高橋健二のレビュー一覧
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ネタバレ## ひとことまとめ
模範少年ハンスの苦しみと、美しい自然
## 感想
周りの大人の期待に翻弄されて、頑張りすぎて壊れてしまうハンス。
大人もハンスも含めて、こういう人は今も、むしろ今の方が増えているかもな、と思う。
競争はますます激しくなり、人は疲弊し、しかし世の中では争いは絶えない。
誰かに勝つこと、しかもそれが自分でなく自分の子どもを勝たせて悦に入ることが、どれだけの人を幸せにするのか。
少なからず、自分の子は幸せではないのではないか。
人には、その時々にしかできないことがある。
それをしっかり楽しみ味わうことを怠ると、後からは取り返せないことが多い。
自分の子どもには過度な期待を -
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ネタバレ幼年時代に属していたのは道徳的で明るい、アベルの世界。クローマーはそれと対照的な闇の世界にシンクレールを引き込むが、本当の意味で対照的なのは、そのクローマーからシンクレールを救ったデミアンの、カインの世界なのか。
デミアンの神は、善と悪を併せ持つ神。道徳的でないものを排除するのではなく、清濁併呑のアプラクサス。平和に道徳的に生きるアベルと違い、カインは来たるべきものに備え、必要とあらば平和から人々を追い出す準備をしていた。そのカインのしるしをもつ者は、新しいもの、孤立したもの、来たるべきものを自然に受け入れる準備がある。その準備とは「私たちのめいめいがまったく自分自身になり、自分の中に働いてい -
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ネタバレ読み終わったあとに、考えれば考えるほどじわじわと面白味が増す作品。教員は、優秀なものを生み出した「自分」に酔いしれるような生き物である、ぜひこの世にいる全教員の見解を聞いてみたい。
ハイルナー、教員の皮肉的存在な地位で、ずっと己を貫き通すような人間だったから、特に学校を出たあとも周囲の目なんてそこまで気にせず生きていったんだろうと思う。満足に好きなことを、詩を書いて。一方反対の地位にいるハンスは車輪の下で押し潰されるような違和感を抱えながらも従い続けて、競争に勝つために学習にばかり目を向けて、自分の好きな釣りや幼少期楽しかったこと、ふと思い出すももうほとんどそんなものは殺してし何が楽しくて何が -
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シッダールタが人間の喜び、悲しみ全てを経験して得た『梵』について自分の人生を重ねて考えさせられるヘッセの宗教的体験の集大成。
シッダールタの「愛」のために生きる小児人とは自分は違う人間だという若気の至りから、カマーラと出会い「愛」を覚え、人間の本能的な「愛」に溺れて小児人的価値観に染まっていく青年時代、目的もなく小児人として金と欲を満たし続ける生活をした中、ヴァステーヴァと川の教えを経て最終的に行き着くのは、時間という概念は存在せず、過去も未来も同時的に存在するという気づきであったのは、この本を読んだ全ての人間の人生の救いとなる結末だったのではないかと大変感動的であった。
私は今、社会での -
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ハリーハラーほど高尚な精神を持ち合わせてはいないけれど、とても共感して読むことができた
時代と世界、金銭と権力はちっぽけな平凡の人間のもので、ほかのほんとの人間のものは何も無いのよ。死よりほかのものは何もないのよ
ほかには何もないの?
あるわ、永遠が
永遠の思想
神の国、永遠の意味、時間の他に永遠があるのでなければ全然生きられない。
気づけるようで気づけていなかった。
これで生きることもできるし、死ぬこともできる。
50歳。いま25歳の自分にとって、想像のつかない歳。ただ単純に2倍しただけのものでは無いことは明らかである。
ちょうど大学の今年度の学科長から卒業についての連絡があり、急 -
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音楽は道徳的でないから好きだ。そして、神と悪魔を兼ね備える神が私には必要だ。そうシンクレールは言う。
シンクレールは、幼少期から、明るい世界と暗い世界を行ったり来たりしながら自己について葛藤し悩み苦しんでいた。そんな時出会った、少し大人びたデミアンによって少しずつ導かれていく。時にはデミアンを離れ、堕落しながらも、心のどこかにデミアンがいた。
鳥は、殻を破り外に出ようとしている。その絵をシンクレールは描いた。誰なのかわからない愛する人の絵を、何度も書き直し、その絵は少女ベアトリーチェにも見え、デミアンの母にも見え、デミアンにも見え、シンクレール自分自身にも見えた。
結末を読んで、デミアン