カリン・スローターの初期作品、グラント郡シリーズ。
「開かれた瞳孔」「ざわめく傷痕」に続く3作目。
サラ・リントンは故郷で小児科医となっていて、検死官も兼ねています。
元夫のジェフリー・トリヴァーは、警察署長。
ある日、妊娠中の妹テッサと一緒にいたサラは事件の報を受けて、現場へ向かった。
グラント
...続きを読む工科大学の学生の遺体が発見されたのだが、飛び降り自殺のようだった。
ところが、近くにいたテッサが何者かに刺されてしまう。
自殺ではなく犯人がそこに潜んでいたのか…?
サラと両親のショックと苦悩が切なく痛々しい。
サラと復縁しようとしているジェフリーも、サラの家族が好きなので苦しむが。
優しい感受性を持つサラは、赤毛と長身が目立ち、IQが高い。その特徴をジェフリーは得難いものと評価しているが、うまく伝えられてはいない。
同じことをサラが人にからかわれた原因として思い出すあたり、二人の個性や関係性が次第にわかってくる、シリーズ物ならではの面白さがありますね。
さらに事件が相次ぎ、平常なら事件の少ない地方都市に衝撃が走る…
ジェフリーの元部下のレナ・アダムズがなんと警察を辞めていて、大学の保安要員として登場。
一作目の事件で被害者となり、仕事に集中できない1年を送った後のことである。
ここの仕事は上司がサイテーなため、別な苦労をしていた。
学生、大学教師、その家族の問題が次々にあぶり出されるが、レナの問題もまた、なぜかこじれていく…
嫌な奴が何人も出てくるので、事件の凄惨さが薄れるほど。
レナはもともと癖のある性格だが、悲劇に見舞われ、報道でも苦しみ、自己破壊的な歪み方を生じているのか…
破綻しかけているところで妙に距離が近づいた人物との関係がこの後どうなる?
そこが一番の読みどころかもしれません。
主役級の数人のうちの誰がクローズアップされるかが、作品によって違うのが特徴か。
濃すぎるほどのキャラをえぐるように描いていくパワーがすごい。
シリーズ1作目はさかのぼって読んだため、「専門職の女性が連続殺人事件に関わり、自らも狙われる」という、数多い作品の中でデビュー作にしてはさすが上手な方、というぐらいの印象でしたが。
その後、どんな出来事にも心理にもまったく目をそらさずに、鋭さも深みも増していくのです。
この段階でここまで書いていたとは。