高橋健二のレビュー一覧

  • 郷愁

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    田舎から都会へ、そして都会から田舎へ。
    出会った人々との思い出が、詩人らしい主人公に幸福を与えてるのだとすると、彼は故郷に帰った後も満ち足りた生活をするはずである。
    南風のように煩わしい経験が何か情熱に変化されたり、甘酸っぱい恋が青春の価値を保証したりする、と思う。

    郷愁、故郷を想う気持ちがどれほど大切か。
    いま故郷を離れた現実を、再考したくなる。

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    2020年04月12日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    ヘルマン・ヘッセの『メルヒェン』に収められている、「アウグスツス」に不覚ながら涙した。

    アウグスツは、生まれた時に「誰からも愛さずにはいられないように」と母親から願いをかけられ、その通りになる。

    子どもの彼には、天使の歌声が聞こえた。

    しかし、誰からも愛されるあまり、彼は傲慢になり、
    あらゆる富と名声を得て、堕落し、あらゆる悪事を尽くす。

    あらゆる欲望に満たされても幸福になれない彼は、いよいよ自殺を図ろうとするが、
    魔法をかけた名付け親が現れる。

    そこで、アウグスツスは、
    「それまでの人生にかかっていた魔力を取り消し、愛することができるように」と願う。

    ラストシーンの描写があまりに

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    2019年02月27日
  • 春の嵐

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    ネタバレ

    2019/2/17

    翻訳 高橋健二先生

    ゲルトルートはこの小説に出てくる女性の名だ。

    ラストの数行でボロボロと泣いた。
    歳をとってから青春を思い出すと苦いことも多々あったのに美しく感じる。
    歳をとるということはそういうことなのかな。



    主人公クーンは、ソリの事故で足を怪我し身体障害者となる。
    それにより、自分は誰かと恋仲になることも結婚もできないと思っている。
    そして、自殺まで考えるが、音楽が彼を救った。

    彼は悩みながらも、現実を受け入れつつ生きてきた。

    友人のオペラ歌手ムオトは、容姿にも才能にも恵まれ、どんな女も自分のものにできる。
    ただ、精神面が壊れやすかった。それは自分の中

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    2019年02月19日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    中学校のとき、尊敬する担任の先生が道徳の時間に、この中の「アウグスツス」という作品を朗読してくださり、鮮烈に心に残りました。
    愛されることを望むよりも、自らが人を愛することのできる人間になれることの大切さを、強く刻みつけてくれる作品です。
    当時は作品の本意を理解しきれなかったのですが、何十年も経ち、人生の後半に差しかかってようやく、理解できるようになりました。
    深くて素敵な作品だと思います。

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    2019年02月03日
  • 荒野のおおかみ

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    人は誰しもいろいろな側面を内に持っている。ハリーはヘルミーネと出会うことで、自己の諸側面について気づき、洞察を深めていく。その中には、自身が否定してきたものと相反する矛盾した自身の姿もある。たとえば、反戦思想を唱え人道を叫びながら、裕福な身分のまま亡命し個人の活動に耽っている自分、自殺志願者である自分についてである。

    物語で、ハリーの矛盾する己の存在への葛藤は、ヘルミーネによって解消される。
    しかし、現実はそうした自己の存在に気づくことは容易ではない上に、気づけたとて向き合うことは非常に勇気のいることである。多くの人は気づいていなかったり、気づいても無意識に知らぬふりをしてしまうだけで、実は

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    2018年12月31日
  • ゲーテ格言集

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    この手の過去の偉人の格言集は、往々にして今の自分への戒めになる。

    個人的には特に、
    「自我と自由と節制について」の項目がガツンときた。
    一つ格言を引用するとすれば、
    「個人は何ものかに達するためには、自己を諦めなければならない、ということを誰も理解しない」P131より
    だろうか。
    自分の目指す「なにものか」、について。
    そしてそのために自分が「諦めなければならないもの」とは何か。

    これはこの本に収められた一つの格言に過ぎない。
    あなたの心に問いかける多くの格言がこの書には収められている。

    別の本の名前を出して恐縮だが、アランの「幸福論」のように、生活の中で折に触れて読み返したい一冊。

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    2018年09月11日
  • ゲーテ詩集

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    訳が古典的でたまに理解できないものがありました。
    やっぱり詩はその国の言葉で鑑賞するのが一番いいのかなぁなんて思います。

    それでもやっぱり独創的な雰囲気で楽しめました。

    魔王はゲーテの詩だったんだ..。

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    2018年02月02日
  • 荒野のおおかみ

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    よく描けていて読むのは大変かもしれない。でも、悪い意味で大変なのではなくて深く響くから大変という感じ。建設的に捉えれば多く学びや気付きがある作品だと思う。

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    2017年12月18日
  • クヌルプ

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    雪降る中での神との対話は、これまでの人生の中でも有数の「あまりに美しい」文章だった。この美しさを求めて何度でもページを捲りたくなる、そんな一冊。

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    2017年10月23日
  • ヘッセ詩集

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    「詩人になるか、でなければ何にもなりたくない」と言って学校を中退したのは有名な話ですが、ヘッセは小説のイメージが強く、詩集はあまり知られていないような気がします。人生を賭してまで詩人になろうとしたヘッセの生み出す詩は、触れると壊れそうなくらい繊細で、だけど力強い部分もあって。その振れ幅によって取り扱いに困ってしまうようだけど、時折この美しい世界に没入していきたくなります。ヘッセに興味があるならイチオシです。

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    2017年09月08日
  • 春の嵐

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    青春時代の淡い、されど激しい想い。
    届かぬともそれは青春時代が生み出す1つの生き物ではなかろうか。

    妙によそよそしく感じるそれは、その時代特有のものであろう。

    揺さぶられる心。そして、そこに諦めを見出してしまう心。様々な想いが錯綜する。

    それが青春であろう。

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    2015年12月23日
  • 春の嵐

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    絶え間なく変わり続ける時に人の心は抗える。
    並木道の砂埃とともに舞い上がるゲルトルートの幻を心に抱くシーンが印象的。

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    2015年06月29日
  • クヌルプ

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    初めて見た作品だったので。とはいうものの、『車輪の下』に次ぐ出版数を誇るとか。
    なんて愛おしい存在なんだろう。ただ与え続けるという役割を与えられた、このクヌルプという存在は。
    彼は自分を探したいだの、世界が見たいだの、そんな目的をもって旅人をやっているのではない。旅こそ彼の目的であり、望まれたことだ。だから、憧れはできても彼のように旅人に誰もかれもなれはしない。まさに在り難い。迎える人はきっとそれゆえに嬉しいのだろう。
    トリックスター的存在、いわば、非日常を体現したものの物語。けれど、非日常が生きるのは日常の中。本当に彼は一体誰なんだろう。風の又三郎のように、一陣の風のように、さっと吹いてさっ

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    2014年12月20日
  • 知と愛

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    これまで読んだヘッセの作品中最も刺激的。精神世界と肉体の交差点。ストーリーテラーとしてヘッセは退屈だと思っていたがこの本は緩急、静動あり、全く退屈しなかった。

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    2014年12月03日
  • 荒野のおおかみ

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    20世紀ドイツを代表する小説家・詩人ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の作品、1927年。時に作家五十歳、第一次大戦敗戦後のワイマール体制下で1923年にはヒトラーがミュンヘン・クーデタ未遂で投獄された情況下、作家自身の自己省察と同時代批判とを本作品で試みた。なお同年の1927年にはにハイデガー『存在と時間』が刊行されている。



    「荒野のおおかみ」ことハリー・ハラーは、ヘッセ自身を表わしていると云われる(そのイニシャルは作者と同じH.H.である)。彼は、ゲーテとモーツァルトを愛し、学芸に則ち書物と古典音楽とに、その観念に、沈潜する。「精神」の人である、「文化」の人である、「考える」人

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    2014年06月14日
  • 青春は美わし

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    ヘッセの小説は「車輪の下」以来2冊目になりますが、ヘッセの小説はとにかく美しい情景描写と、繊細な心理描写が心に残る。
    ヘッセの小説は読んでいると、なんだか甘美で、幻想的な気分になるのです。
    まず「青春は美わし」の方は久しぶりに故郷に帰ってきた青年が、淡い初恋を抱いていた少女が美しく成長している姿を目にしてドキドキしたり、妹の友人の少女が家に泊まりにきてドキドキしたりする胸キュンな内容になっております。都会から田舎に帰ってきたので、田舎の情景の美しさや家族の優しさなどをしみじみと感じる主人公の目線もとても美しく描かれています。
    「ラテン語学校生」の方は都会に下宿している青年が、下宿先の女中と仲良

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    2014年04月27日
  • ゲーテ格言集

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    ケチつける勇気がないので5☆。歳のせいだろうか、ベタだなあとおもいつつ、頷いている自分がいるって感じだ。それなりに楽しんだのも確か。「翻訳者はまめな媒酌人と見なされる。彼らは半ばヴェールにおおわれた麗人をこの上なく愛らしいものとたたえ、本物を見たいというやみ難い気持ちを起こさせる」(113P)このようなレベルに達したいもの。

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    2014年04月27日
  • 知と愛

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    すごく苦しく醜く深く美しいお話。
    デミアンやおおかみはとっ散らかっているけれど、こちらはドイツらしく整っている。
    腐女子さんやゴスロリさんにも読んでほしい。

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    2014年01月16日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    ヘッセは天才だ。
    訳者の高橋健二さんも。
    それ以外言うことがないですね‥。
    言葉の魔法。単語の天国。本を開けばいつでも見せてくれる。
    こんなに素晴らしい本が古本で105円で手に入るなんて、日本はすごい国だと思いました。
    今まで幸福論が一番好きだったけれど、これは同じくらい好きになるかもしれないです。

    【追記】
    もったいねーーーと思いながら読み終わっちゃったー!
    さいごこピクトルの変身めちゃくちゃカッケーーーー!!しびれた‥
    とくに好きだったのは「詩人」「別の星の奇妙なたより」です。アヤメもよかったな‥

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    2013年09月29日
  • 荒野のおおかみ

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    今さらながら、「名作と呼ばれる作品を、少しでも読もう!」と考えています。
    そこで、ドイツ人のノーベル賞受賞作家、ヘルマン・ヘッセのこの作品を、読んでみることにしました。
    主人公は、禁欲的に学問の世界に打ち込み、それゆえに人生に思い悩んでいる、中年男性。
    ある日、暗く思い悩む彼の前に、魅力的な若い女性が現れます。
    その女性と行動を共にし、現代的な娯楽に触れるにつれて・・・という展開。
    人間の中にある「二面性」による苦悩、娯楽というものの意義、歴史とはどのように作られていくのか・・・などなど、多くの根源的な問題が、この物語の中に込められていると思います。
    後半の、不思議な世界が次々と展開していくく

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    2013年06月03日