杉浦日向子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
下巻まで読んで、どんな漫画なのかやっと理解できたかも。
大変味わい深い作品。江戸の理不尽さや親切、愛憎をあっさり描いているのがよかった。
現代人の方がジメジメしている。今の時代の価値観と比べるのも面白い。
応為の火事好きの話や、色気のある絵を描くために女と遊ぶ話、家族の話など、応為の機微に触れられた下巻。
江戸の風情が嫌味なくさらりと描いてあり、漫画らしく一コマが目に焼きつくということも多かった。説明ではなく絵で語る。
火事を見にいくとか、死体を見たいとか、今だと確実に不謹慎だと言われることも、特別非難されることがなかった時代。そのぶん、理不尽もたくさんあっただろうけど、自由さを感じた。
やっ -
Posted by ブクログ
『ふたつまくら』を読んで、日本って昔は驚くほど性におおらかな国だったんだなぁと感じた。
今とは価値観が全く違うというか、同じ国とは思えないけれど、そこがまた面白い!
物語では、吉原の遊女と客たちの日常が、切なさ、艶っぽさ、ユーモアを交えて描かれているとても粋な作品。
来世を約束した男に待ちぼうけをくらう遊女、
叔父に騙されてきた、初めての遊郭に戸惑う少年、
将来を語りたがる遊女をうまくかわす男、
棟梁をぶん殴って、やけくそで吉原にきた男、
一晩で5人の客を相手に走り回る遊女……。
遊女と客のやりとりから、遊女たちの暮らしや江戸の町や生活の様子、遊郭の建物の内部までが伝わってきて江戸の遊 -
Posted by ブクログ
漫画だけれど本棚に入れる。
昔、読んだ気もするが、その頃は響かなかったのだろう、記憶がない。今読むと、これはもうぴたりと心にはまって、味わいもまた格別だった。
お栄と北斎の小説は朝井まかてさんの『眩』 (くらら) で読んでいて、のちに宮崎あおいさんでドラマにもなった。そのお栄は、気の強い、凛としたイメージだった。ここにいるお栄さんはもう少したおやかで、自分の画風に悩んだり、ほのかに恋心を抱いたりもする。結婚していたこともあるらしいが、そのことは描かれておらず、それ以前の話のようだ。
北斎とお栄の他に、歌川派の絵師なのに、なぜか北斎の家に居候している善次郎という男がいる。お栄からはへたくそ呼ば -
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今ブームである北斎の娘・お栄を描いた先駆的な漫画『百日紅』でお馴染みの杉浦日向子。
江戸時代漫画のイメージが強いが、『東のエデン』など明治初期の若者の青春群像劇も描いていた。
本作はページ数は少ないものの、江戸時代と明治初期の両方を楽しめる贅沢な一冊。
因みに日本で最後の斬首刑者の高橋お伝の最期を描いた『陽炎法師』はガチでトラウマ。
個人的に気に入っている作品は欧州へ留学へ行く若者の前夜を描いた『前夜』(←そのまんま)。
杉浦日向子はガロ出身の作家だが、この頃活躍していた大友克洋や高野文子をはじめとする80年代ニューウェーブ漫画家は、何気ないワンシーンや会話や間を丁寧に描写する。