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Posted by ブクログ
ゲド戦記の第二巻。アチュアンの墓所を守る大巫女として育てられた少女アルハは、世界に調和をもたらすエレス・アクベの腕環の片割れを求めて墓所を訪れた青年ゲドに出会う。
ファンタジーの名作だけにゆっくり読みたかったけど、面白すぎて後半は一気に読んでしまった。著者は親の影響もあって文化人類学に詳しいこともあり、世界観や舞台の設定が細かく具体的で物語の土台がとにかくしっかりしている。人生における光と闇をファンタジーに落とし込んでいるのだが、混ぜ合わせ方がとにかく巧みで説明しなくても何が起きているのか感覚的に伝わってくる。ル=グウィンこそ魔法使いではないだろうか。
Posted by ブクログ
前作、『影との戦い』は魔法の才能溢れる少年ゲドが、自らの傲慢さから引き起こされた災厄と向き合い成長する物語だった。
続編である『こわれた腕環』は主人公がゲドから運命の少女テナーへと引き継がれる。
名もなき者と呼ばれている墓所に潜む影を信奉する異教徒の大巫女が死んだ。
その大巫女が死んだ直後に生まれたことで次の大巫女の生まれ変わりとして育てられることになった少女テナー。
テナーは自分の名前を捨てられて、新たに大巫女が代々継承しているアルハという名前を受け継ぐことになった。
そして大巫女の代々の役目である、迷宮のように広がる墓所の管理を任せられる。
墓所は男子禁制であり、一部の宦官や巫女しか入ることはできない。そこでテナーは外部から送られてくる罪人たちを処刑する役目を引き受ける。
だが、その墓所にこわれた腕環の片割れを探しに魔法使いのゲドが入り込んでいた。
今作は選ばれた環境にある少女が、新たな環境へ出ていくことを決意する物語であり、同時にその選択、つまり自由を享受することの怖さが描かれている。
だから前作以上に自分事としても読めたし、その怖さを知っている人には広く刺さる物語だと思う。それもあって普遍的な力強さがある物語だと感じた。
テナーが新たな環境に出る決意をしたことで、その身に降りかかる不安や恐怖は誰にでもわかるものだろう。それがそれまでの環境に身を置くことの安寧さを理解していれば特にそうだ。
ある集団で信奉される大巫女なんて立場ではなくとも、家族や、学校、会社だったりと、人生にはこれまでの環境から別の環境へと旅立ったり、移動するものはよくあるものだ。
テナーも始めこそ新しい人生が開かれることに喚起と興奮を覚える。だが次第に、新たな人生が始まることへの恐れと不安に苛まれていく。墓所から抜け出したテナーはゲドと帰る際には、無人島に自分一人だけ放り出して行ってくれないか、と泣いて取り乱したりもする。
ゲドはそんなテナーを叱咤するわけでもなく優しく見守るだけである。その恐怖を乗り越えることは自分だけにしか出来ないからだ。
テナーは恐れを抱え不安を抱いたまま物語の幕は閉じる。
テナーのその後はゲド戦記シリーズを読み進めることで明らかにはなるのだが、『こわれた腕環』の段階では明らかにはならない。
しかし、この終わりだからこそ良かった。
アーシュラ・K・ル・グィンはテナーにその恐怖を乗り越えさせるエピソードを『こわれた腕環』内に用意しなかった。だが隷属状態から脱したテナーならば大丈夫だ、と確信めいたものを読者に抱かせて終わる。
そこに読者は共感と勇気を受け取るのだろう。
Posted by ブクログ
1巻でゲド中心の物語を読んでいると、中盤まで「ゲドは?」と思いながら読んでしまう。それはこの本がどういう話なのかを最初に書いていないからこそ起こるのだが、主人公や舞台は毎度変わるのだと思った方がいいのかもしれない。
中盤、ゲドが姿を現れてから物語は一気に加速。1巻で<影>に打ち勝ったゲドが、闇を切り裂く光となって、暗黒の地下迷宮を守る大巫女アルハの奢りと傲慢、そこからくる孤独と不安を打ち払っていく。
それでもいつまでも迷う彼女に読者はやきもきともするが、丁寧に言葉にされているので、自分の身にもあるその<影>にアルハを重ねているだろうという解説にも頷ける。
考えないで奴隷のように暮らすこと、自由を求めて戦うこと、どちらを選ぶか。軽くもなく、重すぎもせず爽やかに描き切るので舌を巻く。
Posted by ブクログ
1は自分の内なる影との戦いだったけど、2は影や死の世界と繋がる真っ暗な地下の迷宮で、他者を闇から救う物語。今回の舞台である、名を持たぬ者(?)の墓がとにかく暗い!描写で暗闇がありありと表現されている!恐ろしい姿のモンスターは全く現れないのだけれど、こわい。
人間の慣れとは恐ろしいもので、ひどい環境や扱いを受けていたとしても、それが当たり前になってしまうことがある。気付かなくなってしまうのだ。違和感って実はすごく大事なのかもしれない。主人公の彼女も自分の小さな違和感を見逃さなかった。それが彼女の運命を大きく変えていく。テナー、よかったね。自由は辛く厳しいこともあるけれど、自分で選択する、ということが生きることだと私は思う。アルハのままでは、どうしたって幸せにはなれなかっただろう。しかし、生まれてきてすぐに過酷な運命を背負う、というのは、ひどい話のように思うが、誰も自分の親も国も選べない。容姿も能力も選べない。不平等な世界で、それでも、どう生きるか、の選択ひとつひとつが自分を人生を決めていくんだ。きっと。彼女が墓の番人から解放された夜の星空の輝きに胸を弾ませたその感覚を、ずっと持って生きたいものです。
2021.05.10
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