新堂冬樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
名門幼稚園への入学を目指す、奥様方のお受験戦争。
そして、そんな世界の中で、劣等感を持つ主人公の異常な心理が事件を起こしていく。
さらに事件の背景となる奥様たちの仲間意識と村意識の中で、自分より弱い相手を攻撃するいじめや、お受験というストレスを解消するために、万引きをする友達。そしてその事実を知った仲間は、今度はライバルを蹴落とすために陰湿な攻撃を始める。
実に怖い世界である。
この本ではそんな奥様方の危ない仲間意識とライバル意識が描かれている。しかもお受験は、子供の将来のためといいながら、奥様たちの虚栄心のために、自分たちの幼い子供に過酷な教育?を受けさせていく。
一人が何か新しい -
Posted by ブクログ
冷酷な犯人が銀行に立てこもって、人質を次々に殺していくお話。
犯人のバックグラウンドには衝撃の事実が……というような。
ただまぁ、そもそも論になっちゃうんだけど、こういうお話を読むといつも理不尽に思う。だって、どんな経歴で、どんな事情があろうと、人を殺しちゃ駄目だろう。どんなに気の毒でも、頭を打ち抜かれた銀行員には何の関係もない。
金銭の要求や政治的な主張以外を目的にした銀行籠城で、その犯人が冷酷無比に淡々と人を殺していくというのなら、フィクションとして「あり」な展開だった。その場にいる気の毒な人質を犠牲にしてでもテロには屈しないと宣言できるほど、日本警察のメンタリティは冷徹になりきれない -
Posted by ブクログ
新堂冬樹の小説を読むのは2作目。
「闇の貴族」同様、読者を引き込む筆力に下を巻く。
著者は内面の葛藤を言葉にするのが上手い。
シャブ中の速見が「神の道を進む者には、いつだって妨害が入るものだ。キリストが迫害されたように、覚醒剤も、だから禁止されている。白い眼でみられる」と語るところがある。宗教団体の信者も同じようなことを言っていた。
傍から見たら、迫害されて当然だが、本人は「正しいがゆえに迫害される」と主張する。
正しい、正しくないというのは、そのときの世間の価値観だ。
すなわち、世間の価値観に合わないところで、正義を主張しても、それは宗教のドクマにすぎない。