高橋健二のレビュー一覧
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『われわれは互いに理解する事はできる。しかし、めいめいは自分自身しか解き明かすことができない。』
本書を読んだ動機はアニメ「Ave Mujica」で主人公の豊川祥子が、社会の歯車に狂わされ、選択を迫られた際に本書を読んでいた描写が存在したからです。
本書では、はしがきに書かれている、冒頭に書いた一文が全てを物語っています。『アプラクサス』という神、すなわち自分自身の心に存在する意志に従え、さすれば何事にも覚悟を持って挑めるだろう、というところでしょうか。
キリスト教圏の絶対的な世界で、密かに神は居ない、自身の内から湧き出る衝動こそが従うべきものだという反キリスト思想に目覚めた主人公シンク -
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『車輪の下』より断然こちらの方が好きと思えるのは歳のせいでしょうか。また、いい作品に出会うことができました。
あらすじ:
「それは私の愚かしい青年時代のもっとも愚かしい日だった」……幼い頃、クーンは音楽に惹かれていたこともあり、父の反対をよそに首府の音楽学校に進学します。しかし、学業の壁に阻まれ、喜びのない日々を過ごして三年、似た境遇にあるリディに恋をします。ある日、仲間とソリ遊びに興じていると、そのリディにそそのかされて急斜面をソリで滑り降りますが事故になります。クーンの左足は不具になり、彼女も去っていきました。
この事故をきっかけに故郷に帰って内省を深めたクーンは、音楽の創作に目覚めて -
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何十年ぶりかで再読。実らぬ恋のものがたり、との記憶はとても浅いものだった。
「自分の人生を幸か不幸かと問うのは愚かなことで、「私」には不幸な記憶こそ捨てられない」と言う趣旨の巻頭言に共感するのは老年になったからか。
消えぬ恋情と戦いながら、不幸な結婚に心身を病む女性を節度を保ちながら労る「私」。敬愛する友人に傷つけられ、敵意を抱きながらも、憧れや敬意も蘇ってくる。その才ある友人も奔放な自身の性格に振り回されている。これらが寄せては返す波のように繰り返される。これが人生なんだよ、とばかり。
アリアだけのオペラが無いように、緩徐楽章だけのシンフォニーはないように、幸も不幸も全て必要なことだったのだ -
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総じて、人生経験の中で重要だとはわかりつつも言語化の難しいトピックスを、小説形式で見事なまでにわかりやすく表現している。
知識と知恵は違うという文章が印象的だった。多分、言葉や思想を理屈で理解するだけでなく、実際に行動し体験することで初めて物事を習得することができるという意味。
実生活でも、頭で理屈をわかっているだけな事柄と、実際に体感する程度まで落とし込んだ事柄を比べると、やっぱり後者の方がより人生に影響を与えるからこれは非常に納得。
また、一度落ちぶれて初めてわかる大切さがあるのも印象的。自分も大学時代一度後悔するような生き方をしていた経験があったが、今思えばそれを経験したからこそ、これ -
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感想を書くのが難しい。哲学書寄りだが、小説の域を超えていないのがこの作品の魅力のように感じる。やはり少年時代特有の複雑な心情を描き出すのが抜群にうまい。読者は主人公と一緒にそれをなぞりつつ、各物語を共に体験し、共に考えることで、一緒に成長しているような気分になってくる。そういったさまざまな自己形成の段階を重ね、最後は生きていくことに対して一つの自信、指標のようなものを得られる。これは小説の読書体験として不思議で、そこがとてもユニークで魅力的に感じた。
どうしてこんなに巧いんだと、恐ろしく感じるくらい繊細かつ的確な心理描写で、没入感がすごい。 -
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ネタバレ数あるヘッセの著作の中で『知と愛』に続く、かなり上位の作品となった。
主要なテーマの一つとして、「青春と老い」があったと認識しているが、かつての青春の暗さもやがては心の内に定まるところを見つけ、私は今のところ否定的な言い方しか出来ないのだが、つまり人間は青春に限らず全ての過去を美化することしか出来なくなってしまうのか、という結末だった。その点で青春のうちに、愉しいうちに死ぬことを選んだムオトは私にとって最も美しく真実味を帯びている人物だったのかもしれない。しかし、私がもう少し年齢を重ねて再読した時は、この本は私にとって過去を掬いあげてくれる、綺麗にまとめられたものとなるのだろう。
私は主 -
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ネタバレ聡明な、でも生きることに疑問を抱いている主人公が、さまざまなな体験を通して、ついには悟りを得る話。
主人公の名はシッダールタで舞台はインドだけど、あの仏教の開祖仏陀の話ではありません。仏陀は別人としてシッダールタの前に現れます。自分にはなかなか難しくて、読むペースもゆっくりになったけど、読んで本当に良かった。めっちゃいろいろ考えた。メモまで書きながら読んだ。
シッダールタは仏陀に教えを乞いながら、彼の元を離れる。それは「仏陀の教えは素晴らしいけれども、言葉ではそのすべてを伝えることは不可能=じゃあ自分で悟らなきゃダメじゃん」という理由だと読んだ。んで悟りを得るために?俗世に戻るも、元が聡明