あらすじ
井上安治、風景画家。元治元年、浅草生れ。14歳の時、小林清親に入門。明治22年没。25歳。安治は東京に何を見たのだろうか。明治の東京と昭和の東京を自在に往き来しつつ、夭折の画家井上安治の見た風景を追い、清親との不思議な師弟関係を描く静謐な世界。他に単行本未収録作品を併録。【解説:南伸坊】
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短命の浮世絵師・井上安治を主題としながら、現代の女子大生が彼氏であろう同級生と掛け合いをしてYASUJIの絵を紹介していく。師匠(と勝手に私が呼ばっている日向子さん)が井上安治に興味を抱いていることは他のエッセイ等から知れており、本書購入の動機にもなった。単行本未収録集も良かった。まんが日本昔ばなしのようだった。
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主人公が、アスファルトの下に眠る東京の原野を想うシーンに共感。東京で生まれ育った自分が感じていた違和感とか、嫌悪とか、そういったものが「そうだったのか」と氷解していくような感覚だった。
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111冊目『YASUJI東京』(杉浦日向子 著、2000年3月、筑摩書房)
東京の風景画を描いた明治時代の画家、井上安治。彼の絵に魅せられた女子大生が現代と明治の東京を行き来する、静かで奇妙な幻想漫画。表題作の他、短編6本を収録。
収録作品はどれも低血圧な印象で、これまで読んできた杉浦作品とは異なる読後感。全体に「ガロ」的な雰囲気が漂っており、リリシズムという言葉がピッタリと当てはまる。
奇しい気配を纏う、地味だが上品な短編集である。
〈東京は 月の入るべき 山もなし ビルより出でて ビルにこそ入れ〉
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主人公の女の子が東京のビル群を見てお墓と似ているというのが何とも不気味。戦争、地震、荒野になった東京は何度も復興して新しい街を作ってきた。杉浦さんが描いた当時よりさらに高層ビルが乱立する街をみて、また荒野になるのだろうかと恐れてしまう。安治の描いた東京が何か予知的なものを感じさせている様な気がするのは気のせいか。
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夭折の画家・井上安治テーマに、明治の東京と昭和の東京とが交錯する。
筋と言えるものもなく、淡々と安治の絵と現代とが相互に描かれるのだが、その淡々ぶりがまたよい。
こういうテーマの選択も、杉浦日向子のすごいところ。