高橋健二のレビュー一覧
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ヘルマン・ヘッセの『メルヒェン』に収められている、「アウグスツス」に不覚ながら涙した。
アウグスツは、生まれた時に「誰からも愛さずにはいられないように」と母親から願いをかけられ、その通りになる。
子どもの彼には、天使の歌声が聞こえた。
しかし、誰からも愛されるあまり、彼は傲慢になり、
あらゆる富と名声を得て、堕落し、あらゆる悪事を尽くす。
あらゆる欲望に満たされても幸福になれない彼は、いよいよ自殺を図ろうとするが、
魔法をかけた名付け親が現れる。
そこで、アウグスツスは、
「それまでの人生にかかっていた魔力を取り消し、愛することができるように」と願う。
ラストシーンの描写があまりに -
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ネタバレ2019/2/17
翻訳 高橋健二先生
ゲルトルートはこの小説に出てくる女性の名だ。
ラストの数行でボロボロと泣いた。
歳をとってから青春を思い出すと苦いことも多々あったのに美しく感じる。
歳をとるということはそういうことなのかな。
主人公クーンは、ソリの事故で足を怪我し身体障害者となる。
それにより、自分は誰かと恋仲になることも結婚もできないと思っている。
そして、自殺まで考えるが、音楽が彼を救った。
彼は悩みながらも、現実を受け入れつつ生きてきた。
友人のオペラ歌手ムオトは、容姿にも才能にも恵まれ、どんな女も自分のものにできる。
ただ、精神面が壊れやすかった。それは自分の中 -
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人は誰しもいろいろな側面を内に持っている。ハリーはヘルミーネと出会うことで、自己の諸側面について気づき、洞察を深めていく。その中には、自身が否定してきたものと相反する矛盾した自身の姿もある。たとえば、反戦思想を唱え人道を叫びながら、裕福な身分のまま亡命し個人の活動に耽っている自分、自殺志願者である自分についてである。
物語で、ハリーの矛盾する己の存在への葛藤は、ヘルミーネによって解消される。
しかし、現実はそうした自己の存在に気づくことは容易ではない上に、気づけたとて向き合うことは非常に勇気のいることである。多くの人は気づいていなかったり、気づいても無意識に知らぬふりをしてしまうだけで、実は -
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この手の過去の偉人の格言集は、往々にして今の自分への戒めになる。
個人的には特に、
「自我と自由と節制について」の項目がガツンときた。
一つ格言を引用するとすれば、
「個人は何ものかに達するためには、自己を諦めなければならない、ということを誰も理解しない」P131より
だろうか。
自分の目指す「なにものか」、について。
そしてそのために自分が「諦めなければならないもの」とは何か。
これはこの本に収められた一つの格言に過ぎない。
あなたの心に問いかける多くの格言がこの書には収められている。
別の本の名前を出して恐縮だが、アランの「幸福論」のように、生活の中で折に触れて読み返したい一冊。
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初めて見た作品だったので。とはいうものの、『車輪の下』に次ぐ出版数を誇るとか。
なんて愛おしい存在なんだろう。ただ与え続けるという役割を与えられた、このクヌルプという存在は。
彼は自分を探したいだの、世界が見たいだの、そんな目的をもって旅人をやっているのではない。旅こそ彼の目的であり、望まれたことだ。だから、憧れはできても彼のように旅人に誰もかれもなれはしない。まさに在り難い。迎える人はきっとそれゆえに嬉しいのだろう。
トリックスター的存在、いわば、非日常を体現したものの物語。けれど、非日常が生きるのは日常の中。本当に彼は一体誰なんだろう。風の又三郎のように、一陣の風のように、さっと吹いてさっ -
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20世紀ドイツを代表する小説家・詩人ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の作品、1927年。時に作家五十歳、第一次大戦敗戦後のワイマール体制下で1923年にはヒトラーがミュンヘン・クーデタ未遂で投獄された情況下、作家自身の自己省察と同時代批判とを本作品で試みた。なお同年の1927年にはにハイデガー『存在と時間』が刊行されている。
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「荒野のおおかみ」ことハリー・ハラーは、ヘッセ自身を表わしていると云われる(そのイニシャルは作者と同じH.H.である)。彼は、ゲーテとモーツァルトを愛し、学芸に則ち書物と古典音楽とに、その観念に、沈潜する。「精神」の人である、「文化」の人である、「考える」人 -
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ヘッセの小説は「車輪の下」以来2冊目になりますが、ヘッセの小説はとにかく美しい情景描写と、繊細な心理描写が心に残る。
ヘッセの小説は読んでいると、なんだか甘美で、幻想的な気分になるのです。
まず「青春は美わし」の方は久しぶりに故郷に帰ってきた青年が、淡い初恋を抱いていた少女が美しく成長している姿を目にしてドキドキしたり、妹の友人の少女が家に泊まりにきてドキドキしたりする胸キュンな内容になっております。都会から田舎に帰ってきたので、田舎の情景の美しさや家族の優しさなどをしみじみと感じる主人公の目線もとても美しく描かれています。
「ラテン語学校生」の方は都会に下宿している青年が、下宿先の女中と仲良 -
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今さらながら、「名作と呼ばれる作品を、少しでも読もう!」と考えています。
そこで、ドイツ人のノーベル賞受賞作家、ヘルマン・ヘッセのこの作品を、読んでみることにしました。
主人公は、禁欲的に学問の世界に打ち込み、それゆえに人生に思い悩んでいる、中年男性。
ある日、暗く思い悩む彼の前に、魅力的な若い女性が現れます。
その女性と行動を共にし、現代的な娯楽に触れるにつれて・・・という展開。
人間の中にある「二面性」による苦悩、娯楽というものの意義、歴史とはどのように作られていくのか・・・などなど、多くの根源的な問題が、この物語の中に込められていると思います。
後半の、不思議な世界が次々と展開していくく