田辺千幸のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ウィル・トレントシリーズ8作目
クラブ建設中の敷地内で、元警官の死体が発見される。現場には大量の血が流れていた。調べると血は死んでいた警官のものではなく、主人公ウィルの妻アンジーのものだとわかり…
ウィルのシリーズと名乗っておきながら最初の数作以降は、ウィルは傍に居て
事件を捜査するのがメインで、女達の苦悩や闘いに重点が置かれる。(ウィルも壮絶な過去を抱えているけれど)
鋼鉄の鬼上司アマンダ、タフ・ママのフェイス、などの強い女性達がウジャウジャと出てきたのですが、毎回出番は少ないものの圧倒的な存在感を放っていたアンジーに関する回です。
売春の潜入捜査を行う警察官であり、誰とでも寝る女、全身をフェロモンを纏った武器として利用して様々なものを手に入れてきた彼女…ウィルと施設で出会い、傷つく互いの姿を見てきた二人。
気まぐれの様に結婚したもののアンジーはほとんど家におらず暗躍、たまにふらっと家に帰ってきては事件解決の重要な手がかりを知っていたり、ウィルの恋人であるサラへの嫌がらせに熱を上げていました。
「罪人のカルマ」でも事が起きたように、ウィルを支配する一方で執着し苦しむ姿がアンジーなりの愛の示し方なのでしょうか…これまではウィル、サラの視点で見ていた嫌なアンジー像を超えて、芯に抱えている孤独の深さと想いの強さが見えたのが良かったです。このやり方では幸せにはなれないんだろうな…
……読むのしんどいシリーズですね。
読みたくないくらいピリピリムードになるんですが読んでしまう。
サラの考え方も、なんかちょっと危険信号 -
Posted by ブクログ
ネタバレこのシリーズで一番面白かった。そろそろ読むのやめようかと思ってたけど、本書がすごかったし、最後のアンジーにゾクっとしたので、次も買わないと。
アンジー好きだわ。悪い女。
1970年代の2人の女性刑事の友情と活躍が最高に楽しかった。だからこそ、現代のあっけないラストに肩透かしだったけれど、その後のアンジー。凄いよアンジー。
キティがウィルがまともに育ったとか言っていたのが皮肉でいい。特に前作で本物の母親に育てられなかったことスネ倒した奴が犯人だったから、本当の親とは離れたことで今のウィルになったことのアンビバレント。
そして、ウィルを見守ってきた上司、ケアマネージャー、女性判事たち、みんな女性。あの時代をサバイバルしてきた人たち。強くて優しい。
ある意味、ウィルのハーレム展開なんだけど、男性読者はちっとも羨ましくないだろうねw -
Posted by ブクログ
大好きな「貧乏お嬢さま」シリーズ、12作目。
駆け落ちの後、一冊入って、さあいよいよ結婚?!
愛するダーシーとの結婚まで一か月、準備にかかっているジョージー。
しかし二人とも貧乏貴族で定収もないため、新居探しにも一苦労。
そこへ、降ってわいたようないいお話が!
ジョージーの母親の何番目かの結婚相手サー・ヒューバートが探検家で、ほとんど留守にしている屋敷アインスレーに住むよう言ってくれたのだ。
子供の頃(短い間だが)一緒に暮らしたジョージーを可愛がってくれて他に子供もいないため、実はもともと相続人となっていた間柄。
これですべて解決と懐かしい屋敷に出向いたら、そこは…?
執事はじめ雇人たちがすっかり入れ替わっており、感じは悪いわ、怠けるわ。
しかも、妙な出来事が相次ぐ。
ジョージーは召使いたちに毅然とした態度をとって、お屋敷の切り盛りにかかります。
さすが王家の血を引く公爵令嬢、お城育ちのジョージー。気はいいけどドジだったのに、ずいぶん成長しましたね!
お屋敷の謎がいかにも英国ミステリ的な面白さ。
探偵ぶりも堂に入って頭の切れを見せるジョージー。
素敵なダーシーを頼るだけでなく自立し、縛りたくないと思う、いい女ぶりです。
後半は、女優である母親や優しく堅実なおじいちゃん、ものすごい侍女のクイーニーまでが参加して支えてくれます。ハッピーオーラで?すべてがいい方向へ向かう兆候に。あのクイーニーが料理人としては役に立つんですよ(笑)
似合わないウェディングドレス問題や、貴族の挙式ならではな事情や盛り上がりもありつつ、前夜で終わらずに、ちゃんと結婚しましたよ。これはもうネタバレになってもいいでしょう。
ハッピーでよかった、よかった~シリーズはまだエンドじゃないけどね(笑) -
Posted by ブクログ
「彼女達が闘った時代」と
「主人公の生い立ち」の話
ウィル・トレントシリーズ6作目
現在で起こった女性の失踪事件と
過去1975年に起きた失踪事件の二つの時間軸で進む。
現在では、捜査に加われず鬼上司アマンダの圧力、謎の行動に戸惑うウィル
そして過去では、警察官として下っ端で気弱なアマンダ(おっ!)と現在のウィルの相棒フェイスの母親イヴリン(破天荒)がバディを組んで捜査にあたる。
警察内での人種差別、性差別が強く、行く先々で「女は引っ込んでろ」と罵られる。またアマンダの父は同じく警察官であり娘の行動を束縛、仕事でも人種差別的な言動で恨みを買う人物が多く、娘というだけで二重に苦しむことになる。
読んでて戸惑った。なぜこんなすぐに泣き出しそうな女性が、冷酷な鋼鉄の捜査官になるのか…想像がつかないからである。
どんな圧力にも屈しない、いや屈するけれども「自分達以外の誰が救えるのか?」という想いに従い進んでいく。
そして両方の事件に絡む「ウィルの父」の影、主人公の生い立ちがようやく明かされる。
まさかそういう過去があったとは…過去と現在を対比して読むと重みが増す場面が多く、楽しめました。
(アマンダ達とは別の)女達の戦いも、始まったばかりなのかも…
終わり方、ゾクッと来ました。 -
Posted by ブクログ
カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。
とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。
弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後遺症を抱えたまま家族を離れた長女。父とともに暮らしその弁護士としての仕事を継ぐ次女。暴力で断たれた母の命と、その豊饒なる知性の記憶。
それぞれに性格の異なる姉妹。そして彼女らへの沈黙の不可視的な愛を貫く弁護士の父。それぞれに深みも痛みも介在する人間たちの傷だらけの人生。それでいて並々ならぬ知性豊かな三人の、喪われし人生の記憶とその再生の行方とが、何と、次女が出くわす新たな凄惨なる事件いう形で試されてゆく物語である。学校での発砲事件。もはや珍しいとは言えないアメリカの風物詩みたいな。
事件の加害者である少女の沈黙がまずは謎である。事件の被害者は、さらに年少の少女、そして校長。一見、単純な構図に見える事件だが、動機も、その後の展開も、見た目通りではなさそうであった。事件に関わるヒロインたちの内なる闘いに、外なる疑惑が絡み合い、継いで、彼女たちに関わる男、壊れかけた夫婦関係、出産の失敗などなど、複雑な課題と過去とが絡み合う暗黒の深さ。
主要登場人物がそう多くない割に、彼ら彼女らの個性が否応なく絡み合い、ぶつかり合う。いつものスローター節。どんでん返しや、いくつものトラップやミスリードが、全体のエンターテインメントとしての謎多き物語を象っているのも、いつも通りのスタイルである。
しかし、警察小説の形を取らず、シリーズとは分離させ、事件関係者(被害者、弁護士、検事)やその家族たちの道を、心の内側から、それもいくつもの過去からの出来事の真相に迫ろうとする、この作者ならではの複雑に編まれたプロットにずっと寄りそうような心身の痛みの記憶がたまらない。
娘たちを守れなかった父親と、その後の人生。一見雄弁に見える彼を取り巻く秘密と、娘たちの錯綜する心が出くわすとき、この家族の物語は、この家族を変える時間にようやく出会うことができる。そこにあるのは癒し? あるいは決意?
不幸な事件により無残に傷つけられた家族とその後の人生航路を、押し寄せるいくつもの波濤のなかに描き切るビルディングス・ロマンである。少なくとも時間軸空間軸ともに壮大なスケールのミステリーとして、否、むしろヒューマンなドラマとしてしっかりと味わって頂きたい力作である。 -
Posted by ブクログ
カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。
とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。
弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後遺症を抱えたまま家族を離れた長女。父とともに暮らしその弁護士としての仕事を継ぐ次女。暴力で断たれた母の命と、その豊饒なる知性の記憶。
それぞれに性格の異なる姉妹。そして彼女らへの沈黙の不可視的な愛を貫く弁護士の父。それぞれに深みも痛みも介在する人間たちの傷だらけの人生。それでいて並々ならぬ知性豊かな三人の、喪われし人生の記憶とその再生の行方とが、何と、次女が出くわす新たな凄惨なる事件いう形で試されてゆく物語である。学校での発砲事件。もはや珍しいとは言えないアメリカの風物詩みたいな。
事件の加害者である少女の沈黙がまずは謎である。事件の被害者は、さらに年少の少女、そして校長。一見、単純な構図に見える事件だが、動機も、その後の展開も、見た目通りではなさそうであった。事件に関わるヒロインたちの内なる闘いに、外なる疑惑が絡み合い、継いで、彼女たちに関わる男、壊れかけた夫婦関係、出産の失敗などなど、複雑な課題と過去とが絡み合う暗黒の深さ。
主要登場人物がそう多くない割に、彼ら彼女らの個性が否応なく絡み合い、ぶつかり合う。いつものスローター節。どんでん返しや、いくつものトラップやミスリードが、全体のエンターテインメントとしての謎多き物語を象っているのも、いつも通りのスタイルである。
しかし、警察小説の形を取らず、シリーズとは分離させ、事件関係者(被害者、弁護士、検事)やその家族たちの道を、心の内側から、それもいくつもの過去からの出来事の真相に迫ろうとする、この作者ならではの複雑に編まれたプロットにずっと寄りそうような心身の痛みの記憶がたまらない。
娘たちを守れなかった父親と、その後の人生。一見雄弁に見える彼を取り巻く秘密と、娘たちの錯綜する心が出くわすとき、この家族の物語は、この家族を変える時間にようやく出会うことができる。そこにあるのは癒し? あるいは決意?
不幸な事件により無残に傷つけられた家族とその後の人生航路を、押し寄せるいくつもの波濤のなかに描き切るビルディングス・ロマンである。少なくとも時間軸空間軸ともに壮大なスケールのミステリーとして、否、むしろヒューマンなドラマとしてしっかりと味わって頂きたい力作である。 -
Posted by ブクログ
ジョージーを乗せて北へと車を走らせるダーシー。行き先はスコットランドのグレトナグリーン!が、幸せを目前に飛び込んだ、ダーシーの父の逮捕のニュース。ダーシーは急遽アイルランドへ。ダーシーに説得されたジョージーは兄の元へ帰るが、ダーシーからの別れの電話を受けアイルランドへ。ダーシーの友人(?)ポーランドから亡命してきた王女、ゾゾに嫉妬しつつも、強力な味方として3人での捜査が始まる。何度も追い払われても食らい付くジョージーのダーシーへ想い、やっぱり良いよね!今回は2人の推理が…というより、警察があまりにも杜撰だったな、という感じ。
いつもフィグの尻に敷かれっぱなしだったビンキーがやっとジョージーに味方してくれた!!やれば出来るじゃないか。 -
Posted by ブクログ
最初に言いたいのがこれシリーズ物だったのかーーと言う事。
知らずにこの本から読んでしまった…が、
それを抜きにしても凄い面白かった!!
むしろちゃんと最初から絶対読みたいと思わせられる。
シリーズ物と知らずこの本から読んでも全然大丈夫。
中盤からの引き込み度具合が凄い。
物事には常に裏と表がある。あいつは悪い奴だから悪だ!と思っても、悪だと思ってる側の視点からしてみればそこには深い理由があったりする。
善サイドと思わせられた視点から読み進め、中盤になって視点が代わり悪サイドから物事を見れば悪だと思っていた人の事もなんだか憎めなくなる…
ミステリーの展開も勿論だけど、人間関係の面でもとても面白かった。 -
Posted by ブクログ
バスケットのスター選手マーカス・リッピーが起こしたレイプ事件を担当する捜査官ウィル・トレント。金と弁護士の力で立件できなかった。その選手が経営するクラブで遺体が発見された。元警官のデール・ハーディングだった。現場に大量の血液が流れており、ウィルの別居中の妻アンジーのものだと考えられた・・・
うーむ。重たいのにスピーディーな展開。ある巧妙な策略が終盤に明らかになるのだけれど、これ込みでシリーズナンバー1。
後半はアンジーがいったい何をしていたのかが時間を巻き戻して明らかになる。前半も面白いけれど、後半はさらに面白くなる。そういう意味では迷惑な女アンジーの物語だと言える。
しかし、アンジーではなくサラと付き合っているウィルの苦悩。サラの苦悩。こちらもかなり読ませる。
「母親のいない子供にかけられた呪いね。わたしたちは、自分が傷つける相手に慰めてもらおうとするんだわ」
※以下自分用ネタバレ
別の選手ルーベンの妻ジョーはアンジーが捨てた娘。夫から暴力を振るわれている。ジョーを逃すために、アンジーは死んだ振りをし、ジョーも死んだことにする。 -
Posted by ブクログ
貧乏お嬢さまのシリーズも10作目。
佳境です!
ジョージーは公爵令嬢だが、一文無し。
1930年代当時では、身分が高すぎて仕事に就くのも難しく、やり繰りに苦労していました。
恋人のダーシーもなかなかはっきりしなかったのですが、ついに…?
前作の終わり、ダーシーの車に乗ったジョージー。
目指すは駆け落ち結婚!
ところが吹雪の中、立ち寄った町で思わぬ事件を知ることに。
ダーシーの父親が殺人容疑で逮捕された?!
ダーシーの父親キレニー卿は、アイルランド貴族。
先祖から伝わる城をアメリカの富豪に売り渡し、自分はそこの厩舎の調教師という役割に甘んじていました。ところが、富豪が殺されてしまったのです。
ジョージーに迷惑はかけられないと単身、故郷へ戻ったダーシー。
ショックを受けつつも、ショージーもすぐ後を追い、力になる決意を見せます。
気難しい父親には拒否されますが…
これまでほとんどわからなかったダーシーの家族の事情や、父親の人間像もわかり、話がドラマチックに進みます。
華やかな大人の女性が飛行機で着陸して、空気を変えてくれたり。
困り者の侍女クイーニーにも、良いところがあるとわかったり。
推理の部分と、恋愛と、ユーモアと、配分良く盛り上がり、面白く読めました☆ -
Posted by ブクログ
さて自分としては珍しく順不同で最新作だけ齧っている捜査官ウィル・トレント・シリーズ。『ブラック&ホワイト』に継ぐシリーズ第8作は、ウィルの行方不明の妻であり過酷な過去をウィルが共有してきたらしいアンジーの事件。
男性捜査官ウィルのシリーズとは言え、実際は彼を取り巻く個性派女性たちが持ち回り主役となるこのシリーズ。女性らしい感性と容赦のなさで惨憺たる殺人現場を軸に捜査と葛藤と闘いが始まる。心理戦と、暗躍する女たちと、ウィルを獲り合うサラとアンジーというデリケートな恋愛模様にも深みというだけではない捻じれのようなものを感じさせるこの作者独特の世界観を感じる。
事件現場はプロバスケットの花形選手に集まるマネー軍団の企画する新しい城の工事現場で幕を開ける。血みどろの工事中巨大ビルで発見された元刑事の死体。さらに刑事を取り巻く夥しい血液は、行方不明となっているウィルの妻アンジーのもの。
現場捜査だけで一冊の小説の厚みになるほど、時が進まないのが、あたかもパトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズみたいで、アメリカ女性作家のパターンなのかな、と感じる。とりわけ女対女のウィルの取り合いに関する心理戦、これに巻き込まれるウィルと彼の過去、と言ったところで、ストレートな時間軸の物語ではなく、作者の描こうとしているのは、彼らの棲む地軸や時間軸における世界観とその深みであるかに思われる。
家族、血縁、そして過去。すべてはウィルやアンジーの置かれた虐待児童という過去に根差しつつ、そういう世界悪を造り出している支配階級、資本家ども、そして心を病んで暴力衝動に体や心を毒されたスポーツ界のスターたち等々、アメリカの陰影を抉り出そうという試みが見える。
そして前半と後半で物語がでんぐり返りを見せるのだが、事の真相はさらに深く、昨今ではフレンチ逆転ミステリーのピエール・ルメートルを思わせる仕掛けで最後には読者を驚かせてしまう。やや強引な嫌いはあるものの、犯罪現場を料理してデザインしてメディアまでも化かしてしまう荒業プロットには正直度肝を抜かれた。
残酷な暴力シーンや、有象無象のあまりよろしくない人物たちの人間関係図が描きにくいところが抵抗となる読み物ではあるが、どこにも作者の謎の伏線が仕込まれている超級のミステリーであることは確かである。重層構造で、なおかつとてもボリューミーな700ページという重量級エンターテインメントをご賞味あれ。