高橋昌一郎のレビュー一覧
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初版は小林秀雄の遺族から物言いがついて構成が変わってしまったのだが、この初版はアンソロジーとその伝記的な背景も含めた解説として秀逸なので、とても惜しい。たとえば、第三章の『戦争について』などは、「戦争がはじまったんだ、四の五の言わずにお上に従え」としか内容がない。この人はやたら"観念的"ということを攻撃するが、自分が一番観念的に、まさに"アタマでだけ""考えた気になっている"。創元社の偉い人になってからのねちねちしたパワハラもひどい。最後おそらくボケてしまったのもなんかわかる気がしてしまう…この人はもう数十年すると徳富蘇峰みたいな名前は知られているけど誰も読まない人になってしまうのではないか。
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AI関係の本を読んだ時に名前が出てきたので興味はあったがここまで凄い人とは知らなかった。生い立ちから死後まで網羅してある。凡夫からすると天才としか思えない数学者達が本書には登場してくるがそれを上回るノイマンの超天才ぶり。孤高ではなく社交性もある人で悪魔には思えない。戦争における考え方をどう評価するかだが合理的思考に基づく判断としては間違いでもないと思う(日本人からしたらたまったものではないが)。
彼の業績については本書を読むと分かるが自分の知能が低すぎて本当に凄さが理解できたか怪しい。それでも今この文章を入力しているスマホの源流もノイマン型コンピュータにあるので全人類に影響を及ぼした人という認識はできた。あと天才のくせにギャンブルで負けたりと人間臭さもあるし悪魔だとしても魅力的な人物といえよう。
本書を読むでいてこの人の美点に思ったのは他の天才を排斥しない事。チューリングをスカウトしようとしたり文字通り本物は本物を知るという事をしている。こういう素晴らしさは見習いたい。
20世紀最大の天才というか21世紀にも影響を及ぼしているということで本書も改めて購入したい本。 -
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感性の限界
不合理性・不自由性・不条理性
著:高橋 昌一郎
講談社現代新書 2153
幻影;ライプニッツは、あらゆる問題を理性的に解決できると信じていた
限界とは、幻想と置き換えても分かりやすい
ただ、人類の進歩によって限界にたどりつくと、また、新しい地平線が新たになり、視野が広がっていく
高橋昌一郎氏の3つの限界シリーズ
①理性の限界:選択の限界、科学の限界、知識の限界
②知性の限界:言語の限界、予測の限界、思考の限界
③感性の限界:行為の限界、意思の限界、存在の限界 本書
内容は、けっこう辛辣です
本書が問うのは、なぜ理性的であるはずの人間は、このような愚かな集団行動をとるのだろうかということです
■行為の限界
・人間の行動を支配しているのは、理性や知性ばかりではない。感性に基づいていると考えられる
・ヒトが外界を認識するためには、五感を用いる以外に方法がない
・旧来の心理学から、自己の心的過程を自ら観察し記述すること、を、行動科学といっている
・人間の感情は、体内の化学物質が支配している
恐怖:アドレナリンが分泌している状態
恋愛:ドーパミンと、ノルアドレナリンの分泌量が増加し、セロトニンの分泌量が減少している
・ダイエル・カーネマンがたどり着いた行動経済学とは、人間の様々な特性、バイアスが支配する世界である
■意思の限界
・生活環境において個人の欲求が満たされている状態を、適応とよぶ。
一方、自己の要求が社会的に満たされていない状態に必要になるのが、自制である
・二重過程理論:頭(分析的システム)は、止めるべきだと考えても、身体(自律システム)がその判断を無視して暴走させる
・盲目的に服従するという行動様式は、脳に遺伝的に組み込まれているもの、それは、個体が生存し、結果的に遺伝子を残す可能性をふやすことだ
・生命の2つのシステム、自律システムは、遺伝子の利益を優先し、分析的システムは、個体の利益を優先する
・生物の脳とは、それぞれの構造に合わせて設計されたものではなく、新たな機能が継ぎ足されて進化をしてきたもの
・神は論理を超える存在とかんがえれば、答えは簡単です。全能にして、全知
・現実世界の過去・現在・未来はすべて確定済みでなければならない
・量子力学によって全能なる神など、存在しない
■存在の限界
カミューのテーゼ
・真に重大な哲学上の問題はひとつしかない。自殺ということだ
人生が生きるに値するかしないか、これが哲学の根本問題に答えることである
・自殺の問題に比べれば、真理の追究は遊戯にすぎない
・実存は本質に優先する
・カミュの異邦人、意識と不条理性、実存主義と不条理、不条理に対処するためには、①自殺、②盲信、③反抗
・プルトニウムを使って核分裂をおこすことは難しいが、濃縮ウランがあれば合わせるだけで核爆発を起こすことができる
・核爆発よりも大量被害を与えることができるのは、バイオテロです
・小集団の論理、信仰や信条といった紳士的なものではなく、共感や排他といった感情的な結合にある
・理性的精神の3つの敵、①自然の驚異としての宇宙、②人間の身体的限界としての肉体、③無知や欲望や愚かさなど人間の内面に潜む悪魔
・東日本大震災、大地震、大津波、原発事故、想定外の脅威の中で人間とはいかに卑小な存在であるのか
・人間は空気に支配される
序章 シンポジウム「感性の限界」開幕――結婚披露宴会場より
第一章 行為の限界
1 愛とは何か
2 カーネマンの行動経済学
3 二重過程理論と不合理性
4 人間行為の限界と可能性
第二章 意志の限界
1 自由とは何か
2 ドーキンスの生存機械論
3 進化と不自由性
4 人間意思の限界と可能性
第三章 存在の限界
1 死とはなにか
2 カミュの形而上学的反抗
3 意識と不条理性
4 人間存在の限界と可能性
おわりに
参考文献
ISBN:9784062881531
出版社:講談社
判型:新書
ページ数:264ページ
定価:1000円(本体)
2012年04月20日第1刷発行 -
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1人の科学者の生涯が書かれた本を初めて読んだ。彼の残してきた功績の華々しさに惹かれたことがきっかけだった。信じられないほど多岐にわたる分野での活躍に彼の脳内を覗きたくなった。大学で化学を学んできた者にとっては、聞き慣れた人物や理論が続出し、科学者の繋がりや心情の一部を知れたこともこの本の醍醐味であると感じた。数学出身の人は尚更であろう。
科学に対する考え方が人それぞれであり、特に原爆に関しては大きく意見が分かれ、派閥があったことなどは如何にも人間らしいと思った。その中で、ノイマンはタイトルにも書かれているように、「人間のフリをした悪魔」と表現されていたが、彼の人当たりの良さや癖や意外な一面も多数あり、ノイマンという人物に非常に好感が持てた。
もっと有名になっても然るべきだと思える人物であり、私がこの本を通して、ジョン・フォン・ノイマンを知れたことは幸運な事だと思った。 -
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名レビュアー渡辺由佳里氏が運営するサイト「洋書ファンクラブ」を閲覧していた時のこと。
天才数学者フォン・ノイマンをテーマにした小説“The Maniac”のレビューにあった一説に目が行った。
「歴史に詳しい(映画『オッペンハイマー』の)視聴者の中からは『なぜNeumann(ノイマン)のことが描かれていないのか?』という疑問の声も上がっていた。というのも、オッペンハイマーは原爆の開発を後悔して水爆の開発に反対して公職から追放されたのだが、フォン・ノイマンのほうは水爆の開発に積極的であり続けたからだ」
自分も映画を鑑賞したが、確かにノイマンという人物はワンシーンたりとも登場していなかった。「『マンハッタン計画』の科学者集団の中心的指導者」だったにも拘らず、だ。
しかしそれ以前に自分は、彼の名前すら聞いたことがなく…。試しに”The Maniac”を調べてみたが未邦訳だったので、代わりに本書を手繰り寄せた。
難解ワードが頻出するだろうと身構えていただけに、ちゃんと読み進められて拍子抜けした。時代背景や関係者の解説を交えながら彼の価値観および人物像を浮き彫りにしているので、評伝と呼んでも良い。
難解ワードもバランス良く盛り込まれていて、「歴史と数学、両方の世界を熟知しているからこそこんなにも分かりやすいのか」と著者の力量に敬服した。
オーストリア・ハンガリー帝国はブダペストの生まれ。
オッペンハイマー同様、幼少期からとんでもなく頭脳明晰で運動が苦手だった。家族はそんな息子に惜しみなく愛情を注いだ。
幸せなエピソードを知っていくたびに辛くなる。「どうして将来あんなことをしたのか」と。
「フォン・ノイマンは、我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない、という興味深い考え方を教えてくれた。[中略]それ以来、僕はとても幸福な男になった」
専門の数学以外でも標的を正確に狙う確率を計算する、プログラム内蔵方式のコンピュータを考案。現在も戦闘機などにそれが応用されている。(冒頭に書いた”The Maniac”は、ノイマン考案のもとで開発されたコンピュータの名前)
広島・長崎に投下された原爆の設計を考えたのもまたノイマンだ。他の研究者らが使用を躊躇する中、「科学的に可能だと分かりきっていることはやり切るべきだ」とのちの水爆同様に積極的だった。まさに「人間のフリをした悪魔」をよく表している。
「日本も何故もっと早く降伏しなかったのか」と日本側の事情も深掘りされているので、アウェイ感にならなくて済んだ。「ドイツの直後に降伏していれば投下は免れた。間接的にであれ、日本の戦犯者は原爆で国民を更に虐殺した」と著者は語る。
ノイマンの死因はガンで、核実験で何度か浴びた放射線が原因と言われている。他人の介入する隙を見せなかった、彼らしい最期だったのかもしれない。
それに一方的に命を奪われた日本国民とは違って、死を実感しながら自分の研究・信念の正しさを今際の際まで信じていられた…。
最後までとうとう、彼を人間として見ることができなかった。 -
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知的好奇心を擽る素晴らしい本。第一章は就活、第二章は他者との関係(人間関係)を踏まえた自己分析についての話で、就活の実情も踏まえ、非常に参考になった。第三章は哲学的な自己分析の話。ソクラテスからプラトン、デモクリトスなどに触れながら「私とは何か」の思索を追うが、デカルト以降はかなりややこしくなる。何が何だか分からない。けれど考えるしかない。実存は本質に先立つ。カミュが唱えた形而上学的反抗が印象に残った。しかし、それを達成するのは非常に厳しそう。そもそも「達成」などというものはないのかもしれない。現実に反抗するのは立派であり、知性の限界に挑戦する素晴らしいことのように思える。しかしそれ自体、「意味」は無く、ただそうする人がいるだけだ。
僕としては、人間が幸福に生きるには、感情に素直に生きるしかないのではと思う。それも、一つの実在する意見だろう。 -
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行動経済学…とかのジャンル分けされても浅学なためによく分からなくて、常に「〇〇による先入観」として読んでた。
本当にどれも自分や周りに当てはまるからこの本読むと呪いみたいに「あーこれは〇〇バイアス掛かってるな」って脳内に出てきちゃう。褒め言葉です。
前作(緑)を読んだときの感想で、「人間臭さを決めてるのは何かしらバイアスから生まれる先入観だと思うので、だからこそ人間行動学や心理学、哲学などに繋がって来るとは思う」みたいな事をドヤ顔で書いてて、この本を読んだ時に「人はバイアスのない状態はありえない」ってもう書かれてあって、ドヤ顔してたのが恥ずかしい… -
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科学哲学の大家 高橋昌一郎氏の限界シリーズ
前著 理性の限界の前振りから
選択の限界 グー・チョキ・パーの三つ巴の状態では、二者選択の残りが勝者となることがある
科学の限界 科学者が不可能を言ったものも、のちに撤回されて実現されている
知識の限界 ゲーデルの不完全性定理、数学、論理学自体に矛盾を含んでいて、じつは不完全である。
言葉は不完全なので、科学的なやり方に従って世界を実証しようがテーマ
気になったこと
・ヴィトゲンシュタインは、過去の「哲学的問題」は「言語的問題」にすぎない
言語そのものが不明瞭なものであるので、哲学、美学で取り上げられてきた問題は実は問題と呼べない
・ヴィトゲンシュタインの結論 語りえないことについては、沈黙しなければならない
・『論理哲学論考』には、語ることができないにもかかわらず、「語りえないこと」があると認めている。
・ウィーン学団は、ヴィトゲンシュタインのスローガンをさらに進めて、世界を論理によって分析し、科学によって実証して認識しようとする「科学的世界把握」の立場を掲げました。
しかし、ゲーデルは、不完全性定理によって、論理学から全数学を導くことができないことを明らかにしてしまいます。
このことによって、ウィーン学団は、科学的な手法を失ってしまいます。
ふたたび、言語にもどってくるも、言語理解にも限界がある、相互理解という理想こそが幻想である
観察は常に一定の理論を背負っているわけで、理論に基づかない観察は存在しないといっています。
これを、観察の理論負荷性といい、演繹法をうしなった科学の帰納的アプローチである。
・帰納法のパラドックス:ニュートン力学は、人間がかかわる大半には、正確に予測することができている
・現実は、複雑系の中で成り立っていて,容易に予測はできない。
・なので、科学は論理的であるにもかわらず、現実を帰納的な方法でないとアプローチができず、演繹的でなければならない科学の検証方法に帰納法を使わなけれがならない矛盾が生じる。
これを帰納法の正当化という。
・ファイヤアーベントの「方法への挑戦」が紹介されていて、単に科学理論ばかりではなく、あらゆる知識について、優劣を論じるような合理的基準は存在しないというものだ。
ファイヤアーベントが言いたかったのは、何も科学を否定しているわけではなく、既成の方法論にこだわるなということいっている。科学と非科学、西洋文明と非西洋文明、合理主義と非合理主義は、それぞれどちらもおなじだけの権利で存在するということいっている。
どうやら、結論は、限界があるので、科学と理性にばかりたよるな。と理解しました。
目次
序章 シンポジウム「知性の限界」開幕「理性の限界」懇親会場より
第1章 言語の限界
第2章 予測の限界
第3章 思考の限界
おわりに
参考文献
ISBN:9784062880480
出版社:講談社
判型:新書
ページ数:279ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:2010年04月20日 第一刷
高橋昌一郎氏の著書
■20世紀論争史~現代思想の源泉~
■ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論
■ノイマン・ゲーデル・チューリング
■フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔
■愛の論理学
■科学哲学のすすめ
■自己分析論
■実践・哲学ディベート
■小林秀雄の哲学
■哲学ディベート
■東大生の論理
■反オカルト論
■理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性
■知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性
■感性の限界 不合理性・不自由性・不条理性