あらすじ
江戸の終りを告げた上野戦争……彰義隊の若き隊員たちに視点をすえて、滅びゆく江戸風俗を背景に、時代の転換期を描く閨秀漫画家による歴史ロマン。江戸文化と文明開化に、ともに限りなき深い愛情を抱く著者ならではの長編。日本漫画協会賞優秀賞受賞作。【解説:小沢信男】
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杉浦日向子にはまっている。なぜここまで、出会わなかったのか。たぶん漫画だからだろうけど。自分も江戸という時代へのある種の憧れを持っているのに手に取る事がなかった。
彰義隊を歴史の中での位置付けという視点ではなく、その中にいた若者自身の気持ちの揺れや、歴史に流されていく小さな命を軸に、描かれている。その分、客観的に物語を眺めるのではなく、その場に入り込んでしまうような臨場感。
150年ほど前に確かにあった、青春と言われる時期をこのような形ですごした、若者たちのせつない物語。
名作だった。
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著者を江戸の「師匠」と慕っている。2005年に鬼籍に入られた今となっては全てが遺作なのだが、師匠の漫画を読むのは久しぶりだ。上野戦争を若者の視点で描いた本作は、解説にもあるとおり類書に抜きんでているのだと思う。江戸っ子の落首「うえからは明治だなどと云ふけれど 治明(オサマルメイ)と下からは読む」は秀逸!
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たった6時間の上野戦争。
恥ずかしながら上野戦争という史実を知らなかったが、間違いなく江戸の終わりを象徴する事件だったと感じる。
そしてその担い手が若者主導だったという点が、また痛ましい。
164ページから数ページ、ぞっとする恐ろしいシーン。
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彰義隊の名もない若者たちの物語。
歴史を作るのは確かに人間なのだけれど、それは一人の英雄でも偉人でもなく、どこにでも入り誰かなのだとこの作品を読みながら思っていた。
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なんて切なく哀しいのだろう。
新しい時代になるとともに、命を失っていった少年たち…
心の中に、色んな葛藤があったのかもしれない。
それでも時代の渦に巻き込まれた彼らはどんな気持ちだったのだろう…
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幕末の幕軍側についた彰義隊の少年たちの漫画です。戦争漫画だからと言って、ことさら煽るような描き方ではなく、淡々と物語は進みます。ラスト近く、見開きの青空の美しいこと。泣きました。時代の変革期に犠牲が出てしまうのを「仕方ない」と片付ける世の中になってほしくないと思いました。名作です。
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いわずとしれたデビュー作。若干BLっぽい趣向も感じるけど、20台前半でこの深奥な描写はありえない。これを読むと、全ての歴史漫画を見る目が変わってしまう。
なんていうか、フランスの歴史映画の視点に似ている気がする。時代背景より前に、その固有の人間がとことんリアルに浮かび上がる感じ。影義隊は「陽だまりの樹」(手塚治虫)にリンク。
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合葬 杉浦日向子 筑摩書房
幕末の彰義隊を描いた歴史小説漫画
ほぼドキュメントタッチでもあるかのように描くリアリティがすごい
特に立ち居振る舞いなど
細部の髪型や小道具で酔わせてくれる
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この時代に漫画ってあったかな?と思ってしまうほど当時の空気が感じられる。
そして、内容に浸ってから読むあとがき「日曜日の日本」、これがたまらなく心が揺れる。
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時代の趨勢も、戦いの意味も見通しもよくわからないまま、勢いに振り回されて散っていった少年たち。
みんな、普通に生活していた、普通の若者たちだった。
愚かと言えば愚かだし、悲劇と言えば悲劇だし。
彼らは、死にゆく徳川幕府の道づれだったのか。
生きて次の時代を迎えた者は、変わらぬ時の流れの中に身を置く。
淡々と。
また、普通に。
生きていればなあ〜
生きていれば。
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柳楽優弥、瀬戸康史のダブル主演の映画化が封切。意識的に原作を読まずに映画を観てきた。そして映画を見終えた夜に読んだ原作の「合葬」。原作で作者が伝えたかったこと、映画の監督が伝えたかったことは別物だと感じる。原作の合葬「手を伸ばせば届きそうな、ほんの100数十年前の幕末、時代に巻き込まれていく青年たち。それを取り巻く多くの登場人物」が丁寧に、しかし淡々と語られていた。幕末は特別な時期だったのではなく、今という時代に続く、ほんの一瞬の通過点と言いたかったのだろうか。原作と映画の「合葬」。両方に触れてもらいたい。
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幕末の上野戦争を舞台に、彰義隊の若者たちと、当時の出来事として客観的に描かれた物語。
大河でもそうだが、ヒーロー主観の物語よりも出来事を客観的に描いた物語が好きで、これもそん感じの物語で一気に引き込まれる。
当事者の若者たちの物語は最後は悲しい描かれ方ではあるが、その家族や町人たちは変わりなく日常を過ごし、少しづつ関わり合いながら明治の風が吹き込んでいく様がリアルで面白い。
町人文化目線で幕末の動乱を描くというのはさすが杉浦さんだなと思う。
もっともっと多くのこういう作品に触れてみたかったので、杉浦さんの早逝は改めて残念だ。
映画化されているようだが、変に脚色せず原作に忠実に描けば面白い作品になるのではないか。
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明治新政府が樹立され、徳川慶喜が上野寛永寺に謹慎となっていた頃、江戸では慶喜公の待遇改善を求め彰義隊が結成され、町の治安維持を行っていた。
家を追い出され居場所を失った吉森柾之助は、親友の秋津極、福原悌二郎と出会う。
彰義隊に3人は入隊するが、彰義隊はやがて先鋭化して明治政府との対立を深めていく。
杉浦日向子さんが上野戦争を描いた漫画。
実写映画化も決まっているので予習のために読んでみました。
全く知識ありませんでしたが、上野でこんな戦いがあったんですね。
今度、上野を訪れた時は注意して史跡をみてみようと思います。
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怒涛の幕末を駆け巡った若者たちを描いた、杉浦日向子氏の漫画。
日向子さん特有の、江戸庶民の生活を題材にした数あるエッセイとは違い、時代に命を懸けた彼らの姿の鋭さに心を打たれました。
人々の暮らしを深く知っているからこそ、こういうふうな作品ができあがったのかもしれませんね。
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上野戦争を舞台に、江戸から明治への転換期を生きた三少年の物語。
時代の流れを懸命に駆ける無名の少年隊士たちの生き様を、杉浦日向子独特の描線と情景で描く秀作。
本編を読んだ後、巻末に収録されている「長崎より」を読むと、その悲壮さがいっそう強く胸を打つ。
三少年の別れゆく命運をうまく描いてはいるものの、若干人物の見分けが付きにくいので、星四つ。
しかし読み返せば、星五つ。
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会津に向かっているのかどうかわからなくなっていた
疲れてはいるが歩みは止まらない
止まらぬどころかはずみをつけて速さが増して来る
ついには地を蹴って天駆くるかのような心地となり
額を頬をきる風を感じていた
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杉浦日向子さん、はまってます。
合奏は戊辰戦争の一つ上野戦争を描いた漫画。
杉浦さんの画風は浮世絵っぽさがあります。
登場人物は10代から20代前半の彰義隊のメンバー。
戦争や隊の話というよりは登場人物の上野戦争前後の出来事に重きを置いた作品だそうです。
読後、なんとも言えない気持ちに…。
小沢信男さんの解説の言葉に大きく大きく共感。
「…本篇には、従来の彰義隊戦記にとかくつきものだった怨念や、負け犬びいきの力瘤がない。仰々しくない代りに、のびのびしていて、そして奇妙なナマナマしさがあります。ふしぎなほどに。なぜだろうか、第一に、想像と実証がしっかり噛み合っているのでしょう。…」
杉浦さんの深くて広い知識と愛情が、作品のナマナマしさにつながっていくんだなぁ。
派手さはないけれど心に静かに重く響く作品。
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47冊目『合葬(がっそう)』(杉浦日向子 著、1987年12月、筑摩書店)
江戸風俗研究家でもある漫画家、杉浦日向子の代表作。彰義隊に所属する幼なじみ3人の運命を描き出す。
上野戦争を舞台とした合戦絵巻であり、物語が進むにつれ若人たちの危うい血気がむんむんと立ち上がってくる。そして、その緊張感がピークに達すると同時に全ては儚く消え失せる。戦争に散った若き隊士たちへ捧げられた、まるで線香花火のような哀歌である。
お世辞にも絵が上手いとは言えないが、爽やかで時に耽美的なタッチが胸を打つ。
〈あゝ 鳳凰が。〉
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杉浦日向子さん。
まえがきに、志ん生のマクラとして「上野の戦争」の話が出てくるのですが、ハテ上野?東京の?戦争?と、のっけから「?」だらけになってしまいました。
スイマセン、上野の戦争も彰義隊も、さらに西南戦争のこともさっぱり知りません^^;。これを機会に少し勉強したいと・・・思いました(思っただけで終わるかも知れません)。
ともあれマンガ作品ですが、その彰義隊と上野戦争のことを、隊の端くれに参加した若き3人の志士の目から描いたものとなっています。
幕末という時代の流れに巻き込まれていく青年たち。その困惑やもどかしさを含んだ一途さが、独特の間と陰影とともにつづられており、大変せつないものを感じました。
「合葬」というタイトルは、その3人の死を言うとともに、これもまえがきにある通り「江戸の風俗万般が葬り去られる」その転換期の空気を描きたいという作者の思いがあったようです。
なお、小沢さんという方による巻末解説がまた凄い。いかに杉浦さんの“考証”が深く、リアリティとして反映されているかを示してくれて興趣三倍増です。
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短編が主な杉浦日向子にしては珍しく一貫した展開をもった長編作。近世から近代への移り変わりを、彰義隊をめぐる上野戦争を軸に描く。いつもの淡々とした表現が悲劇性を高めている。
今年は杉浦日向子没後10年で、「合葬」の映画化や「百日紅」のアニメ化など話題に事欠かない。
Posted by ブクログ
誰もが主人公ポジションで、重要な事は知らされていて
確固とした意見をもっていて、考え抜いて決断する。
そんな生き方をしている人は一握りだろう。。。
幕末、よく分からないままにノリや友人に誘われて
命を落とした若者は多かったのかもしれない。。。
Posted by ブクログ
漫画ですが、お薦めです。
〜お薦めお返事〜
お薦め有り難うございます!密林でレビューを読んで「あ、「お江戸でござる」の作者の人か!」と驚きました。「お江戸でござる」は、私の好きなコメディ江戸舞台だったのですが、それ以外はまるで知らなかったので、その作者が漫画を書いていることに、凄く驚いてしまいました。という訳で、買って読んでみました。まだ、ぱらり・・・としか読み通していないのですが、絵柄は案の定凄く綺麗という訳ではなくて、けれど、それが逆に凄みがありました。ラストが近づくにつれて、どんどん絵に対して「うわ・・・」と思ってしまう迫力がありますよね。内容はさらりと一読しただけでは語り通せないので、また改めてじっくり読み通した時に、綴ってみようと思います。お薦め有り難うございました!>たもつ
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数日前だったかな、日経新聞で著名経営学者ピーター・ドラッカーの死を悼んでの特集記事が出てて、そこで生前のドラッカーが「日本はこれまでに明治維新と戦後復興という2度も奇跡的な改革を成功させてきたのだから、もっと自信を持つべきだ」的なことを言っていたというのがあった。あたしは明治維新とか近代の歴史がからきし弱いので、明治維新というのがどういう背景でどうやって起こったのかいまいち詳しく知らない。だからなのか、ちょうど読んでいた個人的初杉浦作品がとても新鮮に映った。まだこの人の作品の空気感には慣れないのだが。時代が変わるというのはどういうものなのだろうか。(05/11/15)