あらすじ
「スローター史上最大スケール、一気読み度も史上最高」
――解説:霜月蒼(ミステリ評論家)
CDC疫学者の拉致と爆破テロ、連続する凶悪事件の目的とは!?
〈ウィル・トレント〉シリーズ、最大の危機!
■〈ウィル・トレント〉シリーズ
『ハンティング 上・下』
『サイレント 上・下』
『血のペナルティ』
『罪人のカルマ』
『ブラック&ホワイト』
『贖いのリミット』
『破滅のループ』
ショッピングモールの駐車場で、疾病予防管理センターの疫学者が拉致された。行方不明のまま一カ月が過ぎたとき、アトランタ中心で爆破事件が発生。現場へ急行した捜査官ウィルと検死官サラは混乱の中、車の追突事故の救命にあたる。だがその車に乗っていたのは、逃走中の爆破犯たちとさらわれた疫学者だった。銃撃戦の末にサラも連れ去られ――。連鎖する凶悪事件、真の目的とは!?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
今まででいちばん面白かったかも。(って何度も思ってるんだけど)
これまでは連続猟奇殺人ばかりだったが今回はテロ。ダッシュはなんとなく俳優のラミ・マレックさんを想像してた。後半はところどころ雑なところがあるものの前半はなかなかスリリングだった。サラが犯人のDNAを集めようとするのは自らの死をリアルに覚悟しているからだと知ったとき、サラが死ぬわけないと思いながらも心配でたまらなくなった。ふと読むのを中断したとき、いまじぶんがどこにいて昼なのか夜なのか何時なのかわからなくなったほど熱中して読んでた。ウィルに関する極秘資料とても好き。
は〜、グウェンはもちろんだけどミシェルも好きになれなかった。やっぱり女性の登場人物に好きなひとが少なすぎる〜。でもウィルとサラが好きなのでまた続きも読みたい。もうレナやアンジーは出てこなくていい!
Posted by ブクログ
いつもの猟奇的な単独犯ではなく、犯罪組織が相手主人公ウィルの恋人サラが連れ去られてしまう。(組織への潜入捜査とかもあったけど、それよりも武装していて爆破テロを実行するタイプ)
犯罪者と行動を共にするサラパート
前半ほぼ落ち込みまくってるウィルパート
操作で協力することになったFBIにイライラしまくるフェイス(ウィルのバディ)パートに分かれて進行
松田青子さんの「女が死ぬ」という掌編にあった物語のために女が死ぬことについて「話の進行のためだけに登場人物が死ぬ軽さ」を気にしていたのだが、この作者は被害を受けた後についても描いているという話が解説にもあり、確かに容赦なく、重たい。
過去のシリーズ作品でも感じていたので納得。
200ページまでは数日かけ、残り400ページは一気読みしてしまった。
Posted by ブクログ
カリン・スローター『破滅のループ』ハーパーBOOKS。
ウィル・トレント&サラ・リントン・シリーズの最新作。700ページの大ボリューム。このシリーズは読み方を覚えると極めて面白い。
カリン・スローターの描く犯罪は冷酷無比にして大胆であり、全く情け容赦ない。そして、こうした犯罪に翻弄され、心身共に痛め付けられる主人公というのが1つのパターンになっている。本作もまた、冒頭からウィルとサラの束の間の幸せを奪うような大事件が起こり、二人に最大の危機が訪れる。
恋人の検死官サラと束の間の平和な時を過ごしていたウィルは、たまたま近くのアトランタの中心部で発生した爆発事故現場に急行する。途中、車の多重事故に遭遇した二人は救命活動を行うが、事故車の中に居たのは爆発を引き起こして逃走中の犯人たちだった。ウィルとサラは車内に1ヶ月前にショッピングモールの駐車場から拉致されたCDC疫学者のミシェルの姿を発見し、犯人たちとの対決を試みるが、ウィルは負傷、サラは犯人に連れ去られる。サラが連れ込まれたのは……
事件はこの後、思いもよらない展開を見せる。
本体価格1,236円
★★★★★
Posted by ブクログ
ウィルやサラ、フェイスなどのいろんな人の視点で、時間を前後させながら、進める序盤のストーリーは、感情がよく分かり、すごく良かったです。そして中盤までにかけては緊迫の展開。それにしてもアマンダの尋問がすごい。シリーズを重ねるごとに存在感が増し増しです。ただ中盤は、若干中弛み気味に感じました。後半残り100ページは辛い展開になりましたが、最後の最後で、次巻以降の展開が楽しみにも。
Posted by ブクログ
勢いのあるストーリーにまたまた2日で読んでしまうことに。700ページもあるのに、止められませんでした。全く、すごいお話。とんでもない企みだけど、ありそうな気もするくらい、今のアメリカが抱える闇を見せてくれたようです。医学の専門知識が怒涛のように押し寄せ快感でした。
Posted by ブクログ
カリン・スローターの作品はぐつぐつと煮詰めたシチューのようだ。濃縮された様々な食材が、混在し、溶けて、一体となった混合物。作品中でいう食材は、主に人間である。様々な毛色の人間たちが、煮え滾るスープの中で、煮詰まって、ぶつかり合う鍋の底のような世界だ。
ウィル・トレント・シリーズ。そのコアなヒーロー&ヒロイン=ウィルとサラとが主役を務める、実に王道の作品。本シリーズの未だ初心者のぼくにとって、ウィル・シリーズなのに、毎度、他のキャラクターが主役を務める感の強いのがこの作家の特徴。つまり、キャラの立った人物像が、予め考え抜かれ、設計された凝ったシリーズなのだと言える。
本書はシリーズ中、最もシンプルな作品と言っていい。通常の殺人事件に始まるミステリーとは言えない。最初にとある人物の誘拐シーンで幕を開ける。そのほぼ一か月後、いきなり病院で爆弾テロ勃発。逃走現場での撃ち合いの中にウィルとサラの姿、そして誘拐された女性の姿。そんな、ど派手な幕開けである。
700ページ弱の長大なページをほぼ全編緊張の状況が埋める。凶器のテロ集団。感染症に苦しむ子供たちでいっぱいのキャンプ。渦中のサラ。ウィルの潜入。ジョージア州警察のバックアップ。男性作家にさえ書けないほどの度はずれた暴力描写や、緊張感の緩まない心理描写。ウィル、サラ、ウィルの相棒である女性刑事フェイスの三つのシーンで構成される複数多面描写による、時空間的厚みと、それを支えるストーリーテリング。
この物語の題材は、差別とヘイトが人種間に産みつける憎悪、その発火点、そして際限のないほどのテロリストたちの冷血性と、悪魔性である。この種の徹底した悪と闘うのが我らがヒーロー&ヒロインたちなのだが、彼らの世界のディテールが読者の枯渇しようとするヒューマニズムを救いあげる。
その断面は、男女の恋愛、家族の愛情などをもって細密画のように丁寧に描かれる。悪に対する善なるものとして。今回、テロ組織が用意する悪魔の兵器とその準備段階でかなり疲弊してしまう神経を、善なる側の愛情や友情が救ってくれる。無論救われない魂の数と平衡を取っているとは言えないまでも。全体が残虐さに満ちたという意味ではシリーズ屈指の一作であるにしても。
個人的には、面白さはあってもどうも好きになり切れない作家である。パトリシア・コーンウェルを継ぐ、時代の売れっ子女流作家であるが、同じ感じで面白さだけが読む原動力であるけれど、内容の残酷さ、容赦なさは二人とも同じような側面を感じる。でも、コーンウェルを結局は全作読んでしまっているように、このままキャラクターたちに引きずられてしまいそうな自分を、ぼくは自分でよく知っている。不思議なことに。
Posted by ブクログ
疾病予防管理センター(CDC)の疫学者が誘拐され1ヶ月が経過。爆発事件があり、犯人グループにウィルの恋人、検死官のサラが拉致された。大規模なテロを計画している、極端な白人至上主義者たちのグループの仕業だった。テロを止められるのか、サラの行方は、どんなテロなのか・・・
途中、長いなーと思いながら、スローター作品だから我慢してれば報われると思っていたら、やはり報われた。
ラストに近づいて、テロの詳細が分かる辺りから急速に加速していった。
リーダーのダッシュが言う。
「わたしのレディたち、よく聞きなさい。いまからいちばん大事なことを教えるぞ。人種はピラミッドのように積み上がっている。いちばん上にいるのはいつだって白人男性だ。その次は白人女性で、彼女たちはひとりの主人に仕えるだけでいい。その下はほかのさまざまな人種だ。地球上に住む人々がみんな平等なわけはない」
こんな風に考える人間が一定数いるというのが、人間というプログラムのバグだと考えればよいのだろうか。