高橋健二のレビュー一覧

  • 知と愛

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    たぶん高校生くらいのときに読んで、いま再読。

    ナルスチ(知)とゴルトムント(愛)という対称関係は、ほかに「霊と肉」「理論と芸術」という対比にもなっていて、もともとけっこうヘッセの小説ってこういう対比がキッパリしていると思うのだけれど、本作においてはよりキッパリして実に小説らしい。

    修道院にはいったゴルトムントは高い精神と信仰心をあわせもつナルチスに惹かれ、彼をめざして勉強にはげむ。しかしナルチスはゴルトムントとの間の埋められぬ境界に気付き、むしろお互い正反対の性質を持つがゆえに重大な存在であることを説く。

    まだ若くたびたび混乱をおこし強情を張るゴルトムントと、彼に対し忍耐をもって理解を促

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    2013年05月16日
  • 春の嵐

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    ネタバレ

    再読。主人公クーンと女の子が夜の山から橇で滑り降りる場面が印象深く残っている。クーンは橇滑りの事故がもとで片足びっこになり、しかしそのおかげもあって音楽で生計をたてていくことを志す。

    クーンの女性関係はけっきょく描かれないままだが、それゆえにかムオトやゲルトルートと交わす友情の場面はとてもうつくしい。
    ムオトの激しさと明るさへの憧れ。そしてクーンの作曲したオペラを介してゲルトルートとふたりで過ごす時間の鮮やかさ。

    青年は自己の願望のために生命までも放棄する。逆に老人は他人のために自己を犠牲にする。青年よりも老年がすばらしいというテーゼ。
    しかしながら青年が老人になるためには、それこそ死にも

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    2013年05月05日
  • 知と愛

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    (メモ)

    ・構成がしっかりしていて話の展開も整っている
    ・ただ、デミアンや荒野のおおかみが好きな自分にとっては、やや整い過ぎている気もした
    ・「知と愛」という題名が好きだ。訳者が邦題としてつけたという。
    ・二元論
    ・厚い
    ・後半の一部は哲学語りそのもの

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    2013年02月22日
  • クヌルプ

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    あらゆる能力に秀で、誰からも愛された少年クヌルプが失恋にうちひしがれ、才能を持て余すさすらいの人生を送る。『シッダールタ』にもつながる魂の救済の物語。

    「きみは聖書に注文をつけすぎるよ。何が真実であるか、いったい人生ってものはどういうふうにできているか。そういうことはめいめい自分で考えだすほかはないんだ。本から学ぶことはできない。これがぼくの意見だ」(p33)

    「だが、それをぼくひとりで楽しんだわけじゃない。たいていの場合、仲間か、若い娘か、子どもが居合わせて、それをおもしろがってくれ、ぼくによくお礼を言ったものだ。それでいいことにしよう。それで満足しよう」(p89)

    引用は控える

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    2013年02月18日
  • 青春は美わし

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    本書には二作の短編が収められているが、両作とも初恋にちなんだ実らぬ恋を通じて導かれる、儚くも玉のように美しい青春を優しく謳っている。誰しも通る青春の美しさ。本書はきっと、国籍問わず万人にノスタルジーを喚起させる。そして大切なのは、青春以降の生き方についても見逃せない示唆を与えてくれるのである。

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    2013年02月01日
  • クヌルプ

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    2012年12月 03/96
    なんとなく気になって読んでみた。多彩な才能を持ち、それを湯水のように使ったクヌルプの少年期、青年期、老年期を描いた物語。終わり方がとてもスキでした。
    読んでる途中でなくして、見つかるまでに時間がかかったので改めて通して読み直したい。

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    2012年12月16日
  • クヌルプ

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    生活の芸術家、クヌルプの3の物語を描いた作品。「早春」「クヌルプの思いで」「最期」と題された思いでの中に、クヌルプという人間の豊かさが溢れている。


    中でも好きな場面が、「最期」でクヌルプが故郷に帰り、その少年時代を懐古するところだ。少し抜粋したい。

    「どの屋根にどのネコがいるか知らないことはなかった。どの庭でもその果実を食べてみなかったことはなかった。どの木でも、登ってみなかったのはなかった。そのこずえに緑色の夢の巣を彼が営まなかった木はなかった。この一片の世界は彼のものであり、このうえなく深い親密さでなじみ愛したものであった。ここでは低木の一つ一つ、庭の生がきの一つ一つが、彼にとって重

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    2012年12月12日
  • 知と愛

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    読んでいる間の身の震えるような感動は言葉にできない。心のいろんな所を揺すぶられた。近いうちにまた読みたい。

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    2012年11月20日
  • クヌルプ

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    二カ月ほど前、我が家に猫がやってきた。母が道端で鳴いていた黒い子猫を拾って来たのだ。その頃は目も開いておらず、当然餌も自力では食べられないため、注射器にミルクを入れて飲ませなければならなかった。時が経ち、日に日に成長した猫だったが、自分たち家族は彼のために様々な気を遣い、世話を焼かなければならなかった。その割に本人は飄々として自由気ままに過ごし、気の向いたままふらついて行く。呆れることもしばしばあったが、しかしそのぶん家族間の空気は和み、癒され、以前に比べて笑顔も増えた。すべて彼のおかげである。

    さて、この話の主人公クヌルプは、まさにこの猫のような人間である。
    自由気ままに放浪し、旅先の知り

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    2012年10月04日
  • 春の嵐

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    ゲルトルートは、直感に素直に生きている人じゃないかという印象を受けた。芸術と恋愛等々、古典的なテーマでいい小説だった。愛が修行と呼ばれる所以は...どのような考えを持った人が破壊せず、精神的にも負けず愛を成就できるのか。小説をまたもっと読まなくちゃと思いました。

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    2012年09月07日
  • ゲーテ格言集

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    いつでも自分の手の届くところにおいておきたい本だと思う。
    気分が落ち込んでいるときや、選択に迷ったとき、また人に何か言葉をささげたいとき、わたしはきっとこの本を手にとるだろう。
    この本の中にある言葉に救われたことも、少なくはない。
    人生とはとてもささやかで、それでもいとしく、大変重要なものであることを、わたしはゲーテから教わった。
    これからももっとこの本から人生のさまざまを、人間のさまざまを、感じとりたいと思う。

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    2012年08月18日
  • ヘッセ詩集

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    自分へのごほうび感覚で買った。

    大島へ持って行って、そこで一度読み終えた。
    何度でも、黙って、または声に出して、読み続けたい。

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    2012年11月07日
  • 知と愛

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    神に奉仕する学者ナルチスと、美に奉仕する芸術家ゴルトムント。
    そんな二人の友情の物語で″知と愛″という邦題は見事。
    対照的な生涯を送った二人が、最後に芸術を通して互いを認め、精神世界と思想を語る姿に感動しました。
    清廉と官能が織り成す精神性の美しさに心が洗われるようで。
    哲学的な作品でまだ理解しきれてない部分もあるので、大人になったらまた読み返したい。

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    2012年09月24日
  • ゲーテ格言集

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    打ちのめされ、怯えきって、心安らげる場所を見つけられない時にでも喜びはある。

    かつてゲーテが存在したということ。
    今も生き続けているということ。
    それは大いなる喜びだ。

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    2012年06月06日
  • 知と愛

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    レビューというのは自分から距離が離れていればこそ、気軽にホイホイ書けたのだ。ヘッセのレビューを書こうとすると、思い知らされる。

    苦しみを宿命づけられた生のなかで、人がその生と死を渡り仰せるだけの光ー平穏ー意味など、何かしらの確かさを見いだそうとする不断の努力。ヘッセという人の根底のテーマは一貫している。そして、そのような凄惨さの中に、美しく優しく人や世界が描かれる点も変わらない。

    「シッダールタ」や「荒野のおおかみ」の変奏として「知と愛」を捉えることが適切かは分からない。けれど「シッダールタ」では主人公シッダールタが1人でくぐり抜けた聖者の修行と俗人の生活という2つのアプローチを、ここでは

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    2012年05月10日
  • ゲーテ格言集

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    ゲーテすごい好きだ。もういっそゲーテになりたい。
    たぶん古典でも啓蒙でも浪漫でもないスタンスが自分に合うのだと思う。あたまでっかちになりそうな時には世界の美しさを、怠惰にふけりそうな時は誠実の尊さを説いてくれる。
    驚いたのはファウストやウェルテルのフレーズも多いこと。前そっちを読んだときは気づかなかったのになぁ。もう一度読もうと思う。

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    2012年05月01日
  • 荒野のおおかみ

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    やっぱりヘッセはすごい。個人のある感情についてメタに、俯瞰的に言及することは誰にも可能だ。しかしそれに対してさらにメタの視点で言及することは少し困難だ。これを自由に使いこなす人間が小説家というものだと思う。しかしこれだけでは二流である。一流はさらにそれらに関してメタレベルで表現することができる。ヘッセのすごいところは、さらにこのもうひとつ上のレベルにときどき「ひょいっ」と上がってしまうところである。ヘッセは最初から高みにのぼったりしない。いつも私の手の届きそうなところにいて、いよいよ捕えたかと思うとするっと脇を擦り抜け一段のぼる。繰り返すうちについに私は追いつけなくなってその背中をじっと見つめ

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    2012年02月28日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    表現が綺麗でとても好きです。アウグスツスと詩人が特に好きです。愛されるのと愛すことの違いはやっぱり大きいなと思いました。そして、詩人も興味深いです。全体的に、音楽を聴いているような感覚で本を読んでいました。本当に綺麗な話です。

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    2012年02月26日
  • 知と愛

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    自分にとってはこの本を読まずに死んでいたら後悔するような本.ホントは★★★★★★つけたい.ヘルマン・ヘッセは大好きでずいぶん読んだが,自分の中ではこれがベストの著作だと思う(シッダールタも良かったが)

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    2012年02月24日
  • クヌルプ

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    傍から見てその問題がどうなのかではなく、彼にとってどんな出来事だったのか。それを経て、彼はどう生きてきたのか。苦味が時間を抱き込んで、いつかほのかな甘味すら呼び込む。彼は抱えるものと共に、まるでゆるやかな風だった。これはハッピーエンドだろうか。最期に安息を感じる。

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    2011年12月18日