似鳥鶏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ〇 概要
丘の上にある某私立高校には,文化部が集まる「芸術棟」と呼ばれる校舎がある。その校舎には,フルートを吹く幽霊が出るらしい。幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまったので,幽霊を否定する必要に迫られた吹奏楽部部長に協力を求められ,主人公,美術部の葉山は演劇部の三野とともに,芸術棟に足を運ぶ。予想に反して,幽霊が本当に現れてしまい…文芸部の伊神は真相を究明するために捜査を始める。にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?
〇 総合評価 ★★★☆☆
青春ミステリ。殺人は起こらず,芸術棟という文化部が集まっている校舎での幽霊騒ぎが中心。そこに「立花」という学生の失踪と,消費者金融からお金を借り,自殺を偽装しているという「豊中浩一」という男を絡ませ,ほどよく読者をだます構成になっている。
学校を舞台とした青春ミステリといえば,「文化祭オクロック」や「体育館の殺人」など,いくつか読んでいるが,その肌触りに近い。社会人になって10年以上経ってから,学校を舞台にしたミステリを読むと,もはやファンタジーというか,リアリティを感じない。なんとなく,懐かしい感じはある。
ミステリとしては,幽霊騒動のトリックが物理トリックで,「ふーん」としか感じられないのがマイナス。立花さんがちょい役と思っていた美術部講師の百目鬼と結婚するというくだりや,三野が幽霊騒ぎまで起こして匿っていた豊中浩一が,実は犯罪者だったというオチはなかなか驚ける。しかし,伏線がそれほど張られていないので,やられたとまでは思わない。
全体の雰囲気と読みやすさは評価できるので,佳作という感じ。似鳥鶏の作品らしい作品といえると思う。
〇 サプライズ ★★★☆☆
幽霊騒ぎは,影絵とプロジェクターという物理トリック。サプライズといえば,美術部顧問の百目鬼と妊娠して学校を辞めていた立花との恋と,三野がかくまっていた豊中浩一が,いい人ではなく犯罪者だったという部分。いずれも,それなりのサプライズはあるが,そもそもサプライズを狙った作品ではないし,伏線も,それほどない。★3かな。
〇 熱中度 ★★★☆☆
デビュー作らしい無駄のない作りで,中だるみはない。ただし,出てくる事件が幽霊騒ぎで,謎にそれほど魅力がない。熱中度も普通か。
〇 インパクト ★★☆☆☆
とって付けたような,豊中浩一の存在くらいしかインパクトに残らない。幽霊騒ぎのトリックが物理トリックなのもマイナス。登場人物も,学園ミステリではありがちなキャラばかり。ということでインパクトは薄い。
〇 読後感 ★★☆☆☆
ややビター。三野は豊中に騙されていたわけだし,秋野も東に遊ばれていた感じ。死体が発見されて芸術棟は使えなくなっている。立花も,百目鬼と結婚する予定とはいえ,実の父ではないわけで…。作品全体の雰囲気は軽めの文体なのだが,あらすじはビターという感じ。
〇 キャラクター ★★☆☆☆
主人公は,ありがちな等身大で特に才能はないけど,妙に女性に好かれる文化部(美術部)員。探偵役は物知りの先輩。友達役のややひょうきんな演劇部員が,幽霊騒動の黒幕で,おとなしい同級生の女性,そのカレシのちょっと悪い先輩と,どこにでもありそうな青春モノ・学園モノのキャラクターがてんこもり。それなりに個性はあるが,まさに,ステレオタイプ。入り込みやすくはあるが,この作品ならではの魅力的なキャラクターとはいいがたい。
〇 希少価値
「戦力外捜査官」がテレビドラマ化されるなど,著者の似鳥鶏が割と人気作家になったので,希少価値はあまりない。仮に,似鳥鶏の人気が落ち着いても,創元推理文庫なので,手に入らなくなる可能性は低そう。
〇 メモ
〇 プロローグ
消費者金融から金を借り,返せなくなって自殺を考えている男の手記
〇 一日目の幽霊
「壁男」と立花さんの幽霊が出るという噂により,練習ができなくなった吹奏楽部のために,高島(吹奏楽部長),秋野(吹奏楽部),葉山(美術部),三野(演劇部)の四人は,夜,芸術棟に忍び込む。実際に幽霊のような存在を目撃する。
〇 二日目の幽霊
一日目の幽霊を,伊神(文芸部長)と葉山が捜査する。邦楽部の捜査,演劇部の捜査,吹奏楽部の捜査を経て,伊神は謎をとき,一日目の幽霊が「影絵」のトリックであったことを見抜く。しかし,トリックを見抜いたのもつかの間,裏方として幽霊のトリックをしこんでいた三野が,別の幽霊を目撃したという。
〇 三日目の幽霊
三野がCAI室で幽霊を目撃したので,そのトリックを暴くために,伊神,高島,東,秋野,葉山は,CAI室に忍び込む。この日はCAI室ではなく,芸術棟に「壁男」の幽霊が出る。伊神,葉山が芸術棟に行くと,そこには演劇部の柳瀬がいた。芸術棟には何もなかった。その日は,警備員に見つかるが,柳瀬の演技により,警備員をごまかし,六人は無事帰宅する。
〇 幕間
「豊中浩一」という男が入水自殺をしたという情報
〇 四日目の幽霊
伊神は「ウイリアム・ジェームズの法則」を引き合いにだし,前日の幽霊もトリックだと主張する。葉山は柳瀬のお見舞いにいく(このとき,伊神は葉山に花束を持たせる。花はアネモネ(=君を愛す),リンゴ(=誘惑),キンギョソウ(=欲望),アイリス(=私は燃えている),折れているアザリア(自制心)というもの。柳瀬は,偽のメール(送り主が葉山だと思った)により,芸術棟に呼び出されていた。
〇 五日目の幽霊
東が幽霊騒ぎの犯人の1人だと推理した伊神は,東を呼び出し,自白を迫る。東は壁男の幽霊の共犯者だった。東は立花が好きだったので,急に行方不明になったことを疑問に思い,居場所を知るために「立花が壁男に殺されて幽霊になった」との噂を広めていた。
立花が登場する。立花は妊娠し,学校を辞めていた。立花は美術部の顧問の百目鬼と結婚するという(立花の子どもの父親は百目鬼ではない。)。
伊神は壁男の幽霊のトリックを解く。これはプロジェクターの映像だった。プロジェクターの映像を,スモークマシンの煙に映していたのだ。煙はエアコンで排気した(エアコンが急に作動し,死亡したゴキブリの脚から推理)。
三野が見た幽霊はトリックではない。ここから三野は嘘をついており,真犯人は三野だということが分かる。
三野は,消費者金融から身を隠すために自殺したことになっていた男に寝る場所として芸術棟を貸していた。そしてそのことがばれないように,幽霊の噂を流していた。
伊神は,人を遠ざけるには怪談にとどめておくべきで,怪奇現象にしてしまったのが間違いだったと指摘する。
芸術棟にいたのは「豊中浩一」だった。しかし,豊中は嘘をついていた。豊中は業務上横領及び詐欺未遂の容疑で逮捕される。
プロローグや幕間を使ったミスディレクションで,三野だけでなく読者までだますトリック
エピローグでは,芸術棟から白骨死体が発見され,芸術棟が使えなくなるというオチ -
Posted by ブクログ
ネタバレスパルタ教育を行う高校の話。
体罰が常習化し、軍隊並みに規制をされている生徒たち。
そういった学校に入れたいと思う親に対する警鐘を鳴らす作品。
柔道部の練習中に死亡した従弟の死について調べていくうちにその学園の特異性がだんだんと明らかになっていく。
物語は主に「現在その学校に通う生徒」「従弟の死の真相を解明しようとする青年」「学園長へのインタビュー」の三つの視点により展開していく。
体罰により苦しむ生徒の視点は本当に息苦しい。青年が早くこの少年たちを助けてくれないか祈るようにしてページを読んでいた。合間合間に学園長の「体罰というのは悪いものではない。成長に必要なものだ」というインタビューが入るのがまた不気味。
ネタバレですが
最期、101教室という拷問部屋に連れて行かれた少年を青年がやっと助けに入り、少年と青年が出会った時にはほっとした。
でもタイトルにもある101教室。本文ではラストにしか出てこない。もう少しネタフリというか、伏線があってもいいんじゃないかな~と思ったり。でもタイトルにあるからこそのその教室が登場しない不気味さというのもあるのかな?
そして学園が週刊誌により報道され、その後学園長やその他体罰死を引き起こした先生が捕まることになる。学園も閉鎖だったか改善されることになるのだが…
そこでラストショッキングな事実が。
以下、超ネタバレです!
小説冒頭から時折組み込まれていた学園長インタビュー。これが実は事件後、新たな学園を作ったことに対するものだった!
大きな事件になりながらも、やっぱりそういった厳しい学園に子どもを入れたいという歪んだ親はいつの時代にも決していなくならないという…。愛情、支配、教育。現実にもあった戸塚ヨットスクールの話も思いだし、ぞっとしてしまう。
でもエピローグでは学園を無事転校できた少年少女のその後(付き合っているらしい)が、彼らを助けてくれた青年の結婚式に参列するために出かけるという幸せなエピソードで締めくくられていて、後味はそんなに悪くなかった。
でももう二度とは読みたくないかなぁ~。 -
Posted by ブクログ
文化祭の準備に慌ただしい校内に、ある日突然天使が現れた……。ペンギンのような不思議な天使のイラストが描かれた紙が部室に大量に貼られていたのだ。しかも、化学準備室に侵入者が。果たして文化祭は無事に開催できるのか……?
葉山くんめっちゃがんばってた。カナちゃんの前の葉山くんはすごい先輩してたし、とてもよかった。カナちゃんの猪突猛進ぷりはちょっと苦手な類だけど……。トリック的には半分は分かってたけど半分は気がつかなくて途中までもやもやしながら読んでたのでラストですっきり出来てよかった。相変わらず謎も動機もむりやり作り出した感はあるけど、文化祭の青春ぽさとか柳瀬さんがまともなこととか、キャラクターたちの動きはとてもよかった。 -
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所有者不明の部室の領有権争いに巻き込まれた葉山くん。しかしどうやら片方には別の思惑があるようで……?(『まもなく電車が出現します』)
ミノと調理実習の謎と、何者かに植木鉢を落とされそうになる葉山くんと、プラモの値段で喧嘩した夫婦の話と、葉山くんに彼女が出来る話。
冬に出る〜とさよならの次〜の間をつなぎつつ次につながる短編集。だんだん伊神さんみたいになってく葉山くんは微笑ましいけど、要するにこのシリーズは柳瀬さんというヒロインを好きにならないと楽しめないんだということがわかった。トリックも凝りに凝っているわりに謎が小粒というか、解きたい!って気持ちにならないのがなあ……あと私は完全に彼女寄りの気持ちになってしまったので彼女も悪いけど葉山くんが利用されたとかお人好しだとかはあんまり思わなかった……もやっとしてて納得したいのでもうちょっと続けて読む。 -
Posted by ブクログ
この物語はミステリーであると同時に、直人・七海二人が生きていくうえでの存在意義を問う物語でもある。
惨殺された両親。遺された兄妹。
児童養護施設に入れられ、しゃべることも出来ず、思いを伝える術を持たない妹。
その妹を守るのは自分の役目。
そう想い続けてきた直人にとって、自覚のない自身の深層心理を言い当てられ、晒されるのは辛いことだったに違いない。
だが、妹・七海の思いを知り、彼女の強い意志を確認した以上、その思いを受け入れることしか直人には出来ない。
直人の性格が多少うざったく、立ち回りの不味さに苛つく場面もある。
だが、設定年齢を考えればそれも不自然ではない。
本格推理が苦手な人にも楽しめる、気軽なミステリーだと思う。 -
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触れたら焼け爛れる酸性の湖に立てられた十字架に磔にされた死体(長)ですって…………………
何それめっちゃ読むしかない٩(๑❛ᴗ❛๑)۶←←←
私の好みをズバリ突いてくるような劇場型不可能犯罪シーンが冒頭から出て来て、非常にエキサイトしながら読み進めました。
が。
結論:オープニングがクライマックスだった٩(๑❛ᴗ❛๑)۶←←←
前作となるシリーズ第一弾を読んでいないので何とも言えませんが、この作品は「シリーズの主役目線」よりも「巻き込まれた被害者候補の目線」で展開させた方が面白いんじゃないかなってことを、本作に収められた三作を読んで強く感じました。
なので、割と被害者候補目線にページを割いてる一章が一番面白かったのよねー。゚(゚´ω`゚)゚。
かなり特殊な世界観なのは(下記の内容まとめ参照)不可解な事件が起こる理由づけとしてかなり有効だし興味深いのですが、この設定のもとでの主人公目線で追われる事件は、どうしても無味乾燥になってしまいます。
主人公は終始(事件とは別筋の困難に直面しているとは言え)、殺人事件の蚊帳の外。
「殺人事件の発生が確定している(あるいは既に発生している)現場に駆けつけ、関係者に先んじて真相を指摘する」という設定そのものはかなり斬新なんですが、どうしても事件の渦中で推理を展開して行くという推理小説の醍醐味を味わえないという点で物足りなさが残ります(めんどくさいミステリスキー発言)。
うーん………とりあえず、一作目を読んでから、三作目以降は読むか決めよう。
【内容まとめ:今回もそのまま引用〜٩( ᐛ )و】
世界経済の鍵を握るホームズ遺伝子群。在野に潜む遺伝子保有者を選別・拉致するため、不可能犯罪を創作する国際組織―「機関」。保有者である妹・七海と、天野直人は彼らが仕掛けた謎と対峙する!強酸性の湖に立てられた十字架の謎。密室灯台の中で転落死した男。500mの距離を一瞬でゼロにしたのは、犯人か被害者か…。本格ミステリの旗手が挑む、クイーン問題&驚天動地のトリック! -
Posted by ブクログ
シリーズ2作目。短編3編収録。『ホームズ遺伝子』という設定により、ミステリでよくある名探偵が周囲を気にせず事件にまっしぐらになるような奇行に説明をつけてくる辺り面白いですな。
同じく遺伝子保有者を狙う『機関』と、保有者の奪い合いを同時進行で行っているため、毎度発生する殺人事件の謎を解くだけでなく、機関との知恵比べや、敵の戦闘員とのアクションなど盛り込んできており、謎解き+エンタメな感じがぷんぷんです。これをごちゃついた感じと印象を受けるのか、サービス満載と捉えるのか。私は後者で楽しめましたが。
『強酸性湖で泳ぐ』がシチュエーション等楽しめて良かったですね。(事件当事者の視点だったので事件発生までの経緯が楽しめました。残り2話は事件発生後からの合流なので、状況説明だけで終わっちゃうからね)
この作家さんの本だと「戦力外捜査官シリーズ」がよりエンタメにウェイトが置かれている印象で、本格ミステリに寄ってるのが「市立高校」の印象。「動物園」はバランス型かな。
一番好きなのは動物園シリーズなので、この作品も好きな部類です。動物園の服部君みたいな、ツッコミというか笑い担当のキャラがこちらのシリーズにはいないのがちょっと残念。