杉浦日向子のレビュー一覧
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葛飾北斎、その娘のお栄らを主役に据えた、江戸情緒あふれる短編漫画集。
個人的に好きだったものをいくつか挙げてみる。
「番町の生首」(其の一)は、武家の娘の悲恋だが、いかにも実際にあった事件を下敷きにしていそうである。「龍」(其の五)はタッチの異なる絵を組み合わせて、現世と妖しい世界を行ったり来たりする様に目眩がするようだ。「女弟子」(其の八)はスッポンの怪しさと女の妖艶すぎる美しさがもの凄いほど。「四万六千日」(其の十一)は江戸情緒漂う、ちょっといい話である(以上、上巻)。
「女罰」(其の十七)は、かわいらしい怪異譚。「離魂病」(其の二十)は中国の怪談が元である。「美女」(其の二十三)もいか -
Posted by ブクログ
漫画家・江戸風俗研究家であった杉浦日向子のコミックである。
葛飾北斎、その娘お栄、弟子の英泉らを中心に、江戸の世界を妖しく艶やかに鮮やかに描き出す。
杉浦日向子は、1958年、日本橋の呉服屋に生まれた。時代考証の確かさや浮世絵を下地にした画風が強みの漫画家である。『合葬』や『百物語』、本作などで注目を浴びつつも、35歳で漫画家としての活動に終止符を打ち、以後は江戸文化研究家やエッセイストとして活躍。46歳で癌のために逝去した。一時、荒俣宏と結婚していたことでも知られる。
惜しまれつつも漫画家として筆を折ったのには理由がある。若くして、免疫系の疾患に蝕まれ、漫画を描ききる体力がなくなったのだ