高橋昌一郎のレビュー一覧
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ノイマンの哲学に続いて読んでいる。チューリングの子供の時の体験が特異すぎる。アメリカ人嫌いではなくて、ノイマンの部下になってたらどうなってたんだろうか?チューリング・マシンとゲートル数化モデルは、読んでてさっぱり意味がわからないし、ブラウワーの直観主義はどうしても受け入れない。チューリングが、英国情報の国家的機密までを知り過ぎて居たから諜報機関に殺されたのでは無いかとの著者の話は、興味深い。
またウィナーの余談だが、数学の講義中「なぜこの定理は明らかのか?」と言って、学生の質問の後、教室の外を20分間歩き回って帰って来た後、「やはりこの定理は明らかだ」と言って、理由を説明なく講義を続けたこと。また、極度の近眼で、引っ越しの日に家が何処かわからなくなって、夕方近くを歩いていた少女にちょうどに尋ねたら、それが自分の娘だと言うことがわかったのはおかしい。「イミテーションゲーム」は、チューリングの論文の一項目からとっているとは知らなかった。 -
Posted by ブクログ
理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性
著:高橋 昌一郎
出版社:講談社
講談社現代新書 1948
おもしろかった。数式などの解説がなく、実例を提示して掘り下げていることが分かりやすいと思いました。
科学は、矛盾を内包していて、多々の限界、認識の地平線を有しています。
本書は、ゲーム理論、数学基礎論、量子論をベースとしたパラドックスなどの解説をしています。
いまや、科学とは、一つの宗教であり、観測と仮説・検証をふくめた合理性によってなりたっていますが、論理的に不完全であることがすでに明らかになっています。
分け方には、違和感がありますが、選択の限界、科学の限界、知識の限界として、それらの解説をしています。ゲーム理論を学んだことのあるかたであれば、違和感がないとおもいます。
いわゆる、乾いた科学である、数学、物理学をベースとした解説書です。
用語として提示しているものは、以下です。しられているものばかりなので、深堀りも楽かと思います。
■選択の限界
・合理的な意思決定
・多数決の原理
・アロウの不可能性定理
・複数記名方式と、順位評点方式
・完全な民主主義的な社会的決定方法はない
・選考の連結律
・独裁政治:1人できめる、貴族政治:数名できめる、民主政治:だれも決められない
・民主主義に必要な4つの条件
①個人選好の無制約性
②市民の主権性
③無関係対象からの独立性
④非独裁制
・囚人のジレンマ
・繰り返し囚人のジレンマ
・集団的合理性
・ミニマックス理論
・ナッシュ均衡
・もっとも有効なのは、しっぺ返し戦略
・核戦争の報復戦略
・チキンゲーム:正面衝突する暴走族の度胸試し
■科学の限界
・天動説と地動説 教会に反する教理の公表
・科学こそが宗教
・ラプラスの悪魔
・ハレー彗星の軌道
・ハイゼンベルクの不確定性原理
・光速度不変の原理
・相対性理論と、ニュートン力学
・コペンハーゲン解釈
・素粒子、電子の補完性、波でもあり、粒子でもある
・神はサイコロをふるのか、シュレディンガーの猫
・素粒子の揺らぎ、観測精度の限界
■知識の限界
・形式科学
・ぬきうちテストのパラドックス
・クワインの分析
・ゲーゲルの不完全性定理
・真理の対応理論
・ペアノ公理
・ゲーデル命題
・認知論理
・神の非存在論
・チューリング・マシン コンピュータへの道
目次
序章 理性の限界とは何か
第1章 選択の限界
投票のパラドックス/アロウの不可能性定理
囚人のジレンマ/合理的選択の限界と可能性
第2章 科学の限界
科学とは何か/ハイゼンベルクの不確定性原理
EPRパラドックス/科学的認識の限界と可能性
第3章 知識の限界
ぬきうちテストのパラドックス/ゲーテルの不完全性定理
認知論理システム/論理的思考の限界と可能性
ISBN:9784062879484
判型:新書
ページ数:280ページ
定価:1000円(本体)
2008年06月20日 第1刷発行 -
Posted by ブクログ
数学や化学、物理、天文学に関する知識が浅くても、フォン・ノイマンのあまりに超人的なエピソード話でめちゃくちゃ面白い。
幼少期から生涯を通してすごい話ばかりなんだけど、特に第二次世界大戦前後には陸軍、ホワイトハウス、戦争省に直結する3つの機関の顧問を兼任して、海軍兵器局常勤顧問としてイギリスにも出張し、帰国後は「マンハッタン計画」の中心的指導者となり、その傍らで専門研究も続けていて、後世に大変な影響を与える成果をあげ続けていたという話、もうすごすぎて意味が分からなくなってくる。
一方で、決して完璧超人というわけではない、むしろ頭が良すぎるが故の短所とも言えるエピソードがまた面白い。
学生時代、実験中にしょっちゅう別の事を考えてフラスコを割りまくっていたり、
車の運転が下手で、彼が何度も車の事故を起こした交差点が「フォン・ノイマン・コーナー」と呼ばれるようになったり等々。
あと、また違う話ではあるけど大戦中ドイツ軍の機雷への対処法をイギリス海軍に示した際、将校らから「大西洋海岸で大仕事をした、アメリカに渡ったドイツ野郎」と呼ばれていたという、たくさんの船舶を救った人物に対してとは思えないひどい物言いに、思わず吹き出してしまった。
あとノイマンだけでなく、彼の周りにいた数学者や科学者達も、皆とんでもない天才ばかりで、彼等の話もすごく興味深くて面白い。 -
Posted by ブクログ
ノーベル賞を取る天才も当然ながら人間だ。天才じゃないとノーベル賞は取れないけれど、天才だからと言って、必ずしもモラルや道徳面でも聖人君子というわけじゃない。ノーベル賞を取るには運も必要で、科学者として大成功とも言える人生にも苦悩があるのだなとしみじみ思った。
ノーベル賞受賞者が専門外のことについて誤った方向に進むことをノーベル病と呼んでいるが、ノーベル賞を取るほどの人は専門という概念はなく、自分の興味のあることを研究し続けてしまうものなのかもしれない。それがノーベル賞を取った分野と同じように成功するとは限らないということなのだろう。
大昔のギリシャなんかの哲学者は自分の専門という概念はなく、森羅万象について考察を深めたのだから、天才とはそういうものなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
人類史上最も頭脳明晰との評判が高いノイマンの生涯を追う。こういった特異な人のエピソードはとても面白く、まさに事実は小説より奇なり。フォン(貴族)の称号は父の時代に得られた、ノイマンが示す通り「〜マン」ユダヤ系であることが名前で分かる。「最恐」と表現されているのは、ノイマン哲学は科学至上主義で、どんな人道上の問題があっても科学が優先されるため。朝鮮戦争でも、ソ連に対する予防戦争でも核兵器の使用をためらってはならないとの恐ろしい主張であったが、実際にアメリカが主導で軍事的な裏付けのある国際機関が実現できていたら一時的に戦争は無くなったかもしれない。しかし、アメリカの価値観で押さえつけられることに世界は反発し、争いの種はやはり無くならなかったであろう。被爆国の日本にとっても非常に考えさせられるところだが、日独伊三国同盟が崩壊した状態で徹底抗戦を進めようとした軍部の姿勢がなければ原爆投下もなかったのではないかとの指摘は正しく思う。著者の指摘では、故郷ハンガリーをナチス、ソ連に蹂躙され、またマンハッタン計画でも協働したドイツ出身の共産党員でソ連に原爆情報を売ったフックスの存在が、ノイマンの強硬な姿勢の背景にあるのではないかとの分析がある。
ノイマンと同世代で、もう1人の天才とされる不確定性原理のハイゼンベルクはナチス体制下で核分裂の研究を進めていたことになり、ここでの対比も興味深い。シュレディンガーの波動とハイゼンベルクの行列を統一して考える偉業はノイマンによる。そしてヒルベルト学派の旗手でありながら、不完全性定理をゲーデルに先に気づかれたことは大きな挫折の経験となり、ゲーデルこそ天才だと度々公言し、数学基礎論の論文はその後出さなくなったエピソードもある。同じ情報理論の父とされ、天才と名高いクロード・シャノンについては本書では触れられていない。