杉浦日向子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
葛飾北斎、その娘のお栄らを主役に据えた、江戸情緒あふれる短編漫画集。
個人的に好きだったものをいくつか挙げてみる。
「番町の生首」(其の一)は、武家の娘の悲恋だが、いかにも実際にあった事件を下敷きにしていそうである。「龍」(其の五)はタッチの異なる絵を組み合わせて、現世と妖しい世界を行ったり来たりする様に目眩がするようだ。「女弟子」(其の八)はスッポンの怪しさと女の妖艶すぎる美しさがもの凄いほど。「四万六千日」(其の十一)は江戸情緒漂う、ちょっといい話である(以上、上巻)。
「女罰」(其の十七)は、かわいらしい怪異譚。「離魂病」(其の二十)は中国の怪談が元である。「美女」(其の二十三)もいかにも中国の怪談を彷彿とさせる。こちらは寂寥感が印象的である。「因果娘」(其の二十四)は美しい娘にとりついて離れないものがある奇妙な話。「山童」(其の三十)は神隠しの話である(以上、下巻)。
中国の怪談や遠野物語、馬琴の伝奇小説を思わせる奇譚もあり、不思議な味わいである。
作者の分身であるようなお栄もよいが、北斎の「食えない親爺」っぷりもよい。
全30話を収めるが、いずれも短編であることもあり、さらに新たな話が加わってもまったく不思議ではない。だからこの作品は未完である、と思ってもよいのかもしれない。
北斎もそして杉浦日向子も、三千世界のどこかで、あやかしたちと渡り合いながら、今でもあれやこれやと絵を描き散らしているのかもしれない。
そう、散れば咲き、散れば咲きする百日紅のように。