【感想・ネタバレ】こわれた腕環 ゲド戦記2のレビュー

あらすじ

魔法使いのゲドが〈影〉と戦ってから数年後、アースシーの世界では島々の間に紛争が絶えない。ゲドは平和をもたらす力をもつという腕環を求めて、アースシーの東、アチュアンの墓所へゆく。墓所を守る大巫女アルハは、幼い頃より闇の者たちに仕えてきたが、ゲドとの出会いによって、自らの世界に疑問を抱きはじめる……。

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Posted by ブクログ

1巻でゲド中心の物語を読んでいると、中盤まで「ゲドは?」と思いながら読んでしまう。それはこの本がどういう話なのかを最初に書いていないからこそ起こるのだが、主人公や舞台は毎度変わるのだと思った方がいいのかもしれない。
中盤、ゲドが姿を現れてから物語は一気に加速。1巻で<影>に打ち勝ったゲドが、闇を切り裂く光となって、暗黒の地下迷宮を守る大巫女アルハの奢りと傲慢、そこからくる孤独と不安を打ち払っていく。
それでもいつまでも迷う彼女に読者はやきもきともするが、丁寧に言葉にされているので、自分の身にもあるその<影>にアルハを重ねているだろうという解説にも頷ける。
考えないで奴隷のように暮らすこと、自由を求めて戦うこと、どちらを選ぶか。軽くもなく、重すぎもせず爽やかに描き切るので舌を巻く。

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2024年04月19日

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1人の少女の成長の物語として、エッセンスが凝縮されているような感じ。初期の傲慢な子供っぽさから、視野が広がって自分の立場を考え始め、好奇心のまま冒険して、大人の悪意を知って、自分の力を超えた本能的に敬うべき存在に出会う。そして迷いながらこれまでの行いを省み、新たな世界へ踏み出す。
精神的に、こんなふうに大人になりたかったなぁ、と思う。

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2024年03月31日

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ネタバレ

墓所の大巫女アルハが、ゲドをきっかけにテナーとしての人生を取り戻す物語。闇の中で安逸に暮らす事よりも、未知である外の世界で生きることを選んだ。
ファンタジー世界の物語なんだけれど、闇からの心の解放など、現実の世界にも通じることがテーマになっていて、奪われた時間を思って泣くテナーのシーンでは、私も足を踏み出すことをおそれて、無駄な時間を過ごしていないだろうか、いつかこんな風に泣く日が来るのではないか・・と思えて、人生をの一歩を踏み出す勇気をもらえた気がする。
そして一作目と比べて、立派な魔法使いとして心の落ち着いたゲドを見れるのもうれしい。

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2024年02月18日

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夏読56冊目。
#ゲド戦記 シリーズ2作目。
アチュアンの大巫女アルハとゲドとの出会い。
迷宮を命懸けで探索するアルハたちには、ワクワクした

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2023年08月28日

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ネタバレ

闇にいるアルハと闇を知るゲド。光にたじろぎ自責にかられ何度も闇へ戻ろうと一人になろうとするアルハと、アルハの内なる灯を見つめ手を広げて待つゲド。マインドコントロールから自ら脱する物語とも読める。
[闇の奴隷として、なじみある場所で、囚われた、けれど安穏な暮らしを続けるか、それとも、たとえ困難でも自由と光明の世界に出ていくか](訳者あとがき)
正義を希求する誠実な旅。

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2023年03月28日

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 特殊な風習で縛られている環境の中で、自分はテナーかアルハかどちらかを迷っている様子に共感した。
 自分が自由になるのか、奴隷のようでいるのかを選んでも、自分を愛してくれた人を裏切った罪悪感の苦しんでいる様子が、自由の大変さを表していた。

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2023年01月26日

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異常な環境も慣れてしまえばそれが普通だと思い込み、
迷い込んできた普通のものを異物だと思い込んでしまう
風習とか宗教とかの怖さを思い出した。
縛られていた人が自由を得ると選択する恐怖を感じるのか、と読みながらびっくりしたけど、そりゃそうか、選択できる自由があるって素晴らしいんだなと改めて思った。

人に与えられたものだけで生きていくより、自分で選択して私は生きていきたい

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2022年09月04日

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1は自分の内なる影との戦いだったけど、2は影や死の世界と繋がる真っ暗な地下の迷宮で、他者を闇から救う物語。今回の舞台である、名を持たぬ者(?)の墓がとにかく暗い!描写で暗闇がありありと表現されている!恐ろしい姿のモンスターは全く現れないのだけれど、こわい。

人間の慣れとは恐ろしいもので、ひどい環境や扱いを受けていたとしても、それが当たり前になってしまうことがある。気付かなくなってしまうのだ。違和感って実はすごく大事なのかもしれない。主人公の彼女も自分の小さな違和感を見逃さなかった。それが彼女の運命を大きく変えていく。テナー、よかったね。自由は辛く厳しいこともあるけれど、自分で選択する、ということが生きることだと私は思う。アルハのままでは、どうしたって幸せにはなれなかっただろう。しかし、生まれてきてすぐに過酷な運命を背負う、というのは、ひどい話のように思うが、誰も自分の親も国も選べない。容姿も能力も選べない。不平等な世界で、それでも、どう生きるか、の選択ひとつひとつが自分を人生を決めていくんだ。きっと。彼女が墓の番人から解放された夜の星空の輝きに胸を弾ませたその感覚を、ずっと持って生きたいものです。

2021.05.10

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2022年07月31日

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とても面白かった。第一巻・「影との戦い」の時は傲慢だったゲドが「こわれた腕輪」では人に寄り添い、優しく、ミステリアスな青年になっていて、成長を感じた。闇と葛藤するテナーと「テナー」の心を尊重するゲド。この二人の冒険譚は心を温かくさせてくれる。

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2022年07月24日

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第二部 アチュアンの墓所(日本タイトル: こわれた腕輪)での主人公はテナー(アルハ)という少女。
8歳で、アチュアンの墓所に連れてこられてここのの大巫女として、生涯名も無き者の生贄のようにここを守るものになっていた。15歳になるまでの辛く孤独な生活がかさ語られていく。
罪人が送られてくると、残忍な処刑をも行った。話も中盤、アチュアンの墓所に忍び込んだアルハより10歳ほど年上の盗賊が捕らえられた。
迷宮に隠されてあるエクス・アクベの腕輪の欠片を探しに来たのだった。処刑をしなければならない。だが、アルハには、ゲドが気になってしまった。長い日々、二人は忍び逢っていろんな話をし、若い男が魔法使いだと知った。
二人は信頼を共にすることになる。
アルハは大巫女として罪を犯してしまった。
アメリカのテレビドラマ【ゲド 戦いのはじまり】の原作にされて、第一部と第二部がごっちゃにされて放送されている。原作は、第一部から10年の月日が経過しているようだ。
無論、原作の方がドラマより面白い。
暗くじめじめしたアチュアンの墓所での情景はずっと夢見そうだ。
素晴らしい作品である。

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2022年03月29日

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ネタバレ

第1作目のゲド戦記は、少年ゲドの成長物語だったが、これは主に少女テナーのが囚われの身から自由になるまでの物語である。
闇の者、名のなき者たち、つまりは死の世界に属する精霊の世界で大巫女アルハ(「名がない」という意味)は、「選ばれた少女」として特別な位置にいながらも、実際には闇の世界の奴隷として生きている。生まれた時の名前は剥奪され、暖かい愛情も知らずに、大巫女として義務のみを果たす生活。つまり、自分自身がない状態で生きている。そんな生活のなかで、異邦人である南方の魔法使いゲドが、神聖な墓地の地下迷宮に忍び込んで、宝を奪いにくる。中盤まではこんな感じ。
大巫女としての務めを果たしながらも、決して満たされることがない少女。外の世界に興味を抱きながらも、大巫女としての自尊心と責任感から、必死に自分が仕える闇の世界に忠誠を誓いつづける姿が痛々しい。それが、人生で初めてみる男、またその男の説得により、自由を求めて全てを捨てることになる。その葛藤もまたリアルで胸に迫るものがある。

読んでいて、これはまるで原理主義宗教やセクトなどに夢中になる人と同じではないのかと思った。自分が空っぽになるということは、自我は抑圧されるか忘れられるかして、考えることがなくなり、義務と規範のみが自分の行動の基準となることだ。
主人公アルハ(テナー)は、実際、読み書きができない。読んだり書いたりするのは魔法使いのような人間たちがすることで、彼女の世界ではそんなことには価値がない。たとえば、地図を読むことはないので、迷宮の道も口頭での指示か、または暗闇のなかで全て手でさぐって覚える。大巫女の責務を果たすには、読み書きのような「考える」教育は必要なく、代々受け継がれてきた儀式や儀礼を習得するだけでよいのだ。
が、腕環を奪いにきたゲドは、闇を崇拝するアルハ(テナー)に、闇(名のなきものたち)は人間たちに何ももたらさない、彼らには与えるものなどなにもないのだから、と教え諭す。自らを相対化してみる、最初の試練である。

彼が来た光の世界とアルハが住む闇の世界の対比、そして、地下の迷宮で出会う女と男という対比が際だち、違う世界に生きる二人が信頼を基盤にして二つに割れていた腕輪を一つにするところはとても象徴的だ。信頼というのは、この本ではでてこない言葉だが、愛のようなものだと思う。それを暗示しながらも、しかし、話はそこでは終わらず、テナーに戻った少女がこれから超えていかなければいかない困難、そして自由への希望を予感させながら物語は終わる。
とにかく素晴らしい筆運び、スケールも大きく、かつ自分の人生についてもはたと考えてしまうような深さを併せ持つ小説である。

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2018年02月11日

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過渡的で中途半端な知識と知恵がもたらしている
神と崇めて依存する闇に包まれた死の世界と
全体観という限りない成長を理解して
調和の循環で共生する大自然とに迷い
先取りという権利に依存することで
不安恐怖に陥り混乱してきた迷える人間社会

富と保障に依存するお互いの契約による安全のほかに
もっと確かだけれども重さと摩擦による負荷を伴う
信頼というお互いを認め合う集いがある
一人では確信が持てずに弱いけれども
向き合う相手によって自分を確認できた時のお互いには
限りない信頼が生まれて強くなる(171)

安全に執着するための依存というシガラミから
自分で選ぶという不安と希望を秘めた自由自在の環境に
自らを解放したが故に味わう喜びと苦しみ
自由自在は自分の責任と判断で大地を踏みしめ
方向を定めて歩む重たい実感を伴うモノである
そこでは
途中で集中が途切れて外の幻影に怯えてくじけ
過去を権利として逃げ戻ろうとしてしまうかもしれないし
相手とつながることの相乗効果で
頑張ることに喜びを見出せるかもしれない(213)

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2014年11月07日

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ネタバレ

自分の可能性に目を閉じ、ひたすら与えられた役割を全うすることを求められた少女の生きる道。息が詰まりそうな慣習とそれに付随する彼女に課せられた大巫女としての責務。それが当たり前だと生きてきた少女が目の当たりにしたのは、先人たちが作り上げた信仰という名の悪意と、自分の中に潜む己とは何者なのかに対する純粋な探究心と好奇心。その二つが垣間見えた時、少女は大海を知る魔法使いハイタカに出会う。戸惑いつつも、ハイタカとの信頼を築き己たちを解き放った彼女の目の前に広がったのは、自由というなの新しい世界。1人の少女が成長し、自分の生きる道を切り拓いていく姿を神秘性を帯びさせながら描き切った物語。

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2024年07月08日

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1巻の影との戦いから数年。舞台はアチュラン、アルハ(テナー)が登場。
『自由とは何か』を問われたような作品だった。

5歳から大巫女として働き続け、外界とは遮断された村。付き合う人は巫女か付き人ぐらい。彼女の仕事も暗闇の冒険。
そこにケドが侵入者として現れる。
アルハはゲドを殺さず話をする。そして出るか残るかの選択を迫られる。
出たときはテナーとして、不安と挑戦を。
残るときはアルハとして、安定と苦悩を。

選択できることが自由だと思うが、ゲドが現れなかったとしてもその村の中ではアルハも自由ではあった。(大巫女という立場も利用できた)
しかし、それ以上の惹かれる世界を知ったのならば、飛び出さずにはいられない。

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2024年05月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

68歳の老人が読んだ所感
昨日の1巻に続けて、この2巻目も1日で読んでしまった!想像して映像化していくのが楽しい。
地下の迷宮を脱出するシーンはインディージョーンズの最後の聖戦の聖杯のシーン(ペトラ遺跡)がダブってしまったし、エレス・アクべの腕輪の話は天空の城ラピュタのシータのペンダントの話とダブってしまった。テナーがシータに見えてきた。
ゲドは107ページから登場にびっくり、それもある男とかいってなかなかゲドとはわからない。
生まれ変わるという表現が数カ所あったが、欧米人は輪廻の思想がなかったはず?再度調査したら、やはり、キリスト教にはないらしいことがわかった。私達は「生まれ変わったらとか」、「前世はウグイスだったかもとか言うけど」、欧米人には野蛮な未開人の会話に聞こえるのかもしれない。

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2024年07月07日

Posted by ブクログ

再読本。
若い頃はもっとありありと、映画を観るようにアチュアンの迷宮での出来事をドキドキしながら読んだけれど、年老いて、想像力が衰え、イメージも面倒になってきたのを実感。それでも充分の読み応えと、刺さる言葉の数々。自由は不安と責任を伴う。
自ら決めること。ゲドの宿命に応じた生き方も、今なら納得。
の後の巻を読むのも楽しみ。

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2023年08月31日

Posted by ブクログ

第一巻の魔法の世界を期待して読み始めたら!
全然違う!
なんだこの閉鎖的過ぎる世界は!
というかゲドはどこ!

となったけどちゃんと最後まで楽しく読めました。

とにかく最初からテナーの思考回路というか、価値観の描き方が凄く良い。確かにそう思うよな、私も行った方がいいと思う….とまるで自分がテナーと共にあるような錯覚を覚えながら読んでいた。

テナーとして生きるのか、アルハとしてここに留まるのか。テナー自身の葛藤と、その後選択をしてからもなお自由の重さに潰されてしまいそうになるテナーの姿を見て自分自身の愚かさとテナーの強さに涙した。奴隷でいることは簡単だけど、自由でいることって本当に険しい道なんだよな……でも自由にいることこそが人間の目指す場所なのかと思うと、自分の立場に甘んじる今の生き方が恥ずかしく思えた。

ちゃんと今回も冒険のワクワク要素もあり、世界観のつくり込みに圧倒される場面も沢山あり本当に最後まで楽しく読めた。このまま3巻へ行きます。

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2022年11月07日

Posted by ブクログ

シリーズ物の2作目は鬼門だと思っているのに、面白かった
1作目でゲドの人格がかなり老成していたから、この後どうするのかと思ったら、テナーがほぼ主人公
満を持してゲド登場
設定も展開も圧倒された

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2022年02月27日

Posted by ブクログ

※※※ラストまで完全ネタバレしていますのでご了承ください※※※

「ゲド戦記」シリーズ2冊目。
ゲドシリーズとは言っても、ゲドががっつり主人公なのは1冊目だけで、他の本はそれぞれ主人公が別になる。
こちらの「こわれた腕輪」は、「影との戦い」から30年後くらい。
舞台も、海に浮かぶ島々と魔法が日常の「影との戦い」とは違い、古代の神「名もなき者」たちを祀る神殿のあるアチュアンの墓所。
近隣の村から集められた巫女と、国を治める大王の巫女と、そして何千年もの間古い体から新しい体へと魂を移す大巫女とがいる。
「こわれた腕輪」の主人公は、大巫女に選ばれた少女で、彼女は最初はテナーという名前があったが、大巫女になり「喰らわれし者」という意味のアルハと呼ばれるようになった。

アルハはまさにその中身を喰われた存在だった。彼女の世界といえば神殿と、墓所と、その墓所の地下に広がる広大な迷宮だけ。近くの村も他の人々の存在も海も山も知らない。
そしてやることといえば農業や織物といった仕事、宗教儀式、地下迷宮を覚えてそこの宝を守ること、ヤギや大王が送ってくる囚人を生贄として殺して血を備えること。
神の大巫女であるアルハはその狭い世界、死んだ世界で大切に、そのため傲慢で尊大に暮らしていた。
だが彼女は喰われて空虚だった。

そんなアルハはある時地下迷宮に忍び込み、伝説の二つに割れて奪われた「エレス・アクベの腕輪」を取り戻そうとする大魔法使いのゲドの存在を感じる。
アルハの世界では魔法使いなどただの詐欺師だった。自分たちは魂を持ち生まれ変わるが、魔法使いは魂を持たずに死んだら朽ちるという。偉大な名も無き者の前では小さな存在だ。

しかし外から来てハイタカの通り名を持つ魔法使いという存在がアルハを揺さぶる。
アルハは魔法使いハイタカを地下に閉じ込めて、話を聞きに通っていった。
他の世界がある。自分が全てと思っていた闇と迷宮だけではなく。
アルハは世界の話を聞くが、自分が動けないことの葛藤、信仰の揺らぎを隠すように魔法使いに言う。「たしかにお前は世界を旅して竜と戦った。ここには闇と迷宮しかない。だが結局人間にあるのは闇と迷宮だけだ」

そんな彼女に向かって魔法使いは一緒にここを出ようと言う。
そして彼女の本当の名前を言った。
 「テナー」

名前を取り戻した。
彼女に芽生えた自我により、彼女が大巫女アルハとしてアチュアンの墓所にとどまるか、普通の少女テナーとして世界にゆくかの選択を迫られることになる…。


===
海に浮かぶ多くの島々で、竜や魔法使いが存在し、嵐の海を渡った第1巻とは全く違った宗教、人々の暮らし、歴史の国の話で、作者の語るこの世界はいったい幾重になっているのだろうか。
転生を繰り返す者というのは、チベットで転生ダライ・ラマとかで聞くのだが、そのためか本書全体的に東洋哲学や宗教観を感じる。

今回の話では空虚なものに君臨する少女が自由に向かって旅立つ姿が書かれるのだが、自由の重みへの葛藤や、今までしてきたことの後悔に苛まえる姿、そして言葉もわからず何も役に立つことを知らない自分が世界へ放り出されることへの不安などが実によく出ている。

そんなアルハ/テナーに対し、魔法使い/ハイタカ/ゲドはいろいろな方向から話して聞かせる。
 あんたはその器に悪いものを入れられたが、その器を自分で開けたんだ。あんたはけっして邪なものや闇に遣えるために生まれてきたんじゃない。灯りをその身に抱くために生まれてきたんだ。

ゲド自身も1巻で闇に向き合ったので、闇がなんであり、どのように迫ってきて、そしてどのように戦うのかがわかっているのだ。
物語はゲドとテナーがハブナーの都に入るところで終わる。ゲドが奪いに来て、アルハ/テナーが持ち出した輪の半分により、国には平穏が戻ると示唆される。そしてテナーは、輪を収めたらゲドの恩師の魔法使いオジオンのところで、この広い世界に出てゆくための力を付けることになる。
彼女がどのような人生を歩むかは読者の想像次第となっている。しかし最後の眼差しは、彼女が静かにしかし強く歩んでゆく姿を想像できる。

…↑と思ったら、この先の話で25年後のテナー(40歳!)が書かれているようだ。

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2021年12月13日

Posted by ブクログ

ゲド戦記1と2で前半全然違うお話でびっくりした。
1は旅をするゲドの話、2は一つの神殿に崇め奉られる巫女テナーの話。
前半は「文化」の話が強いなと思ったけども後半になるにつれシチュエーションものとして面白く読めた

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2021年06月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初は一切ゲドが出てこないから、???という感じだったけど、それが逆によかった。今回の「壊れた腕輪」は、ゲド戦記の中の一つの冒険、物語だけど、アルハ=テナーが主人公なのだ。アルハの生活、未熟な若い娘ならではの傲慢さや負けず嫌いな性格、コシルへの恐れや憎しみと、ペンセとの会話による発見(神を信じない人がいること、人は違う考えを持つこともあること)、うまく描写、レイアウトされている。「影との戦い」から数年後のゲドが、エレスアクベの腕輪の片割れを探しにアチュアンへ来て、名なきものと戦いつつアルハのことも闇から救い出す。ゲドは数年経って何歳になったのか分からないけど、魔法使いとしての実力や周りからの信頼を勝ち得、さらに竜王にまでなっていることが分かる。名なきものたちは、「影との戦い」と違って、直接的な攻撃はしてこないけど、精神的な強さで打ち勝つゲドの強さが感じられる。

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2021年05月16日

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一言でいうなら「静」。後半に入るまで、ゲドが出てこないわけで、若干退屈さを感じるが、アチュアンの墓所を巡る世界観には大いに引き込まれる。

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2020年09月21日

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非常に面白い。
宗教的指導者は輪廻天昇するというくだりは、ダライ・ラマを想起させるが、他の宗教でも似たようなことがあるのだろうか。

この物語に出てくる主要な登場人物のアルハと言う少女は、αつまり物事の始まりを意味するんだろう。だから輪廻天昇をしても、常に始まりのままなのだ。

壊れた腕環では、死の世界をメインに物語が進む。よそ者としてやってきたゲドが、氷の世界を彷徨、やがて世界を変化を与え、旅立っていく。これは千の顔を持つ英雄という本で触れられている通りだ。

児童文学でありながら様々な示唆を与えてくれる本といえよう。

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2020年08月15日

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1巻より断然面白い。1巻よりだいぶ狭い世界の話なおかげで、世界観の描写がとても充実している。はじめの1/3くらいは神殿での生活を延々と描くだけでほとんど展開らしい展開はないが、世界観を積み上げていく感じがとてもいい。展開のある後半よりも、ひたすら描写に徹する前半の方がかえって読んでて面白かったように思う。

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2017年06月01日

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映画のゲド戦記の元ネタ「こわれた腕環」だった?記憶は曖昧だけど、高校生より前に一通りゲドシリーズは読んだはずだった。だけど、びっくりするぐらい新鮮な気持ちで読めた。新鮮な気持ちで読めたからといって、それが面白いかどうかは、今までの経験だったり、読み散らかした物語の記憶が脳内を掠める。物語を物語として額面通り楽しめなくなったら、年だ。思った以上にフェミニズムを感じたのは気のせいではないはずで、でも、これが書かれたのが50年前だっていうんだから、ル=グウィンが何を思ってこれを書いたんだろうかという思いが強い。

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2025年07月20日

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ネタバレ

物語は『墓所の大巫女であるアルハ』を軸に語られていく。生まれた時から『アルハ』として生きることを決められていて、その世界しかしらないアルハがそこに疑問を持ち外の世界に出ていくまでの物語。

ゲドはどこに消えたのかと言えば、墓どろぼうとしてやってくる。正確には『エレス・アクベの腕環の欠片』を求めて墓に入り込み、アルハから酷い扱いを受けつつも信用を勝ち得てアルハを外に逃がす。

地下を出て一安心……ではなくて、地下を出てもアルハは不安にさいなまれているし、どうしたらいいのかがわからないことに不安を抱いている。外に出たのはいいけど、テナーにとっては『戻る場所の喪失』なので、不安で当たり前なのよね。だから、ゆらゆら揺れてるのはわかる。そして、ゲドは頼りないくせに、テナーを外に引っ張り出した極悪人に見えてしまう。

そういえば、『西のはて~』も2冊目は女性主人公で女性の物語だったなと思った。
ゲド戦記は闇が『不安・怯え・恐怖』という分かりやすいモチーフで読みやすいなと思う。細かく読むと、他の巫女たちは貧しい子供たちなの? 外の奴隷は何? 女性だけの場所に『アルハの付き人』は男なのになぜそこにいられるの?と細かい不思議はあるけど。気にするのはやめる。

児童書らしくわかりやすく教訓的だけど、いまいち……と思ってしまっている。

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

2巻は喰らわれし者となったテナーのお話。
ゲドは1巻の時より少し時が経っているようで、青年から大人になっている?
この間にアーキペラゴの各地を放浪して研鑽を積み、魔法使いとしての腕をかなり上げている模様(妄想)。

テナーの生い立ち、成長、そして解放までのお話なんだけど、ゲドが出てくる中盤くらいから俄然面白くなっていき、テナーとゲドの会話は哲学のよう。テナーは今でいう情弱の極みなので、やはり生きていく上で経験や学習を積む事を厭わない事は非常に大切だなと。(テナー自身のせいではない、環境がそうさせている)

1巻を読んだ時、ジブリのゲド戦記を見た時は両方とも既視感があっただけなんだが、この本はハッキリと過去に読んでいたように思う(最初のシーンが印象的)。
全巻読んだのか、とにかく自分がボケ過ぎててハッキリしないので引き続き読んでいきます。ちなみに3巻目にとりかかってますが未だ既視感無し(笑)

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2025年03月26日

Posted by ブクログ

一巻より読みやすく、面白かった。

暗く閉ざされた世界に生きてきた少女にとって、島々を渡り歩いて数々の冒険をしてきたゲドとの出会いは、大きな衝撃だったと思う。

「自由は与えられるものではなく、選択するもの。そして、その選択は、必ずしも容易なものではなく、重い荷物を負うようなものだ」

テナーはゲドと共に暗い世界を抜け出して、外の光のある方へと進む勇気を出した。
外の世界のことを何も知らないテナーが、これからどんな風に大人になっていくのか…
3巻以降で、成長した彼女に会うのが楽しみ。

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2018年07月01日

Posted by ブクログ

今回は前作ゲドが老婆から授かった世の中を平和にする力があるといわれるエレス・アクベの腕環のお話。
腕環の片割れを持つアチュアン神殿の大巫女アルハ(テナー)は、先代のアルハが死んだ日に生まれたというだけで、家族や故郷、名前までもを捨てさせられてしまった可哀想な女の子。
アチュアンの地下迷宮を舞台に、呪われた運命を背負うテナーをゲドが救いだし腕環がひとつになります。

うーん。世界観は抜群にすきなのだけど...。どうも文章に深みがないというか...いまいち乗れないのが残念。
やっぱり自分の想像力が乏しいことが最大の難点ですね。
宮崎駿がアニメにしてくれたらすっごい映像になる気がするもんなあ。
地下迷宮とか宝物庫やら壁画の間なんてもろジブリだもん。

次はいよいよ本命の3巻。ここがジブリで映画化した部分らしいので楽しみです。

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2015年01月27日

Posted by ブクログ

 前作に引き続き、とても児童書とは思えない地味で哲学的な設定に、本当にこれが全世界で子供たちを虜にしている物語なのか? と不思議です。簡単なあらすじを言ってしまうと、ゲドが世界に平和をもたらすと言い伝えられている腕輪を、アチュアンの墓所という、たぶん死者が支配しているという設定の迷宮へ取りに行くという話です。とても地味です。
 でも、まあまあ面白かったです。1巻に出てきた謎の人物の正体が2巻で明らかになったり、ちょいちょい伏線らしきものが張ってあるので、読みとおしてみないと評価は定まらないかと思います。

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2017年08月15日

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