清水真砂子のレビュー一覧
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ネタバレ3冊目のゲド戦記から16年後に発表されたゲド戦記4番目のお話。訳者の清水さんが書いているように、竜の親分カレシンに乗ってゴント島に帰ってきたゲドを迎えたのは、2巻目でゲドとともにハブナーに伝説の腕輪を持ち帰ったテナーだった。
この巻は、そのテナーが再び主人公になり、養子に迎えたテルー、そして一切の魔法を失って普通の中年男になったゲドが脇役となる。
3冊目までの冒険小説ぶりとは全く違う内容なのだが、まず驚くべきことは、この話の主人公が40過ぎの中年の未亡人だということだ。どこが少年少女向けの小説なのか。私は中年女だから、このテナーのぼやきやら疑問やらが手に取るようにわかるが、若い人にはたぶん全然 -
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今までの子育て関連の本で、一番じっくり読んだ。勉強になった◎
心に響いたことをざっと書く。
・怒りの感情を大切に…
怒りの底には、自分自身を大切にし、人間としての尊厳を手放すまいとする意志とともに、相手に対する期待なり信頼感がある。
・子供の素直さとは…
大人の言うことに逆らわず、疑問を持つ持たずにいること=素直さ、ならそれは危ない
・家族とは…
「結婚して家庭を持ったら、毎日帰りたくなるような家庭を作るべき」なのか?人間、子供はそんなひ弱ではない。何かしら問題を抱えながらも共に生きていくのが家族
・尊敬する人は…
「尊敬する人は?」と聞かれて「親だ」と答えるのではなく、今すぐ親など -
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ネタバレ第1作目のゲド戦記は、少年ゲドの成長物語だったが、これは主に少女テナーのが囚われの身から自由になるまでの物語である。
闇の者、名のなき者たち、つまりは死の世界に属する精霊の世界で大巫女アルハ(「名がない」という意味)は、「選ばれた少女」として特別な位置にいながらも、実際には闇の世界の奴隷として生きている。生まれた時の名前は剥奪され、暖かい愛情も知らずに、大巫女として義務のみを果たす生活。つまり、自分自身がない状態で生きている。そんな生活のなかで、異邦人である南方の魔法使いゲドが、神聖な墓地の地下迷宮に忍び込んで、宝を奪いにくる。中盤まではこんな感じ。
大巫女としての務めを果たしながらも、決して -
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目次にまず目をやると、”第1信 「かわいい」を疑ってみない?、第2信 怒れ!怒れ!怒れ!、第3信 ひとりでいるっていけないこと?”と気になるタイトルが続きます。周囲の目を必要以上に意識し、それに雁字搦めになって”自分らしさ”を見つけることのできない若い世代に向かって『ゲド戦記』の翻訳者であり児童文学者である清水真砂子さんの直球勝負の手紙です。「おとなになるっておもしろい?うん、だんぜん‼でも焦らないで。現在をていねいに生きてほしい。自分をごまかさず、はぐらかさず、スマホからも解放された独り居の時間を確保して。孤独と孤立が全く違うことは、ここまで読んできてくださったあなたには、もう十分おわかりで
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このゲド戦記シリーズは大魔法使いの一生の中で一貫して
人間世界がもたらした視野の狭い知識と知恵と所有意識によって
自然界の調和した食物連鎖に見る営みからはみ出した
人間の強欲と対立関係が必要とする嘘と秘密による暴力と
イジメ真理からなる無理心中とも言える共食い問題について
文化的な無限なるモノとして掘り下げている
この自滅的問題を逆手に取ることで自分とその環境が不安恐怖に陥り
全体観を見失っているという事実を知って
自らの意識をもって自然界の真理を解き明かし
自律へ向かう集いの道を切り開けるようになっている
このパラドックスこそが
無限なる全体観と有限なる部分からなる自己簡潔構造が示す
こ -
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一貫してこの作者は自主性を貫いて
けして脅しや不安恐怖による命令で
人の心を奪って自分の思惑で物事を動かし
無理強いした解決を良しとしない
浅知恵であろうと怯えからであろうと
本人のその時その場の意思と選択を尊重し
むしろこの物語の主人公の成長を可能にするために
自分の肉体を提供しようとすらしてみせる
この自主性の村長こそが全体観につながる
調和を目指すことで
どの部分にとっても最善の喜びへ向かう旅になることを
意味しているのだと伝えたいようだ
何かを決断するときには
「ある」と「する」のどちらかを選ばなければならない
そこに「ある」人生に添うことと
何かを選んで「する」人生に踏み出すこ -
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過渡的で中途半端な知識と知恵がもたらしている
神と崇めて依存する闇に包まれた死の世界と
全体観という限りない成長を理解して
調和の循環で共生する大自然とに迷い
先取りという権利に依存することで
不安恐怖に陥り混乱してきた迷える人間社会
富と保障に依存するお互いの契約による安全のほかに
もっと確かだけれども重さと摩擦による負荷を伴う
信頼というお互いを認め合う集いがある
一人では確信が持てずに弱いけれども
向き合う相手によって自分を確認できた時のお互いには
限りない信頼が生まれて強くなる(171)
安全に執着するための依存というシガラミから
自分で選ぶという不安と希望を秘めた自由自在の環境に -
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ゲド戦記第三巻。
…苦戦しました…お好きな方には申し訳ないですが今回けっこう辛口感想です。
決して単調なお話ではないはずなのに、文章がとっても静謐で、しっかり気を張って読まないと心が他所へ彷徨い出しそうになっちゃう(つまり集中するのが難しかった)
ネタバレしつつ感想言うと、要するに「地獄めぐり」というか「黄泉平坂」というか…まあ、生と死の狭間の話ですね。
きっとゲド戦記の、アメリカ人が書いたのにどこか東洋っぽい感じが人気なのかなと個人的には思ってます。そういう世界観を味わうにはいいんだけど、なんだか新鮮味に欠ける気がしちゃいました。たぶん後世の作品にこの作品の要素がバンバン入っちゃって -
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ネタバレゲド戦記、読み終えた。どこかで読んだような。と思ったら、西のはての年代記と似た作り……いや。作者さんが同じだから似てて当たり前なのだけど、ゲド戦記から魔法と竜をぬいたら西のはての年代記になるのねと思った。
本編を終えてから、伝外を読んでよかった。『アースシーの風』を先に読むか、伝外を先なのか……迷った。結果。私は伝外を後にしてよかったと思った。
迷うのはこの伝外に帰還とアースシーの風の間の物語が入ってるから。時系列順に読みたいというこだわりがあるなら、伝外が先の方がいいのかも。……私、時系列よりもメイン重視。脇道の話は後からじっくり読みたい。
物語は5つ。
「カワウソ」
魔法の島、ロークの