杉浦日向子のレビュー一覧

  • 新装版 入浴の女王

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    49冊目『新装版 入浴の女王』(杉浦日向子 著、2012年7月、講談社)
    日本各地の公衆浴場に浸かり、その地の人々と酒を飲み交わす事により「町の顔」を観察するというエッセイ。1998年に刊行されたものの新装版であり、書かれたのは1993〜95年の間だと思われる。
    風呂を「汁」、出会う人々を「具」に喩えてそれぞれの有様を活写していく、著者らしいユニークな内容。江戸を愛するがあまり、名古屋や京都への風当たりが強いのはご愛嬌。

    〈「湯は語るものにはあらじ、つかるものなり」あなかしこ〉

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    2025年06月11日
  • ゑひもせす

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    141冊目『ゑひもせす』(杉浦日向子 著、1990年7月、筑摩書房)
    デビュー作を含む初期作品集。絵巻物風漫画や忠臣蔵の実況見分など、著者にしか描けないユニークな作品が揃う。
    江戸時代の庶民の生活を描くというスタンスは初期からすでに一貫している。円熟味すら感じさせる堂々とした短編ばかりなのだが、情報量が多すぎるので少々肩が凝る。天才の片鱗は見えるが、彼女の才能が真に開花するのはもう少し後の事である。

    〈木瓜の実を たもとに入れた ままだ〉

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    2024年11月29日
  • 合葬

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    杉浦日向子さん、はまってます。

    合奏は戊辰戦争の一つ上野戦争を描いた漫画。
    杉浦さんの画風は浮世絵っぽさがあります。

    登場人物は10代から20代前半の彰義隊のメンバー。
    戦争や隊の話というよりは登場人物の上野戦争前後の出来事に重きを置いた作品だそうです。

    読後、なんとも言えない気持ちに…。

    小沢信男さんの解説の言葉に大きく大きく共感。
    「…本篇には、従来の彰義隊戦記にとかくつきものだった怨念や、負け犬びいきの力瘤がない。仰々しくない代りに、のびのびしていて、そして奇妙なナマナマしさがあります。ふしぎなほどに。なぜだろうか、第一に、想像と実証がしっかり噛み合っているのでしょう。…」

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    2024年11月24日
  • 百日紅(下)

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     八年前(二〇一六)に『YASUJI東京』を読んで以来、杉浦日向子二作品目。『米澤屋書店』に出てきて、ちょうどうちにあったので読んだ。文化文政期の江戸が舞台と知り、大奥→写楽、の流れもあるし、読むなら今だ!と。上下巻。
     正直あまりよくわからなかったのだが、読んでしばらく経ってみると、わかるとかわからないとか言うよりは、確かに何かを摂取したという感覚が色濃く残っている。お栄ちゃんの無愛想な表情とか。お政さんも色っぽいけど弟子だし絵師なんだなあとか。北斎の(お栄以外の)息子や娘や、妻や。とぼけた顔して女好きの善次郎や。歌川さんとこの国直とか。火事見物が好きとか。

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    2024年11月14日
  • YASUJI東京

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    ネタバレ

    【収録作品】
    YASUJI東京
    単行本未収録集
     術/梅殿桜殿/白犬/鏡斎まいる①/鏡斎まいる②/鏡斎まいる③

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    2024年10月23日
  • 合葬

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    47冊目『合葬(がっそう)』(杉浦日向子 著、1987年12月、筑摩書店)
    江戸風俗研究家でもある漫画家、杉浦日向子の代表作。彰義隊に所属する幼なじみ3人の運命を描き出す。
    上野戦争を舞台とした合戦絵巻であり、物語が進むにつれ若人たちの危うい血気がむんむんと立ち上がってくる。そして、その緊張感がピークに達すると同時に全ては儚く消え失せる。戦争に散った若き隊士たちへ捧げられた、まるで線香花火のような哀歌である。
    お世辞にも絵が上手いとは言えないが、爽やかで時に耽美的なタッチが胸を打つ。

    〈あゝ 鳳凰が。〉

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    2024年04月06日
  • 新装版 呑々草子

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    ネタバレ

    ぶらりと編集の方と二人旅
    (都内のホテルプールに繰り出したりと旅というには語弊があるかも)

    生命線の短さについて触れている回があり
    両親の手相を確かめたくなってしまった

    ちょっと独特の言い回しでスラスラ読めなかったのだけれど 毎回こんな風に生きられたらいいなぁと
    羨ましくもあり

    自分は余暇を今後どんなことしていこうか考える


    SNSがあり 今は逆に隙間時間や色々と考える時間が減ったなぁ。。

    巣鴨の有り難いお守り?が十枚で何百円というエピソードも笑ってしまった
    最近核家族化だけれど 祖父母が日々どんな楽しみをしていて どこに出かけているのか
    どんなお店が行きつけなのか 人生の先輩として

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    2022年05月23日
  • 東のエデン

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    明治の初めの頃の若い男達の下宿場の話。若い男は4人。それぞれが異なるバックグラウンドを持つ。意味なんかないのだろう。そこに話があるだけ。
    そういえば昔ヤオイという表現があったような。山なし,落ちなし,意味なし,というやつ。
    ヤオイというわけではないが,何かカタルシスがあるわけでもなく,ふーんという感じ。そう感じるのは教養が足りないのか,センスがないのか。どうも自分を責めてしまう。

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    2022年04月16日
  • 合葬

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    ネタバレ

    杉浦日向子さん。

    まえがきに、志ん生のマクラとして「上野の戦争」の話が出てくるのですが、ハテ上野?東京の?戦争?と、のっけから「?」だらけになってしまいました。

    スイマセン、上野の戦争も彰義隊も、さらに西南戦争のこともさっぱり知りません^^;。これを機会に少し勉強したいと・・・思いました(思っただけで終わるかも知れません)。

    ともあれマンガ作品ですが、その彰義隊と上野戦争のことを、隊の端くれに参加した若き3人の志士の目から描いたものとなっています。

    幕末という時代の流れに巻き込まれていく青年たち。その困惑やもどかしさを含んだ一途さが、独特の間と陰影とともにつづられており、大変せつないも

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    2019年06月22日
  • YASUJI東京

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    夭折の画家・井上安治テーマに、明治の東京と昭和の東京とが交錯する。
    筋と言えるものもなく、淡々と安治の絵と現代とが相互に描かれるのだが、その淡々ぶりがまたよい。
    こういうテーマの選択も、杉浦日向子のすごいところ。

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    2018年08月25日
  • 百日紅(下)

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    上巻に続いて読んでると、江戸の世界に慣れてきました
    背景を描き込む「美女」がすきだなぁ
    短編だったので、長編が読みたかったです
    映画の絵柄はあんまり好みじゃないけど、どんな話の流れか気になります
    NHKのドラマは、まじめに見ていなかったけど
    綺麗に描いてあったな…綺麗すぎかな(笑)

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    2017年12月10日
  • 百日紅(上)

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    静かな感じがします
    蝉の声や川の流れ、人々の喧騒も聞こえるんだけど
    しーんとした感じがします

    北斎が地蔵尊を描き込む「夢」がいいなぁ

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    2017年12月08日
  • 合葬

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    短編が主な杉浦日向子にしては珍しく一貫した展開をもった長編作。近世から近代への移り変わりを、彰義隊をめぐる上野戦争を軸に描く。いつもの淡々とした表現が悲劇性を高めている。
    今年は杉浦日向子没後10年で、「合葬」の映画化や「百日紅」のアニメ化など話題に事欠かない。

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    2017年08月16日
  • 合葬

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    ネタバレ

    誰もが主人公ポジションで、重要な事は知らされていて
    確固とした意見をもっていて、考え抜いて決断する。

    そんな生き方をしている人は一握りだろう。。。

    幕末、よく分からないままにノリや友人に誘われて
    命を落とした若者は多かったのかもしれない。。。

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    2017年07月10日
  • 百日紅(上)

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    ネタバレ

    2015年アニメ映画化していたとは知らなかった。
    ミス・北斎。 なるほど。。。

    解説が夢枕 獏氏。
    この頃は単なる引退とされていたのか。。。
    訃報は衝撃だったろうな。。。

    浮世絵といえば歌川が有名だけれど(個々についてももっと学んでいきたい。。。)
    葛飾北斎とその娘の話。

    娘も浮世絵師だったのか。。。

    日常をたんたんと紡ぐストーリー。

    江戸の暮らしぶりが自然と入ってきて、一粒で二度おいしい感じ。

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    2017年06月27日
  • 東のエデン

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    ネタバレ

    タイトルに惹かれて。
    明治の日本だろうか。 

    「ここらへんは昔の横浜と変わらない」とか、当時を生きていた人のいたって普通の日常生活。

    解説者の方が『絵がうまいわけではないがそれが良い』というような事を書いていた気がするが
    味のある、ほのぼのと、すんなり入ってくる感じ。

    『グレーテルのかまど』のクリームパンの人だと気付く。

    漫画だと、歴史もの、という感じがせず、当時の風俗が知れる、というか身近に知れて面白い。

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    2017年06月21日
  • とんでもねえ野郎

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    杉浦日向子さん「とんでもねえ野郎」、1995.7発行の漫画です。江戸「真武館」という道場、もとは女郎屋を改造した道場。主は桃園彦次郎、妻は若菜。門弟は近所の子供たち7人、ほとんど託児所w。でも、若菜はとても強いのです(^-^)

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    2017年04月01日
  • 二つ枕

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    「合葬」(1984)で日本漫画家協会賞受賞、「風流江戸雀」(1988)で文藝春秋漫画賞受賞の漫画家杉浦日向子さんの「二つ枕」、1997.12発行です。舞台は吉原、客と花魁の物語です。

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    2017年04月01日
  • とんでもねえ野郎

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    幕末。
    彦次郎が酒と食と女に放蕩する、友人が巻き込まれる、妻はにこにこと見守っている、
    という何も起こらない与太話。
    作者の叙情は抑えられ、小話がただ続くのみ。
    ぬるま湯のような空気が心地よい。
    彦次郎にだまされても誰も「怒らない」というところがポイントだと思う。
    気分を緩めたいときに読んだらよさそう。

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    2016年07月13日
  • 二つ枕

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    小さな文庫版なのに、奥行きがとんでもなく広い、さすがの腕前。
    言葉や衣装、その他時代背景のみごとな再現性(たとえこれが虚構でも大方の読者は、この中で表現されている”江戸”に心をとろめかすだろう)。
    ゆったりとしたリズム。
    粋な人々の仕草と会話。
    それらを通して醸される、静かな間。
    布団のこすれる音が響くような、淫靡さがある。

    が、百日紅とは違い、夢うつつを行き来するような
    美しさは足りない。
    何事もなさの美学に頼りすぎて、キレが少ない。
    突出した物語もなかった。

    ここには杉浦日向子の原型のみがある、
    その意味で、3点。

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    2016年05月05日