもかなり読ませる。
「母親のいない子供にかけられた呪いね。わたしたちは、自分が傷つける相手に慰めてもらおうとするんだわ」
※以下自分用ネタバレ
別の選手ルーベンの妻ジョーはアンジーが捨てた娘。夫から暴力を振るわれている。ジョーを逃すために、アンジーは死んだ振りをし、ジョーも死んだことにする。 -
Posted by ブクログ
2017年から2018年の間
面白そうなのに
「シリーズモノだから…」と
敬遠していた作品があり、そのシリーズを
遡ると途中で合流するのが本作の主人公サラで、それなら発行順からしてこちらから読むのが良さそう。と、思ったらハヤカワ版は絶版…
そこまで調べ、諦めていた。
前情報なしで、書店で見かけた時
「うえっ!」と声に出して、咄嗟に手に取っていた(何故かその書店では最後の一冊だった)
まさかの復活
小さな町のレストランのトイレで、大学教授の女性が腹部を十字に切り裂かれて殺害された。
偶然にも第一発見者となった検死官サラは、迷いのない切創と異様な暴行の痕に戦慄を覚える。
しかも犯人は被害者の習慣を熟知した人物――
この町に暮らす顔見知りに違いない。捜査が難航するなか、第二の事件が発生。
犯人の影はサラに忍び寄っていた……。
MWA賞受賞作家の原点、震撼サスペンス!
と言うあらすじと、表紙のイメージから
パトリシア・コーンウェルの「検屍官」を想像していた。
だけど、別れた元夫(野警察署長)への
断ち切れていない想いなど、ちょいロマンスよりの要素があり、比較的ピリピリしてない。
ただ、事件の凄惨さや
心理描写の濃厚さが在る。
(検屍官はどちらかと言うとイライラか?)
やはり「震撼」と謳うだけあり
どんどん物語に引き込まれていった。
途中まで、被害者の姉妹であり警察官のレナが主役なのではないか?と思うくらい動き回るのだが、やはり主人公はサラであり。
途中で読んできた全ての会話の印象が変わる。
結果:このシリーズどころか
カリン・スローター作品をほぼ本棚に登録
そして、今手元には「三連の殺意」がある。
(ニヤニヤしています)
余談:古本で「ジャック・リーチャー」シリーズを入手していたのだが
まさか…「ザ・ゴールド」で
コラボすることになるとは…
線がつながり、点になるのが
楽しみで仕方がない。 -
Posted by ブクログ
さて自分としては珍しく順不同で最新作だけ齧っている捜査官ウィル・トレント・シリーズ。『ブラック&ホワイト』に継ぐシリーズ第8作は、ウィルの行方不明の妻であり過酷な過去をウィルが共有してきたらしいアンジーの事件。
男性捜査官ウィルのシリーズとは言え、実際は彼を取り巻く個性派女性たちが持ち回り主役となるこのシリーズ。女性らしい感性と容赦のなさで惨憺たる殺人現場を軸に捜査と葛藤と闘いが始まる。心理戦と、暗躍する女たちと、ウィルを獲り合うサラとアンジーというデリケートな恋愛模様にも深みというだけではない捻じれのようなものを感じさせるこの作者独特の世界観を感じる。
事件現場はプロバスケットの花形選手に集まるマネー軍団の企画する新しい城の工事現場で幕を開ける。血みどろの工事中巨大ビルで発見された元刑事の死体。さらに刑事を取り巻く夥しい血液は、行方不明となっているウィルの妻アンジーのもの。
現場捜査だけで一冊の小説の厚みになるほど、時が進まないのが、あたかもパトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズみたいで、アメリカ女性作家のパターンなのかな、と感じる。とりわけ女対女のウィルの取り合いに関する心理戦、これに巻き込まれるウィルと彼の過去、と言ったところで、ストレートな時間軸の物語ではなく、作者の描こうとしているのは、彼らの棲む地軸や時間軸における世界観とその深みであるかに思われる。
家族、血縁、そして過去。すべてはウィルやアンジーの置かれた虐待児童という過去に根差しつつ、そういう世界悪を造り出している支配階級、資本家ども、そして心を病んで暴力衝動に体や心を毒されたスポーツ界のスターたち等々、アメリカの陰影を抉り出そうという試みが見える。
そして前半と後半で物語がでんぐり返りを見せるのだが、事の真相はさらに深く、昨今ではフレンチ逆転ミステリーのピエール・ルメートルを思わせる仕掛けで最後には読者を驚かせてしまう。やや強引な嫌いはあるものの、犯罪現場を料理してデザインしてメディアまでも化かしてしまう荒業プロットには正直度肝を抜かれた。
残酷な暴力シーンや、有象無象のあまりよろしくない人物たちの人間関係図が描きにくいところが抵抗となる読み物ではあるが、どこにも作者の謎の伏線が仕込まれている超級のミステリーであることは確かである。重層構造で、なおかつとてもボリューミーな700ページという重量級エンターテインメントをご賞味あれ。 -
購入済み
女性は強し!
女性検死官サラと特別捜査官ウィルはそれぞれシリーズ化されているらしく、今回は初クロスオーバー作品だとか。とにかく女性の強さ、逞しさを見せつけられる作品だった。出てくる男はヘッポコだらけ。逆に女性たちはみな何らかのハンデやトラブルを抱えながら懸命に生きている。そういった女性ならではの悩みや問題を丁寧に描くことで、鈍感な男どもへの作者の警告とも受け取れる。派手などんでん返しがあるわけではないけれど、最後までハラハラさせるスリリングな展開にページを捲る手が止まらなかった。
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購入済み
残虐性がとまらない
女性の誘拐、拉致監禁、拷問、レイプ。死体解剖とともにおぞましい拷問の方法が明らかになってくる。被害者があまりにも可哀想すぎる。今回は奇跡的に生存者がいるにもかかわらず、捜査は難航。上巻が終わっても容疑者すら浮かび上がってこない。そんな難事件に挑むのは、プライベートでいくつか問題を抱える捜査官コンビ。お互いをナイスフォローしながら難事件に挑む姿が素敵。果たして犯人にたどり着けるか? 下巻へ。
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Posted by ブクログ
ジョージア州捜査官のウィル・トレントは潜入捜査中に、警官夫婦が襲われる事件を目撃する。犯人は殺害されたが、なぜ警官夫婦を襲ったのか。被害者の妻レナ刑事は、麻薬密売人で妹を殺害しているシド・ウォラーを逮捕しようと躍起になっていた。苦労して、アジトを襲撃するとそこには・・・警官たち続けざまに襲われる。レナの上司のデニース・ブランソンは何かを隠してる・・・
相変わらずカリン・スローターは素晴らしい。
警察によるドラッグ密売のアジト急襲は失敗に終わったことはすぐに分かるのだが、詳細は描写されず、ウィルの潜入捜査や恋人サラとの関係の方面が描かれる。ブランソンがやっと明かす場面では鳥肌が立つくらいよくできてると思った。そこから捜査がグイッと進んでいくわけで、そのグルーヴ感があるとても心地良かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズ第6弾。今作も迫力満点。誘拐事件とウィルの父親の出所という現在のパートと、40年前のアマンダとイヴリンの若かりし頃の捜査。その二つのパートからなる今作。その二つが徐々に交わっていくのだけれど現在のウィルの感情の動き、父親の影、なにかを隠されているという不信。それだけで面白いのに40年前のパートはもっと面白い。アマンダとイヴリンが今以上に女性差別が強くある時代に警察で働いているということ。恐怖に遭遇しながらもそこに向かっていく姿、少しでも男たちに認めさせようとする姿。その強さ。前作同様に女性の強さが存分に描かれている。この二つのパートのなかにはウィルの、アマンダたちの強く大きな感情がある。シリーズの集大成のような作品。謎解きの面白さとさらにその奥にあるウィルたちの想い。ウィルのこれまでが見えきた今作。そしてこれからが気になる。早く次作が読みたい。