平安寿子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
20241014
内装会社に勤める女性が、取引先との諍いをきっかけに退社してカフェを始める物語。
物件探しから、開店までの工程、開店してからのカフェ経営の難しさをリアルに小説に落とし込んでいる。
ノンフィクションのようなリアルさで、カフェをはじめとした飲食店経営の厳しさが、ひしひしと伝わってくる。
結末までもがリアリティに溢れているが、カフェ経営の難しさだけではなく、自身がやりたい事をやってみた事の尊さや、失敗は何度でもして良いんだという勇気も与えてくれる。
こんな面白い小説だと思わずに当分の間、積読してたのが勿体ないくらい興味深い面白い小説だった。
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Posted by ブクログ
好きよー好きよーあなたー。って。ジャンル的にもう好みっていうのはあって、この系統のは、はっきりいって好きなのである。この系統って言うのは、ダメっぽい男女が織りなす人間模様、的な。これを男性作家が書くと、ダメ男と思いきやいざという時はやるやつだぜ、みたいな格好良い系になるけど、女性作家が書くと、実にだらしない。このだらしなさが、例えば普段は真面目に働いてるけど、休日はロハスーとか言いながらブルータスカーサでも読んでるみたいな、ある種の憧れをもって迫ってくる。この背徳感というか。
世の中頑張らないやつもいれば、頑張らないやつもいて、頑張ってもダメな人もいれば、頑張らなくても大丈夫な人もいて、それが -
Posted by ブクログ
読んでいてこれほど感情を高ぶらせた作品は初めてかもしれない。最初は夫の不甲斐なさに憤り、次は身勝手な妻に呆れ、我が道を行く子供たちに茫然。そして読み終わった今は、もう勝手にしろ(笑)と言った感じ。抜群に面白い。今年に入って平さんの作品を読み始めたがすっかりファンになってしまったようだ。
あらすじ(背表紙より)
プチ家出から何年も戻らない母、いいじゃないか、と言う“文鎮”こと父、ダメ男に貢いで飄々と生きる姉、そんな家族にいらだち、上昇志向を実現しようと邁進する妹…。他人の迷惑顧みず、「自分の気持ち」に素直に生きるタフな4人がここにいる。けちなモラルや常識なんて笑い飛ばす、新しい家族の物語。 -
Posted by ブクログ
・素晴らしい一日
・アドリブ・ナイト
・オンリー・ユー
・おいしい水の隠し場所
・誰かが誰かを愛してる
・商店街のかぐや姫
中学校のとき、クラスの男子が読み上げた作文を思い出しました。
「ぼくは、最初の1ページを読んで面白くない小説は読みません」
この本は「ぜひ読め」とお勧めできる。
“日曜日の朝っぱらから不精髭をはやし、ボサボサ頭にくたびれたジャージの上下という格好でパチンコをしている三十七歳の男に相応しい呼び名は一つしかない。
甲斐性なし。”
この出だしだけで引きこまれるでしょう?
その甲斐性なしに「貸した金返せよ」と言いに行った一日の話なんだけど、その男がもう本当にダメなやつで、 -
Posted by ブクログ
好き嫌いは分かれるだろうけど、わたしはものすごく好きです。
4人家族のそれぞれの価値観の違いにがくがく頷いてしまう。家族もまた個人の集まりなのだよなあ。その4人それぞれのキャラを引き立てる文章表現がまた絶妙で、ニヤリとしたり吹き出したりイラッときたり心配したりで、気がつけば読むのを中断できない。入り込んでしまう。近所のおばさんにでもなったような、付かず離れず眺めて、いろいろ噂したり心配したりお菜をおすそ分けしたりしたいww
個人の集まりである集団が家族なのだと、それに対して美化もしないけれど卑下もしない。そのフラットな目線が素晴らしい。
平安寿子さんが好きなひととは、友達になれそうな気がする。 -
Posted by ブクログ
勝手ながら、起業の学校の課題図書に推薦したいと思った!
主人公未紀は、恋人にふられ、会社では大失敗をして、その勢い?で、カフェを開くことになる。
街にあるような素敵な、おしゃれなカフェが開きたい、人は失敗するけど、自分は大丈夫!
そう思って始めるものの、夢だけがあれば、うまくいくものではなく・・
店は閑古鳥がなく有様に。ボロボロになっていく主人公を見ているのは辛かったが、きっと誰もが陥りがちなケースを書いているのだろな~と思った。
起業はしていないけど、非営利団体を主宰はしていて、
その活動は私にとっては仕事にも値する。
そうした目線で見てみると学ぶところは多かった。
店を開店するまでの -
Posted by ブクログ
ご本人もおっしゃってるそうだが、やはりこれは平安寿子の代表作だろう。
「自分の気持ちに正直に生きること」はいいこととされているし、奨励されがちなことなんだけど、もしほんとに「自分の気持ち」に「正直」に生きたらどうなるか、ということのサンプルがここに描かれている。
「文鎮」とあだ名されることなかれ主義の権化みたいな父親の信也、ふらっと家出してそのまま戻らない母親の鷹子、セックスが好きなだけと公言してはばからない姉の積子、やたら上昇志向だけが強い立子。
読者のわかりやすい感情移入や共感を、強烈に跳ね返す登場人物ばかりが、全員自分の気持ちだけに正直に生きた20年間のお話である。
ただ一人常識と良識の