高橋昌一郎のレビュー一覧
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限界シリーズの1冊目。専門家と一般人によるシンポジウム形式で非常に読みやすい。
「アロウの不可能性定理」、「ハイゼンベルクの不確定性原理」、「ゲーデルの不完全性定理」とその論点についてそれぞれ選択、科学、知識の限界に分けて議論される。
文系で専門知識がないと「ちょっと何言ってるかわからない」のオンパレードで全て理解しようとすると挫折しそうだが、こういう考え方があるんだなと知るだけでも世界が広がる気がする。
特に一章の選択の限界は面白かった。投票方法によって当選者が変わるという民主主義の矛盾を突き付けられる。
また、カント主義者や急進的フェミニズムなどが極端な発言をする度に司会者に遮られるという -
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ネタバレある婦人が、遠い戦場で夫が戦死した同時刻に、夫の周囲の兵士の顔や塹壕の光景を夢見た。医者は、そのような夢の多くは現実とは無関係だが、偶然現実に対応する夢もあり、その一例だろうと答える。しかし、ベルグソンは、「精神感応と呼んでもいいような、未だはっきりとは知られない力によって、直接見たに違いない。そう仮定してみる方が、よほど自然だし、理にかなっている」と考える。
そして小林は、「経験科学と言う場合の経験というものは、科学者の経験であって、私達の経験ではない」という観点から、ベルグソンの考え方を擁護する。さらに小林は、ベルグソンと同じように「理智」によって「整理された世界」を拒否し、「世界が果 -
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言語、予測、そして思考の限界を仮想ディスカッションの形式で読み解く「限界」シリーズ2作目。
相変わらず、議論を通しての引用が巧みである。
ソーカル事件は衝撃的だったし、ドーキンスの逸話はほつまこりさせられた。
そしてホイルの自説は突拍子もないようでいて、もしかしたらそうかもしれないという気持ちにさせられるパワーがある。
「限界」を銘打っているが、人類の限界はここだと蓋をするものではない。
現時点での臨界点を描き、その最先端でなされている研究や議論が可能な限りわかりやすくときほぐされ、多くの読者がこういった知的臨界点に飛び込むよういざなっている、そんな印象を受けた。 -
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「知性の限界」高橋昌一郎
どんな方法を用いても人間は100メートル走で9秒37の壁は破れない。なぜなら、人の運動能力が身体の物理的、遺伝的性質によって制限されてるから。スタートタイミングの反応時間も0秒1を切る事はできない。
時間を直線的に遵守するのは、個人主義的なモノクロニックタイム文化圏、時間をより流動的で螺旋状に捉えるのは、集団主義的なポリクロニックタイム文化圏。
パーティの開始前に到着して待っているのが日本人、開始ちょうどにドアをノックするのがイギリス人、20分遅れるのがフランス人、30分遅れるのがイタリア人、40分遅れるのがスペイン人。1時間後にイラン人、2時間後にポリネシア -
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「理性の限界」高橋昌一郎
「良妻を持てば幸福になれるし、悪妻を持てば哲学者になれる。」ソクラテス
完全に民主的な社会的決定方式は存在しない。アロウの不可能性定理
X>YでY>ZならばX>Zであるという性質は選好の推移律と言う。
個人において成立している選好の推移律が集団においては成立しない事がある。
どの投票経路をたどっても同一候補者が当選すべきとする民主主義の大原則は、
経路独立性と言う。
複数の選択肢から単数を選択して投票する単記投票方式や上位二者決戦投票方式、勝ち抜き決戦投票方式では、プラスマイナスの大きい候補者が当選しやすくなる。順位評点方式、総当たり投票 -
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5人の学生が10の議題について討論し、教授が補足・まとめをするという仮想ディベート。
実際の事件や出来事を取り上げているので興味を持って読み進められる。
議題は、定番といえば定番。議題に対する肯定・否定両意見も、詳しい人にとっては目新しいものではないと思われる。
しかし、要点がギュッと凝縮されていて何が論点になっているかわかりやすいので、自分のようなふんわりとしか知らない者にはありがたい。なんとなく知ってるつもりの話にも続きがあって、新鮮な驚きが心地良かった。
Aさん…文学部
Bさん…法学部
Cさん…経済学部
Dさん…理学部
Eさん…医学部 -
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これに続く「知性の限界」を先に読み、とても感心したので読んでみた。当初、在庫切れだった、評判をよんだのか、復活して店頭に並ぶようになった。すごい。この本はこの本でとても面白かったが、個人的には本書の方が難しく感じた。とくにゲーデルのところ。それと、テューリング・マシンをめぐる話があるが、テューリング・マシンそのものの解説はないので、少し不親切な気もした。たまたま「知性の限界」方に、個人的に知りたいことが多かったため自分の中での評価が高いが、客観的には甲乙つけがたい。というか、片方読んで面白いと思った人は、是非もう片方も読んで損はないと思う。""
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『知性の限界』『感性の限界』(ともに講談社現代新書)へと続く「限界」三部作の第1弾です。大学生や会社員、論理学者、哲学史家、科学主義者、ロマン主義者など、多くの人びとが参加するシンポジウムでの会話を通じて、アロウの不可能性定理、ハイゼンベルクの不確定性原理、ゲーデルの不完全性定理にまつわる問題が、わかりやすく説明されています。
三部作の中で、本書がもっとも議論の密度が高く、おもしろいと感じました。とくに著者の専門であるゲーデルの不完全性定理のさまざまな拡張を扱ったところは、この問題についてはまったく素人であるわたくしでさえ、何となくわかったような気にさせられてしまうほど、著者の説明は巧みです