【感想・ネタバレ】こわれた腕環 ゲド戦記2のレビュー

あらすじ

魔法使いのゲドが〈影〉と戦ってから数年後、アースシーの世界では島々の間に紛争が絶えない。ゲドは平和をもたらす力をもつという腕環を求めて、アースシーの東、アチュアンの墓所へゆく。墓所を守る大巫女アルハは、幼い頃より闇の者たちに仕えてきたが、ゲドとの出会いによって、自らの世界に疑問を抱きはじめる……。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

墓所の大巫女アルハが、ゲドをきっかけにテナーとしての人生を取り戻す物語。闇の中で安逸に暮らす事よりも、未知である外の世界で生きることを選んだ。
ファンタジー世界の物語なんだけれど、闇からの心の解放など、現実の世界にも通じることがテーマになっていて、奪われた時間を思って泣くテナーのシーンでは、私も足を踏み出すことをおそれて、無駄な時間を過ごしていないだろうか、いつかこんな風に泣く日が来るのではないか・・と思えて、人生をの一歩を踏み出す勇気をもらえた気がする。
そして一作目と比べて、立派な魔法使いとして心の落ち着いたゲドを見れるのもうれしい。

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2024年02月18日

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ネタバレ

闇にいるアルハと闇を知るゲド。光にたじろぎ自責にかられ何度も闇へ戻ろうと一人になろうとするアルハと、アルハの内なる灯を見つめ手を広げて待つゲド。マインドコントロールから自ら脱する物語とも読める。
[闇の奴隷として、なじみある場所で、囚われた、けれど安穏な暮らしを続けるか、それとも、たとえ困難でも自由と光明の世界に出ていくか](訳者あとがき)
正義を希求する誠実な旅。

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2023年03月28日

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ネタバレ

第1作目のゲド戦記は、少年ゲドの成長物語だったが、これは主に少女テナーのが囚われの身から自由になるまでの物語である。
闇の者、名のなき者たち、つまりは死の世界に属する精霊の世界で大巫女アルハ(「名がない」という意味)は、「選ばれた少女」として特別な位置にいながらも、実際には闇の世界の奴隷として生きている。生まれた時の名前は剥奪され、暖かい愛情も知らずに、大巫女として義務のみを果たす生活。つまり、自分自身がない状態で生きている。そんな生活のなかで、異邦人である南方の魔法使いゲドが、神聖な墓地の地下迷宮に忍び込んで、宝を奪いにくる。中盤まではこんな感じ。
大巫女としての務めを果たしながらも、決して満たされることがない少女。外の世界に興味を抱きながらも、大巫女としての自尊心と責任感から、必死に自分が仕える闇の世界に忠誠を誓いつづける姿が痛々しい。それが、人生で初めてみる男、またその男の説得により、自由を求めて全てを捨てることになる。その葛藤もまたリアルで胸に迫るものがある。

読んでいて、これはまるで原理主義宗教やセクトなどに夢中になる人と同じではないのかと思った。自分が空っぽになるということは、自我は抑圧されるか忘れられるかして、考えることがなくなり、義務と規範のみが自分の行動の基準となることだ。
主人公アルハ(テナー)は、実際、読み書きができない。読んだり書いたりするのは魔法使いのような人間たちがすることで、彼女の世界ではそんなことには価値がない。たとえば、地図を読むことはないので、迷宮の道も口頭での指示か、または暗闇のなかで全て手でさぐって覚える。大巫女の責務を果たすには、読み書きのような「考える」教育は必要なく、代々受け継がれてきた儀式や儀礼を習得するだけでよいのだ。
が、腕環を奪いにきたゲドは、闇を崇拝するアルハ(テナー)に、闇(名のなきものたち)は人間たちに何ももたらさない、彼らには与えるものなどなにもないのだから、と教え諭す。自らを相対化してみる、最初の試練である。

彼が来た光の世界とアルハが住む闇の世界の対比、そして、地下の迷宮で出会う女と男という対比が際だち、違う世界に生きる二人が信頼を基盤にして二つに割れていた腕輪を一つにするところはとても象徴的だ。信頼というのは、この本ではでてこない言葉だが、愛のようなものだと思う。それを暗示しながらも、しかし、話はそこでは終わらず、テナーに戻った少女がこれから超えていかなければいかない困難、そして自由への希望を予感させながら物語は終わる。
とにかく素晴らしい筆運び、スケールも大きく、かつ自分の人生についてもはたと考えてしまうような深さを併せ持つ小説である。

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2018年02月11日

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ネタバレ

自分の可能性に目を閉じ、ひたすら与えられた役割を全うすることを求められた少女の生きる道。息が詰まりそうな慣習とそれに付随する彼女に課せられた大巫女としての責務。それが当たり前だと生きてきた少女が目の当たりにしたのは、先人たちが作り上げた信仰という名の悪意と、自分の中に潜む己とは何者なのかに対する純粋な探究心と好奇心。その二つが垣間見えた時、少女は大海を知る魔法使いハイタカに出会う。戸惑いつつも、ハイタカとの信頼を築き己たちを解き放った彼女の目の前に広がったのは、自由というなの新しい世界。1人の少女が成長し、自分の生きる道を切り拓いていく姿を神秘性を帯びさせながら描き切った物語。

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2024年07月08日

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ネタバレ

68歳の老人が読んだ所感
昨日の1巻に続けて、この2巻目も1日で読んでしまった!想像して映像化していくのが楽しい。
地下の迷宮を脱出するシーンはインディージョーンズの最後の聖戦の聖杯のシーン(ペトラ遺跡)がダブってしまったし、エレス・アクべの腕輪の話は天空の城ラピュタのシータのペンダントの話とダブってしまった。テナーがシータに見えてきた。
ゲドは107ページから登場にびっくり、それもある男とかいってなかなかゲドとはわからない。
生まれ変わるという表現が数カ所あったが、欧米人は輪廻の思想がなかったはず?再度調査したら、やはり、キリスト教にはないらしいことがわかった。私達は「生まれ変わったらとか」、「前世はウグイスだったかもとか言うけど」、欧米人には野蛮な未開人の会話に聞こえるのかもしれない。

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2024年07月07日

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ネタバレ

最初は一切ゲドが出てこないから、???という感じだったけど、それが逆によかった。今回の「壊れた腕輪」は、ゲド戦記の中の一つの冒険、物語だけど、アルハ=テナーが主人公なのだ。アルハの生活、未熟な若い娘ならではの傲慢さや負けず嫌いな性格、コシルへの恐れや憎しみと、ペンセとの会話による発見(神を信じない人がいること、人は違う考えを持つこともあること)、うまく描写、レイアウトされている。「影との戦い」から数年後のゲドが、エレスアクベの腕輪の片割れを探しにアチュアンへ来て、名なきものと戦いつつアルハのことも闇から救い出す。ゲドは数年経って何歳になったのか分からないけど、魔法使いとしての実力や周りからの信頼を勝ち得、さらに竜王にまでなっていることが分かる。名なきものたちは、「影との戦い」と違って、直接的な攻撃はしてこないけど、精神的な強さで打ち勝つゲドの強さが感じられる。

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2021年05月16日

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ネタバレ

物語は『墓所の大巫女であるアルハ』を軸に語られていく。生まれた時から『アルハ』として生きることを決められていて、その世界しかしらないアルハがそこに疑問を持ち外の世界に出ていくまでの物語。

ゲドはどこに消えたのかと言えば、墓どろぼうとしてやってくる。正確には『エレス・アクベの腕環の欠片』を求めて墓に入り込み、アルハから酷い扱いを受けつつも信用を勝ち得てアルハを外に逃がす。

地下を出て一安心……ではなくて、地下を出てもアルハは不安にさいなまれているし、どうしたらいいのかがわからないことに不安を抱いている。外に出たのはいいけど、テナーにとっては『戻る場所の喪失』なので、不安で当たり前なのよね。だから、ゆらゆら揺れてるのはわかる。そして、ゲドは頼りないくせに、テナーを外に引っ張り出した極悪人に見えてしまう。

そういえば、『西のはて~』も2冊目は女性主人公で女性の物語だったなと思った。
ゲド戦記は闇が『不安・怯え・恐怖』という分かりやすいモチーフで読みやすいなと思う。細かく読むと、他の巫女たちは貧しい子供たちなの? 外の奴隷は何? 女性だけの場所に『アルハの付き人』は男なのになぜそこにいられるの?と細かい不思議はあるけど。気にするのはやめる。

児童書らしくわかりやすく教訓的だけど、いまいち……と思ってしまっている。

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2025年05月17日

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