高橋健二のレビュー一覧

  • 春の嵐

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    ネタバレ

     数あるヘッセの著作の中で『知と愛』に続く、かなり上位の作品となった。
     主要なテーマの一つとして、「青春と老い」があったと認識しているが、かつての青春の暗さもやがては心の内に定まるところを見つけ、私は今のところ否定的な言い方しか出来ないのだが、つまり人間は青春に限らず全ての過去を美化することしか出来なくなってしまうのか、という結末だった。その点で青春のうちに、愉しいうちに死ぬことを選んだムオトは私にとって最も美しく真実味を帯びている人物だったのかもしれない。しかし、私がもう少し年齢を重ねて再読した時は、この本は私にとって過去を掬いあげてくれる、綺麗にまとめられたものとなるのだろう。
     私は主

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    2024年05月21日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    頭を柔軟にして読むべし。そうでないと読みにくい。大人のための童話だと思うが、もしかしたら子供のほうがすんなりと受け止められるかもしれない。気づかされることが多かった。ヘッセらしさが充満している。

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    2024年05月04日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    読みにくい短編もあったけど、『アウグスツス』で一気に心惹かれて、凄く面白かった。
    『ファルドゥム』と『アヤメ』も好きだったな…
    大人の童話って言われているようだが本当にその通りで、宝箱にしまいたいような、温かさのある本だった。

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    2024年03月13日
  • デミアン

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    第一次世界大戦に巻き込まれていく中、母国ドイツに対して反戦を訴えたことで社会的な批判を浴びたヘルマン・ヘッセ。初めて、自己の内面の追求というテーマに正面から取り組み、自身の罪に悩めるシンクレールに、罪を悪か善かで二分すること以外の選択肢を与える存在としての友人デミアンが、人生を通して関わってくる。夢の分析に傾倒していたヘッセの思考がよく反映されており、デミアンに似た女性、エヴァ夫人との現実での体験は超体験として新鮮に映っている。当時のヨーロッパの青年に大きな影響を与えたとされる短編小説。

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    2024年01月03日
  • デミアン

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    中学3年生のとき、父に手渡されたヘッセの『デミアン』。それからずっと、もうほんとうにずっと、私はデミアンの面影を追いかけている。
    文庫は父から引き継ぎ、わたしの本棚にある。高校1年、2年、3年、大学1年…毎年読み返した。(父がそう読んでいて、年々感じることが変化していった、と言っていたから)
    本当に大好きな小説。もろてをあげておすすめ!大大おすすめ!というのはなんだか違うかもしれないけれど、もしこれを読んでくださっているあなたが国語の教科書に載っていた『少年の日の思い出』に魅了されたのなら、ぜひ読んでほしいです。

    わたしの方は、そこからウテナを見て(お察し…)

    サンタ本

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    2024年01月22日
  • デミアン

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    心を病んでいた時に読んだので心苦しくなる場面も多々ありましたが、デミアンの言葉やシンクレールの移り変わる心情が所々で私の救いになりました。
    また読みたいな。

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    2023年11月23日
  • デミアン

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    ヘッセの本はあらかた読んだが、個人的にはこの作品が一番引きが強かった。

    見栄のためにホラ話をしたのがきっかけで秘密を抱えたシンクレール少年は、デミアンという転校生に助けられる。そのデミアンとの接近が、シンクレールの自立と自己の深淵を覗き込む動きを間接的に手助けし、彼は思想的にも成長していく。
    最後の方は少しスピリチュアルすぎる感もあるが、だからこそタイトルが「デミアン」なのだ、という感じのある印象的な終わり方。

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    2023年09月09日
  • シッダールタ

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    ネタバレ

    聡明な、でも生きることに疑問を抱いている主人公が、さまざまなな体験を通して、ついには悟りを得る話。

    主人公の名はシッダールタで舞台はインドだけど、あの仏教の開祖仏陀の話ではありません。仏陀は別人としてシッダールタの前に現れます。自分にはなかなか難しくて、読むペースもゆっくりになったけど、読んで本当に良かった。めっちゃいろいろ考えた。メモまで書きながら読んだ。

    シッダールタは仏陀に教えを乞いながら、彼の元を離れる。それは「仏陀の教えは素晴らしいけれども、言葉ではそのすべてを伝えることは不可能=じゃあ自分で悟らなきゃダメじゃん」という理由だと読んだ。んで悟りを得るために?俗世に戻るも、元が聡明

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    2023年06月07日
  • シッダールタ

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    時間は存在しない。
    世界をありのままに受け入れる。
    万物を愛し、繋がる。そこに善と悪、生と死という概念はない。

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    2023年03月26日
  • シッダールタ

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     人が苦しみの中にあるとき、救いというものは、それほど多くあるわけではない。家族や友人の励まし。信じる教え。あるいは、大好きな景色や音楽。そして、大切にしてきた言葉。私たちは、苦しみをどう抱え、向き合い、乗り越えていくのか。
     もし一冊の本が、苦しむ誰かを支え、乗り越える助けとなるなら、本は、信頼する友人一人に匹敵する。その言葉は、自分の中で声となって響く。それは、ただの知識や語彙ではなく、人間の言葉として残り、私たちが生きることを肯定する。小説が、随筆が、詩集が、格言集が、私たちの中に感触となって残り、私たちは自分の人生をその感触に重ね合わせて生きる。
     この小説のタイトルは、ブッダの出家以

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    2024年05月13日
  • シッダールタ

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    聖人として生まれ(たと思いこみ)、聖人として真摯に学んだ青春。共に学んできた友と別れ、自分の道を歩み出した時、周りとの乖離を感じて、世間を知るためという口実で周りと一緒になって遊び、金を稼ぎ、気づいたら中年に。子を得たが、自分の思い通りにならない存在を前に自己受容を学ぶ。子育てを終えた頃、初めて聖人でありそうでないこともあるのが人であると理解する。
    という人間そのものの話。人生そのものの話だった。
    ただ今の私には理解しきれない点があった。
    「時間は存在しない」ということ。
    まだわからない。いつか分かる日まで。

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    2023年01月13日
  • デミアン

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    われわれが一度きりの人間以上のものでないとしたら、われわれのだれもが一発の銃丸で実際に完全に葬り去られうるのだとしたら、物語を話すことなんか、なんの意味も持たないだろう。しかし、すべての人間は、彼自身であるばかりでなく、一度きりの、まったく特殊な、だれの場合にも世界のさまざまな現象が、ただ一度だけ二度とはない仕方で交錯するところの、重要な、顕著の点なのだ。だから、すべての人間の物語は、重要で不滅で神聖なのだ。だから、すべての人間は、とにかく生きていて、自然の意志を実現している限り、驚きと注目とに値する。すべての人の中で、精神が形となり、生物が悩み、救世主がはりつけにされているのだ。

    すべての

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    2022年06月09日
  • 知と愛

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    原題は『ナルチスとゴルトムント』。知と精神の世界に生きる師ナルチストと、愛と芸術の世界に生きるゴルトムントを描く。ゴルトムントは修道院に入って神に帰依するはずだったが、ナルチスの影響により、愛や芸術の世界に目覚め放浪の旅に出る。清く正しい世界を目指した者が愛欲に溺れ廃退していく姿に、正直戸惑いはあった。しかし、自らの意のままに強欲に生きる姿に不思議と羨望も感じる。人生とはなんなのか、人間の本来あるべき姿とはなんなのか、そのようなことをゴルトムントの姿に重ねながらじっくり味わえた作品である。

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    2021年11月25日
  • シッダールタ

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    「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」とは、あまりに有名で、あまりにも示唆的な方丈記の冒頭である。そこんとこ詳しく教えて下さいよ長明さん、とばかり方丈記を手にとっても大したことは書かれておらず、がっかり。そんなあなたは、本書を読むべき。よもや続きはこんなところにあったかと驚く。

    シッダールタという題名から、釈迦の話かと思い込んでいたが、架空の人物を主人公としたフィクションである。仏教の話ですらない。解説によると「ヘッセ自身の宗教的体験の告白」だそうである。

    ピカソは絵が上手すぎて、「子供のように絵を描く」ために大変な努力をしたという。同様に、頭が良すぎる人が人生について考え

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    2021年10月24日
  • 郷愁

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    ヘッセの処女作。自然を愛するペーターの成長を描いた作品。失恋や親・親友の喪失など、人生の壁に何度もぶつかりながら、強く、清く、正直に生きようとする。ヘッセの他の作品と比べると、自然に対する細やかな美しい情景描写が特長のひとつではないだろうか。小説を読みながら、自然に溶け込むような一体感をも感じる、素晴らしい作品である。

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    2021年10月07日
  • シッダールタ

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    シッダールタという求道者が悟りの境地に達するまでの体験を描いた作品。あらゆる師の教えは決して彼を満足させられなかったが、自らの体験と苦悩を経て、すべてをありのままに受け入れることでシッダールタは悟りの境地に達する。高尚な言葉で綴られた書物よりはるかに、この本の中に真実が隠されているような気がする。また、教えというものを言葉にしてそれを目指した時、あらゆるものの一側面しか見ることができなくなる、というヘッセの言葉は、私の心にしみじみと染み渡ってきた。

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    2021年08月24日
  • 春の嵐

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    不慮の事故で片足が不自由になってしまったクーンという男の話。不運を嘆きながらも、作曲の喜びに目覚め、人生を必死に切り拓いていこうとするクーン。また、彼と親友との間に現れた女性を巡っての複雑な人間関係も描かれている。“最も不幸なことを捨ててしまうことは楽しかったことを捨てることよりもつらい。避けがたい運命を甘受し、よいことも悪いことも味わいつくし、内的な本来の運命を獲得することが人間生活の肝要である”と冒頭で主人公は振り返っている。その言葉がとても重みをもつ、重厚な作品であった。

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    2021年08月12日
  • ゲーテ格言集

    mac

    ネタバレ

    心の成長

    一部ご紹介します。
    ・常に良い目的を見失わずに努力を続ける限り、最後には必ず救われる
    ・歴史を書くのは、過去を脱却する一つの方法である。われわれが歴史から得るところの最上のものは、それが引き起こす感激である。
    三千年の歴史から学ぶことを知らぬ者は、知ることも無く、闇の中にいよ、その日その日を生きるとも。
    ・人間は現在がすこぶる価値のあることを知らない。ただ、なんとなく未来のよりよい日を願望し、いたずらに過去と連れ立って嬌態を演じている。
    ・われわれは愛から生まれてきた。われわれは愛無くして生きることはできない。われわれは愛によって自己に打ち克つ。われわれは愛によって愛を見出し得る。苦

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    2022年09月30日
  • ゲーテ格言集

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    私の人生が積み木だとしたら、1番下の土台になるようなそんな本。

    宇多田ヒカルの好きな本に掲載されてたのを観て読んでみた。

    心がスパーッとひらけるような、まっさらになるような、またスタートしたいと思えるような…

    激しく感情に揺さぶられて、自分が自分じゃなくなった時にまた読みたい。

    覚えておきたい文章はたくさんあるのだが…
    浸透するものがちゃんと心にある。

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    2021年02月04日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    特別な愛読書。ビーズで飾った、手縫いのブックカバーをつけて、手もとに置いています。   …訳者の高橋健二氏が解説の最後で述べられているように、 ヘッセの書いたものの中で最も美しいものの一つ、だと思います。  短編集。 私は、 別な星の奇妙なたより  という物語が、一番好きです。

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    2020年07月20日