清水真砂子のレビュー一覧
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言わずとしれたアーシュラ・K・ル・グィンの代表作の一つ。
ル・グィンが没後に発表した『火明かり』を読むために、かなり久々に1作目から読み直してるのだけど、今回が一番面白く読めたかもしれない。
アースシーと呼ばれる多島海世界で、魔法の才能を持って生まれた少年ゲド。しかし、才能故の傲慢な性格が災いして、死の影を呼び出し、放ってしまう。影はゲドを執拗に狙い、ゲドはその影から逃げ続けるが、ついに対峙することを決意する、という成長譚。
表面的には児童向けのファンタジー作品という様相を呈しているが、読む時期によって全然印象が変わる作品。
自分は小学生の頃に読んだときに後半になるにつれてよくわからなくな -
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魔法の風を帆にはらみ、海を超える“はてみ丸”。
たったそれだけの言葉だけで、僕の心はアースシーへと舞い戻る。胸の昂ぶりが抑えられない。
たとえそれが、炉辺の明かりに照らされて床に伏せるゲドの脳裏に浮かぶ、夢うつつの思い出だとしても。
アーシュラ・K.ル=グインが最後にゲドの物語を遺してくれたことへの感謝を噛み締める。
序文にてル=グインは、こう宣言する。
“自分の思い描くアースシーを出版社のジャンル分けや批評家の決めつけにあわせることはやめました。ファンタジーは未熟な者が読むものだという考えは、成熟と想像力というものについての凝り固まった誤解から生まれたものです。主人公たちは成長しますし、若 -
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1巻でゲド中心の物語を読んでいると、中盤まで「ゲドは?」と思いながら読んでしまう。それはこの本がどういう話なのかを最初に書いていないからこそ起こるのだが、主人公や舞台は毎度変わるのだと思った方がいいのかもしれない。
中盤、ゲドが姿を現れてから物語は一気に加速。1巻で<影>に打ち勝ったゲドが、闇を切り裂く光となって、暗黒の地下迷宮を守る大巫女アルハの奢りと傲慢、そこからくる孤独と不安を打ち払っていく。
それでもいつまでも迷う彼女に読者はやきもきともするが、丁寧に言葉にされているので、自分の身にもあるその<影>にアルハを重ねているだろうという解説にも頷ける。
考えないで奴隷のように暮らすこと、自由 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ墓所の大巫女アルハが、ゲドをきっかけにテナーとしての人生を取り戻す物語。闇の中で安逸に暮らす事よりも、未知である外の世界で生きることを選んだ。
ファンタジー世界の物語なんだけれど、闇からの心の解放など、現実の世界にも通じることがテーマになっていて、奪われた時間を思って泣くテナーのシーンでは、私も足を踏み出すことをおそれて、無駄な時間を過ごしていないだろうか、いつかこんな風に泣く日が来るのではないか・・と思えて、人生をの一歩を踏み出す勇気をもらえた気がする。
そして一作目と比べて、立派な魔法使いとして心の落ち着いたゲドを見れるのもうれしい。 -
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清水真砂子
1941年、朝鮮半島に生まれる。児童文学者・翻訳家。青山学院女子短期大学名誉教授。主な著作に、『子どもの本のまなざし』(日本児童文学者協会賞受賞)、訳書にU・K・ル=グウィン『ゲド戦記』全6巻
ただ、私が気がかりなのは、黙っていたいのに、無理をしてでも、しゃべらなくてはいけないと考える人が一〇代の人々の中にますます増えているように見えること、 内容はどうであれ、しゃべるという行為そのものを価値と考える人々が多くなっているように思われることで、こういう状況のもとでは他者の声に耳を傾けたり(小さな声はなおさら)、自分自身の内なる声に耳を澄ますことはむつかしくなってきているの -
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“長く、白い帆を白鳥の翼のように膨らませて、その船、天翔丸はよろい岩を抜け、静かな夏の湾を滑るように、ゴンド港目指してやってきた。”
清水真砂子さんによる美しい翻訳にいざなわれて、冒頭から懐かしいアースシーの世界に浸ることができる。
しかし、帰還 -ゲド戦記最後の書-」から10年経って著された「ドラゴンフライ」と「アースシーの風」では、これまでの正義や秩序、そして世界のありように疑念の目が向けられていく。
真の魔法使いは世俗を断って学問を修め、世界の均衡を壊さないように必要なときにだけ魔法の力を用いる。では“魔法の力”とはなんなのか?
人は死ぬと黄泉の国に赴くのに、何故、鳥は山羊はそこにはいな -
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「私たちは揺るがない確かなもの、遠い昔からある真実、変わることのない単純さを、ファンタジーの領域に求める。ー
するとそこに多額の金が注ぎ込まれる。模倣と矮小化された“商品化されたファンタジー”は、かわいく安全なものとなり、ステレオタイプ化されてガッポガッポと金を儲けていく。ー
私たちは長い間、現実と空想の両方の世界で暮らしてきた。しかし、その暮らし方は、どちらの場合も、私たちの両親やもっと前の先祖たちのそれとはちがう。
人が楽しめるものは年齢とともに、かつまた時代とともに変化していくものなのだ。-
物事は変化する。
作家や魔法使いは必ずしも信用できる人たちではない。
竜がなにものであるかなど、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終えて、テナーとゲドがこれから歩いていく森のことを思った。テハヌー、レバンネン、セセラク、アイリアン、ハンノキ、皆のことを思い、ほっと溜め息と涙がこぼれた。『ゲド戦記』この物語には、この世で最悪の悪(レイプなど)との闘い、この世でこの自分で成せる最善を成そうとする人々、強く"fierce" に生きる人々、その交流が描かれる。この6巻の物語に人生で出会えて良かった。生に限りはあれど、物語は逃げていかない。ゆっくり読みたい物語だ。巻末、訳者清水真砂子さんとアーシュラ・ル・グヴィンの交流も、この物語の一部だった。作者と訳者に感謝。
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