清水真砂子のレビュー一覧
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2018年に亡くなったアーシュラ・K・ル・グィンの没後に発表されたゲド戦記に連なる最後の作品である『火明かり』、未邦訳作品である『オドレンの娘』の2本の短編と、岩波現代文庫から出ている『夜の言葉』にも収録されている3本のエッセイや1992年にオックスフォード大学での講演の内容を収めた日本オリジナル編集のゲド戦記シリーズの最後を飾る7巻。
『オドレンの娘』はアースシーのオー島を治める領主一家の物語。
復讐物語ではあるのだが、神話的な悲劇性を感じる。領主夫妻の関係だったり、復讐をする姉弟のどちらを選ぶのかという部分や、その後も含めて神話っぽい感じがした。
この作品はあくまで未邦訳作品なので、最後 -
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ゲド戦記シリーズの6巻。
4巻の『帰還』と5巻の1作『ドラゴンフライ』と接続する物語。
7巻の『火明かり』がアーシュラ・K・ル・グィンが没後に出版されたが、実質この『アースシーの風』がゲド戦記シリーズの最終巻を飾る作品であると言える。
ゴント島で暮らすゲドの元に一人の魔法使いが訪ねてくる。
彼はハンノキと名乗り、ローク島の様式の長からゲドの元を訪ねることを勧められて来たのだと言う。
ハンノキはある夢に悩まされていた。それは死者の世界の夢で、寝る度に死者の世界の夢を見て、そこで亡くした妻が何かを訴えてきているのだと言う。
ゲドはかつて死者の世界に行き、戻ってきた。ハンノキの夢がアースシー世界全 -
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ゲド戦記シリーズの5巻だが、外伝という立ち位置にある作品集。
収められている作品は5作品。
作品は短編くらいの短さのものから中編、なかには長編レベルと言ってもいい長さの作品もある。それもあって600ページ近い分厚さ。
また、描かれている作品世界は、アースシーの歴史のなかでも年代はバラバラ。ほぼその世界の神話や伝説のような扱いとされるものもあるし、4巻の『帰還』と6巻の『アースシーの風』とをブリッジする作品世界内でも新しい位置付けにあるものもある。
『カワウソ』
ゲド戦記世界で魔法使いを育成する要所として存在するローク学院。そのローク学院誕生について語られる長編。
ゲドが活躍していた時代ほど魔 -
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本作は3巻の『さいはての島へ』から18年という期間を空けて出された4作目であり、物語は『さいはての島へ』の直後から始まる。
ゲドと共に墓所を抜け出した少女テナーは、ゴント島で魔法使いでゲドの師オジオンに預けられていた。
しかし、魔法使いになることを望まなかったテナーはオジオンの元を離れる。テナーは新たに『ゴハ』と自らを名乗り、人並みの生活を送ることを決める。
それから十数年の歳月が流れ、ゴハのパートナーであったヒウチイシは亡くなり、ゴハは未亡人となっていた。娘と息子は家を出ており、ゴハは一人で農場を切り盛りしていた。
そんなゴハの元に友人のヒバリが駆け込んでくる。性加害を受け、その場で生きた -
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前作、『影との戦い』は魔法の才能溢れる少年ゲドが、自らの傲慢さから引き起こされた災厄と向き合い成長する物語だった。
続編である『こわれた腕環』は主人公がゲドから運命の少女テナーへと引き継がれる。
名もなき者と呼ばれている墓所に潜む影を信奉する異教徒の大巫女が死んだ。
その大巫女が死んだ直後に生まれたことで次の大巫女の生まれ変わりとして育てられることになった少女テナー。
テナーは自分の名前を捨てられて、新たに大巫女が代々継承しているアルハという名前を受け継ぐことになった。
そして大巫女の代々の役目である、迷宮のように広がる墓所の管理を任せられる。
墓所は男子禁制であり、一部の宦官や巫女しか入る -
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海外SFは苦手だよ、と思いながら手に取ったら、純文学の質感でするすると読めた。
感情が動いたり、読み進めたくないなと思ったり、おもしれえ〜と思ったりしたところのページを折りながら、読み進めた。
いま読むから、学院時代のところばかり折り目がつくのだろう。学生時代に読んでいたとしても、たぶん似たところに折り目がついたと思う。
ただ決定的に学生時代と違うことがある。
影を、ダメだと思っていないことである。
ゲドがさいはてで影を中に入れたとき、ワシもこうしたい、と思えた。消したいとか負けたくないとかでもなくて、ちゃんと追いかけ迎えに行くほうがよいな。
影を自分のものとして抱え直すことに、美しさが宿る -
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ネタバレ「彼女が今知り始めていたのは、自由の重さだった。自由は、それを担おうとする者にとって、実に重い荷物である。…それは、決して気楽なものではない。自由は与えられるものではなくて、選択すべきものであり、しかもその選択は、かならずしも容易なものではないのだ。坂道をのぼった先に光があることはわかっていても、重い荷を負った旅人は、ついにその坂道をのぼりきれずに終わるかもしれない。」(P.241)
そして、翻訳された清水さんによる解説。
「奴隷でいることの何と安気なことか。たとえ滅びにつながろうとも、闇に身を置き、狂気に身をゆだね、一時の安逸をむさぼり食らっているほうがどんなに楽か。私たちの人生は何とその -
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言わずとしれたアーシュラ・K・ル・グィンの代表作の一つ。
ル・グィンが没後に発表した『火明かり』を読むために、かなり久々に1作目から読み直してるのだけど、今回が一番面白く読めたかもしれない。
アースシーと呼ばれる多島海世界で、魔法の才能を持って生まれた少年ゲド。しかし、才能故の傲慢な性格が災いして、死の影を呼び出し、放ってしまう。影はゲドを執拗に狙い、ゲドはその影から逃げ続けるが、ついに対峙することを決意する、という成長譚。
表面的には児童向けのファンタジー作品という様相を呈しているが、読む時期によって全然印象が変わる作品。
自分は小学生の頃に読んだときに後半になるにつれてよくわからなくな -
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魔法の風を帆にはらみ、海を超える“はてみ丸”。
たったそれだけの言葉だけで、僕の心はアースシーへと舞い戻る。胸の昂ぶりが抑えられない。
たとえそれが、炉辺の明かりに照らされて床に伏せるゲドの脳裏に浮かぶ、夢うつつの思い出だとしても。
アーシュラ・K.ル=グインが最後にゲドの物語を遺してくれたことへの感謝を噛み締める。
序文にてル=グインは、こう宣言する。
“自分の思い描くアースシーを出版社のジャンル分けや批評家の決めつけにあわせることはやめました。ファンタジーは未熟な者が読むものだという考えは、成熟と想像力というものについての凝り固まった誤解から生まれたものです。主人公たちは成長しますし、若 -
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1巻でゲド中心の物語を読んでいると、中盤まで「ゲドは?」と思いながら読んでしまう。それはこの本がどういう話なのかを最初に書いていないからこそ起こるのだが、主人公や舞台は毎度変わるのだと思った方がいいのかもしれない。
中盤、ゲドが姿を現れてから物語は一気に加速。1巻で<影>に打ち勝ったゲドが、闇を切り裂く光となって、暗黒の地下迷宮を守る大巫女アルハの奢りと傲慢、そこからくる孤独と不安を打ち払っていく。
それでもいつまでも迷う彼女に読者はやきもきともするが、丁寧に言葉にされているので、自分の身にもあるその<影>にアルハを重ねているだろうという解説にも頷ける。
考えないで奴隷のように暮らすこと、自由 -
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